英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
のんびりな投稿ペースになっていますがもう少しだけお待ちいただきたいです。


62.カメラマンを探して

 

「ミナズキ・・・その、大丈夫か?」

「そう思うなら、この馬をどうにかしてくれ・・・」

「すまん無理だ」

ミナズキを心配するユーシスだったが返ってくるミナズキの反論にほぼ反射的に言い返す。そんなユーシスにミナズキもだよな、と肩を落とした。

現在Ⅶ組が来ているのはノルド高原の北部、残りの羊と撮影に言ってしまったカメラマンを保護するため南部の依頼を終わらせてきたのだ。

 

「本当に走る前ならまだ大人しいんだがな・・・」

「走った途端に暴走だからねぇ、まあ必要なことはちゃんとするさ」

愚痴るミナズキにレナは笑いながら答える、確かにこの老馬は暴走こそするが必要な場では止まりそれ以上進もうとしない、確実にやるべきことを理解していなければできない所業と言えた。

そんなやり取りをしつつため息をついたミナズキだったが周囲を見渡すと1つの巨大な影を見つける。

「ん?・・・ガイウス、あれはなんだ?」

「あれ?・・・あぁ、詳しいことはわかっていないがノルド高原の守護者と言い伝えられる、古の巨像だ」

ガイウスの説明を聞き皆で遠くに見える巨像に目をやる、かなり離れた位置から見ているはずなのにそれでもはっきりと見えるそれはもはや異常とも言えるほどの存在感を放っていた。

「とりあえず残りの羊を見つけつつカメラマンを保護しようか」

「あぁ、そうする・・・・・!?」

リィンの言葉にミナズキは返すが途中で言葉は途切れた、何事かと皆ミナズキの方向を向くとそこにはミナズキは居らず代わりにずっと前方の方で老馬の暴走に振り回されながら進むミナズキの姿があった。

「もはや定番行事、と言ったところだねぇ」

「本人からすれば全く楽しくは無いだろうがな」

苦笑いするレナにユーシスが呆れ気味で返す、ふざけているならともかくミナズキ本人は必死で馬にしがみついているのだから誰も何も言えない。おまけに他の馬を用意しようとすると老馬はその馬に威嚇をして遠ざけるくらいなのだからミナズキも不憫なものである。

とりあえずこのまま先行させすぎるのも大変なので一同はミナズキを追ってノルド高原北部を進むのだった。

 

 

「・・・なぁ、この馬本当になんなんだ?」

「うーん、はちゃめちゃに賢い馬・・・なんだろうけどねぇ」

ミナズキの愚痴にレナが困惑しながら答える、ミナズキの愚痴の原因は当然ながら自身が乗っている老馬だ。そして何故ミナズキが愚痴るかと言うと、この馬があまりにも頭が良い、というより良すぎる点だ。1度暴走するとほぼ直線に走り止まったかと思えばその先には探していた羊を発見、ガイウスが羊を保護する姿を確認するとまたもや暴走、一切の迷いなく直線に走りまたもや羊を見つけてしまった。

探す手間が省けたと考えれば良いのかもしれないがそれにしても早すぎる。

そして3度目の暴走で次は何処へ行くのかとミナズキ以外の面々は必死に追いかけた結果、目の前には一心不乱に風景や巨像にシャッターを切るカメラマンの姿があった。

「俺はこいつが実は人間でした、とか言われても信じるぞ」

「はっはー!流石にないと思うが確かに下手な人間よりは賢そうだねぇ」

レナの言葉に老馬は得意げにふんぞり返る、そんな2人と1頭をよそにリィンたちはカメラマンであるノートンと話をしていた。

 

「そうか、僕のせいで集落の人に心配をかけてしまったようだね。早速戻ろう、と言いたいところだけど取材が終わるまで待って貰えないかな?」

ノートンの言葉に苦笑いを浮かべる一同だったがノートンは続けた。

「この巨大な像、実はもう1つあってね。ブリオニア島に存在するんだ」

「ブリオニア島って確かB班が行っている所よね」

「ふむ・・・ノルド以外にもこのようなものがあるとは」

「そちらの方も詳しいことはわかっていないけどね、僕はまさにこのような遺跡をスクラップしていてね今回ノルドに来たのもこの取材の為なんだ」

そしてノートンは巨像を仰ぐ、つられてⅦ組も同じように巨像に目を向けた。近くで見ると更に威圧感は増しガイウスの言っていた通りその出で立ちはまるでノルド高原を護っているようにも見えた。

 

「それにしてもやっぱり大きいな」

「ふむ、俺はこの巨像を見た時『巨なる騎士』の言い伝えが真っ先に浮かんだがな・・・」

リィンの言葉にユーシスが呟く、ミナズキは聞きなれない言葉に首を傾げた。

「巨なる騎士?ってなんだ?」

「中世、もっと言えば暗黒時代から帝国に伝わる謎の言い伝えだね。『戦乱の世に''焔と共に輝く甲冑を纏いし巨大な騎士''が現れて世を平定する』・・・だったかな?」

「あぁ、基本的にそう言った内容だな・・・だがこの言い伝えは各地で様々だ。騎士の姿1つとってもその真偽は定かではない、様々な物がある帝国の伝承の中でもまさしく謎の言い伝えと言える」

「なるほど、確かにこの《守護者》の巨像にも通じた話ではあるようだ。もしかしたらなにか関係があるのかもしれないな」

レナとユーシスの説明にガイウスが感慨深そうに頷く、ミナズキも意味自体はよくわからなかったものの初めて聞くその話に少しだけ聞き入っていた。

そしてミナズキが再び巨像を見た瞬間、ズキッと鋭い痛みが頭に走った。

 

「・・・!?」

文字通り一瞬の事だった、ミナズキは直ぐに気を持ち直し周囲を目だけで見渡すとリィンが自分の胸を抑えていた。

「リィン?どうかしたの?」

「いや・・・なんでもない」

アリサに声をかけられたリィンだが何事も無かったようにリィンは持ち直し撮影を終えたノートンの方へ向かう、そしてノートンをリィンの馬に乗せるとⅦ組は集落へと戻っていった。

 

 

ノルド集落───

「いやー、送ってくれてありがとう。お礼は言わせてもらうよ」

「いえ、気にしないでください」

「お陰で良い写真もいっぱい撮れたよ」

「かまわない、こちらも馬の練習をしてる最中なのだから」

ノートンの礼にリィンが返す、ミナズキも少しずつだが老馬の乗り方にも慣れてきていた。

そんな一同を他所に集落が何やら騒がしい。

「む?あちらに妙に人だかりができているが」

ユーシスの言葉に皆でその方向を見る、ミナズキも同じようにしようとしたが老馬が急に大きく嘶いた。

「え!?は、おい待て落ち着け!悪い先に行ってるぅ!」

そうして一気に仲間から離れ人だかりの方向へと老馬は向かう、リィンたちも困った顔をしながらミナズキを追いかけた。

 

 

 

 

「ミナズキ、どうなってる!?」

「あぁ、どうやら事故みたいだな。幸い大事はなさそうだ」

少し焦りのある声のガイウスにミナズキが答える、Ⅶ組の目の前には岩にぶつかり煙をあげる導力トラックがあった。

 

「もしかして導力車事故!?」

「それにあの人は午前の依頼であった薬師の人だねぇ」

アリサとレナが声を上げる、ミナズキは知らないが導力車の前で固まっているのは午前に薬草の採取の依頼を出していたアムルだった。

「アムルさん、大丈夫か?」

「ガイウス、それに君たちか・・・心配をかけてしまったようだな」

ガイウスが声をかけるとアムルは説明を始める、集落に必要な資材を集めトラックに乗せたあと集落に戻ってきたのだが途中で運転を誤り大岩に激突、巻き添えになった者はおらずアムルも軽傷で済んだようだった。

「良かった、アムルさんもその程度で済んで」

「だがこんな開けた場所で事故とは、うっかりよそ見でもしていたのか?」

安心するガイウス、ユーシスは気になったことをアムルにぶつける。ユーシスの言った通りこの現場には特に視界を妨げるような物は何も無い、あるのはせいぜい木でできた腰までの高さの柵だけだった。

「いや、集落の資源を運んでいたから安全運転を心掛けていたさ。でも途中でハンドルが急に重たくなってね、ブレーキは効いたから大事には至らなかったのさ」

「ふーん、なるほどね」

アムルの説明を聞き、最初に動いたのはアリサだった。導力トラックの前面の方へ行くと煙をあげているエンジン部分を咳き込みながら見つめていた。

「アリサ、分かるのか?」

咳き込んでいるアリサにリィンは少し心配そうに訊ねる。

「少しはね、私を誰だと思っているの?」

「お転婆娘、金髪ツインテール、人のことをたまに尾ける奴」

「ツンデレ、チョロイン、過激派カプ厨」

「は、張り倒すわよ!?」

アリサの問いかけにミナズキとレナは速攻で反応しアリサがその散々な言い様に声を荒らげた。

 

「ま、まぁ・・・関係者ではあるけどあくまで一応なのよね・・・でも最近は簡単な整備も出来ないのに《専門技術者》名乗る社員も増えてきてるし・・・そもそもリベールのZCFと比べるとウチは巨大すぎるのよ・・・」

ブツブツと会社に対する愚痴をこぼしながらアリサは導力トラックの内部を調べていく、そして粗方の見当がついたのか手を離し皆の方に向き直った。

「どうやらエンジン周りの結晶回路の接触不良が原因みたい、ハンドルが重くなったのもこの辺りが原因みたい」

「それ、直るのかい?」

結果を言ったアリサにレナが問う、ガイウスも同じ事を聞きたいのか頷いている。

「私は技術者じゃないからなんとも言えないわね、出来ればちゃんとした専門家を呼んだ方が良いわ、早速ゼンダー門に問い合わせを・・・」

「いやはや良い手並みじゃな」

「流石はドライケルス帝が設立した学院の生徒といったところか」

アリサの言葉に被せるように感嘆の言葉を送るのは集落の長老とラカンだった。

「すまんな、少し出遅れたようだ。それとノートン殿の事はちゃんと保護してくれたようだな、礼を言おう」

「それと諸君のおかげで事故の背景と原因は概ね解明出来たようだな?・・・だが少し困った、集落に導力車はその1台しかないのだ。無ければ色々と支障をきたすだろう・・・出来るだけ早く直したいのだが」

長老とラカンが少し弱ったような顔で話を続けているとミナズキが前に出る。

「何かこちらで出来ることはあるだろうか?」

「良いのか?特別実習からは外れていると思うが」

「昼餉のお礼、それと受け入れのお礼と思って欲しい、他の者が行かないなら俺1人でも行くつもりだ」

少し驚いた顔で返してくるラカンに対してミナズキも答える、受け入れのお礼・・・それは集落で寝泊まりする事を許してくれた集落に対してのミナズキなりの恩返しだった。

「待ちたまえミナズキ、別に行かないとは言ってないだろう?」

そんなミナズキをレナが止めた、他の面々も頷いている。

「ではお言葉に甘えさせてもらおう、君たちには導力車を修理できる者を呼んでもらう」

「じゃあやっぱりゼンダー門の方に?」

微笑みながら依頼をしてくるラカンにレナが聞いた、しかしラカンは首を横に振る。

「いや、この分野に関しては軍のものよりも頼りになる方が居る。北部のラクリマ湖畔に帝国の御老人が住んでおられてな、彼ならば導力車の修理も快く引き受けてくれるだろう」

「確かにご隠居ならすぐにでも直せるだろう」

ラカンの言葉にガイウスが納得したように頷いた、ミナズキは気になった事を何の気なしに聞いてみた。

「聞くんですけど、その人の名前は?」

「あぁ、その人の名前はな・・・グエン・ラインフォルトという」

「え?」

ラカンが教えてくれた老人の名前にその場が凍った、特にアリサが凍った。

ラインフォルト、最近皆が知ったアリサの名字であり帝国一の重工業メーカーの名前だ。

「な、ななな、なんでここにお爺様がいるのよぉぉぉ!!!!」

アリサの慟哭が高原に響いた。

 

「レナ・・・」

「なんだいミナズキ・・・」

「世間って意外と狭くないか?」

「それは言わない方が気が楽だと思うよ」

慟哭するアリサをよそにミナズキとレナはなんとも言えない表情で呆れるのだった。

 




ご拝読ありがとうございました。
ストーリ上少し考えることがあり、筆が止まっていました。
次話もよろしくお願いいたします。

原作3章を終えた後の自由行動日の予定に少し迷います。なのでアンケートを取らせていただきますよ。

  • そろそろリィンに合流してあげて・・・
  • レナ「さて、お出かけだー!」
  • マローラ「図書館にご用でしょうか?」
  • ミナズキ「たまには1人で帝都行くか」
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