英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
少し暗めのお話になりそうです。

UAが2万を超えました。
これからもよろしくお願いいたします。


51.それから

 

グラウンドにいるⅦ組はサラを含めて皆俯き口を開かない、皆なんと言っていいか分からないのだ。

パトリックによって知らされた過去、そして去り際のミナズキの目、普段よりも暗く、冷たく、そして悲しみに満ちた目だった。

「わからない・・・」

不意にガイウスが呟き、皆その声に顔を上げる。

「少なくとも、オレたちをイストミア大森林で助けてくれたあいつはそんな殺人鬼のような男じゃなかった。学院での生活でもそうだ、人付き合いが苦手そうにしていたのは知っているがそれでも悪い奴には見えなかった」

その言葉にミナズキと特別実習を共にしたユーシス、マキアス、エマ、フィーは当時の事を思い浮かべた。

パルムの情報を纏めて、皆にわかりやすいように説明したり、マキアスとユーシスが喧嘩をしている時はやり方が突飛とはいえ何とかその場を納めようとし、模擬戦をお願いされた時は露骨に気落ちしていたがそれでもお願いに応えるように頑張ってくれた、大森林の主との戦闘では皆を指揮し撃退し、戦狂いのアメリエラとの戦いでは命懸けで皆を守りきり、結果1人だけ酷い重症を負った。

ただの殺人鬼がこんなに人の為に動くものだろうか、そう考えたがユーシスがここで口を開く。

「だが、死の精霊の話は貴族間では1時期有名だったな。死の精霊が出るから人気の無い山には近付くな、というものだったはずだが・・・」

「あぁ、レグラムでもかなり噂になっていた」

困惑した顔のユーシスの言葉にラウラも頷く、エリオットやマキアスも話は聞いたことがあるのかそのまま俯いた。その時───

「私も聞いたことはあるけど、そんな悪い話じゃなかったよ?」

フィーの言葉に皆が振り向く、その様子にフィーは驚いたがそれでも続けた。

「団長が言ってた、『死の精霊は弱い者は殺さない、殺すのは何時だって外道な奴らだけ』って、初めは何かあった時言う事を聞かせるための言葉だと思ってたけど・・・」

そう言ってフィーは黙り込んだ、そうしてまた沈黙がやって来る。だが沈黙はサラによって破られた。

「・・・まぁとりあえず続きをしなくちゃね、悪いけどこのまま進むわよ」

「え・・・」

いきなり授業を再開するサラに誰が発したのかなんとも言えない雰囲気となる、だがサラはお構い無しに皆にプリントを渡した。

「今回の行先、と言ってもちょっと考え直す必要がありそうだけど・・・ガイウス、あんたが言うなら再検討もするわよ」

サラの言葉に皆は首を傾げるが行先の片方を見て否が応でも納得する。

 

A班:リィン、ミナズキ、ガイウス、ユーシス、アリサ、レナ

(実習地:ノルド高原)

 

B班:マキアス、エリオット、エマ、ラウラ、フィー

(実習地:ブリオニア島)

 

ミナズキが行く予定だった実習先はガイウスの実家があるノルド高原だったのだ。しかしガイウスは首を横に振った。

「いや、このままで構いません。オレにはどうしてもミナズキが悪人には見えない、いつもミナズキから感じる風は寂しさを感じるものではあったが悪しき風ではなかった。ならばノルドの地でミナズキの本質を見極めたい」

ガイウスはそう言い切ると他のA班のメンバーに目配せする、リィンたちも異論が無いのかガイウスに頷いて見せる。

「そう、わかったわ。とりあえず学院長にもそう伝えておく・・・あとさっきのⅠ組の面々にも口止めしとくわ、あんたたちも言いふらさないでね」

そうして実技テストは幕を下ろした。

 

 

 

その頃、第3学生寮───

「あら、おかえりなさいませ」

「・・・・」

玄関前で掃除をしているシャロンがミナズキを見つけ挨拶をするもミナズキは何も答えずそのまま寮へと入っていく。

シャロンが不思議そうにしていると今度はレナが走ってきた。

「あ、レナ様。おかえりなさいませ、今しがたミナズキ様が入っていったのですが体調不良でしょうか?」

「シャロンさん、ただいま・・・という訳ではないです・・・ちょっと言いにくい事が起きただけなので・・・」

シャロンに軽く返すとレナもそのまま寮へと入った。

 

 

第3学生寮2階、ミナズキの部屋の前───

 

「ミナズキ?大丈夫かね?」

軽くノックをしていつもの調子でレナは問う、しかし中からはなんの返事もない。

「・・・入るよ?」

そう言ってレナはゆっくりとドアノブに手を掛ける。

「開けるな・・・!」

突如鋭い語気でミナズキから拒絶する声が聞こえる、レナは一瞬怯んだが意を決してドアノブを回す。

ゆっくりとドアを開け部屋の中を確認するとそこにはベッドに座りうずくまるミナズキがいた。

「っ!?」

ミナズキが顔を上げた時、レナは必死に悲鳴を上げないように口を閉ざした。ミナズキの目はグラウンドで見た時よりも更に暗く冷たいものになっており見られているだけで背筋が凍るような感覚があった。

「や、やぁミナズキ・・・戻らないか?皆も心配「しているわけないだろ」・・・えっと・・・」

冷たく言葉を挟んでくるミナズキにレナも言葉を失う、ミナズキは何も言えなくなったレナを見てケラケラと笑い始めた。

「ほら、反論がないってことは核心を突いたからなんだろ?」

そう言ってミナズキはあらかた笑い終わると、ベッドから降りてレナに近寄る。

「ミナズキ?一体何を・・・」

「出ていけ、言う事はもうなにも無いだろ?」

そしてミナズキはレナを出ていかせる為に静かに押し始めた。だがレナは負けじと押し返す。

「出ていけと言っているが?」

「嫌だね、何故なら私には君に言うべきことと聞くべきことがあるから!少なくともそれを聞くまでは出ていくものか!」

そのままレナはミナズキの腕をするりと避けると今度はミナズキに正面から抱き着いた。

「・・・・は?」

「ふふふ、これで上手く押し出すことは出来ないね?」

固まるミナズキに得意げに笑うレナはそのままミナズキをベッドまで押し返した。

「おい離せ、なんだこれは」

「このままで話すとしようかな、君がどこかへ行ってしまわないようにね」

もがくミナズキにレナは少し抱き着く力を強めながら話しだす。

「まずは謝らせて欲しい、私はあの時君の事を知る為にハイアームズの言葉を止めずにいた」

「それは皆同じだろう・・・!」

「だが私は少なくとも動ける自信があったよ・・・でもそうしなかった・・・初めて君と話した時を覚えているかな?」

「俺を選んだ理由か・・・」

「そうとも・・・あの時の分析の答え、もとい君がどんな人かを知れる機会だと思ったからだ。まぁ、結果は予想の斜め上どころか真上を行ってしまったがね・・・」

 

そう言ってレナは入学オリエンテーリングの時のことを思い出す。

ミナズキを自分の欠けた懐中時計の修復の協力者に選んだ理由、クラスのメンバーから距離を取っていたのは他人と関わりたくないタイプだから・・・実際は正体を少しでもバレないようにする為だろう、死の精霊が起こしたという事件は全て山の中での出来事だ、だが事件として話が広がるのは目撃者がいたからだ、レナも貴族であるため死の精霊の事件は知っていた。まさか犯人が今自分が抱き締めている青年とは思わなかったが。

 

次に動き方、妙に実戦に慣れた動きとレナは分析していたが慣れていて当たり前だ。帝国各地で人を殺し回っていたなら慣れないはずが無い。

「本当にすまなかった・・・」

「別に・・・いずれバレると思っていた、卒業までは隠しておくつもりだったが、パトリックに言われて俺も頭が白くなっていた・・・どうしても言われたくない事を言われかけてようやく動けた」

「・・・どうしても言われたくない事?」

「・・・言わないぞ?」

「構わないよ・・・言いたくないんだろ?」

そしてレナまたミナズキのことを抱き締める、ミナズキは諦めたのか引き剥がすことをやめた。

 

「次にこれは・・・自己中心的なんだが時計の事だ」

「あの懐中時計か・・・」

レナに言われてミナズキはこの間自分を吹っ飛ばした懐中時計を思い浮かべる。

「謝罪、というよりお願いだね・・・私1人じゃ探し切れない、探せたとしても君が重症を負うような相手が持っていたら勝てない」

「つまり最後まで力を貸せってことか・・・」

「虫のいい話なのは分かっている・・・拒否されたとしても文句は言えないことも・・・だが」

「いや、最後までやるぞ」

「え?」

レナはミナズキの返事に驚く、しかしミナズキはレナを見ながら口を開く。

「もう1度言うぞ、最後までやると言ったんだ」

「い、嫌じゃないのかい?協力者と言っているが私は君を利用しようとしていたんだぞ?」

「オリエンテーリングで言ったはずだ、暇つぶしだってな・・・俺自身トールズには来たくて来た訳じゃない。だから何かやりたい事が欲しかったんだよ」

戸惑うレナにミナズキは返事を返すとレナは安堵した表情を浮かべた、がレナはまたもやミナズキに顔を向ける。

「こ、これでは私が君に慰められているようなものじゃないか・・・ミナズキも何か言いたまえ!」

「嫌だが?」

「た、例えば君が処刑をされなかった理由だ!ここには私たちしか居ないんだから良いだろ?」

「・・・・」

レナの言葉にミナズキは1度黙ってしまうが観念したように口を開いた。

「偽造された」

「え?」

「偽造されたんだ・・・処刑されたのは俺によく似た・・・いや似せさせられた政治犯だよ」

ミナズキの言葉にレナははっと顔を上げる、ミナズキの目が部屋に入った時と同じ暗いものに戻っていた。

「確かに俺は野盗たちを殺し回った、最終的に正規軍に捕まった事にされた後は処刑されることを待っていた。だがそうはならなかった」

「捕まったことにされた、というのも気になるが・・・そうならなかった?それは・・・」

「恩赦だよ・・・」

「恩赦?」

恩赦という単語にレナは首を傾げた、何故大量殺人鬼に恩赦が与えられたのかが分からなかった。

「俺が殺した野盗の中には腐った貴族だとか汚職に手を染めていた軍人が手を結んでいた、死んだ野盗たちの現場を調べたらそいつらの手紙のやり取りやら金の出どころだとかが芋づる式で発見されたらしい・・・領邦軍も正規軍も関係無くな」

「それって・・・」

「つまるところ俺は正規軍からは腐った貴族や軍人を排除できた見返りとして、領邦軍からはどの貴族同士が繋がっていたかを黙っている口止め料として恩赦を与えられた訳だ」

「な、なるほど・・・」

「そして俺は外に出された後、今の名前を名乗っている」

そうして説明し終わるとミナズキはレナを優しく引き剥がした、レナは抵抗すること無く離したが部屋には居続けた。

「おい話は終わったはずだぞ」

「いや、その・・・君の名前だとか捕まったことにされただとか、色々と気になることはあるが・・・君はこれからどうするつもりなんだい?」

追い出そうとするミナズキにレナは聞いた、ミナズキは苦い顔で答える。

「どちらにせよ士官学院を辞めることは出来ない・・・なら学生寮に引きこもるくらいしか手段は無いな」

「な、何故士官学院を辞められないんだい?」

「・・・・その理由までは言えないな」

ミナズキの答えにレナは少しの間考えるとミナズキに言った。

「では言わなくても良い、だが学院には来て欲しい。恐らく学院としても今回のことは口止めすると思うよ、私が学院の運営ならそうする。」

「だが・・・」

「君も知っているだろう?Ⅶ組はそこまでヤワな連中じゃないさ」

「・・・・」

レナが説得するもミナズキは黙り込んでしまう、ならばとレナは言う。

「テスト対策のお礼、まだ貰っていなかったねぇ。『これからも学院生活をサボらず私と共に卒業する』と言うのでどうだい?」

そう言ってレナはニカッと笑う、ミナズキも迷ったが諦めるように首を横に振るとレナを見て頷いた。

「わかった、学院には行く・・・平穏かは分からないが」

「うむ、それで良いさ」

ミナズキの返事にレナは笑いながらミナズキの頭を撫でるのだった。

 

 

その日の夜───

 

「ミナズキ、ちょっと良いか?」

「この声はガイウスか、どうぞ」

そうしてミナズキがドアを開くと、廊下にはガイウスの姿があった。

 

「悪いけどお茶は出せない、用意も無い」

「いや、構わない。それとこれを・・・」

ミナズキに対してガイウスは特に何も変わらない態度でサラに渡されたプリントを手渡した。ミナズキはそれを受け取り読むが自身の実習先がノルド高原であることを確認し顔を上げる。

「ノルド高原か・・・俺を下ろさなかったのか?」

「あぁ、ミナズキにはノルド高原に来てもらいたい。」

「・・・わかった」

ガイウスの意思が固い事を感じ取ったミナズキは無理に考える事はせずにノルド高原に行くことを承諾した。

その後すぐに部屋を出るかと思ったガイウスだったがその場で少し考えるそぶりをするとミナズキに向き合って言った。

「今日あった事は驚きはした、だがオレはお前を信用している。お前からは悪しき風は感じない」

「・・・え、あ・・・ありがとう」

ではな、とガイウスは部屋を出る、ミナズキは戸惑いはしたがそれでも自分は信用されている、ということに少しだけ気が楽になった。

 

 

「これからもサボらず学院に来い、か・・・」

床につきながらミナズキはレナに言われたことを呟く、何故かは分からないが口からついて出た言葉だ。

明日以降のことはよく分からないが、それでも少なくとも味方はいると思うと少しはマシだと思えた。

「おやすみなさい・・・」

誰に言うわけでもなく、ミナズキは呟き目を閉じた。

 




ご拝読ありがとうございました。
もう少しでノルドに行けそうです。
次話もよろしくお願いいたします。

まだ直接的な関係は無いんですけど逆質問です。ミナズキは士官学院を卒業したらその後はどうなると思いますか?

  • 遊撃士になって仕事をする
  • 帝国の各地を放浪する
  • なんやかんや身を固めて何処かに定住する
  • 行方不明になる
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