英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
やっぱり原作に沿って書くと色々考えなくて済む部分もあるのですが、上手く落とし込めているかが不安になります。


54.広がる高原に思いを馳せて

 

「・・・・ん、眩しい」

車窓から差し込んだ光に目を覚まし、ミナズキは見えた景色に目を丸くする。帝国の建物は無く、あるのはどこまでも広がっている草原、佇む大きな山々そして雲のない青い空が見えた。

「起きたか、ミナズキ」

「あぁ、なんとも壮大で雄大な景色だ・・・どこまでも走っていけそうだ」

ミナズキの感想にガイウスが頷く、帝国の貨物列車はようやく今回の実習地、ノルド高原へと辿り着いたのだ。

 

「いやはや、だいぶお寝坊さんだねぇ・・・確か3時間は寝てたねミナズキは」

「全くだ、よく眠れるな」

「・・・・」

レナとユーシスの愚痴にまだ頭がポヤポヤとしているのか瞼をぱちぱちと開閉するミナズキにレナは乗り換えの際にシャロンから受け取っていたバスケットを渡した。

「ほら、シャロンさんから貰ったサンドイッチだ。君の分は残してあるから目覚めとして食べたまえ」

そう言ってレナはバスケットからサンドイッチを取りだしミナズキの口に押し込んだ。

「ちょ、ちょっと!?」

「流石にそれは・・・!」

アリサとユーシスはレナの所業に驚くが、当のミナズキは口に押し込まれたサンドイッチをもっもっ、と食べている。そしてサンドイッチを口の中に半分以上押し込んだ後レナは2つ目のサンドイッチに手を伸ばし、ミナズキが1つ目を飲み込んだ事を確認するとまたもやサンドイッチを口の中に押し込んでいく。

「時間があんまり無いんだ、これくらいはするさ」

「・・・むぐもぐ・・・」

周囲が唖然とする中ミナズキは押し込まれたサンドイッチを咀嚼する、そして───

 

「・・・・ガブッ」

「あいたぁ!?」

自分にサンドイッチを押し込んでいたレナの指にも噛み付き、レナの悲鳴が列車内に響く、そしてその直後にゴチン!とミナズキの頭にゲンコツが振り下ろされた。

 

 

16:30、ゼンダー門内部───

 

「何故頭が痛いんだ・・・?」

「フンっ、知らないさ!」

目を覚ました頃にはゼンダー門に着いていたミナズキは何故か痛む頭を抑える、そんなミナズキの頭にゲンコツを落とした張本人であるレナは不機嫌にそっぽ向いていた。

「いや、あれは仕方ないだろう・・・」

「しかしすごい音だったな」

「というかゲンコツ落とされるまでは普通に寝ぼけてたのね・・・」

2人のやり取りをユーシス、ガイウス、アリサの3人が苦笑しながら見守っていた。

 

「おお、やっと到着したか」

不意に声が聞こえⅦ組の面々はそちらを向く、そこには右目に眼帯を着けた渋い軍人の男性がいた。

「中将、ご無沙汰しています」

「うむ、数ヶ月ぶりになるか、士官学院の制服もなかなか新鮮ではあるな・・・トールズ士官学院、深紅の制服は初めて見るが・・・」

「これが自分たちⅦ組の象徴である色だそうです」

ガイウスは目の前の眼帯の男と親しげに話しその男性にⅦ組を紹介した。

「彼らは自分の級友でⅦ組の仲間です」

そうしてガイウスがⅦ組を紹介すると皆で名前を名乗っていく。

「士官学院Ⅶ組、リィン・シュヴァルツァーです」

「アリサ・ラインフォルトです」

「ユーシス・アルバレア、見知りおき願おう」

「レナ・レトロノーツ、よろしくお願いする」

「ミナズキ・バンシア・・・です」

「・・・・む?」

レナまでの自己紹介では特に変な反応もなかった男性だったがミナズキが名乗った途端首を傾げた。

「お主は確かメ・・・いや、ミナズキだな。覚えておこう」

「・・・・あざす」

何かを言いかけた男性だったが直ぐに思い直し頷く、ミナズキもその対応に頭を下げた。

「(メ・・・?)」

「(メとはなんだ?)」

「(ふむ・・・)」

一方で他のⅦ組は頭の中でどういう事なのかを考えてしまう訳だが答えが出るわけじゃ無いので早々に諦めた。

「おっと、自己紹介がまだだったな。帝国軍、第3機甲師団長ゼクス・ヴァンダールだ。以後よろしく頼む」

そうして男性、ゼクスが名乗るとリィンとユーシスが反応した。

「《隻眼》のゼクス・・・!」

「アルノール家の守護者か」

「ほう、私の名前を知っているのか」

2人にゼクスも反応を返す。ゼクスもといヴァンダール家は皇族であるアルノール家を守護する武門の一族として有名であり、祖先であるロラン・ヴァンダールが興した《ヴァンダール流》剣術はエレボニア帝国における二大剣術流派のうちの片方であり帝国内でも優秀な剣士を排出している。

またゼクス本人も帝国内でも指折りの名称であり用兵術に関しては群を抜いている。

 

「ふむ、久々にガイウスとも話はしたいが時間が時間だ。今日中に帰るなら直ぐに出発した方が良いだろう」

「お願いしていた件は大丈夫でしょうか?」

「もちろん用意出来ている、では行こう」

ガイウスとゼクスの会話に皆着いてはいけないものの、2人に連れられてそのまま出口の方へと向かう。

 

ゼンダー門、正面───

 

「・・・これが・・・ノルド高原」

「なんとも、雄大な・・・」

「・・・・・綺麗だ」

リィン、レナ、ミナズキの言葉がそのまま風に消える。目の前に広がるのは夕焼けに照らされたどこまでも広がる、全てを忘れてしまいそうになるほどの雄大な大地、ガイウスは嬉しそうに笑い、他の皆は目の前の景色に言葉を失う。

 

「気に入って貰えて何よりだ」

そう言ってガイウスは腕を組み自身の故郷である高原を見渡す、ミナズキたちもその景色を目に焼き付けていると背後からパカパカと蹄の音が聞こえた。

音のする方に目をやるとそこには5頭の馬がいた。

 

「なるほど、集落までは馬で移動するということか」

「あぁ、高原での移動は馬がいないと成り立たない」

レナが納得したように手をポンっと叩くとガイウスが頷きながら近寄ってきた馬を撫でる。

 

「ユーシスは馬術部、アリサとリィンは馬に乗ったことがあると言っていたからなレナとミナズキはどうだ?」

「私はあるよ、実家で教えて貰ってたからねぇ」

「・・・無いな」

レナは自信があったようで笑って頷くがミナズキは1回も乗ったことが無いようで静かに首を横に振る。

「ではミナズキは誰かの後ろに乗ってくれ」

「では私の後ろに乗りたまえ。長い移動になるだろうからねぇ、話し相手になってくれ」

ガイウスの提案にレナが返し、そのまま乗る馬を選ぶ。4頭の中で一番後ろ脚ががっしりした馬を見つけると手網を引きミナズキの隣にやって来る。

「それで良いだろう?」

「あぁ、助かる」

「では行くとしよう」

レナの提案にミナズキが頷いたことを確認したガイウスは自身も馬に乗る、それを見てユーシスたちも馬を選び乗り込んだ。

「ミナズキ、大丈夫かね?」

「あぁ・・・その、少し高いな・・・」

「それはそうだがちゃんと掴まりたまえよ、落ちたら最悪怪我ではすまないからねぇ」

「・・・・掴まるって・・・どこに?」

レナの言葉にミナズキは何処を掴めばいいのか困惑する、咄嗟に自身が乗っている鞍を掴むがレナは笑いながら答える。

「そこでは危ないだろう?ほら、こうだよ」

「お、おいちょっ・・・」

そう言ってレナはミナズキの腕を自身のお腹に巻き付かせた。

「ちゃんと捕まって、落ちないようにね。安心してくれたまえ、君ならば不快じゃないよ」

レナは微笑みながら自身のお腹に触れているミナズキの手をポンと叩いた、ミナズキは困ったように顔を赤くし目を逸らす。

「(あら、あらあらあら・・・!)」

「(こういう顔もするんだなこの男は・・・)」

「(機会があればミナズキに乗馬を教えてみるか・・・)」

そんな2人を見ながらアリサ、ユーシス、ガイウスは口元を緩ませた。

 

「地元のガイウスはともかく、お主たちにはこれを渡しておこう」

いつの間にかリィンの横に来ていたゼクスが1枚の紙を手渡す、描いてあるのはノルド高原の地図、軍によって測量をされたのであろうそれはかなり詳細で初めて高原に来たリィンたちでも分かりやすいものだった。

「これは・・・ありがとうございます!」

「風と女神の加護を、長老殿とラカン殿によろしく頼む」

お礼を言ったリィンたちをゼクスは送り出してくれる、そうしてⅦ組は馬を走らせ始めたのだ。

 

 

「はっはー!なんとも凄い解放感だねぇ!」

「えぇ!まるで風になった気分!」

「これは・・・馬術部の連中には羨ましがられる体験だな」

「あぁ!とんでもない贅沢だ!」

レナ、アリサ、ユーシスとリィンが楽しそうに笑うガイウスも久々の馬での移動に微笑んでいるがミナズキは何も喋らない。

「ミナズキ!見てごらんよ!・・・ミナズキ?」

「・・・・うん、そうだな」

疑問に思ったレナがチラりとミナズキを見るとミナズキは俯いて目を閉じていた、心なしかレナのお腹に回してある腕にも力が入っている。

「もしかして高かったり揺れたりするの苦手かい?」

「いや、自分じゃどうしようもない状態で揺れるのが少し苦手なだけだ・・・」

レナに目を閉じながらミナズキは答える、そんなミナズキにガイウスが声を掛けた。

「大丈夫だミナズキ、1度で良いから前を見て目を開いてみてくれ」

「・・・ん・・・んん?・・・あ・・・」

そう言われてゆっくりと薄目を開ける、言葉を失った。さっきも見た景色ではある、だが馬に乗り目線が高くなったことでより雄大さを増した大地が目の前に広がる、つい力を抜きかけた腕をレナが掴んでくれるまでミナズキは景色に飲まれていた。

 

「・・・さっきより綺麗だ」

「そうだろう、お前にもこの景色を見てもらいたかったんだ」

ミナズキの反応にガイウスは笑うと馬のペースを上げ、他の皆も倣うようにペースを上げる。

程なくしてミナズキたちはガイウスの実家である集落に辿り着くのだった。

 




ご拝読ありがとうございました。
ペースはゆっくりですがしっかり続けます。
次話もよろしくお願いいたします。

原作3章を終えた後の自由行動日の予定に少し迷います。なのでアンケートを取らせていただきますよ。

  • そろそろリィンに合流してあげて・・・
  • レナ「さて、お出かけだー!」
  • マローラ「図書館にご用でしょうか?」
  • ミナズキ「たまには1人で帝都行くか」
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