英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
幕間を書くことにしてアンケートを取りましたが結局全部書きたいのでいくつかは本編にそのまま絡ませ、今回の独立した話は幕間として出すことにしました。よろしくお願いいたします。


幕間、トールズでの日常風景
幕間~食べ物の恨みは恐ろしい~


 

それは突然だった───

ノルドの実習から帰ってきて少し経った日の朝食、食堂にてミナズキが放った言葉が原因だった。

 

「レナ・・・」

「ん?どうしたんだいミナズキ」

「俺しばらく料理止めるわ」

その瞬間カシャン、と誰かがフォークをテーブルに落とした。そしてしばらくの間の沈黙の後レナが切り出した。

「な、何を言っているんだいミナズキ・・・今もしかして料理を止めると言ったのかい?」

「あぁ、そう言ってる「何故!?」いや別に良いだろ」

 

食事の手を止めミナズキに迫るレナ、そんな2人をⅦ組も唖然としながら見ていた。

「え、えっと・・・ガイウス・・・ノルドの方で何かあったの?」

「いや、少なくともミナズキが料理を止めるきっかけは無かったはずだが・・・」

不安そうに聞くエリオットにガイウスも首を傾げながら返す、その間もレナとミナズキのやり取りは続く。

「いや君ノルドで色々食べたから思い付いたものがあるとか言ってたじゃないか!」

「別にそれが理由じゃないし、理由はもっと別だ・・・後しばらく特別実習での弁当も無しにしようと思う」

「「は?」」

ミナズキの言葉に今度はマキアスとユーシスがハモる、そして互いを見合った後に軽く咳払いをしミナズキに切り出す。

「何かあったのか?」

「そうだ、僕たちで何か出来ることがあるなら手伝うぞ」

しかしミナズキはユーシスとマキアスの申し出にも首を横に振り口を開く。

「シャロンさん、俺たちが3回目の特別実習から帰ってきて何日経っただろうか・・・」

「はい、本日で4日になります」

ミナズキの問いにいつの間にかミナズキの横に来ていたシャロンが答える、答えを聞いたミナズキは軽く頷くと続ける。

「実は一昨日から少しずつ用意していた肉じゃが、角煮、浅漬けがあったんだ。他に得意な和菓子である羊羹や大福、最近初めた洋菓子として果物のタルトレットなども今日のおやつとして出す予定だった・・・3回も特別実習に行って全員無事に帰って来てこれた事のお祝いとしてな・・・それが今朝見たら全部消えていた、人数分全てだ・・・」

「タルトレット・・・あれか・・・」

「あぁ、昨日ガイウスがお試しとして食べたあれだ」

様々な献立を出していくミナズキにガイウスが反応するとその声に皆が一斉にガイウスに視線を移した。

 

 

昨日、夜19:30頃───

「ミナズキ?こんな時間に何をしているんだ?」

「ガイウスか・・・明日皆に配ろうと思ってな」

夜の第3学生寮の食堂、ガイウスが水を飲みにそこに入ると調理を終えたミナズキの姿があった。

「それは・・・帝国のお菓子か?」

「よく分からない、この間買った料理本に載ってたから作ってみただけだ。タルトレットっていうんだ、今回はメロンを使ったクリームを小舟型に焼いたタルトレット生地に乗せてみた」

ミナズキの説明を聞いたガイウスがテーブルの上を見ると手のひらサイズのタルトレットにメロンを細かく粉砕して混ぜ合わせたクリーム、そしてその上に小さく切られたメロンの果肉が乗ったお菓子があった。

じっとタルトレットを見るガイウスにミナズキが切り出す。

「・・・食べてみるか?」

「良いのか?」

「初めての試みだからな、感想が欲しい」

そう言われガイウスは1番近くにあったタルトレットに手を伸ばす、手のひらサイズのそれをゆっくりと口に運びそのまま一口で消える。サクサクとしたタルト生地、メロンを使ったふんわりとしたクリームのねっとりとした甘味、乗せられた瑞々しいメロンの果肉は噛む度に果汁が出てくる。

「これは・・・良いな!弟たちにも食べさせてやりたい」

「そうか・・・そう言って貰えると嬉しい、冷蔵庫でこれを冷やしておく・・・明日みんなにも出すよ」

 

 

現在、食堂───

 

「あれはとても美味いものだった」

感慨深そうに頷くガイウス、そんな彼を見て他の面々も軽く唸る。

「聞くだけで美味しそう・・・」

「でもなんで無くなったんだ?」

「誰かが食べた、という事だろうな」

羨ましがるフィー、首を傾げるリィン、そして周りに疑いの目を向けるユーシス、他の面々も周りをキョロキョロと見始めた。

 

「昨日の少なくとも19:30の段階ではあったんだ、そしてそれ以降誰も外には出ていないし誰かが寮内に入った形跡も無い、犯人が見つからないうちは俺は料理を絶対に作らない」

キッパリと言い切るミナズキにみんな愕然とする、誰かは分からないがそんな大それたツマミ食いをした犯人の影響で少なくとも特別実習での弁当が無くなったのだ。

「と、とりあえず昨日のその時間帯に何をしていたか話して見ようか?」

気を取り直すように提案するリィン、みんなもそれに頷き自分がその時間帯に何をしていたかを思い出し始める。

最初に切り出したのはエマだった。

 

「私は昨日その時間はフィーちゃんと勉強をしていました、内容は帝国史で今度テストがあるということで範囲の獅子戦役の部分を教えていました」

「そだね、私も昨日はエマに教えて貰ってたから覚えてる」

フィーもエマを援護するように補足し、納得がいったのかミナズキは頷いた。

次に口を開いたのはガイウスとエリオットだった。

「オレとエリオットはオレの部屋でバイオリンを弾くエリオットを絵に描いていた、必要なら描いていた絵をここに持ってくる」

「そうだね、僕も昨日は寝る少し前までガイウスの部屋に居たからそれでアリバイにならないかな?」

ガイウスとエリオットの言い分にミナズキも疑いつつも頷く。

 

次はレナが話し出した。

「私はアリサとラウラとの3人でお茶をしていたねぇ、ちなみにエリオットの演奏も聴こえていたよ。良い音色だった」

「そういえば私たちがお茶をしてる時、途中演奏が止まることもあったけどあれはガイウスと話してたりしたからなのかしらね」

「うむ・・・そう言えば私たちは3階で話していたが2階でユーシスとマキアスの言い合いが聞こえていたのだが何かあったのか?」

最後のラウラの言葉にユーシスとマキアスは同時に口を開いた。

「なんてことはない、この男がブレードで俺に負け過ぎて癇癪を起こしただけのことだ」

「か、癇癪なんて起こしてないぞ!だいたい昨日やったブレードの手札がどう考えても君に良い物が寄り過ぎていたじゃないか!」

途端に言い合いが始まる2人を見てミナズキは呆れながらも頷く、これで全員のアリバイが出たがそれでもミナズキは疑いを止めない。

 

「しかしこれでは誰がツマミ食いしたか分からない・・・シャロンさんは流石にそんなことしたらアウトだって分かってるはずだし、そもそも自分で作れるだろうし」

「はい、タルトレットなら作ることが出来ますわ。それにもしそんなことをしたら皆様からの信用を損なってしまいますのでそんな行為は決してしていない事を誓うことが出来ます」

1度ちらりとシャロンの方を見たミナズキだったがシャロンも言い切ってきた為すぐに視線を戻した。

 

振り出しに戻ってしまった調査にミナズキもみんなも頭を抱えていると食堂のドアが開いてサラが入ってきた。

「うーん・・・昨日は飲みすぎたわねー、いやでも美味しいツマミもあったしついでにお菓子も食べれたし結果オーライかしら・・・」

「・・・・・」

Ⅶ組に気付かずに色々呟きながら水場に向かおうとするサラ、しかしそれをミナズキが目の前に立って止める。

 

「あら?ミナズキ、それにあんたたちまでどうして私を見るのかしら?」

「サラ教官、実は昨日から用意してた料理やお菓子が無くなったんだが何か知らないか?」

疑問符を浮かべるサラにミナズキは明らかな疑いの目で問いかける、するとサラは少し不満気な顔で返した。

「な、何よあんたたち私を疑ってるの?私は別になんにもしてないわよ?」

「じゃあ聞くが昨日のツマミの種類は?」

「えっと・・・確か途中まではナッツとかで呑んでて、途中から飽きちゃったから食堂に・・・ってなんで疑いを強くしてるのよ!」

サラの言い分を聞くにつれてミナズキの顔がどんどん険しくなっていく、他の面々も明らかにサラを疑い出した。

「し、失礼ね!私はちゃんと自分のスペースにあるチーズとベーコンを取ったはずよ!この冷蔵庫に無いのがその証拠に・・・あ、あら?」

憤慨しながら冷蔵庫を開けるサラだったが彼女が言っていたベーコンとチーズは手付かずで丸々残っていた。

「サラ教官、もしかして隣の俺のスペース開けた?」

冷たい目で問いかけるミナズキ、サラも自分のやらかしに気づき始めたのか冷や汗を流し始める。普段の酒癖の悪さがここに来て最悪の結果を引き出していた。

「い、いや確か夜は買い物に「19:30以降誰も外に出ていないのは確認済みだ」え、えっと・・・」

1歩、また1歩とサラが言い訳をする度にミナズキが少しずつ前に出てサラは逆に1歩ずつ後退る、サラも完全に自分の行いに気づいてしまったのか、しかしそれでも反論していた為に後に引けなくなっていた。

「わ、私はタルトレットなんて食べてないわよ「まだサラ教官にはタルトレットが無くなったなんて説明してないはずだが?」あ・・・」

墓穴を掘ったサラ、ミナズキは腰に差している太刀に手をかけ始めた。

「ほ、本当に私は食べてないのよ!」

もはや反論出来なくなったサラはなんとか言い返そうと躍起になるがそんなサラの頬にミナズキは手を伸ばす、サラはギョッとしていたがそんな事お構い無しにミナズキはサラの頬、正確にはサラの頬に着いていたクリームを指で掬い、そしてペロリと舐めた。

「・・・・俺が作ったメロンクリームの味だ」

「あ・・・・」

気の抜けたサラの声が漏れ、ミナズキは太刀を抜いた。

「てめぇこの野郎!嘘ついてんじゃねぇぞこの酒カス女がぁぁぁ!」

「ご、ごめんなさいぃぃぃぃぃ!!!」

ミナズキが放った業炎撃をすれすれで避けてサラは食堂から飛び出し、外に逃げる。それを追ってミナズキも外に飛び出した。

 

「・・・・とりあえず食べ物関係でミナズキに嘘を付くのは絶対に止めるべきだね」

レナの呟きに皆勢いよく首を縦に振る。

その日トリスタでは炎を纏った太刀を振り回して怒り狂うミナズキとそれから全力で逃げるサラの姿が目撃された。

その後2人はベアトリクス教官によって捕縛、説教を受けたがミナズキは厳重注意と反省文の提出、サラは3ヶ月の禁酒と寮内の掃除、そしてしばらくの間ミナズキの作った食べ物は全て貰えないという厳罰が下された。

 

 

 




ご拝読ありがとうございました。
こういった幕間は私が本編でいき詰まった際に書かせてもらいます。
次話もよろしくお願いいたします。


追伸:最近中学からの友達から「2人でゲーム作らん?」と連絡が来て即OKしました、頑張ります。
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