少し遅くなりましたが更新です。
「・・・おい、大丈夫なのか?」
「明らかにバテてるな・・・」
「・・・動けん」
ユーシスの言葉にガイウスも頷く、現在ミナズキは大の字に寝転がったまま動かなくなってしまった。
ユーシスたちは見れていなかったが相当にハードな戦いだったようで辺り一面は地面が抉れていたり、岩が砕けていたり斬られてたりする。
そうしてミナズキが寝転がっていると近くに老馬が駆けて来る。
「とりあえずこいつに運んでもらおう」
「そうだねぇ、しかし振り落とされたりしないかい?」
ガイウスがミナズキを老馬に乗せるがレナは心配なのか少し不安な顔で聞いている。
「まぁ大丈夫だろう、とりあえず1度集落に戻ろう、他の2つの依頼はミナズキを外した方が良さそうだ」
そう答えるとガイウスは自分も馬を呼びそれに乗る、皆も同じようにし移動を始めるがミナズキは馬に乗ると言うよりも器用にだらけるという方が正しい姿勢で進み始めた。
ノルドの集落───
「すみません父さん、そんな訳でミナズキを置いていきます。流石にボロボロすぎる」
「わかった、彼のことは任せなさい」
ガイウスが父のラカンにミナズキを引き渡す。引き渡すと書いてはいるがミナズキはまだ老馬の上でだらんと力なく乗っているだけだ、老馬もミナズキを特に降ろそうともせずただそのまま乗られている。
「おにいちゃんバテバテだー!」
「だ、大丈夫なのかな?」
「あんちゃんとⅦ組の人が連れてきたから大丈夫だと思うけど・・・」
リリ、シーダ、トーマもミナズキのバテ具合に心配そうだが当の本人は特に問題が無さそうなので何かするわけでもなく遠巻きに見るしかなかった。
「はっはー!とりあえずミナズキは安静にしていたまえ、他は特に危ない案件じゃなさそうだからねぇ、お昼までに終わらせて戻ってくるさ」
「・・・任せた」
語りかけてくるレナにミナズキは頷き、2人はそのまま手を合わせた。パチンという音を出しお互いに頷き合うとレナは自分の乗る馬に歩いていきミナズキはそれを見送った。
そうしてミナズキは仲間たちを見送り、その後はラカンの話を聞くことになった。
「どうだろうかミナズキ殿、ガイウスは士官学院で上手くやれているだろうか?」
「殿はやめて欲しい、ミナズキで良いですから・・・それとガイウスは上手くやってると思います。初日から堂々としていて穏やかで、実力もある。勉強の方も留学生と思えないくらいに上位、そしてなにより帝国故の古さと言うか偏見が無い」
ミナズキのこの言葉にラカンはふむ、と相槌を打つ。
「偏見、か」
「えぇ、帝国は周辺の国と比べても歴史の長い国だ。どうやっても身分の違いによる軋轢は多いしそのせいで苦しむ人もまた少なくない」
よくある話だ。身分の違いで結婚出来ない男女、自分にはなんの実力も無いのに貴族に生まれただけで平民を下に見る者、平民に生まれたから学びの機会が減り一生を生まれた場所だけで終える者、自覚が無いだけで本当はもっとあるのかもしれない。
「だから新鮮だった、帝国の固定観念の無いガイウスという男はどこまでも真っ直ぐに生きている・・・ああいう奴はどこの組織にも1人はいなければいけない人だと思う」
「・・・ふふ、そうか」
ミナズキの率直な言葉にラカンは笑顔を見せる、そして少し複雑な顔をして懐から手紙を取り出した。
「これはガイウスから来た緊急便の手紙でな一昨日届いた物だ」
「一昨日?」
「あぁ・・・君の素性のことが書いてある」
「・・・・」
ラカンの言葉にミナズキは口をつぐんだ、自身の素性と言われればすぐになんと書かれていたかは分かる。確かに賢明な判断だとも思う、それでも少しだけだか何となく、心にくるものがあった。
「色々と書かれていた、ガイウスなりの葛藤があったのだろう、君との出会い、初めての実習で命を救われたこと、それだけでなく色々なところに見せた気遣い、仲間に振る舞う料理・・・そしていつもどこか息苦しそうにしていたと」
「・・・・」
ミナズキは何も言わずラカンの言葉に耳を傾ける、もしもここから出なければ行けないのならそれは仕方のないことだ、ラカンにとって大事なのは当然家族とこの集落の者たちであってそれに危険が近づくなら遠ざけるのが普通だ。
覚悟はしている、ラカンの次の言葉をミナズキは俯き、座して待った。
「結論から言おう。私は君を、いや私の息子であるガイウスが信じる君を信じようと思う」
「・・・・は?」
思わず顔を上げた、信じられないという顔のミナズキに対してラカンは穏和な表情で見てくる。
「手紙には『ミナズキからは悪しき風は感じない』とあった、現に私も君からそのような物は感じていない。それに昨日の子供たちに対する接し方、この集落で1番の暴れ馬である老馬にも懐かれている事、それらから考えての決断だ」
「だけど、俺は・・・」
「そしてなにより、息子の命の恩人でもある君を粗雑に扱おうとは思わん」
「・・・・・」
ミナズキは力が抜けたような感覚を味わった、目の前の男といいガイウスといい、この集落の者たちは本当に───
「どこまでも真っ直ぐなんだな、ノルドの民っていうのは・・・」
「勿論だ。この高原と風、そして女神と向き合い力の限りに生きる。それがノルドの民だ」
少し呆れた顔で笑うミナズキにラカンも笑顔で返す。そしてミナズキはそんなラカンに対して改めて綺麗に座り直すと頭を下げた。
「ありがとうございます、貴方たちの信頼に応えられるように力を尽くします」
「あぁ、よろしく頼む」
ラカンに挨拶を済ませたミナズキはその場に立ち上がると住居から出ようと出口に向かう、そんなミナズキをラカンが止めた。
「皆と合流する気なのかもしれないがもうすぐ昼だ、じきに帰ってくるだろう」
「・・・なら昼餉の手伝いをすることにします。こう見えて料理は得意なんで」
「そうか、それは楽しみだ」
お互い笑うとミナズキは外に出た。まだ昼で日は高い、改めて集落を見渡すとシーダが歩いているのが見えた。
「すまない、昼餉の準備を手伝いたいんだが場所はどこだろうか?」
「あ、ミナズキさん。今から私も母さんを手伝いに行くので着いてきてください」
そうしてミナズキはシーダに連れられてファトマの元へと歩いていった。
そしてファトマのいる料理場に着いたのだが、ファトマは困ったように笑って言った。
「手伝いに来てくれたのですか?ありがとう、でももう後は焼き上がりを待つだけよ」
「そう、ですか・・・いや、待てよ」
ファトマの言葉にシーダと一緒に落ち込みかけたミナズキだったが少し思い付いたようで自分の荷物から小さめの箱を1つ取りだした。
「ミナズキさん、それはなんですか?」
「これはレナ・・・あのメガネのお姉さんが俺にくれた物でな・・・箱の中がずっと冷たいままなんだ」
レナがくれた小さな、直径30リジュ(cm)、高さ20リジュ程度の箱、その中には餡子や果物のピールなどが入っていた。
「色々美味しいものをいただいてるし少しは返しておこう。ファトマさん、鉄板を借りても良いですか?」
「鉄板を?良いけど・・・」
首を傾げるファトマをよそにシーダは興味津々でミナズキを見る、ミナズキはファトマから鉄板以外に深さのある小さな皿なども借りて調理を開始した。
「いやはや、流石に疲れたねぇ」
「監視塔に物を運ぶのも大変ね」
「しかしあの兵士もなかなか律儀というか」
「フフ、高原は持ちつ持たれつだからな・・・」
「とりあえず薬草も持ち帰ったしこれで午前の依頼は達成だな」
レナ、アリサ、ユーシス、ガイウス、そしてリィンが話をしながら集落に戻ってくる。
5人は馬から降り交易所へ行き監視塔から貰ったワインを渡し、薬師のアムルの所へ行き依頼されていた薬草を渡した。
そしてラカンのいる住居に戻ると既に料理が運ばれていた。
「戻ったか、どうやら午前の依頼は終わらせたようだな」
「皆さん、お疲れ様です」
ラカンとトーマに出迎えられリィンたちは談笑したがふと、レナがキョロキョロと辺りを見渡す。
「そう言えばミナズキはどこへ行ったのかねぇ?」
「む、言われてみれば中にはいないようだが・・・」
レナの言葉にユーシスも同様に周りを見たがやはりミナズキは居ない、そんなふうにしていると外からリリたちに連れられてミナズキが入ってきた。
「帰ってきたか、せっかくだから手伝おうと思ってな」
そう言うミナズキの持つ皿にはファトマが作ったであろうノルドのパンであるナーンが乗っていた。
そしてリリが持つ皿には人数分のとあるお菓子が乗っている。
「おや、それは多分ミナズキが作ったお菓子だねぇ」
「うん!『ドラヤキ』っていうの!」
レナに対してリリは嬉しそうに答える。今回ミナズキが作ったのはどら焼きで、ファトマから借りた鉄板で生地をしっとりめに焼き上げそして餡子を挟んだ一品、特別にライノの花の形に切ったオレンジピールが乗っている。
「つまみ食いは、ダメだからな・・・ご飯を食べ終わってからにするんだ」
「はーい!」
今にも食べてしまいそうなリリにミナズキが言いつけると元気に返事をするリリ、そんなやり取りを見て皆で笑うと鍋を囲んで座り食事を始めた。
その後、どら焼きを食べた子供たちとクラスメイト、そしてラカンとファトマの反応を見てミナズキは満足そうに穏やかに笑った。
ご拝読ありがとうございました。
何とか午前分を越えました。
まだまだ長丁場ですがお付き合い下さい。
次話もよろしくお願いいたします。
原作3章を終えた後の自由行動日の予定に少し迷います。なのでアンケートを取らせていただきますよ。
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そろそろリィンに合流してあげて・・・
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レナ「さて、お出かけだー!」
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マローラ「図書館にご用でしょうか?」
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ミナズキ「たまには1人で帝都行くか」