英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
仕事の合間に投稿です。


75.自由行動日、ミナズキにとって長すぎる1日中編

 

10:00、音楽喫茶《エトワール》───

 

「それで、彼女が覗きの犯人かい?」

「あぁ、その通りだ」

「あ、あはは・・・」

オリビエがミナズキに聞きそれにミナズキは頷いて返すと少女は少し固く笑う。

ミナズキは少女を捕まえた後、早速休んでいたオリビエに合流し、立ちながら話すのもなんなのでエトワールまで戻った。

ミナズキ、オリビエ、少女の3人は現在テーブルを挟んで彼女に軽く尋問をしている。

 

「さて、お前は誰だ?なんで俺たちの話を盗み聞いていたんだ?」

「あ、あたしは別に盗み聞きなんて!「じゃあなんであの場所に姿を消してまでいたんだよ」えっと・・・それはその・・・」

ミナズキの問いに少女は反論しようとするがすぐに封殺されてしまい言い淀んでしまう、そのまま黙り込んでしまう少女に今度はオリビエが話しかける。

「ふむ、では質問を変えよう。君はなぜあの時我々の近くにいたのかな?もし盗み聞きが目的ならもう少し距離を取るのが普通だが・・・」

オリビエの問いに少女は少し顔を赤くして俯いた後意を決した様子でミナズキを指さした。

「は?俺?」

「えっと、キミが朝からお爺さんとなんか見た事ない料理を食べてたのを見て・・・どこのお店の物なのかなって・・・その・・・」

「まさかとは思うが、おせちが気になって俺を尾行したのか?」

「ごく一般的なカフェに入ったけど、もしかしたら裏メニューとかだったりするのかなって思って・・・そういう内緒の話は小さい声でするかなって思って・・・その・・・」

呆れた声で訊ねるミナズキに顔を真っ赤にしながら少女は肯定した。途端にミナズキとオリビエはなんとも言えない脱力感に襲われた、まさか何かしらの諜報員かと思った少女がただ単純に腹ペコなだけとは思わなかったのだ。

そしてそのままいたたまれない空気の中、遂に少女が限界を迎えた。

「もうやめて!あたしも悪かったけど流石にこの空気は恥ずかし過ぎるよ!」

顔を真っ赤にしながら叫んでしまった少女、しかし店主がギョッとしたのを見ると途端に店主に申し訳なさそうにペコペコと頭を下げる、そんな少女を見てミナズキもオリビエも疑うのをやめた。

 

「とりあえず、このままじゃ店に迷惑だから注文するか、疑ってしまった詫びにお前にも奢るよ・・・ていうかお前の名前聞いてなかったわ、誰?」

「・・・アイネ・・・アイネ・アルコバーノ、ご飯はスペシャルピザとアップルティー、それとデザートにバニラアイスください」

ミナズキに名前を聞かれた少女、アイネは膨れながらも割かししっかりと注文するのだった。

 

 

「これ美味しい!」

「いやー、とても元気な子じゃないか。ミナズキ」

「あぁ、初対面とは思えないくらいに馴染み始めたぞ」

火を輝かせながらピザを頬張るアイネを見て愉快そうに笑うオリビエ、一方ミナズキは先程よりも数倍元気なアイネに思わずため息を漏らした。

「というかピザってそんなに珍しいか?確かに家とかで作るには手間だと思うが・・・」

「あたしの家言っちゃうとド田舎でさ、こういうピザとかは初めて食べるんだ!」

ミナズキの質問に答えながらもぐもぐと満面の笑みでピザを食べ続けるアイネ、そんな彼女を見てミナズキがある質問をした。

 

「そういえばさっきお前消えたよな?あれは魔法かなにかなのか?」

「むぐっ!?」

途端に喉を詰まらせたのか顔が青くなるアイネ、始めは喉と胸の間を叩いていたがその後アップルティーに手を出す、しかしそれでも足りなかったのかミナズキのハーブティーを取りそのまま飲み干した。

「ちょっ、それ俺の・・・!」

「ぷはぁ・・・死ぬかと思った」

カップを置き一息つくアイネ、その後ミナズキの質問にどう答えようかと自身のサイドテールを指でいじりだした。

「えっと、それ答えなきゃダメかな?」

「その気が無かったとはいえ、人の内緒話を盗み聞きした人間に飯も奢ったが?」

「うぐっ!?」

何とか躱そうとするアイネだったがミナズキの思わぬ打ち返しに呻く、しかし覚悟は決めたのかゆっくりと切り出した。

 

「そうだよ、キミの予想の通りあたしが使ったのは魔法。それもみんなの知ってるアーツとは違う、例えるならおとぎ話に出てくる魔女とかが使うような魔法だね」

 

アイネの言い分にミナズキもなんとなくだが理解した、ミナズキたちが普段使っているアーツは戦術オーブメントの類にクォーツをはめることで発動が出来るようになる代物、言ってしまえば科学の上で成り立っている魔法だ。一方でアイネの使っている魔法はその類ではなく完全にオカルトの類で例えるなら魔法の杖を使ってロウソクに火をつける、遠くにある物を引き寄せると言った使い方が出来る。

違い自体も分かりやすく───

 

アーツは

・クォーツと戦術オーブメントがあればはめたクォーツに込められたアーツを使える

 

・基本誰でも使うことが出来る

 

・効果の高いアーツほど戦術オーブメントの駆動完了に時間がかかる

 

 

アイネの魔法は

・基本的にどんな魔法でも呪文を詠唱して発動する

 

・使うには知識もセンスも努力も必要

 

・効果の高い魔法を使えるかは本人の才能次第だがアーツと違い駆動は必要ない(詠唱するだけ)

 

小さいものならこれだけの違いがある、だが1つだけ明らかに大きな違いがある、それは認知度だ。

 

現代に生きている帝国人に「魔法」と言っても基本的に彼らが頭の中に浮かべるのはアーツであり、もしアイネの魔法の話をしたところで『あぁ、絵本で読んだことあるよ』くらいの回答しか出ないだろう。

それだけ認知度に大きな差がある。

 

ミナズキにとっては酷く馴染みのない話だったがオリビエには少し違ったようでアイネの話に食い付いた。

「つまり君は魔女、ということだね?」

「うん、そういうこと」

オリビエの問いにアイネは軽く返した。

一方でミナズキは軽くショックを受けていた、子供の頃教えて貰った魔女とあまりにも違いすぎる。

ミナズキにとって魔女と言われれば、大きなとんがり帽子、黒っぽいローブ、基本的に老婆の見た目をイメージしていた。だが目の前の少女はどうだろうか、帽子は被っておらず、オレンジ色の肩より少し下までの長さの髪をサイドテールに結んでおり、服装だってローブじゃなくて白を基調とした胸元が少し開いた物でなおかつへそ出し、ミニスカを履いているが動き回っても大丈夫なようにスパッツも履いている。

杖は確かに持っているがエマやエリオットも使っている導力杖に近い、もっと小さい木の枝みたいな物とか指揮棒のような物だと思っていた。

 

そんな風にミナズキがショックのあまり呆然としているとアイネから声がかかる。

「おーい、キミ大丈夫?」

「ふむ、なんだかショックを受けているみたいだがどうしたんだろうね」

アイネとオリビエが心配したようにミナズキを見ている、しばらくするとミナズキも復活したようでブツブツと呟き始めた。

「そういえば委員長もちょっと魔女っぽいかも・・・導力杖持ってる姿とかそれっぽいし・・・」

考えてみればトリスタの公園とかで寝てる綺麗な猫とも仲良さそうにしてたっけ、なんてミナズキがボソボソと言っていると目の前で手のひらがブンブンと振られる。

思わずその手を目で追うとそれはアイネの手だった。

 

「あ、良かった。戻ってきたね」

「さて、時間も無くなってきたからさっきの話の続きをしよう。アイネ君にはこの話は黙っていてもらう約束も取り付けたからね」

「いきなり皇族の話が出て来てびっくりしたけどね!」

アイネが安心したように笑い、オリビエも微笑むと話を進める。どうやらミナズキが呆然としている間に2人で話を進めてしまったようだった。

「さてミナズキ、君をクリスタルガーデンに潜入させる理由は2つと言っていたね。1つ目はアルフィンや帝都知事を警護するため、2つ目は君が皇族と繋がりがあるとVIPに周知してもらうためだよ」

「周知?なぜ?」

オリビエの言葉に首を傾げるミナズキ、そんな彼にオリビエは説明をしてくれた。

ミナズキ、もとい《死の精霊》の話は過去に処刑された時点で終わっている。

しかし、彼の替え玉の用意や迅速な処刑には方々に手回しがされていた関係上、処刑されたのは替え玉と知っている者だって当然いる。

その中には当事者たちから話を聞いている者もいるしその中には革新派、貴族派もいてミナズキに接触を図る人物だっている。

今はまだ士官学院に在籍しているから学院側が守ることが出来るが卒業したらミナズキはそれらの庇護を受けられなくなる。

彼らの接触や下手な介入を防ぐには公的な場で皇族との繋がりがある事を示すのが1番手っ取り早いとの事だった。

 

「─── とまぁ、これなら君を士官学院卒業後も政治関係のゴタゴタに巻き込まずに済みそうだ」

「・・・・・たまに思うんだけどさ、オリビエは俺に対して優しすぎないか?」

「・・・まぁ良いじゃないか」

ミナズキは普段から感じていた違和感をぶつける、捕縛されてからの解放後の対応と言い、士官学院に入学させた事と言い、オマケに今思い切りタメ口で話しかけても何も言わない、普通に考えて一学生に対してやるにはやり過ぎと言える歓待ぶりだ。

しかしそんなミナズキの疑問をオリビエははぐらかして教えてはくれない。

そんな2人のことを、パスタを食べ終えてバニラアイスに手を出していたアイネが口を開いた。

「よくわかんないけど、その依頼あたしも手伝おうか?」

「は?」

「ほう?」

アイネの意外な提案にミナズキもオリビエも目を丸くした、そんな2人にアイネは笑顔で続ける。

「あたしならいざと言う時魔法も使えるし、不可視化の魔法で姿も消せるし、何よりちょっとした裏技もあるんだー」

「裏技?」

裏技という言葉を使うアイネ、ミナズキはその内容を聞こうとするがここでオリビエが唐突に席を立つ。

「すまない、もう時間が来てしまった。ミナズキ、アイネ君に協力してもらうかどうかは君が決めるといい、僕は当日その場にいないからからね、ハーブティーご馳走様」

「あ、ちょオリビエ!?」

そうしてオリビエはそのまま店を出ていってしまった、残された2人はその場で固まるが少しするとまた向き直り話を再開する。

 

「それで、裏技っていうのは?」

「うん!それはね、まずはコレ」

「それは・・・石か?」

嬉しそうに頷きながらアイネはポケットから小さな石を取り出す。確かに綺麗な青色で見た目は良いがミナズキにとってはただの石にしか見えない。

ミナズキが首を傾げているとアイネはその石を軽く振った、するとその石から文字が浮かび上がる。

「ん?今石に文字が浮かび上がったような・・・」

「それであってるよ。これは《刻印石》(ルーン石)って言ってね、説明するとかなり長くなっちゃうから言わないけどこれを持って念じながら振れば同じ刻印石を持ってる人に念じたことを文字にして送信出来るって感じ、通信機と違って色んな人に連絡をとれる訳じゃないけどその分音は出ないし必ず届くよ」

不思議な石を凝視したミナズキにアイネは得意げに教えてくる、そしてその石をミナズキに渡した。

「これならいざと言う時にすぐに連絡をとれるよね、それで次に・・・の前に1回お店から出ないと難しいかも」

いつの間にかアイスも食べ終わっていたアイネはおもむろに席を立つ、ミナズキも一緒に席を立ち会計を済ませるとそのまま2人で店から出て行った。

 

 

 

11:00オスト地区 ───

 

「結局ここしか空いてなかったなぁ・・・まぁいっか!ミナズキ、早速見せてあげるね!」

「こんな人気の無いところに来て何をするんだ?」

しばらく歩いていたアイネが急に立ちどまり振り返る、ミナズキも一緒に止まるがなんとも言えない状態になっていた。

2人がやってきたのはオスト地区の居酒屋《ギャムジー》の裏路地、ここにあるのは地下に行くための普段から施錠されている扉くらいしか無く、ミナズキは辺りを見回しながらアイネに訊ねる。

「見せる、と言っていたが何を見せるんだ?刻印石みたいな小物では無いようだが」

「うん!折角奢った貰ったしあたしも少しはキミに信用して貰いたいからね!」

そう言ってアイネは右手を空中にかざす、すると突然そこから導力杖のような杖が出てくる。そして、そのまま杖を空にかざすと足元に巨大な魔法陣が浮かんだ。

 

「これは・・・魔法陣か?」

「うん!これは転移の魔法だよ。今から見せる、というよりも一緒に行くのはあたしが魔女であることの証明と今回の事に役に立つってことを見てもらうため!」

そして杖を地面にカンカンと2回突くと眩い光が放たれそのまま2人はその場から消えてしまった。

 

 

 

「ミナズキ、もう目を開けて大丈夫だよ」

「うん・・・?」

光が眩しすぎて目を閉じていたミナズキにアイネが声をかける、恐る恐る目を開くとアイネがミナズキを覗き込むように見ていた。そして視線を上げるとそこは先程居たオスト地区ではなかった。

 

家がレンガ造りなのは一緒だがオスト地区、というより帝都では基本的に赤茶けたレンガを建材として使っているのに対しこの場のレンガは全体的に青白く見えた。

「ここ・・・は?」

「ようこそ、あたしの故郷、隠された町《アル・カフラ》へ」

動揺し息が詰まるミナズキにアイネは微笑んで返す。

 

 

この出会いが後のミナズキの運命すらも変えてしまいかねないものとなる事を彼はまだ知らない。

 

 

 




ご拝読ありがとうございました。
アンケートはまだ投票可能ですがアルテマ行きを希望してくれる方も結構居たのでいずれどこかで書きたいなと思っております。
次話もよろしくお願いいたします。

本編とは直接関係は無いかもですが質問です。ミナズキにはユン以外にも色んな意味での師匠枠がいます、現在判明しているのは2人ですがどちらが気になりますか?

  • 料理を教えた暗器、拳使い
  • 片手剣である銀の牙を託した人物
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