英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
お待たせしました、ようやくノルド偏が終わります。



72.後始末

 

石切場から命からがら脱出したⅦ組は全員で肩で息をしながら石切場の入口を見つめた。

「ガルドさんは大丈夫なのか?」

「猟兵崩れたちを連れてくるとは言ってたけど・・・」

リィンの言葉にアリサが不安そうに答える、どう見ても遺跡の中は崩壊しているのは明らかでそこから単独どころか何人か人を連れて来るなんて出来るとは思えなかった。

しかし、心配する一行を他所に瓦礫に塞がれていた入口が突如として吹っ飛んだ。

「なぁ!?」

「えぇ!?」

「まさか・・・」

驚きのあまり変な声が出るユーシスとアリサ、何となく遺跡の入口をガイウスが覗き込んでみると暗がりから大男が何人か人を抱えながら歩いて来ていた。

「いやーわりぃわりぃ!ちょいと手間取ったわ!」

ガハハと豪快に笑いながらガルドは抱えていた猟兵崩れたちを地面に下ろす、猟兵崩れたちは何も言えずただ怯えて震えるだけだった。

「な、何をしたんだ・・・?」

「いやー逃げようとしたからよ!目の前で岩盤殴り割ってやって、逃げたらこうするって教えたら素直になってくれたぜ!」

ジト目で聞くユーシスにガルドは笑いながら答える、あの戦闘を見た後にその脅しをされては大人しく着いていく他ないだろう。

「おう、とりあえずお前らは急いでゼンダー門に行けや、こいつらは俺が責任を持ってゼンダー門に連れていくからよ」

「そ、そうだった!」

「急がなきゃ!」

ガルドの言葉にわちゃわちゃとⅦ組は馬に乗りそのままゼンダー門へと走り出す、ガルドはそれを見送ると猟兵崩れたちを自身が乗ってきた導力車に乗せて護送を始めた。

 

 

同日、15:00、ゼンダー門───

 

「も、申し訳ありません!今回の実行犯である猟兵崩れたちのことを共和国軍側に伝えましたがやはり信じては貰えず・・・」

「ふむ、無理もない。あちらの方が被害は遥かに大きいのだからな」

悔しそうに言う兵士に対しため息混じりにゼクスが答える。

あの後ガルドによって護送された猟兵崩れたちの証言を元に共和国軍に対して今回の事件の真犯人やその手口を伝えたが信じてはもらえず両国の緊張は高まるばかりだった。

「先程共和国軍の空挺機甲師団が出撃の準備を完了させたらしい、事ここに至ってはもはや戦闘は避けられないだろう。ぬしらはすぐに学院に帰る準備を整えるのだ」

「そ、そんな・・・!」

ゼクスがⅦ組に帰るように促すがアリサは納得がいかないために声を上げる、他の者も悔しげに顔を歪める中レナが口を開いた。

「というか雰囲気的に口にはしなかったんだが・・・」

チラリとレナは視線を横に向ける、そこには───

「え、ボク?」

「結局君はなんなんだい?」

レナに聞かれキョトンとした顔をしたミリアムにⅦ組もゼクスたちも顔を向ける。

「確かに、結局あなたって何者?」

「事件のこともあって気にしないようにしてはいたが怪しすぎるもんな・・・」

「あの男が言っていた『子供たち』という言葉も引っかかる、どう見ても怪しい背景があるが?」

アリサ、ミナズキ、ユーシスもミリアムをじっと見ながら言った。ミリアムはうーんと困った顔をすると頭をポリポリとかきながら苦笑いを浮かべる。

「あんまりショゾクの事は表立って言わないように言われてるんだけどなー」

「所属?・・・もしかして君は」

「その推測は当たってると思うぜ?」

ミリアムの言葉にリィンが返そうとするとドアの向こうから声が聞こえ、プシュっと音を立ててドアが開く。するとそこには軍服とは違うが赤を基調としたスーツを纏った赤毛の青年がいた。

 

「あー!来た来た!もーレクター!遅すぎだよー!」

「おースマンスマン、ちょいとクロスベル方面に出張に行っててな」

赤毛の青年、レクターにミリアムが駆け寄り文句を言うとレクターは軽い調子で返した。

「ふむ、軍服等は着ていないが我々と同じ立場の人間のようだな」

「─── はっ、その通りであります。帝国軍情報局・特務大尉、レクター・アランドールであります。共和国軍との交渉ルートを担当するために参上しました」

ゼクスの問いに先程の軽い調子はなりを潜めレクターは自己紹介を返す。

その自己紹介に1番に反応したのは意外にもミナズキだった。

「レクター・アランドール・・・・《カカシ男(スケアクロウ)》・・・!」

「本当に生きてたんだな《死の精霊(バンシー)》・・・今はミナズキって名乗ってたか、こんな所で会うとは奇遇だな」

「人を罠にかけるような捕まえ方した奴がよくそんな軽口叩けるな・・・!」

レクターに対して明らかに敵意を浮かべ睨みつけるミナズキ、しかしレクターは何処吹く風といった様子で軽く受け流す。

「正攻法でお前を捕まえに行っても死人が出ると思ったからな、あれくらいしかお前を捕まえる方法を思いつかなかったんだ、クレアも未だに気にしてるぜ?『罠にはめて悪い事をした』ってな」

「あの冷徹女が?どうだかな・・・だが今の会話である程度解ったぞ、お前とそこにいるミリアム、そしてクレア・リーヴェルト、お前ら3人は《鉄血の子供たち(アイアンブリード)》だな」

「あぁ、お前がおっさんの誘いを蹴った《鉄血の子供たち》だ」

 

《鉄血の子供たち》と言う単語を聞きリィンたちは首を傾げるがゼクスは納得したように頷く。

「なるほどな、宰相閣下が自ら見出し集めたという特別な才能を持った者たちか・・・」

「本当はお前の片腕くらい切り落としてやりたいが今はお互い忙しいからな、そんな暇は無いわけだ」

「あぁその通りだ、再来月の《通商会議》の前に無用な対立は避けたいからな・・・」

ゼクスの言葉を他所に食い下がるミナズキ、レクターも軽くいなした後にゼクスの方に向き直り話し始める。

「そんな訳で後はこちらにお任せ下さい、既に共和国との交渉に入っています。今言った《通商会議》前に対立を避けたい、という宰相閣下の意向もありますので」

そう言って今度はⅦ組に向き直る。

「お前たちもウチのガキンチョの面倒見てくれてサンキューな」

「ぶーぶー、ガキンチョ言うな」

レクターのガキンチョ発言にミリアムがブーイングを送るもすぐにレクターの隣に立ちリィンたちにニシシと笑う。

「今日はすっごく楽しかったよ!また会えたら嬉しいな!」

そうして2人はⅦ組が止める間もなく部屋から出て行ってしまった。

 

「な、なんというか、あっという間に居なくなったわね」

「随分あっさりと行ったねぇ、しかし帝国軍情報局か・・・聞いた事はあるが・・・」

「フン、情報機関というよりは諜報機関と言うべきだろう。《鉄道憲兵隊》と並んで各地の領邦軍から最大限の警戒をされている組織だぞ」

唖然とするアリサと腕を組んで考えるレナ、ユーシスも胡散臭いものを見る様な目でレクターたちが出ていったドアを見つめていた。

 

「・・・・・」

「ミナズキ」

ミナズキも忌々しげにドアを見つめているとレナが声をかけた。

「大丈夫、かい?」

「・・・・・あぁ、問題無い」

レナの問いかけに答えるミナズキだったがその顔はノルド高原に来る前の暗い表情に戻っていた。

 

 

その後、交渉はなんとか成功したようで共和国軍の飛行艇は基地へと戻っていき帝国軍も戦車をゼンダー門に帰投させることになった。

Ⅶ組もまた集落へと戻り住民たちに迎えられた。

しかしミナズキの表情は暗いままで直ることはなく、リリたちとも喋る事は無かった。そんなミナズキをリリたちは心配しミナズキと1番仲の良いレナに色々と話を聞いたのだった。

 

そして翌朝───

「皆さん、本当にお世話になりました」

リィンが代表してお礼を言うと他のみんなも続いた。

「本当になんとお礼を言っていいか」

「あぁ、目には見えないものを沢山貰った気分だ」

「とても充実した実習となった、感謝するよ」

「お世話になりました・・・」

アリサもユーシスもレナもお礼を言うがミナズキは昨日よりはマシくらいの顔で頭を下げた。

するとリリとシーダ、トーマが何故かミナズキの前に出てきた。

「お兄ちゃんにあげる!」

そう言ってリリは木製の腕輪をミナズキに差し出してくる、ミナズキはそれに対して戸惑うようにガイウスを見た。

「ミナズキ、受け取ってやってくれないか?」

微笑みながら言うガイウス、それを見てミナズキは1度腕輪に手を伸ばし一瞬停止、しかしすぐにまるで割れ物に触れるかのように恐る恐る腕輪を受け取った。

「集落を、高原の平和を守ってくれてありがとうございました。ミナズキさん」

トーマの言葉にミナズキは顔を上げる、そこには住民たちの笑顔があって、ミナズキは1度目を見開くと少しだけ微笑んで言った。

「また、ここに来たいと、そう思います」

 

 

 

 

帰りの列車内───

 

「眠れないかね?ミナズキ・・・」

「あぁ・・・」

Ⅶ組の皆が疲れて眠っている中、ミナズキは同じく起きていた隣に座っているレナに話しかけられていた。

「やはりあの特務大尉のことかい?」

「あぁ・・・」

レナの問いかけに生返事で返すミナズキ、コクンコクンと船を漕ぐ、眠たいはずなのに何故か眠れる気がしなかった。

レクターに言われた《死の精霊》という呼び名、それを聞いた瞬間ミナズキは現実に引き戻されたような感覚を味わった、『過去は消えない、どこまでいってもお前は悪人とはいえ人を斬り続けていた大量殺人鬼だ』とそう言われたような気分だった。

「(あの時も・・・・)」

ミナズキがリリから腕輪を受け取る時一瞬、ほんの一瞬だけ自分の手が真っ赤に染まって見えた、ガイウスは受け取ってやってくれと言ってはいたが本当に自分なんかが貰って良かったのかと思ってしまう。

そんな風に考えつつも受け取った腕輪はどうしても手から離せずいる。これを持っている権利があるのだろうかと頭の中でぐるぐると思考が回り続けた。

そんなミナズキの肩をレナが掴んだ。

「レナ?なんだ?」

「いやなに、君がどうしようもなく辛そうに見えたのでね。本当は眠いんだろう?寝るべきだよ」

そう言ってレナはミナズキを引き寄せ彼の頭を自分の肩に乗せさせた。

「・・・・」

「君がどう思おうと、あの場に居ない部外者がなんと言おうと今回君がノルドを守ろうとした事実は変わらないよ。だから胸を張りたまえ」

静かにミナズキの頭を撫でながらレナは言う、その言葉にミナズキは目を閉じ貰った腕輪を優しく握りしめる。

それを確認するとレナは撫でるのを止め、自分も眠るため頭を寄りかからせた。

「私も眠くなって来たよ・・・ミナズキ、おやすみ」

そう言ってレナも目を閉じる。がミナズキにはその言葉はもう聞こえなかった、腕輪から感じる仄かなノルドの香り、それに誘われて静かに夢の世界に旅立って行った。

 

 




ご拝読ありがとうございました。
ノルド偏お付き合いいただきありがとうございました。
次回なのですが少しだけ幕間として日常回を挟ませていただきます。
次話もよろしくお願いいたします。

幕間、もとい日常回も息抜き代わりに書かせていただきます。どんなものが見てみたいとかありますか?

  • 少しの間料理を止める宣言するミナズキ
  • 何故か帝都におせちを持って行くミナズキ
  • レナとマローラの茶会
  • その他(コメントで受け付けてみます)
  • 出来れば本編を進めて欲しい。
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