英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
遅くなり申し訳ございません。


81.たべもののちから

 

「あっはっは!まさかあんなに追われるとはな!・・・いや割と本当にすまなかったな」

「どの口が言うか・・・」

ラポールの謝罪にミナズキは苦言を放つ、現在一行は1度合流した後紙に書かれた住所である建物の中に入っていた。そこは元は遊撃士のギルド拠点であり、今は誰も居ない空家となっている。ただ、家具などはそのままのようで最近掃除をしたのか埃をかぶっている様子も無い。

 

「ここは元は遊撃士のギルド拠点でな、A班の方も東側のギルド拠点に寝泊まりするだろうさ・・・さて、お前さんたち。俺から出された今回の依頼、どうだった?」

少しだけ姿勢を正してラポールはB班に話を切り出し、その言葉にガイウスが答える。

「貴方が街のみんなに慕われていることはわかった」

「違う、そこじゃない」

ガイウスの回答を速攻で否定しラポールは話を切り出す。

「この帝都の、帝国の医療だよ。最近では少しずつ医療費やらが安くなってきているがそれでも平民には手が出しづらい程度には高い・・・特に宿酒場辺りでその片鱗は見えたんじゃないか?」

そう言われB班は宿酒場で追いかけて来た人々の事を思い出す。動かなかった腕の回復手術、難病に対する薬の調薬、視力の回復手術、どれも現在の帝国では難易度の高いものだ。それ相応の値段でもあるだろう。

 

「医療も進み貴族のような特権階級以外でも真っ当な治療を受けられるようにはなった。だがそれでも難易度の高いものはそれ相応の値段もあり、なおかつ出来る医者も限られる・・・今の帝国は軍事力こそ俺の現役時代の比じゃないが医療面はそこまで進歩していない、と俺は思う。確かに色んな所に病院はできた、値段は高いとは言え万人が治療を受けられるようにもなった。だがそれでもまだ足りない、場所だけでは無く治療ができる人材も薬を作る手も材料も何もかもだ。・・・それにお前たちに向かわせた店はまだマシな方だ」

そう言ってラポールはカバンから水を取りだし飲み始める、そんな姿を見てエマが口を開いた。

 

「あの、じゃあ貴方が始めに向かったあの民家は一体・・・」

エマの質問を手で制しつつラポールは答える。

「あれは民家であって民家じゃない、あの辺りのアパルトメントは俺が所有している建物だ。中には帝都やそれ以外から来た重病患者や金が無くて治療を受けられなかった奴を集めてる、いくら俺でも帝都内を回って治療をするには時間が無くてな、ひとつの場所にまとめて1日に5回から8回くらい手術やらをしている」

何てことないかのように答えるラポールにみんな言葉を失った。一体いつからそんなことをしていたのか、何故そこまでのことを続けていられるのかが分からなかった。

「何故そこまでのことを?」

「決まっている、医者だからだ。軍医として多くの戦場に駆り出された、救えた命もあるが救えなかった命の方が圧倒的に多い。そして昔はどうにも出来なかった事が今は出来る、なら今度は救っておきたい。俺が死ぬまでに出来る限り多くの命をな・・・」

それに、とラポールはカバンから紙の束を取り出す。そこには病名やそれに対する処置方法がびっしりと書かれていた。

「こうしてレポートにして帝国内外問わず難病の治療例を世界に広めている・・・初めて見る病気にはどんな奴も及び腰になるが前例、それも完治した例があるならまだ対処出来る、結果多くの命が救えるってことだ」

そうしてラポールは笑うと改めてB班に向き合い続ける。

 

「『世の礎たれ』・・・お前たちがトールズに入学した際にヴァン君に言われたドライケルス大帝も使っていた言葉だ、俺は残念ながらトールズに通うことは出来なかったがそれでもこうして自分自身のやり方を見つけている。お前たちがトールズでの生活でどんな答えを出すのか、何が自分にとっての世の礎になると思うのか、俺はそれを楽しみにしている」

そうしてラポールはニコリと笑うとカバンからあるものを取り出し近くにいたユーシスに押し付ける、それは小さな小包で中にはゼラムカプセルが人数分入っていた。

「ジジイの長話、それに今回の依頼を受けてくれた礼だ。危ないときに使うといいだろう」

「良いのか?こんな物を・・・」

受け取ったユーシスが困惑した顔で訊ねるがラポールは笑って答える。

「俺よりもお前らが使うべきだ、それに・・・お前らは若い、いざと言う時に平気で無茶をしそうだ。無理や無茶は若者の特権だが無謀だけは止めとけよ」

じゃあな、とそう言ってラポールは建物を出ていった。そして彼が居なくなってから少ししてエマが切り出した。

「なんというか・・・とんでもなく凄い人でしたね」

「初めは変な老人かと思っていたが、本当に偉大な人物だったようだ・・・」

エマの言葉にユーシスも頷きながら答える。

 

「・・・俺たちも行こうか、まだやるべき依頼もあるし・・・」

「そうだねぇ、心做しかやる気が出てきたよ」

ミナズキとレナもゆっくりと立ち上がり外に向かって歩く、他の面々も同じように席から立つと扉を開け外に出た。

 

「では次は・・・サンクト地区に行こうか」

「確か、魔獣の肉が必要という依頼だったな。手持ちはあるのか?」

地図を見ながら提案するミナズキにガイウスが訊ねてくる、それに対してミナズキは軽く首を横に振って返す。

「いや、無いな。それにいくつ必要なのかも聞いておきたい」

そうして次にこなす依頼を決めてB班はサンクト地区に向かって行く。

「ふにゃあー」

そんな様子をオレンジ色の猫がまた跳ねるように歩きながら見守っていた。

 

 

サンクト地区───

 

「相変わらず立派な聖堂だな・・・」

「いやはや、でっかいねぇ」

「随分と厳かだな・・・」

1度見た事のあるミナズキ、大聖堂を見るのは初めてのレナとガイウスが声をこぼす。B班が来たサンクト地区は大聖堂や聖アストライア女学院などがある他の地区と比べても言ってしまえばお堅い雰囲気のある地区である。ここに依頼人がいるそうなのだが依頼文を読んでいたエマがあることに気付いた。

「あの、今読み返してみると依頼した方がどこで待っているのかが分からないんですが・・・」

そう言ってエマが依頼文をみんなに見せる、それをみんなで読み、読み終わる頃には頭を抱えた。確かにサンクト地区で待つとはあったがそれ以外の事が書いていない。

これでは文字通り地区全体を探す必要が出てくる。他の依頼では場所がある程度指定されている分余計にこの依頼の大雑把なイメージが抜けない。

どうしたものかとみんなで悩んでいるとアリサの目にある物が写った。

「ねぇ、みんな・・・あれは何かしら?」

そう言ってアリサの指差す方向を見ると1つの路地からお腹をさすり満足気な表情の観光客やアストライア女学院の制服を着た女子生徒が出てきた。

 

彼女たちが出てきた路地の方に近付いてみると流れてきたのはなんとも言えない芳ばしい香り。

「これは・・・調査する必要がありそうだ(ジュルリ」

「あぁ、何かあっては困るからねぇ(ジュルリ」

「えぇ、行くしかないわよね!(ジュルリ」

「3人とも・・・口の端からよだれが・・・」

エマに指摘されたミナズキ、レナ、アリサの3人慌てて口の端を拭く。しかしその香りには抗い難いものがあるのか視線は一直線に香りが漂ってくる路地を見つめていた。

「これは行ってみた方が良いんじゃないか?(グゥー」

「ふむ、まぁ良いだろう(グゥー」

「ユーシスさんとガイウスさんまで・・・(グゥー)・・・あっ・・・」

ガイウスとユーシス、そしてそれを見て苦笑いしていたエマもお腹を鳴らす。そしてその誘惑に耐えられなかったB班は吸い込まれるように路地に向かって行った。

 

 

 

サンクト地区、路地───

 

「ごちそうさまでしたー」

「・・・・・(コクリ」

「またのお越しをー!」

料理を食べ終えた客が席を立ち歩いていくのを調理台の前に立つ女性と恐らく給仕係の少女が見送る。

そんな2人の前にB班が現れた。

「串焼きをいただきたい!」

「出来れば多めに!」

「いや、まずは依頼だろ・・・」

出会って早々に注文をしたレナとアリサをミナズキが止める。依頼、という言葉を聞き給仕の少女が声を上げた。

「ややっ!ということは皆さんがトールズのⅦ組の方たちですか!師匠!本当に来てくれましたよ!」

「・・・・(コクリ」

嬉しそうに反応する少女とは対照的に師匠と呼ばれた女性は口はへの字口、目は少し太めの横線が2本並ぶような表情を崩さずに頷くとB班を見てくる。にしてもこの師匠、あまりにも小さいのである。どれくらい小さいかと言うと生徒会長であるトワよりも頭半個分小さい、調理台の後ろをよく見ると乗る為の台があるくらいだ。

 

そしてその師匠、もとい店主はB班にその小さな体躯をめいっぱい広げるように腕を広げて何かを伝えようとする。頭に疑問符を浮かべるB班に少女が慌てて説明した。

「すみません、師匠は極端に無口なんです!えっと、それで師匠は『串焼きのお肉がキレそうだから多めに持ってきて欲しい、出来れば最近牛型の魔獣が出るからそいつらの肉が好ましい』そうです」

「なんで今ので分かるんだ・・・?」

店主の気持ちを代弁してくる少女に思わずミナズキが声を漏らすが誰も答えらしい答えは出してくれなかった。

 

「あの、串焼きを・・・」

「・・・・(ブンブン」

「『さっきお客さんに出したので最後の品だった』との事です。ではよろしくお願いします!」

「そんな・・・」

「嘘だろう・・・?」

店主の言葉?にアリサとレナが絶望した顔で俯く。しかし暫くすると奮起した様子で街道への道を歩き出した。

「みんな!行くわよ!」

「そうとも!これも依頼、なんだろう?」

「やけに元気になったな・・・」

「まぁ、気持ちが向くのは良い事だろう」

妙に張り切る2人を呆れた様子のミナズキとユーシス、そして穏やかに笑うガイウスが追いかけた。

 

 

西オスティア街道───

 

「なんか何時もより鬼気迫るものが無いか?あの2人」

「あぁ、明らかに何時もより積極的に戦ってるな」

ミナズキとガイウスが呆れ半分感心半分で見ている先には大暴れするレナとアリサの姿があった。2人とも普段からは想像がつかないほどの動きでありとてもお腹を空かせているようには見えない。

「なんというか・・・食って争いの火種にもなるけど争いを止めることも出来るって不意に浮かんだ・・・」

「まぁあの暴れっぷりなら、ここら一帯は暫く安全だな」

ミナズキとユーシスが呆れる中、絶賛大暴れ中の2人は魔獣たちを屠り続けていた。

「はっはー!牛型の魔獣はどこだぁ!」

「もっと纏めてかかって来なさいよー!」

目の前で串焼きがキレたことがよっぽどショックだったのか2人の暴れぶりは戦闘音を聞き付けてやってきた他の魔獣すらも殲滅する程だった。

この場で唯一ノリに着いていけてないエマは空を見上げる。あぁ夏ですね、と頭の中で若干現実逃避気味になったエマは妙に絵になる構図だった。

 

 

 




ご拝読ありがとうございました。
また次のお話もよろしくお願いいたします。

実は最近零の軌跡:改を購入しプレイしています。そこでいつか零の軌跡を原作にした二次創作を書こうと思っています(時系列は原作同様、世界線も一緒です)見てみたいですかね?

  • 書いてくれるなら見たい
  • 今はこちらに集中すべきでは?
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