英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

99 / 108
ご拝読ありがとうございます。

遅れましたが投稿します。


93.動き出したものたち

 

14:00、帝都競馬場───

 

 

『まさかまさかの大番狂わせー!1着は3番のブラックプリンス!2着はギリギリに差し込んできました11番のランバーブリッツです!3着には5番ホワイトノルティが入りました!』

 

《夏至賞》、毎年夏至祭の日に行われる帝都競馬場のメインレースなのだが今年は民衆の予想をはるかに上回る結果となった。

 

ブラックプリンスは最近まで勝ちの遠のいていた馬なのだが今日の夏至賞で大駆けして2馬身差を付けた1着、2着に輝いたランバーブリッツは逆にまだまだ若い馬で落ち着きの無さがあったにもかかわらず最終直線でまさかの差し込み、ホワイトノルティは惜しくも差されて3着となった。

 

そしてこの3頭、実は3頭とも人気薄だったのだ。

 

 

 

本日のメインレースな事もあり14頭立ての大レースだったのだが今回はあまりにも予想が難しすぎた。

当然予報を外した者たちは声を上げながら馬券を真上に放り上げる。

 

しかしVIP席に座っていたマクダエル議長は馬券を握りしめただ口を開けて呆然としていた。

「ミナズキ殿、君の予想当たっておるぞ・・・」

「ニャー!(三連単おめでとう!)」

「あ、え・・・はい・・・・」

学生故に賭けることが出来ないミナズキの代わりに外れても大丈夫とそこそこ多めのミラを賭けてしまったマクダエル議長、その際に着順がどうなりそうか聞かれたミナズキは少し考えた後に言った。

 

「1位から順に3番、11番、5番ですかね」

 

昔老師と一緒に『勘を鍛える』という名目で賭場に行ったな、なんて思い出しながら何となく勝てそうな番号を順番に選んでみたミナズキ。結果としては大勝してしまい払い戻し金額は数千万ミラまで登ってしまった。

 

 

あ、やってしまった。流石帝国で1番の祭典だな───

 

 

頭を抱えながらミナズキは現実逃避をするしかなかった。

 

「ま、まぁミナズキ殿。落ち込むことは無い・・・むしろ歴史に残る大勝じゃぞ?」

「ニャー?(なんで落ち込んでるの?)」

「殿下には・・・『目立ち過ぎないこと』って言われていまして・・・まさかこうなるとは・・・」

 

苦虫を噛み潰したような表情のミナズキにマクダエル議長も笑うしかない、アイネ猫も「ふにゃ・・・」と弱々しく鳴くのだった。

 

 

 

14:20、マーテル公園───

 

 

「さて、早めに着いたな・・・ありがとうミナズキ殿、おかげで面白い帝都観光になった」

「申し訳ないです。競馬場では妙に目立つ羽目になって・・・そのせいで逃げるようにマーテル公園に来ることに・・・」

「はは、まぁこのハプニングも楽しかったから大丈夫じゃろ」

「ニャー・・・」

 

あの後高額払い戻しをしに行き競馬場職員は目が飛び出んばかりに驚いた。

結果、他の観客もかなりザワついた。

「まじで当てたの!?」

「とんでもない払い戻しだ!?」

 

もっと言えば帝国時報の記者もインタビューに来た。

「マクダエル議長!今回のレースの感想は!?」

「史上最高払い戻し金額との事ですが今のお気持ちをお聞かせください!」

「いや、あはは・・・」

「議長閣下、こちらに・・・」

 

流石のマクダエル議長もタジタジとなりミナズキが連れ去る形で避難、それでもカメラを向けようとしてくる者には───

 

「フシャー!」

「ね、猫が飛び付いてくる!?」

アイネ猫を突撃させて黙らせた。

 

 

───

 

「あれは大変だった・・・」

「ニャー・・・(大変だったよ・・・)」

「本当に頼もしかったぞ、特に猫殿の飛びかかって行く勇姿が」

「ニャー!」

マクダエル議長に褒められご満悦そうに鳴くアイネ猫はそのままミナズキの肩まで登るとくつろぎ始めた。

「ニャー・・・」

「・・・・もうツッコまないぞ」

「ふふふ、仲の良いコンビだ・・・」

 

 

 

14:40、クリスタルガーデン───

 

 

「お待ちしておりました、マクダエル議長」

「おぉ、レーグニッツ知事!お久しぶりです」

クリスタルガーデンに着くと先に段取りを確認するためなのか帝都知事であるマキアスの父、カール・レーグニッツがいた。

 

「聞きましたよ、競馬場での1件。帝都競馬場始まって以来の払い戻し金額だったそうで」

「はは、あれは私が当てたものではありません。彼が、ミナズキ殿が当てたものです」

「なんと、ミナズキ殿が・・・」

驚いた様子でカールがミナズキに視線を向ける、ミナズキは帽子で顔を隠しながら目を逸らした。

 

「出来ればマキアスには黙っていて欲しい・・・『僕たちはまだ学生だぞ!』くらいは言うと思うので・・・」

「はは、たしかに倅なら言いそうだ」

気まずそうに頭を下げるミナズキにカールは笑って返す。確かに堅物なマキアスなら言いそうな事で他のクラスメイトもそこまで良い顔はしないだろう。

旧校舎の地下でリィンに力を貸してくれたというクロウならばまた反応も変わるだろうが。

 

「さて、そろそろ行きましょうか」

「はい・・・ミナズキ殿、猫殿、改めてよろしくお願いする」

「こちらこそ・・・」

「ニャー!」

 

 

 

 

同時刻、帝都の地下道の一角───

 

 

「行くぞ同志たちよ、非道な鉄血宰相を排除し帝国の在るべき姿を取り戻すのだ!」

『おぉぉぉぉぉぉ!!!!!』

 

男の演説にその場にいる武装した集団が声を上げた。

演説をしたのは以前ノルド高原で騒動を起こした帝国解放戦線の1人であるG、その後ろでは赤いドレスを着た女、体格の良い男が並んで彼らを見守る。

 

「いい調子じゃねぇか、Gの旦那」

「そうね、士気も高いし事前の情報収集もほぼ完璧。あとは例のⅦ組がどうなるか、ね・・・」

ニヤリと笑う男とは対照的に現在帝都で特別実習をしているⅦ組の事を警戒した様子で呟く。

現にノルドではGの作戦を阻止された。実行犯である猟兵たちには大した情報を渡していないし彼らを囮にして逃亡もしたが姿は見られたしなんの偶然かはしらないがまさかⅦ組の次の特別実習先が自分たちの計画の地である帝都とは思わなかった。

 

 

2人が話していると演説が終わったのかGが歩み寄ってきた。会話は聞こえていたようで、それでも対策はしていたのか笑みは崩さない。

「分かっているとも、だからこそ保険として腕の立つ傭兵の槍使いを雇っておいた。」

Gの見る先には武装した同志たちの中では浮いている白を基調とした服を纏い朱い槍を持ちながら欠伸をしている青年がいた。

 

「腕は確かだ、だが問題があってな・・・」

「問題?」

少し残念そうにGがため息をつく。それに対して赤いドレスの女が不思議そうに尋ねるとGは答えた。

「彼には流儀がある。それに反した瞬間最悪彼がこちらの敵になる可能性があるのだよ」

「りゅ、流儀?」

Gの言葉に赤いドレスの女は首を傾げるが体格の良い男は理解を示すように腕を組んで頷いた。

 

「なるほどな、つまり奴は自分のルールがあるって訳か。確かに諸刃の剣かもな・・・だがな、この界隈じゃそういう自分のルールや世界がしっかりしてるやつは強いぞ」

そう言うと男はニカッと笑い、残りの2人はよく分からないのか首をより傾げる。

 

 

「(報酬も良かったし、信念もあるようだから依頼を受けたが・・・何故だか嫌な予感がする・・・これは・・・ハズレか?)」

そんな彼らを他所に朱い槍を持った青年、アスラは頭の中でいくらか思考を重ねる。

今回の依頼、作戦中に邪魔が入った際のサポートとは言われたがなんだか妙に胸騒ぎがする。

帝国解放戦線と聞いたので何かあるのはわかっていたがもしかしたら自分の流儀に反することをさせられるかもしれない、そう考えながらも彼は隊列から抜けると作戦の時間が来るまで静かに眠り始めた。

 

 

 

 

14:55、クリスタルガーデン───

 

 

「会場に不審物は無し、か・・・・」

「フニャ・・・(いじょうなーし)」

 

ミナズキはクリスタルガーデンで他の出席者と話すマクダエル議長を少し遠くから見つつ周りを見る。

会場の5分前まで専属の管理者がチェックしていたという内部の植物たちはガラス越しの太陽の光を浴びてキラキラと光る。

設置されている装飾品も特に異常は無く、会はつつがなく進行されていた。

 

 

出席者の中心には皇女であるアルフィンがおり、その傍には彼女の付き人として同行しているエリゼの姿があった。

「彼女は今日は確かアルフィン殿下の付き人か・・・大変だな」

「ニャ〜」

ミナズキがアイネ猫に話していると、ふとエリゼと目が合いお互いに軽く会釈をする。

 

お疲れ様です───

 

いいえそちらこそ───

 

お互いに少し苦笑いを浮かべながらそんな視線を飛ばし合った。

 

「ニャ!ニャ!」

「ん?」

そんな時、不意にアイネ猫が声を上げミナズキの肩をポンポンと叩く、ミナズキが目をやるとアイネ猫はクリスタルガーデンの外にあるマーテル公園、正しくはその公園内にあるマンホールを見ていた。

 

「マンホールが・・・震えている?」

本来マンホールはかなり重く作られているししっかりと固定されている、少なくともそう簡単に震えたりはしない。

 

ミナズキがマクダエル議長に確認しに行く許可を取ろうとした時だった。

 

 

マンホールが上に吹き飛びそこから水が噴水のように吹き上がった。

 

「っ!?」

「ニャ!?」

いきなりのことに1人と1匹で驚いていると次は公園内にいつの間にか中型の魔獣が湧き始め、警備していた近衛兵たちと戦闘が始まっていた。

 

 

「フニャァ!?」

「魔獣か・・・・」

少しパニック気味なアイネ猫を放っておきながらミナズキは周りを見る。窓際の方で歓談していた出席者は魔獣に驚き施設の内側へと流れていく。

 

その中には近衛兵に護られながら内側へ避難するエリゼとアルフィンの姿があった。

 

「ミナズキ殿!」

「議長閣下、ご無事でしたか」

「フニャァ!ニャニャァ!」

少し駆け足気味に寄ってくるマクダエル議長に労うような言葉をかけながらミナズキはパニック気味なアイネ猫の頭を軽く撫でる。

「猫殿は少し驚いているようだが・・・」

「大丈夫ですよ・・・お前は少し落ち着け」

「フニャ!?」

 

心配してくるマクダエル議長の言葉にミナズキはアイネ猫の首根っこを掴み大人しくさせた。

「良いか?アイネ・・・今から本格的な仕事だ、いい加減人間に戻って仕事するぞ」

「ニャ・・・・」

「に、人間?ミナズキ殿、一体何を・・・」

 

ミナズキの言葉にアイネは沈黙しマクダエル議長は困惑を浮かべる。

そのままミナズキが手を離すとアイネ猫は物陰までトコトコと進んでいきポンっと音を立てる。

小さな煙の晴れた後には人間の姿に戻ったアイネの姿があった。

 

「もー!なんであたしが人間だってことおじいちゃんにバラしちゃうのさー!」

「お前が猫の状態でパニックになってるからだ」

「なんと、人間だったのか・・・」

愕然とするマクダエル議長を他所にミナズキとアイネは軽く言い合いをするとそのままマクダエル議長に向き直り口を開く。

 

「閣下、今回の件はほぼ確実に帝国解放戦線というテロリストの仕業です。そして現状建物で1番安全なのは施設の真ん中ではなく、どちらかと言うと窓際の方が安全でしょう」

「それは一体・・・まさか」

言い切ってくるミナズキにマクダエルは少し驚くがすぐに意図を理解したように頷いた。

 

「えぇ、テロリストは帝都にある地下水路を利用してこの騒動を起こしています。ただ地下水路は帝都の地下に網目のように張り巡らされてるのでマーテル公園だけがこうなっていることは無いでしょう。恐らくこれは陽動、そして恐らく本命はこの中の・・・」

 

そこまで言ってミナズキは施設の真ん中、特にその中心の方にいるアルフィンに目をやる。

それを見たマクダエルは驚いた顔をしてミナズキに言った。

「ミナズキ殿!猫殿!ここは大丈夫だからあちらに行ってあげなさい、手遅れになる前に!」

「ありがとうございます!」

「いってきまーす!」

マクダエル議長から許可が下りた2人はそのままアルフィンの方へ走り出す。

 

「姫様、ミナズキさんと・・・確かアイネさんがこちらに走って来ています!」

「何か言っているのは分かるけど遠いから良く聞こえないわね・・・」

エリゼの言葉にアルフィンは首を傾げながら答える。

遠くから走って来るミナズキと昨日見たアイネが慌てた様子で何かを言っているのは分かるが周りが騒然としているためにその声まだは届かない。

 

少女2人が走ってくる護衛2人の言葉を聞き、理解したのはほぼ手遅れと言わざるを得ない状況だった。

アルフィンとエリゼの後ろから突如爆発するような轟音が響く。

 

その音に2人が思わず目を瞑るとその次には銃声とそれに混じるような悲鳴、そして目を開けた時には───

 

「動くな!動けばアルフィン殿下とその付き人の身の安全は保証しない!」

謎の武装集団が2人に魔導銃が向けていた、そのすぐ足元には2人を先導していたであろう近衛兵2名が血を流しながら倒れていた。

 

 

「君たち!このような愚かな真似は止めたまえ!」

そんな彼らに先頭にいたレーグニッツ知事が声を上げる。しかし次の瞬間には彼の前には銃口が向けられていた。

 

パァン、と1発の銃声が響きレーグニッツ知事が腕を抑えながら膝を着いた。

「ぐ、うぅ・・・!」

「帝都知事、カール・レーグニッツだな?鉄血宰相と近しい貴様はこちらの要殺害リストに載っている!」

そう話しながら兵士たちの後ろから出てきたのはノルドでの1件にも関わっていた帝国解放戦線の1人であるGだった。

 

「やはり噂のテロリストだったか・・・!お2人に何をする気だ!」

「君たちには我々の考えなど理解出来んだろう?まぁ、その前に貴様には退場してもらうがな・・・」

 

そう言ってGはレーグニッツ知事に魔導銃を構える。

この時周りは悲鳴混じりにことの成り行きを見守るしかなかったが一方でアイネは密かに魔導杖を構えており、懐から2つのゴムボールを取り出し床に落とした。

 

「アイネ?こんな時に何を・・・」

「大丈夫だよ、いいからミナズキはちゃんと構えて」

ミナズキの疑問の声にそう返しながらアイネは親指、人差し指、中指の3本の指を立てる。

 

その3つの指先には青、赤、黄色の魔法陣がうっすらと浮かんでおり、2つのゴムボールとミナズキの足元に1つづつ、そして人質に取られたアルフィンとエリゼ、そして今にも撃たれそうになっているレーグニッツ知事の足元にも同じ魔法陣がうっすらと発生していた。

 

 

 

 

「じゃあ、始めるよ・・・『物質転移(アポート)!』」

 

 

 

 

アイネがまるで魔法陣を握り潰すように手をギュッと握りしめたその瞬間、ミナズキと2つのゴムボールがあった場所にアルフィン、エリゼ、レーグニッツ知事の3人がいた。

 

 

 

そして───

 

 

「なぁ!?」

「人質がボールに!?」

エリゼとアルフィンのいた場所にはボールが───

 

「き、貴様は!?」

「ノルドでは世話になったな?インテリモドキの糞メガネ!」

レーグニッツ知事にとどめを刺そうとしていたGの目の前にはしっかりと構えたミナズキがいた。

 

「伍ノ型、残月!」

抜刀の構えから抜き放たれた一撃はGが咄嗟に構えた魔導銃と彼がもう片方の手に持っていた魔獣を呼び操る欠けた懐中時計付きの魔笛に直撃した。

 

 

「ぐぁ!?」

あまりの衝撃にGの魔導銃は弾き飛ばされ、魔笛は懐中時計が外れて床に転がった。

 

「また・・・また貴様か!トールズの学生如きが!」

「ノルドでは捕まえ損なった、だから今回はしっかり捕らえさせてもらう!」

忌々しげに睨みつけてくるG、そんな奴にミナズキは太刀を上段に構え飛びかかる。

 

 

「惨ノ型、業炎撃!」

上段に構えた太刀が赤い炎を纏う、ミナズキは怒りを乗せたかのように鋭く荒々しい一撃をGへと振り下ろした。

 

 

 




ご拝読ありがとうございました。

頭の中で映像は出来ていても中々文字に起こせずに苦労しています。

次話ものんびりよろしくお願いいたします。

ミナズキは帝都編以降はどうなりそうに見えますか?

  • なんとか色々切り抜けそう
  • クロスベルでは地獄を見そう
  • 昔の仲間に期待
  • 今の仲間を信じろミナズキ
  • 少しはヒロインたちと接近しろミナズキ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。