かなりお待たせしました。
最近妙にモチベーションが上がらず、トイレに行けば書けるという謎の状態です。
サンクト地区、大聖堂───
「本当にありがとうございました、もうここまでで良いわ」
女性がミナズキたちに頭を下げ大聖堂に入って行く。
あの後彼女に出来る限りご飯を食べてもらった後、ようやく落ち着いた彼女は複雑な表情で言った。
「何十年も前にあの呪いをかけられたわ、あの姿でいるうちに私の身内は全員この世を去ってしまったの。あの家ももう新しい人が住んでいるし、私には行くところが無いのよ・・・」
落ち込むように俯いた彼女、そこでミナズキがある場所を提案した。
「大聖堂はどうだ?あそこなら多分変わっていないだろうし何よりシスターとしてなら働いて生きられるんじゃないか?」
その提案に女性は驚いた、なぜ今まで思いつかなかったのだろう、と希望を持った表情で立ち上がった。
「それだわ、もしかしたら私のように困っている人がいるかもしれない。あなたたちに助けられたのだから今度は私が助けられるようになる番ね」
そうして彼女はついさっきまで衰弱していたとは思えないほど元気になりそのままサンクト地区へ向かって行った。流石にB班も心配になったので着いて行ったが杞憂に終わった。
「では俺たちはこれで・・・」
「えぇ、本当にありがとう」
ユーシスの言葉に女性が再び頭を下げる、そうしてB班はサンクト地区を後にする。
ライカ地区、帝都博物館───
「あぁ、トールズの人たち・・・来てくれましたか・・・受けてくれるんですよね?依頼、受けてくれるんですよね!?」
B班が博物館に着くと何故か顔を青くして怯えた様子の学芸員の姿があった。
「え、えっと・・・」
「お願いします、受けて下さい!そして私を安心させてください!」
なにか返そうとするアリサに対して学芸員は被せるように懇願してくる、その目の下には濃いクマができており明らかに寝不足なことが窺えた。と言うよりも顔は明らかにやつれているし目は充血しているしで尋常ではない事だけは嫌でも理解できた。
学芸員から1度離れたB班は取り敢えず小声で話し始める。
「と、とりあえず話だけでも聞いてみるか・・・」
「にしてもなんと言えばいいのか分からない表情なんだが・・・」
ユーシスとレナが引き気味で呟くとみんな目だけ動かし学芸員を見る。学芸員は虚空を見つめており時折アハハと乾いた笑い声を漏らしていた。
「寝不足、だよなあれ・・・」
「とりあえず寝不足の理由も聞いた方がいいな」
「ニャー」
ミナズキの言葉にガイウスも猫も頷く。その後全員で頷き合うと話を聞くため学芸員の方に歩み寄った。
「あー・・・学芸員さん?」
「はぁい!なんでしょうか!?」
「(やりずらっ)・・・あ、はい。そういうテンションなのね・・・」
代表して声をかけたアリサに学芸員はテンション高めで応える。まるで遊園地のピエロのように大袈裟になりつつある反応にアリサが頭の中で愚痴をこぼしつつも何とか受け答えをしている。
その後、学芸員は身振り手振りを混じえてケラケラ笑いながら状況を説明する。
寝不足故なのかいまいち要領を得ないものだったが何とかレナがその説明を噛み砕きながら話を進めた。
なんでも1ヶ月ほど前から展示している絵画があるのだがそれがたまに独りでに動いたりぼんやりと光ったりするのだという。
初めのうちは気の所為と思っていたそうだが客からもその指摘が入った為、気の所為で片付ける訳にもいかなくなった博物館側も取り敢えずはその絵画を監視することになった訳だが、何人かの学芸員は実際にその絵画が動く姿やぼんやりと光る姿を見たようで完全に怯えてしまい出勤を拒否するようになったそうだ。
「・・・・で、今博物館でその絵画のあるブースを担当しているスタッフは貴方だけ、ということ合っているかね?」
「はぁい!他の担当スタッフはみんな怖がってしまい出勤を拒否しています!他のブースのスタッフも嫌がって代わってくれません!お陰様で現在泊りがけで20連勤目です!」
レナの質問に壊れたようにケラケラ笑いながら返す学芸員。
とりあえず学芸員が何かしらに憑かれているのでは無く単純に疲れているだけな事に安堵しつつB班はその絵画のある場所へ案内してもらう事になった。
博物館、絵画ブース───
「はい!此方が今は私だけ!が担当している絵画ブースになります!」
「あ、あはは・・・」
妙に『私だけ』の部分が強調された言い方にエマが苦笑いを浮かべる、B班が案内されたのは壁に均等な距離で絵が展示されている絵画ブースだった。
「ではこちらです!」
そしてその中の奥にある絵画へと学芸員は案内する。
古さを感じる額縁、バランスの良い色使い、描かれた微笑んでいる女性、一見するとただの出来の良い女性の肖像画がそこにはあった。
「・・・これが依頼にあった絵?なんと言うかもっと禍々しい物をイメージしていたんだが・・・」
「ニャー」
見た目に関しては全く問題が無い、それどころかなんなら彫刻ブースになるような奇天烈な物よりも真っ当に思えるその絵にミナズキと猫は首を傾げる。
「というか、この猫ちゃんずっと着いてきてますね」
「迷惑にならないかしら?」
「・・・ま、まぁ細かいことは良いじゃないか」
「何か悪戯をしている訳では無いのだ、別に良いだろう」
何気なく居座り続けている猫の事にエマとアリサが言及するとレナとユーシスがはぐらかす。『実は猫に化けた人間です』なんて言う訳にもいかず、かと言って本人に離れる気も無いようなので今はミナズキに引っ付いている彼女を見守る事しか出来ない。
ちなみに当の本人、いやこの場合は本猫と言うべき彼女はと言うと───
「ニャー!(たかーい!)」
「あ、こら、ガイウスによじ登るな」
「別に大丈夫だ、しかし随分と色が特徴的な猫だな、それにかなり人馴れしているようだ」
ミナズキから降りて今度はガイウスの肩によじ登っていた。
「あ、あのー?皆さん、依頼は受けてくれるんですよね?」
「あ、はい」
少し不安そうに聞いてくる学芸員、そんな彼にレナが返すと彼は嬉しそうに笑う。
「ではお願いします。出来れば早急に終わらせてください!私に休みをください!」
「な、なんというか・・・」
「鬼気迫ってる・・・」
「寝不足なだけだと思うが・・・」
目にクマを作りながら笑顔で話してくる彼にみんななんとも言えない表情で頷くのだった。
「じゃあ先ずは何か変な所がないか調べてみるか」
「そうだねぇ・・・しかし一見すると単純に出来の良い絵画にしか見えないねぇ」
「・・・・・」
改めて絵画をみんなで見てみる、見た感じはやはりただの絵画なのだがここでガイウスが訝しげな目で絵画を見始めた。
「ガイウス?」
「いや、なんと言えば良いか・・・製作者の伊吹のようなものを全く感じないんだ」
「ニャー」
「いぶき?・・・そういえばこの絵画、題名が無いな。それに説明の部分も無い」
ガイウスに言われミナズキたちも違和感に気づく、本来展示された物は作品の下にネームプレートのような物があるはずだがこの絵画にはそれが無い。壁と透明なプレートで挟むようにして固定されているのは普通かもしれないが、他の展示物は題名と説明文があるのが一般的だがこの作品にだけはそれが無かった。
「そもそも誰の作品なんだ?」
「実はですね!その作品は製作者が不明なんです!そもそもが展示物を搬入した際に紛れていたようで!しかし、問い合わせても『そんな品を送った覚えが無い』と跳ね返されまして!折角だから展示しようということになりました!」
ユーシスの言葉にハイテンションで学芸員が説明する、しかしその言葉にB班は呆れてしまった。
「いや、ダメだろ・・・」
「そうですね、普通展示まではしないかと・・・」
「せいぜい倉庫に保管するのが常識だろうねぇ」
「ニャー・・・」
ミナズキ、エマ、レナどころか猫も呆れたような態度をとる。それで展示をしてみたらいわく付きだったのだから始末も悪い。
「いやー、最初は『正体不明の作品なら客寄せも出来る』という上の意向だったのですが蓋を開けてみればみんなが怖がって出勤拒否なんですから!あは、あははははは・・・」
笑いながら答える学芸員だったが、途中から嫌なことを思い出したのかどんどん笑い声が乾いていく。
何となく気まずくなったみんなで目を反らすように絵画を見ると、今度は全員で目を見開く。
そこにはいきなりガタガタと音を立てて震える絵画の姿があった。
「いや動くどころかガッツリ震えてるんですけど!」
「なんというかイメージと違うな・・・」
「もっと大々的に動くかと思ったが・・・」
「妙に弱々しいですね・・・」
アリサの言葉にミナズキ、ユーシス、エマが答える。確かに絵画は動いてはいる、しかし表現としてはどちらかと言うと「震えている」が正しいと言えるほどにその動きは弱々しかった。
「シャー!」
「ん?何かあったのかい?」
すると今度は猫がいきなり絵画に向かって威嚇を始める。それを不思議に思ったレナは猫を優しく持ち上げるがそれでも猫は絵画に対して威嚇を止めない。
「コラコラ、暴れないでおくれ。あと私の胸に猫パンチをしないでくれ」
「シャー!ニャーゴ!(この!発育の!暴力め!)」
持ち上げたレナの胸に猫パンチをし続けている猫を他所にミナズキたちは改めて震える絵画を見る。
そして確信はないものの1つの結論に至った。
「これもしかしてなんだが・・・怪奇現象とかじゃなくてこの絵画、魔獣なんじゃないか?」
「確かに、どことなく生きてる感じがあるし」
「弱々しいのは単純に弱ってるってことか・・・」
「まぁ飲まず食わずでずっと展示されてたらな・・・」
ミナズキ、アリサ、ユーシス、ガイウスでなんとも言えない空気で絵画を見つめる。何処と無く絵画からも哀愁を感じ始めていた。
そして手の空いていたエマが試しに魔獣の弱点を知ることが出来るクラフト、ディフェクターを使いコケるような反応をして一言こぼす。
「間違いなく魔獣ですね・・・それもかなり弱った」
その後、全員で推理をした。恐らくこの魔獣は搬入用の大型導力トラックに轢かれた、或いは他の魔獣との戦闘で弱って眠っていたところを搬入員が博物館に運び込み、そのまま展示されてしまったのだろうと。
弱っているから動けても震える程度しか出来ず、かと言って回復しようにも動けない上に飲まず食わずなのだから体力も戻らない。結果今まで展示され『たまに独りでに動く気味の悪い絵画』として扱われたのだろう。
「魔獣の中には鏡のような見た目をしたものもいる、もしかしたらこいつはその亜種なんじゃないかな?」
「絵画の見た目をした魔獣か、なんと言うか・・・不憫だな」
レナの言葉にユーシスが呟く、確かに博物館の前にいなければこんな事にはならなかっただろう。
「で、どうするこいつ?」
「普通なら討伐なんだろうけど・・・」
「不憫過ぎるな・・・」
みんなで未だ必死に震え続ける絵画を見る、最早可哀想にすら思えてくる状態に流石に討伐しようなんて気は起きてこなかった。
「あの、こいつ俺たちで回収しても良いですか?」
「はい!別に私は休めるならなんでも!」
代表してミナズキが学芸員に聞くと、彼も限界なのかミナズキのいる方向とは全く別の方向を見ながら答える。ある意味絵画と似た者同士な学芸員の姿に苦笑いすら浮かばなくなった。
トリスタ側の街道───
「ほら、もう捕まるなよ」
「・・・・・!」
街道に出たB班は絵画を入れたケースをゆっくりと慎重に開ける、するとよろよろと絵画は浮かびそのままゆっくりと道の外れにある草むらへと帰って行く。
「なんか、最後まで哀愁が酷かったな・・・」
「はい、というか学芸員の方もだいぶ参ってましたね」
真顔のユーシスと同じく真顔のエマが呟く、やがて絵画の姿が見えなくなると全員ため息を吐き帝都の方へと向き直る。
「もしこの依頼受けなかったらどうなってたんだろうな」
「まぁ、学芸員と絵画、どっちが先に逝くかってことか?」
「縁起でもないから止めてやれ・・・」
ガイウスの疑問にミナズキが返すとそれを止めるようにユーシスが諌める。
こうして何故かどっと疲れた一同はヴェスタ通りにある今回の宿泊先にゆっくりと歩いていくのだった。
ご拝読ありがとうございました。
さて、皆様に1つ謝罪させていただきます。
以前アンケートを取った原作でのレグラムの部分ですが、私自身が零の軌跡、碧の軌跡をプレイしたことで1つ展開が浮かびました。
申し訳ないのですがそちらを書かせていただきます。
次話もよろしくお願いいたします。
原作なら帝都とレグラムの間に幕章(温泉郷ユミル)があるのですがこの二次創作ではリィンたちには原かせますがミナズキとレナはあるところに行きます。行先はアルテマです。理由は私がその幕章(ゲーム未収録のドラマCD)を聞いたことがないからです。ミナズキたちを色々と進展させるためですがどっちが良いですか?
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サクッと進めて欲しい
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じっくり過程を見たい