お待たせしました、投稿です。
翌朝、ノルドの集落───
「昨日より依頼の数は絞らせてもらった」
「ご配慮、感謝します・・・」
朝餉を食べ、片付けも終わった頃ラカンに封筒を渡されたミナズキは感謝を述べ早速封筒を開けようとした、しかし外から聞こえた声がその行動を止める。
「ラカン!ラカンは居るか!」
「長老?いますが・・・・」
慌てた様子の長老の声にラカンが答えると、長老とノートン、そして昨日は長老の家に泊まったグエンが入ってきた。
「どうしたんです?朝からそんなに慌てて」
「何かあったんですね?」
妙に顔を強ばらせている3人にリィンが声をかけるとその後にラカンが何かを察した顔で長老を見る、長老も深く頷くと口を開いた。
「ゼンダー門から連絡があってな・・・どうやら帝国の監視塔が何者かによって攻撃を受けたらしい」
「は?」
「なにっ!?」
長老の発した言葉は平和な朝を崩壊させるには十分過ぎるほどのものだった。
ミナズキはいまいち言葉を受け止められずユーシスは声を上げた。他の面々も先程の穏やかな雰囲気は嘘のように剣呑なものに変わってしまった。
暗い雰囲気のなかノートンが口を開く。
「事が起きたのは今日の真夜中らしい・・・で、でも話はそれだけじゃなくて・・・」
「どうやら共和国軍の基地の方も攻撃を受けたそうじゃ・・・それは少々騒がしくなるかもしれん」
言いずらそうにしたノートンに変わりグエンが続けた。
「最悪共和国軍との戦闘・・・いや、戦争になりかねないわけか・・・」
「・・・・」
レナが発した冷静な言葉にガイウスは何も言わない、だがその手は力強く握り拳をこしらえていた。
「行くか、ゼンダー門に・・・出来ることもあるかもしれない・・・もしかしたら酷い小競り合いに合うかもしれないから、ちょっと準備をして来る」
「準備?何をするのかね?」
立ち上がり出口に向かうミナズキにレナが声をかけるとミナズキは扉に手を掛けながら答える。
「俺も多少学んでいる、パルムの時の二の舞にはならない・・・武装を増やしてくる」
「ふむ、少し興味がある。見ても構わないかな?」
「好きにしろ」
そうして興味を持ったレナを引き連れてミナズキは住居を出た。
寝泊まり用の住居の中、ミナズキは自身の鞄を取りだしごそごそと中を漁り始める、レナはそれを後ろから覗く。
「行きの時から思っていたけどその鞄、結構大きい・・・というより少し長いよねぇ」
「あぁ、色々と便利でな・・・例えばこんな機能もある」
そう言ってミナズキは鞄の内側をレナに見せる、よく見ると鞄内側に金属の留め金が付いており、それを外すと鞄の裏側が開いた。
そこには太刀の7割程度の長さの片刃の銀色の片手剣、そして長い鎖に繋がれた黒い暗器が入っていた。
「ほう、これらはなかなか見事な物だねぇ」
「剣の方は色々あって押し付けられた、暗器の方は『予備だから』と貰った」
興味深そうに見てくるレナに言葉を返すとミナズキは片手剣を左手で抜けるように背負い、暗器を左腕の袖に仕込んでいく。
「どちらも久しぶりに使うから上手くいくかは分からないが・・・無いよりはずっと良い」
「確かにミナズキがその武器を使う姿は見た事がないねぇ」
2人はそんなやり取りをしつつ準備を終え、そして外に出る。外には既に他のⅦ組とラカンたちが来ていた。
「待たせて悪かった、行こう」
「ミナズキ?その剣は一体・・・」
「気にしなくて良い、ある種の奥の手だ」
キョトンとした顔で聞いてくるリィンをミナズキはサラリと躱すと歩き始める。そんなミナズキにブレイザーが駆け寄り鼻でミナズキを小突いた。
「あでっ・・・わかった、わかったから」
「では我々も行くとしようか・・・どうしたんだい皆そんな顔をして?」
馬に小突かれながらも歩いていくミナズキを見て笑うレナ、着いて行こうと他の面々に声をかけるも皆少し驚いた顔だった。
「いや、なんというか・・・太刀だけじゃないんだなって思ってさ」
「本人曰く、貰い物みたいだけどね。ほらそんな事よりもまずはゼンダー門に行かなくてはならないんだろう?急がなくて良いのかい?」
歯切れの悪いリィンにレナは少し大雑把に返す、そしてポカンとしている仲間たちに軽く喝を入れると自身も初日から乗っている馬を呼び集落を出ていく。
その後リィンたちも気を取り直し急いでノートンを連れ馬に乗り2人を追いかけ始めた。
10:00、ゼンダー門前───
「早い、いや早過ぎる・・・」
「もう準備を整えているとは・・・」
「・・・・とにかく、ゼクス中将に話を聞いてみよう」
ミナズキとレナは愚痴をこぼしガイウスが宥めるように声をかける。
ゼンダー門に着いたⅦ組とノートンの前には戦車隊が並んでいた。非常時に軍の動きが早いことは良い事だ、だが今はこの様子が逆に不安を駆り立てる。
「Ⅶ組の皆ありがとう、とりあえず僕は撮影許可を貰ってみるよ」
そう言ってノートンは兵士たちの元へ走って行く、リィンたちもまたゼンダー門に入ろうとしたが後ろから声をかけられた。
「お主ら、来たか・・・」
その声に振り向くとそこには監視塔に行っていたであろうゼクスの姿があった。
「ゼクス中将、監視塔に?」
「あぁ、今1度偵察をな。それよりお主ら良い所に来た。あと30分後にルーレ行きの貨物列車が出る、今回の特別実習は切り上げてそれで帰ると良い」
リィンに返したゼクスの言葉にⅦ組は驚くが皆言葉はほとんど発しない、それを見てゼクスは続けた。
「共和国軍の出方次第だがあと数時間で戦端が開かれる可能性は高い、既に集落にも伝えていたはずだが?」
「え、そうなのかい?」
「知らなかったな・・・」
ゼクスの言葉にレナとミナズキがそう返す、ゼクスがキョトンと表情を固め、他のⅦ組は2人を凝視する。
「そういえば2人はすぐに住居を出たからほとんど話を聞いてないのか・・・」
「あ、あぁ。なんなら武装以外の荷物は集落の住居の中だ・・・」
リィンの呆れたような声にミナズキはバツが悪そうに答える、その様子を見てゼクスは頭を抱えた。
「おぬしら、こんな時に言うことではないが相手の話はもう少し聞くべきだぞ・・・」
「も、申し訳ない・・・だがこれで帰れなくなったのは事実、今回の件我々にも何か出来ることをさせていただきたい!」
ゼクスからの叱責にレナは少し開き直りながらも前に出る、実際Ⅶ組としても今回の件を中途半端にしたまま帰ることは出来なかった。
「ゼクス中将、今回の件どちらが先に手を出したのですか?」
そんな中ガイウスがゼクスに問いかける。
「調査中だ、勿論帝国としては後にも先にも手を出してなどいない。にもかかわらず監視塔は破壊され守備兵からは死者も出ている、ゼンダー門を任された身として黙っているわけにもいかん」
「仮に共和国の工作だったとして、あちらはどの程度の損害なのですか?」
今度はレナが問う、ゼクスは苦い顔をしながら答えた。
「いくつかの施設が破壊されたようだ、被害としてはこちらと同等いや、それ以上といったところだ」
「そ、それじゃあどう見ても何かがおかしいってことじゃないですか!」
工作を仕掛けた側の方が被害が大きいなんてことはありえない、そう感じたリィンは声を荒らげた。
「あぁ、だがそれらを見て判断出来る時期は過ぎた。今はもう互いに収まりが付かない状態、もちろん全面戦争は避けようと思うがある程度の衝突は覚悟の上だ。こちらも、彼らも・・・」
ゼクスの答えに皆不満はあっても何も言えず俯き表情が沈む、それでもとガイウスが顔を上げた時横から声が聞こえた。
「納得がいかないな」
「え?」
「ミナズキ?」
ミナズキが放った言葉にアリサとユーシスが驚いた顔でミナズキを見つめる、ゼクスもまたミナズキを鋭い目で見ていた。
「要するにどっちがやったか分からないけど相手がやったかもしれないから戦うってことだろ?それで話を聞く限り真犯人は別だ、俺にとっては監視塔の兵士なんて顔も知らない人でしかない。でも真犯人も分からないまま戦争なんてしたらそれこそ兵士たちが報われないだろ」
ミナズキの言い分にゼクスは顔を歪ませて答える。
「だがもうあと数時間も無い状態だ「逆に言えば数時間ならあるんだ、まだ戦うには早いすぎる」おぬし・・・何をする気だ?」
自身の言葉に被せて答えるミナズキにゼクスは問う。
「簡単な事だ、戦争になる前に帝国と共和国の潔白を示す証拠を見つける。そうすればお互いに戦う理由は無くなるはずだ、そちらが準備で忙しいならⅦ組でやるまで」
「オレからもお願いします。ノルドの静けさを乱す今回の不可解な事件、必ずや原因を突き止めて見せます」
ミナズキの言葉に続くようにガイウスも頭を下げる、リィンたちも続くように頭を下げた。
その様子を見たゼクスは少し観念したように言う。
「現在10:05、12:30までの調査を許可する、それまで戦端が開かれぬようこちらも力を尽くしてみよう」
こうしてゼクスから許可を貰ったⅦ組は急いで監視塔へと向かうのだった。
ご拝読ありがとうございました。
いつもより遅くなり申し訳ないです。
次話もよろしくお願いいたします。
※長らくやっていたアンケートを閉めさせていただきました、投票ありがとうございました。
まだ直接的な関係は無いんですけど逆質問です。ミナズキは士官学院を卒業したらその後はどうなると思いますか?
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遊撃士になって仕事をする
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帝国の各地を放浪する
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なんやかんや身を固めて何処かに定住する
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行方不明になる