英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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56.羊の応酬

 

早朝、ノルドの集落───

「・・・ん、・・・ん?」

目を覚ましたミナズキがまず初めに聞こえたのは羊の鳴き声だった、寝ぼけた頭で何故羊の鳴き声がするのか、と考えている内に自分がノルド高原に来ていることを思い出すと、ミナズキはリィンとユーシスを起こさないようにそっと外に出た。

 

「ミナズキ、早いな」

「・・・ガイウス?」

寝ぼけたミナズキの前にはいつもの学院の制服ではなく昨日見たトーマたちと同じような服を着たガイウスがいた。

「久しぶりに家の手伝いをしていてな、今から羊の放牧をするんだ」

「羊・・・羊か・・・見ていっても良いか?」

「放牧をか?構わないが・・・」

そうしてミナズキはガイウスの放牧に付き合うことになった。

 

 

起床の時間───

「・・・・ん?朝か・・・」

「リィン、起きろ・・・朝だぞ」

「ガイウス?その服装は・・・」

朝、羊の鳴き声に目を覚ましたリィンは丁度部屋に入ってきたガイウスを見ていつもと違う衣装に驚いた。

「ふふ、ミナズキと同じ反応だな」

「ミナズキも?あいつは・・・あれ?もう起きてるのか」

「あぁ、今は放牧を手伝ってくれている。いるんだが・・・」

「ん?」

妙に言葉をにごすガイウスに疑問を感じたリィンは着替えた後にミナズキを見に行くことにした。

 

「ふふふ・・・柔らかいな・・・」

「お兄ちゃんたのしそー!」

「あわわ、助けなきゃ・・・」

放牧地に着くと羊たちに囲まれているミナズキ、そして彼を何とか助けようとしているシーダとリリが居た。

「メェー」

「ふふふ、本当にモフモフだな・・・」

「お兄ちゃんだいじょうぶ!?」

「あんちゃん!ミナズキさんが羊たちに飲まれていってる!」

「いや、多分大丈夫だろう・・・」

羊たちに飲まれていくミナズキをリリとシーダが助けようとしているがガイウスは冷静だった。

 

「メェー」

「んお?」

「おー」

「羊たちが・・・ミナズキさんを運んでる?」

羊たちは数匹がかりでミナズキを自分たちの上に乗せるとそのままガイウスたちの元へと運んで来た。

「お、リィン。早いな」

「お、おはようミナズキ・・・」

幸せそうにしているミナズキにリィンは引き攣った笑みで挨拶するのだった。

 

 

 

少し後───

「美味しい・・・」

「染み入る味だ・・・」

「ミルク粥、みたいなものかねぇ」

アリサ、ユーシス、レナが静かに賞讃しながら匙でそれを掬って口に運んでいく。

朝食に出されたのは昨日のような肉料理ではなくミルクを使ったお粥だった。

「えとえと、羊の乳と塩漬けの干し肉を使った朝粥です」

「一応、妹たちが用意したんですよ」

「リリも手伝ったー」

シーダたちが料理を説明する、そんな中ミナズキはというと。

「・・・・・ふふふ」

「な、なんかミナズキがずっと笑顔のままなんだけど・・・」

「普段の仏頂面は何処へ行った・・・」

普段とは違いすぎるミナズキにアリサとユーシスが若干不気味がる。昨日、そして今朝からミナズキはずっとこの調子だった、あまりにも変わりすぎているためⅦ組としては着いて行けなくなっていた。

「み、ミナズキ・・・なんだか昨日から妙にご機嫌じゃないかな?どうしたんだい・・・」

「・・・いや、久しぶりに平穏を味わっているからな。士官学院に入ってからというもの、刺激が多い反面気の休まる事はほとんど無かったじゃないか」

ミナズキの言葉に皆でミナズキの動向を思い出した。

 

入学直後に巻き込まれる形でフリーデルに目を付けられ行く先々で勝負を挑まれそれを凌ぐ日々、紡績の町パルムへ向かった初めての特別実習ではユーシスとマキアスの喧嘩を止めつつ依頼をこなし、最終的には1人だけ全治1ヶ月の大怪我、その後療養のため2回目の特別実習は出られない代わりとして奉仕活動をしてみればこれまたよく分からない化け物と激闘する羽目になり、つい先日ではパトリックによって過去を暴露され、Ⅶ組の中では針のむしろ、控えめに言っても踏んだり蹴ったりだった。

「ミナズキってある意味1番苦労してるような・・・」

「直近のこともあるからねぇ、とりあえず思う節があるなら謝っといた方が良いんじゃないかね?」

リィンが頬をかきながら苦笑いを浮かべ、レナがアリサ、ユーシス、リィンにジト目を送る。見られた3人はバツが悪そうにミナズキに謝るのだった。

 

 

「さて、それではこれを渡しておこう」

食事の後、ラカンはⅦ組に封筒を渡してきた。

中には3枚ほど依頼書が入っていた

 

・ゼンダー門からの依頼(必須)

依頼人:ゼクス中将

Ⅶ組の諸君に高原に出没する魔獣に関する要請をさせてもらう、詳しくはゼンダー門司令室で。

 

・薬草の調達(必須)

依頼人:薬師アムル

ある大切な薬の材料となる薬草の調達をお願いしたい。

詳しくは直接話すから僕の住居に来てくれ。

 

・監視塔への配達

依頼人:キルテ

帝国軍の監視塔にいる兵士さんたちへの届け物を頼まれて欲しい、詳しくは交易所へ。

 

「それなりに吟味させてもらった、午前中は南西部を回ると良い、それが終わったらちょうど昼餉の時間になるはずだ」

「・・・すごく楽しみだ」

「(まぁ最近は大変だったろうからねぇ)」

ラカンの話にミナズキはニコリと笑う、レナもそれを見て微笑んだ。

 

「さて、昨日と同じく移動には馬を使うぞ。徒歩では行き倒れかねないからな」

「洒落になってないぞ」

「ふふ、風と女神の加護を・・・」

ガイウスの言葉にユーシスが突っ込む、ラカンは笑ってみんなを送り出してくれた。

 

「さて、昨日と同じでミナズキは私の後ろに乗るかい?」

「それしか無いだろうな・・・ん?」

外に出てレナとミナズキが話していると集落の奥から一頭の馬が駆けて来る。その馬はミナズキの目の前で足を止め、じっとミナズキを見つめてきた。

「なんだ?」

「ミナズキ、知っている馬なのかい?」

「いや、全く」

ミナズキが突然来た馬に首を傾げているとガイウスが近付いてくる。

「この馬はこの集落で1番の老馬だな、元は野生の馬で歳は20になる」

「ふむ、恐らく人間の年齢だと60歳行くかどうかってところだねぇ」

「そうなのか?でもなんでここに来るんだ?」

鼻息をふんふんと言わせている馬にガイウスとレナが説明してくれるがミナズキには疑問が残る、そんなことをしてる間にも馬はミナズキの眼前にゆっくりと近付いてくる。

「まさか・・・乗れってことか?」

「では乗ってみよう・・・おっと?」

ミナズキが首を傾げている間にレナが馬に乗るため触れようとするがその手をひょいと馬は避けた。

「どうやらミナズキだけしか乗せる気がないみたいだねぇ」

「え・・・」

「とりあえずミナズキはこの馬に乗ってみてくれ」

「え・・・」

自分をよそに勝手に話を進めてしまったレナとガイウスにミナズキは困惑したがそんなミナズキに老馬は顔を寄せてミナズキの頬を鼻で突っついてくる。

「ま、まぁ少しゆっくりめで頼む」

「あぁ、流石に慣れていないミナズキを置いていく訳にはいかないからな」

 

半ば困惑しながら了承したミナズキにガイウスが頷く、そうしてミナズキが単身で馬に乗ることが決まった。

そして───

 

 

「ま、待ってくれ!少し落ち着いてくれ!」

「ミナズキ振り回されてるねぇ・・・」

「その割にはしっかりと乗れているがな」

まるで跳ねるように走る老馬にミナズキが悪戦苦闘する中レナたちは苦笑いを浮かべながら彼らを追走するのだった。

 

 

 

一方その頃ゼンダー門では───

「中将、ガルド殿が到着されました!」

「うむ、司令室に通してくれ」

少しして司令室に1人の大柄な男が入ってくる、しっかりとした筋骨と少し焼けた肌、そしてグレーの短髪の男はニヤリと笑うとゼクスに頭を下げる。

「お久しぶりです、中将」

「よく来てくれた、早速ですまないが兵士たちの近接訓練を頼む」

「任せてください、素手でも戦車に勝てるようにしてやりますよ」

男、ガルドは拳と掌をバチンと打ち合わせて意気込む、それを見ていた兵士は少しだけ身体を震わせるのだった。

 




ご拝読ありがとうございました。
少しペースが落ちていますが、出来れば気にしないでください。
次話もよろしくお願いいたします。

原作3章を終えた後の自由行動日の予定に少し迷います。なのでアンケートを取らせていただきますよ。

  • そろそろリィンに合流してあげて・・・
  • レナ「さて、お出かけだー!」
  • マローラ「図書館にご用でしょうか?」
  • ミナズキ「たまには1人で帝都行くか」
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