シンプルに久しぶりに体調を大幅に崩してました。
7/24(土)朝、第3学生寮、食堂───
「まさか本当に作らないとは・・・」
食堂にてリィンが呟く、普段特別実習はミナズキがお弁当を作ってくれているものだがリィンの言葉の通りお弁当箱はどこにも無かった。
「冗談だと思いたかった・・・」
「サラ教官、恨みますよ・・・!」
「あ、あんたたちはまだおせち食べられたんだから良いじゃない!私はそれにすらありつけなかったのよ!?」
みんなからのジト目を受けたサラが声を上げる。
ミナズキが怒ってからというものおせち以外ではミナズキは少なくともⅦ組には1度も料理をしていなかった。
クラス内でもどことなく物足りなさが出始め、なんとかミナズキに料理してもらおうと───
ミナズキにレシピを聞いてみる者(匿名、某八葉一刀流の弟弟子)
ミナズキに対してよそよそしくなる者(匿名、某公爵家の息子)
必要な物が無いかと等価交換で料理をしてもらおうとするもの(匿名、某帝都知事の息子)
どうしたものかと慌てる者(匿名、某帝国軍人の音楽大好きな息子)
取り敢えず落ち着く者(匿名、某ノルドからの留学生)
何か不便に感じてることは無いか聞いてみる、隙あらばレナやマローラとの関係の具合も聞いてくる者(匿名、某有名導力機器メーカーの令嬢)
そもそもミナズキと距離があって上手く切り出せない者(匿名、某アルゼイド流の師範の娘)
ストレートにお願いしてみる者(匿名、某元猟兵)
先日の事があって気まずい者(匿名、某クラス委員長)
ミナズキを怒らせた元凶(犯人、サラ)
こんな感じで約1ヶ月間なんとかミナズキに懇願してきたがそれでも願いが叶うことは無かった。
ちなみにレナはこれといったアクションは取らなかった、いつも通り勉強や作法を教え図書館でマローラと3人で資料探し等を行うだけだった。
「ふむ・・・まさか・・・おや?」
レナは明らかに気落ちしている面々を一瞥すると、台所を見てみる。するといつの間に用意していたのか人数分の小さな竹皮の包みが入っていた。
「みんな、見たまえ・・・」
レナがみんなを台所に呼び寄せ、包みを見つける。
朝から寮内に小さめの歓声が上がった。
帝都行きの鉄道内───
「・・・・・すぅ」
「早くも寝てしまったねぇ、ミナズキは」
「まさか朝早く起きておにぎりを用意してくれていたとは・・・」
車内に入ってすぐに寝てしまったミナズキを横にレナとガイウスが話している、他の面々は竹皮の包みに入っていたおにぎりとその他のおかずを味わっていた。
包みの中には2種のおにぎり(焼き鮭入り、鶏五目)と唐揚げ、たくあん、唐揚げというラインナップ、久しぶりに食べるミナズキの料理にみんな一心不乱だった。
「さて、我々はあの事は黙っておくとしよう」
「そう、だな・・・もしバレたら危険だ」
そんな彼らを見てレナとガイウスは冷や汗を流す、2人の言う秘密とは───
数日前、放課後の図書館───
「あれは・・・ミナズキ?」
風景画を描くための資料を集めていたガイウス、しかし途中でいくつかの包みを持って司書室に入っていくミナズキを見かけ、その後にレナもやって来て司書室に入っていった。
その様子に少し気になったガイウスは読んでいた本を元あった棚に戻すと司書室の前まで行き中の様子を窺った。
「ミナズキ、今日は弾道計算の応用の部分をやっていきましょう。数学の教科書を開いてください」
「あ、あぁ・・・数学か・・・」
「ふふふ、ミナズキは数学は特に苦手そうだからねぇ。まぁマローラも私も着いているんだ、なんとか分かるようにしてみせるさ」
マローラとレナに数学のこの間習ったばかりの弾道計算の応用をミナズキが復習がてら教えて貰っている最中だった。
しばらくはガイウスも普通に覗いているだけだったがある時、ミナズキが入室前に持っていた包みを取り出す。
「これ、今回のお礼だ。最中っていうお菓子だ」
「モナカ、ですか?どうやら東方のお菓子というのは分かりますが・・・」
「ふむ?マカロンとは違うみたいだが・・・」
ミナズキの渡したお菓子にマローラもレナも馴染みが無いのか首を傾げた。ミナズキの持ってきたお菓子である最中は最中種と呼ばれている外側のパリッとした皮で内側に餡子を挟んだお菓子、今回は最もシンプルなこし餡だった。
そんな初めて食べる物をレナは特に気にすること無く口に運び、マローラもそれに倣うようにゆっくりと口に運んだ。
「ふむ、これはこれは・・・」
「まったりとした甘さで美味しいですね・・・」
サクサクと音を立てながら食べるレナ、マローラも顔を綻ばせるが少し残念そうな顔をした。
「もしかしたらこれ、私の持ってきた紅茶には合わないかもしれないですね・・・」
「今日はお茶も持ってきた、少しぬるく淹れるからこの季節でもちょうどよく飲めるはずだ」
マローラにそう言ってミナズキが席をたちドアを開けるとそこには隠れるのを忘れていたガイウスがいた。
「あ、ガイウス・・・」
「すまない、覗き見る気は無かったんだ・・・」
目の前のミナズキに咄嗟に謝るガイウス、気まずい空気が流れたが助け舟を出したのはマローラだった。
「あ、ガイウス君ですね。新刊で新しい風景の写真集を入荷しましたよ」
「そうか、助かる」
そのまま時間が止まったかのように場も沈黙に包まれたがマローラはそんな様子に苦言を呈した。
「ミナズキ、何があったかは知りませんが少なくとも貴方を怒らせたのはサラ教官であり彼では無いのでしょう?普通に接するべきです」
「それは、そうだな・・・わかった、ガイウスはとりあえず部屋に入ってくれ」
そうして部屋に招かれたガイウスは最中と抹茶、最後にミナズキが用意していたカステラを持ち帰りとして貰うことになるのだが、この事が他のⅦ組にバレれば何が起きるかわからなったレナとガイウスはひっそりと各々の自室にカステラを持って帰り1人で静かに食べるのだった。
そして現在───
「また食べたいものだ、カステラ」
「問題はミナズキがサラ教官を許しているかどうかだな」
そう言って寝ているミナズキを見るレナとガイウス、今回の竹皮の包みはサラやシャロン含めた人数分あったが何故かサラだけは名指しで妙に大きい包みになっていた。
「まぁ、今は気にするだけ無駄かね・・・」
「だな・・・」
そうして2人はミナズキの用意してくれたおにぎりをゆっくりと食べ始める、そんな中ミナズキは久しぶりに昔の夢を見ていた。
ちょっと昔、帝国の何処か───
「うん、できた。ほら、キミも食べた方が良いですよ」
「・・・・・」
パンツスーツ姿の黒髪の女性が椀に盛ったスープを少年に手渡す。しかし少年は固まったままそのスープを見つめている。
「キミが討伐しようとしている大規模な賊の一味、遊撃士協会でも大規模な検挙をしようとしています。本来ならキミを止めるのが私の役目なのでしょう。ですが止めません、今回の賊の件は賊が大規模過ぎるが故に協会は人手を集めている最中、そうしている間にも賊は民間人に被害を与えますから」
「・・・・・」
淡々と話し続ける女性の話を少年は椀を見つめながら静かに聞き続けた。
少年が今夜行おうとしているのは大規模な賊の殲滅、そこに目をつけたのが目の前の女性、彼女は遊撃士でありながら少年の行動を止めることはせずただひたすらに少年を観察し続けていた。
「いつまで椀を見つめているのですか?もしかして食欲がありませんか?」
「・・・いや・・・何故ここまで親切にされているのかが分からない。何故わざわざ火をたいて料理をするのかも・・・」
質問に返答する少年の言葉に彼女は少し驚きながら口を開く。
「まさかとは思いますが口に入ればなんでも同じ、なんて思ってませんよね?いけませんよ、健康で・・・元気でいたいのならば温かくて美味しいものを摂るべきだ」
「そう、なのか?」
「そうですよ」
ほら食べて、と彼女に促され少年は静かにスープを口に運ぶ。薄味だ、複数種のハーブと干し肉を塩で味を整えただけの簡単な物だ。しかしそれでもまだ料理を知らない少年からすれば何にも代えがたいご馳走に感じた。
「ライ麦パンもあります。スープに浸して食べると良いでしょう」
「・・・うん」
もぐもぐと一心不乱に食べる少年の隣に座りパンを渡すと彼女はそのまま料理を食べ続ける少年の頭を撫でる。
「なぜ、撫でる?」
「さて、何故でしょう?」
撫でられていることを不思議に感じながらも不快には感じなかった少年はそのまま食事を続け、彼女はそんな様子を微笑みながら見つめた。
やがてお腹がいっぱいになると少年はうつらうつらと眠そうに頭を揺らし始める、彼女はそんな少年を軽く引き寄せて身体を預けさせる。
「今の料理が気に入ったなら今度作り方を教えてあげましょう。器具一式もあげますし、私の技も少し教えてあげますから・・・強く、大きくなりなさい少年」
「・・・・ん」
ゆっくりと眠気に負けて夢の中に沈んでいく少年を彼女は静かに撫で見守り続けた。
「ミナズキ、もう帝都に着くよ」
「・・・・ん・・・早いな」
鉄道の中、レナに揺らされミナズキは目を覚ます。
周りを見れば他の面々もさっさと降りる準備を進めていた。
「ほら、はーやーくー」
「わかった、行くから引っ張るな」
レナに引っ張られる形でミナズキはホームに降りそのまま歩き出した。
「今のは─── 」
ふと、1人の女性が遠巻きにミナズキとすれ違い少し歩いてから振り向いた。
しかし振り向いた先には大勢の人で出来たごった返すような人混み、一瞬だけ見えたような気がした灰色と白の髪に少量の赤髪が混じった特徴的な髪型、しばらく彼女は振り返った先を見つめるがやがて諦めたように元の方向へ歩き出した。
「そんなわけ無いか・・・あの子はもういないのだから・・・さて、仕事仕事。レグラム行きの乗り換えはこちらだったでしょうか?」
パンツスーツを来た麗人は小さく呟きながらその場を後にした。
ちなみにだが───
『マーオ・・・』
ミナズキたちを後方から見る視線が1つ、見た目は猫なのだが毛色がオレンジというかなり珍しめな色をした猫だった。
『(ふんふん♪ミナズキやそのお友達とお仕事お仕事♪楽しみー!)』
その猫ははしゃいでいるのか跳ねるように歩いている。
しかし───
「見て、ママ!猫さんいるー!」
「あら、ホントね。珍しいけど綺麗な色だわ」
『(あ、あれ?)』
小さな子供とその親が寄ってきて猫を少しだけ撫でる。
「この子野良猫かなー?おうちで飼ってもいい?」
「うーん、見た感じ首輪も無いし・・・大切に育てるなら良いわよ?」
『(ごめんそれは無理!)』
子供と親の話を聞いた猫は脱兎の如く、否、脱猫の如く走り出す。
ある程度走り、人気の無い所まで行くと猫は物陰に身を隠し、そして───
「うーん、折角ミナズキとお友達がどんな人か見ようとしたのになー」
オレンジ色の髪の少女、アイネが姿を現す。
「(まさか猫の姿に化けたらあんな風になるなんて、危うく飼われちゃうところだったな・・・)」
うーん、と唸りながらアイネは首を捻って考える。Ⅶ組を観察したいと思ったからミナズキたちの乗る鉄道を聞いてその到着時間を計算して、怪しまれないように猫に化けたのだがあれでは意味が無い。
「なんとか途中からミナズキたちと行動出来たら良いのになー・・・取り敢えず次はこれかな?」
そう呟くとアイネは今度は小鳥に化けて飛ぶ、少し見失ってしまったがまだミナズキたちは近くにいる。そう思った彼女は帝都を飛びながらミナズキを探すのだった。
ご拝読ありがとうございました。
短くなってしまいましたが次話もよろしくお願いいたします。
本編とは直接関係は無いかもですが質問です。ミナズキにはユン以外にも色んな意味での師匠枠がいます、現在判明しているのは2人ですがどちらが気になりますか?
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料理を教えた暗器、拳使い
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片手剣である銀の牙を託した人物