英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
最近ペースが落ちていますが、仕事の都合なので別に投稿を辞めるわけじゃありません。


53.旅列車の中で

 

「ミナズキ・・・ミナズキ!帝都に着いたよ、乗り換えだから起きたまえ」

「・・・ん?」

レナに揺らされて薄く目を開けるミナズキ、ぼんやりと周りを見てみると他のⅦ組のメンバーは既に降りる支度を整えており、自分だけがまだ支度をしていなかった。

「急ごうミナズキ、ガイウスたちはもう降りる準備が出来ている」

「・・・んぁ・・・」

「あぁ・・・なかなか起ききらないね・・・どうしたものか」

「肩を貸してみよう」

なかなか起きないミナズキにレナが困っているとガイウスがミナズキの手を引き肩を貸す、反対方向の肩にはレナが肩を貸しまるで人間に捕まったエイリアンのようになっていた。

「まぁ、うん。このまま行こうか」

「・・・そうだな」

リィンたちがなんとも言えない顔をしている中レナとガイウスはミナズキをブランコのように宙ぶらりんにしながら駅の中を歩いていくのだった。

 

 

ノルド行き貨物列車内───

 

「・・・・すぅ・・・」

「やれやれ、まだ寝ているねぇ」

未だに寝息を立てるミナズキを見てレナは笑う、ガイウスも笑っているがアリサ、ユーシス、リィンはなんとも言えない顔をして黙り込んでいる。そんな面々を見てレナが口を開く。

「まぁ君たちの気持ちは分からんでもないよ。実技テストの日、私がミナズキ本人から聞いたことを聞きたいといったところかな?」

「その通りだ、俺たちが知っているのは断片的な情報だけだ、以前兄上から聞いたが死の精霊の話ははぐらかされた」

「私は情報誌で読んだことがある程度ね、細かいことはよく分からないわ」

「俺もだ」

ユーシス、アリサ、リィンの話を聞きレナは頷くも直ぐに首を傾げうんうん唸る。

「困ったね、ミナズキに内緒で言っても良いのだろうか・・・」

「おい、この話題出してきたのお前だろう」

レナにユーシスが苦言を呈すがレナは顎に手を当てて頭の中で考え始める、しかし良い答えは出てこなかった。

「私の口から言えることはミナズキは少なくとも快楽で人を殺していた訳では無い、ということくらいか」

「それはそうだろ、ミナズキがもしも快楽殺人鬼なら老師が破門にしているはずだ」

レナの言葉に今度はリィンが声を上げた、同じ八葉一刀流の剣士としてそれだけは自信をもって言えたのだろう、そしてリィンはさらに続ける。

「以前老師が言ってたんだ『実戦ばかりやってる優秀な馬鹿弟子がいる』って・・・実技テストの時のパトリックの言葉で実戦ばかりやってるって言葉の意味が分かったよ、ミナズキは実戦として魔獣以外にも人も斬っていたんだって」

そうしてまた空気は暗くなる、そんな皆を他所に話の渦中であるミナズキ本人は思い切り爆睡を決め込んでいるのだからタチが悪い。

 

「ええい!いい加減起きないか!誰のせいでこんな空気になったと思っているんだ!」

痺れを切らしたユーシスはミナズキの制服の襟を掴み思い切り前後に揺らし始めた。

「お、おいユーシス!?」

「落ち着け!」

「起きろ!起きろと言っているんだ!このあ「起きてるぞ」うぉ!?」

ミナズキの胸ぐらを掴むユーシスをリィンとガイウスが止めようと立ち上がるがそれよりも早くミナズキの目がいきなり開き、驚いたユーシスは手を離す。

「こんだけ揺らされたら誰でも起きる」

「おや、ミナズキ起きた・・・いやいつから起きてたのかね?」

「ユーシスが『断片的な情報だけ』とか言ってた時からだな」

ほぼ最初からじゃないか、と口から飛び出そうになる文句をぐっと堪えてユーシスたちは口を開く。

 

「ノルドまでまだまだ時間はあり今は邪魔も入らん、貴様も少しは自分の話をするべきだ。あのⅠ組の阿呆のせいでできた溝だが互いに歩み寄らねば意味が無い」

「そもそも俺は特に皆への対応は変えてないだろ、ガイウスとレナ、あとフィー以外そっちが勝手に距離取ってるじゃないか」

「うぐっ・・・」

ユーシスに対するミナズキの打ち返しにリィンが唸り、ユーシスも目を逸らした。だがそこにアリサが打ち返す。

「流石にいきなり同級生が『実は昔世間を騒がせた大量殺人鬼でした』なんて言われたらいつも通りは無理よ!?」

「ふむ、ではどうする?俺に退学でもさせるか?」

「い、いやそこまでは・・・」

ミナズキの言葉にアリサは詰まる、このまま討論したところで話は平行線になるだろう。しかしここでガイウスが口を開く。

「オレははっきり言ってミナズキのことを信じている、他の皆と違うのは情報誌や噂話で知った誇張された情報やその事件を知った人間のような色眼鏡が無いからだろう」

「そうだねぇ、私はガイウスとは違うが一緒に出掛けたこともある分ミナズキと関わる事が多かった、大量殺人鬼の噂話よりもミナズキ本人の本質的な部分を見る機会が多かったのも大きいだろうね。あと恐らくフィーがいつも通りなのは彼女が元猟兵だからだと思うが・・・まあそれは本人にいずれ聞くなりすれば良いだろう」

 

ガイウスとレナの言葉を聞き3人は黙るがそれでも納得はしきれないようでミナズキに視線を送る、ミナズキはその視線にどうするか考えるがため息を吐き答える。

「分かった、質問を受付ける。何を聞きたい?」

「じゃ、じゃああの事件は本当に貴方が起こしたことなの?嘘だったりしないの?」

アリサが必死な顔で訊ねる、もしもあの事件が嘘ならミナズキは大量殺人鬼でもなんでもないただのクラスメイトだ。できた溝も勘違いということで何とか直すことが出来るだろう、そう思っての言葉だった─── 。

「あれか?あれは真実だ」

だが一瞬で希望は打ち砕かれた。

「俺は確かに帝国各地で野盗を殺し回っていた、もし見つからなければ今もやってたかもな」

あっけらかんとミナズキが言い放つ、その言葉にアリサはガクッと項垂れた。もう少しくらい言い淀んでも良いじゃないか、あるいはもっと弁明とかあって欲しい、そんな表情でミナズキを見ている。

「・・・まだ何か言えって顔だな、言っておくが野盗以外は殺してないぞ?少なくとも一般人には手を出してない」

ミナズキの追加の返答にアリサはやや納得いかないもののこれ以上は聞いても無駄と黙る、次に口を開いたのはユーシスだった。

 

「まず話が本当だったということは解った、次に捕まった時とその後のことだ、何があった?」

ユーシスの問いにミナズキは少し考える、どう答えたものかと首を傾げしばらく考えると答えた。

「まず俺は捕まった、というより自首に近い終わり方をしたな」

「自首?」

「あぁ、とある人物に会ってな。そいつの子飼いになる代わりに無罪放免にするって内容だ」

「は?」

ミナズキの返しにユーシスは耳を疑う。無罪放免、つまり今までのことを実質無かったことにするという条件、そんなものを出せる人間は限られている。

「・・・誰がそんな交換条件を出したんだ?」

「先に言っておくがユーシスの親父さんとかお兄さんじゃないからな?」

「そ、そうか・・・では一体誰が」

「鉄血宰相って言えば解るか?」

「はぁ!?」

ミナズキの放った『鉄血宰相』という単語に場が凍った、ユーシスも普段からは考えられない声を上げてしまうほどだった。

驚くのも無理はない、鉄血宰相といえば現在の帝国における宰相であり、ずば抜けた政治手腕と行動力で知られているギリアス・オズボーンの通称だからだ。

「な、何故その名前が・・・」

「確か俺の腕が欲しかったとか何とか言ってたぞ?長い期間他の人間にバレずに事を起こしてたのも評価したんだとかな」

震える声で訊くユーシスとは対照的になんて事ないように答えるミナズキは更に続ける。

「ついでだ、俺には3つの勢力から話が来ていた。そのうち1つは断っているが残り2つは正規軍と領邦軍からの物だ」

「な、何を・・・」

「レナには言ってたがいわゆる『恩赦』だな。野盗の中には貴族や企業家、軍人なんかが裏で繋がっている証拠が出てきたそうだ。それを表に出さない代わりに極刑にもしない、というものだ」

「な、なるほど・・・いや待て、極刑にしないとしても何故お前は今檻の中にいないんだ?」

ミナズキの言い分に納得しかけたユーシスだったが残った疑問をぶつける、それに対してもミナズキは軽く答えた。

「こればかりは色々あってな、一応月1回の話し合いとかはしたぞ。その後はとある人の提案で『士官学院を留年せず卒業すれば自由』という形になった」

ミナズキの話を聞きユーシスも頷く、納得した訳では無いが少なくとも色々と折り合いのついたことである、ということは理解した。そして最後にリィンが口を開く。

 

「なんでそんな事件を起こしたんだ?」

「あ・・・」

「そう言えば聞きそびれな・・・」

「ふむ、気にはなるねぇ」

「・・・・」

リィンの質問にアリサ、ユーシス、レナ、ガイウスが反応しミナズキの方に視線を送る。が、ミナズキは少し困った顔で悩むと答えた。

「言ってしまえば復讐だな」

「ふく、しゅう?」

ミナズキの答えにリィンは呆気にとられている、他の皆も呆然とした表情でミナズキを見る。

 

「先ず、俺には家族がいない。実父は母が妊娠する頃には死んでるらしいし実母も俺を産んで直ぐに亡くなったそうだ。その後は子のいない夫婦に引き取られてノルティア州の山間の集落で育てられた。ついでに言うが俺の育ての両親は殺されている、犯人は猟兵崩れのクズだ」

さらっと、まるで日常の会話のように言うミナズキに皆呆然とした。

「な、なんで犯人が猟兵崩れって知ってるんだ?」

「目の前で見てたからな、その日俺は山の中に木こりの爺さんと一緒に薪を取りに行ってた。帰ってくる頃に騒ぎが起きててな、爺さんは俺に隠れているように言ったから隠れていたがその間集落の皆は野盗たちに襲われてた、結果として生き残ったのは俺一人だった・・・そこからだな、俺の復讐が始まったのは」

もういいか?と聞いてくるミナズキにリィンは頷く他なかった、はっきり言って聞かなければ良かったと後悔したほどだ、他の面々も同じ顔で特にアリサはドン底にいるような顔をしている。そこにレナが口を挟む。

「ふむ、では聞こう・・・いつユン・カーファイに出会ったんだい?」

皆がハッと顔を上げる。良く言ってくれたレナ、と心の中で感謝を述べながらミナズキの返答を待った。

「そのすぐ後だ、あの爺初対面の7歳のガキをボコボコにしやがって・・・まぁ怒りを抑える方法として俺には八葉一刀流を教えてくれた事には感謝してるけどな・・・爺が去った後は・・・まぁ死の精霊って呼ばれるまでクズを斬って回っていたよ・・・これ以上俺みたいなやつを増やしたくなかったからな・・・」

そう言ってミナズキは目を閉じ、また寝息を立て始めた。

 

「寝た、だと・・・」

「まぁ、最近あまり眠れていないと言ってたからねぇ」

唖然とするユーシスにレナが答える、寝てしまったミナズキをアリサとユーシスは呆れながら、ガイウスとレナは微笑みながら見ていた。

「これ以上俺みたいなやつを増やしたくない・・・かつまりミナズキは快楽殺人とかじゃなくて人のためってことか・・・」

「やり方は褒められたものでは無かったがな・・・」

リィンの言葉にユーシスが補足する、確かにやり方は過激、という言葉では片付けられない程の事だ、しかしそのおかげで助かった人は恐らくいるわけで・・・。

ガイウスが口を開いた。

「オレは今回のノルドの特別実習でミナズキという人間を見極めようと思う、皆も出来れば手伝って欲しい」

その言葉に皆頷く、少なくともミナズキは世間で言われていたような人物ではなかった。

若干の恐怖はあったがそれでもミナズキという人間を知るために皆は頷き合うのだった。

 




ご拝読ありがとうございました。
次回はいよいよノルドに着けたら嬉しいです。
次話もよろしくお願いいたします。

まだ直接的な関係は無いんですけど逆質問です。ミナズキは士官学院を卒業したらその後はどうなると思いますか?

  • 遊撃士になって仕事をする
  • 帝国の各地を放浪する
  • なんやかんや身を固めて何処かに定住する
  • 行方不明になる
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