英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
遅くなりましたが本編も進めます。


4章~緋の帝都~夏至祭
73.ミナズキからの手紙


 

帝都ヘイムダル、バルフレイム宫、帝国政府・宰相執務室───

 

「そうか、ミナズキ・バンシアは健在だったか」

「おう、なんなら今にでも斬りかかって来そうな剣幕だったぜ」

執務室で話す2人、1人は前日のノルドの1件で共和国との交渉の場を作り出したレクター・アランドール、そしてもう人の巌のような濃密な存在感を放つ男はこの帝国における宰相を務めているギリアス・オズボーンだった。

 

「去年の6月、彼を引き入れようとした貴族派、そしてそれを阻止し逆に彼を引き入れようとした我々革新派、ミナズキ・バンシアが手を取ったのはそのどちらでも無く掻い潜るように間に入った王位継承権を持たないオリヴァルト殿下だった、あの2人の間にどんな制約があったかは知らないが身代わりを処刑した後解放された彼を回収して逃がした手並みは見事と言える」

「で、今は自分も卒業した士官学院に入れて力を付けさせながら時間稼ぎってことか、あの放蕩王子もなかなかやるな」

 

軽口のようにミナズキのことを話すギリアスとレクター、そしてレクターは切り出す。

「もしあいつがこっちの手を取っていたらどうなってたんだ?」

「彼の戦い方は表で戦う剣士よりも裏で動く諜報員に向いている。彼がこちらに着いていたならもう1人の《鉄血の子供たち》として裏で不穏分子を排除する存在となっていただろう」

「おー怖」

レクターの言葉に冷静にミナズキを分析し与える役割を話すギリアス、レクターは少しオーバー気味に笑っていると執務室のドアがノックされた。

 

「失礼します閣下、クレア・リーヴェルトです」

「入りたまえ」

外から聞こえるクレアの声にギリアスが返すとドアが開き、中に水色の髪の軍服を纏った女性、クレア・リーヴェルトが入ってきた。

「よークレア、今おっさんとこの前会ったミナズキの事について話してたんだ」

「レクターさん、閣下にそんな呼び方は・・・「構わないとも、今は公共の場でもないのだから」はい、それにその、ミナズキって・・・あの子ですか?」

ギリアスをおっさん呼ばわりするレクターをたしなめようとするクレアをギリアスが被せ気味に止めると彼女は表情を少し曇らせながらレクターに返す。

「おう、去年俺たちが捕まえた《死の精霊》だ。結構元気そうだったぜ?」

「そう、ですか・・・」

明るく返すレクターとは対照的に更に表情が曇るクレア、その様子を察してかレクターは続ける。

「あの時の事を引き摺ってるのか?確かに騙し討ちみてぇなやり方だったけどよ、結果としてお互いに無傷で終わらせられたじゃねぇか。もっといえば貴族派が送り込んでた連中もいくらかミナズキに斬られてたしな、想像以上の出来だったぜ?」

「えぇ・・・」

レクターの言い分に納得はしても気分の晴れないクレアはまたもや微妙な顔をした。

 

当時行われた作戦、それは《死の精霊》の捕縛作戦だった。

内容としては彼の動き方をある程度把握した正規軍が集落とそれを襲う野盗を偽装、野盗を斬るため、何より集落の住民を助けようと現れた彼が野盗を斬り集落の住民の女性に手を差し出した所に身を隠していた正規軍とそれを指揮するレクターが包囲、いきなり現れた軍人に彼が気を取られている間に住人に扮していたクレアが銃を突きつけ拘束した。

 

結果として《死の精霊》は捕縛され、貴族派が彼を取り込む事を阻止した革新派は逆に彼を引き入れることを画策した。

しかし、彼を解放した際に現れたオリヴァルトによってその作戦は頓挫させられたのであった。

 

「彼は我々を恨んでいるでしょうか?」

「だろうな、久しぶりに会ったってのに斬られそうになったぜ。まぁ自分を捕まえた張本人にあったらそうするだろうな」

問いかけたクレアにレクターが軽く返すと、クレアは右手で左の肘を掴むように腕を組んだ、後ろめたい事がある時に彼女がする癖だった。

 

「さて、話はこれくらいにしよう。クレア、今度の夏至祭に合わせて警備の話をするとしよう。なにやらきな臭い連中も動いているようだからな」

「はい、閣下・・・」

気を取り直すようなギリアスの言葉にクレア切り替え、敬礼をしながら答える。レクターはその様子を見た後にさっさと執務室を後にするのだった。

 

 

 

バルフレイム宮、離宮───

「アルフィンが気になる人かぁ・・・どんな人なんでしょうね兄上」

「ふふ、セドリックも早くそんな人を捕まえてね」

「うーん、我が妹ながら一体どんな青年を捕まえてくるのやら・・・」

3人の男女が和やかな雰囲気で話をしている、柔らかい雰囲気をもった少年はセドリック・ライゼ・アルノール、この国の皇太子でありその穏やかな雰囲気と保護欲のそそられる言動から多くの帝国民に愛されている。

そんな彼をからかう少女はアルフィン・ライゼ・アルノール、セドリックの双子の姉にして姉弟揃って『帝国の至宝』と比喩されている。

そして、そんな2人を微笑みながら見ている青年は2人の異母兄であるオリヴァルト・ライゼ・アルノール、自由気ままな性格でよく周囲を呆れさせるが、その本質は他人をよく見ている切れ者だ。

そんな3人は先程まで今度開催される《西ゼムリア通商会議》の話をしていたのだがアルフィンが来たことで雰囲気は一変、今月行われる夏至祭の舞踏会の話に変わっていた。

 

しかし、そんな中オリヴァルトは真剣な顔に戻り2人に切り出す。

「ただ、最近妙な連中が動いているらしい。夏至祭の方も出来る限りの警戒をする必要がありそうだ」

「そ、そうなんですか?」

オリヴァルトの言葉にセドリックが不安な顔をする、するとアルフィンが口を開いた。

「でもお兄様は何も考えていないわけじゃないんですよね?」

「あぁ、いくつか当てはある。ミュラーは動けるか分からないから1人、用心棒をしてくれる人材を探していてね」

「ミュラーさんですか、でもあの人の代わりになれそうな人っているんですか?」

オリヴァルトにセドリックが聞いてくる、オリヴァルトの言うミュラーとは彼の親友であり正規軍における若手のホープでもある実力者、そんな彼が動けないなら誰かがその代役を引き受ける必要がある。

不安そうな顔のセドリックにオリヴァルトは笑いかけると懐から1つの群青色で端に三日月のマークの付いた便箋を取り出す。

「1人心当たりがいる、口が悪くて殺気に敏感で疑い深くて、そして妙に料理上手な腕利きの剣士がね」

そしてオリヴァルトは便箋の封を開け中を確認する。

 

 

 

拝啓、オリビエ・レンハイム殿

 

皇族に手紙を出せるか分からないのでとりあえずあんたが名乗っているもう1つの名前で呼ばせて貰う。

 

また、季節の挨拶だとかそんな洒落た事は出来ないし興味も無いので省略する。

 

先日、ノルドでの特別実習で怪しげな連中と遭遇した。

捕まえた猟兵崩から聞いた話だと主犯の男は帝国解放戦線という名前を1度だけ名乗ったそうだ。

クラスメイトから聞いたが1度目のケルディックの実習でも事件を起こし裏から手を回していたらしい。

 

もしかしたら夏至祭で何かをする可能性がある、出来る限りの対策を取ることを勧める。

また、今度の自由行動日に帝都に行こうと思うのでその時に話せたら嬉しい。

 

 

ps.もし次の実習で遠くに行ったら何も手伝えないのでその時はどうしようもないが、もし帝都での実習であれば何か出来ることはある筈なので直接依頼すれば良い。

多分帝都に行く気がするから。

 

ミナズキ・バンシア

 

 

「相も変わらず、ぶっきらぼうなのに妙に律儀で思いやりがあるというか・・・それに君の予想は当たっているよミナズキ」

苦笑いを浮かべるオリヴァルトにセドリックとアルフィンは首を傾げるのであった。

 

 

 

 

ほぼ同時刻、士官学院、図書館───

 

「くしゅん!」

「おや、ミナズキ。風邪ですか?」

「さっきプールでの授業だったからねぇ、もしかして身体が冷えたのかもしれないね」

放課後になり図書館で勉強していたミナズキ、マローラ、レナの3人だったが不意にくしゃみをしたミナズキにマローラとレナが心配してくる。

しかし、そんな2人にミナズキは首を横に振った。

 

「いや、誰かが噂でもしてたのかもな。・・・手紙も多分届いてるだろうし」

「手紙、ですか?」

「君にそんな相手がいたとは・・・なんというか意外だよ。どんな人に書いたんだい?」

ミナズキの言い分にマローラもレナも少し興味を持ったのか勉強を中断して聞いてくる。

「なんだ、気になるのか?」

「い、いやその・・・女性なのかなって」

「ふむ、なんやかんや君は女性と話す機会が多い気がするからねぇ。ノルドでもリリちゃんやシーダちゃんと仲良くしてたじゃないか」

「なんですかそれ気になります」

頭にハテナを浮かべるミナズキにマローラとレナは少し食い気味にミナズキに顔を近付けた。

特にマローラは心なしか紅くなってあるように見えた。

そしてそんな2人に押され気味になりながらもミナズキは弁明を始めた。

「まずは女じゃない、手紙を出した相手は男だ」

「ふむ、どんな人なんだい?」

「そうだな、普段は飄々としているがよく人の本質を見ている奴だな。あとふざけるのが大好きで詩が好きで綺麗なお姉ちゃんが大好きでよく幼馴染にしばかれているらしい」

「その人、大丈夫なんですか?」

ミナズキの説明にマローラが露骨にジトっとした目になる、確かにここだけ聞けばろくでなしに見えても不思議ではない。

 

「まぁ大丈夫だろ、何よりもまず帝国をより良くしようとしてる人だからな。なんやかんや協力は惜しまないよ」

「今の説明だと全くそんな風には聞こえないんだが・・・」

ミナズキの言葉に今度はレナがジト目を向けてくる、そんなレナとマローラにミナズキは続ける。

「身分は言えない・・・本人が隠しているからな」

「おいちょっと待ちたまえミナズキ」

レナが急にミナズキの話を止めた、マローラも同様の気持ちなのか頷いている。

 

「言えない身分ってそれだけで相手が限られてくるんだが?」

「・・・・・そうだな」

「1つ聞こう、YESかNOで答えたまえ。私やユーシスよりも上かい?」

「・・・・・・・・」

レナの言葉にミナズキは答えられなかった。

その後、ミナズキが実は公爵よりも上の存在、つまり貴族ではなく王族とパイプを持っていることにレナとマローラは大いに慌てることとなる。

 

そんな2人をなだめつつミナズキはため息をつくのだった。

 

 




ご拝読ありがとうございました。
とりあえずもう1つアンケートを取ろうと思います。
次話もよろしくお願いいたします。

4章の自由行動や実習は決まっていますが5章はまだです。 ミナズキはレグラムに行くべきでしょうか?いいえの場合はミナズキの向かう実習場所はアルテマになります。

  • レグラムで光の剣匠と勝負して欲しい
  • アルテマに行かせる(レナの故郷)
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