茅森月歌の幼馴染になったけど、未来が絶望すぎる   作:トロカツオ

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それでも俺は……

 

「おーいカイト、起きろー」

「うん……んぁ。月歌?」

 

 目を開けると目の前には白色の凧を持った月歌が居る。足元にはポムポムもいる。

 あれ、月歌が俺の部屋に居るんだ……俺はいつの間にか眠っていたんだな?

 

「おはようカイト。こんな所で寝ていると風邪……いや、夏だから風邪は引かないか」

「こんな所って……俺の部屋だろ」

「いいや、ここは森の中の公園だよ」

「はぁ!?」

 

 あれ、俺はいつの間にベンチで寝てたんだ!?

 さっきまで家でのんびりと本でも読もうとしてたよな。なのに何故こんな所でお昼寝なんかしてるんだよ、俺にそんなのほほんっとした趣味もないし夢遊病でもない筈……家に居たことは覚えてるんだけどそこから公園までの記憶がない。誰かと会ってたような無いような……思い出せないな。

 

「そんな事よりカイト、カイト上げに行こうぜ」

「……好きだよな凧上げ。いいよ行こうか」

 

 俺はベンチから立ち上がってからポムポムを抱っこして海岸に向かって歩きだした。

 

 

****

 

 凧上げはいつもこの海岸でやっている。理由はこの場所が風がよく吹き凧がよく上がるかららしい。

 まぁ、俺は毎回凧を持ち上げる係をしている。凧が上がると海岸にある2メートルくらいの高い岩の上に登ってから凧上げする。そして俺は月歌が凧上げしているのを見ている。今回もそうだ。

 こんな岩なんかに登らなくてもいいのに……バカとケムリは高いところが好きって言うからな。

 

「うっひょ〜今日は風がかなり強いからカイトが上がる上がる」

「楽しそうだな……」

 

 凧が直ぐに空高くまで上がって行ったよな。今日は少し海が荒れてるし、波もいつもよりも高いな……潮の流れも速いだろうな。

 俺はポムポムを岩の上に置いてからポケットに手を入れた。

 

「なぁ〜カイト、今年の夏休みは何しようか?」

「今年ね〜……去年は何したっけ?」

「去年は富士山見に山梨にキャンプに行ったじゃん」

「あ〜そうだったな」

 

 去年は月歌が「富士山に登ろう!!」と言ってきて富士山を登る計画を立てたのだが……富士山に登るには事前予約が必要で夏休み中は全て予約が埋まっていて富士山に登るのは諦める事となった。俺的には富士山に登るのはあまり乗り気ではなかったから良かった。前世で親に無理矢理に連れてかれて登った事があるからいい思い出がないから。

 

 落ち込んでいる月歌を見た俺の父親が富士山の近くのキャンプ場にキャンプしに行こうと提案をした。それを聞いた月歌は目をきらめかせて「行く行く!!」と言ってキャンプに行く事が決まって茅森家と佐久間家で山梨にキャンプに行った。

 

「あたしがガットギターで演奏して」

「BBQで月歌がまだ焼けてない肉を食べようとしてたな」

「それは忘れて。楽しかったなキャンプ、今年もキャンプに行きたいな〜」

「キャンプか……ならグランピングでもいいな」

「グランピング?なにそれ?」

「簡単に言えば手軽なキャンプだな。テントは施設が用意して設営もしてくれる」

「そんなのがあるんだ」

 

 まぁ、その分キャンプよりもグランピングの方が金が掛かるけど。そこは親が何とかしてくれるだろう……たぶん。

  でも。

 

「こうやって月歌と夏休みを遊ぶのも今年でラストだろうな」

「えぇ!?」

 

 月歌は驚いた顔をして俺の方を見てきた。

 おい、ちゃんと凧を見て上げろよ危ないぞ。

 

「どうしてそんな事を言うの?」

「来年は俺たちは受験生だろ。俺は来年の夏休みは夏期講習に行く予定だから遊んでいる暇はないぞ」

「そ、そうかも知れないけど。受験が終わって同じ高校に行ったらまた夏休み一緒に遊べるじゃん」

「いや同じ高校に通えないだろ、俺と月歌の偏差値の差を考えろ」

「えぇーカイトがあたしと同じ高校に受験してくれないの!?」

「なんで俺が妥協しないと行けないんだよ、お前が頑張れよ」

 

 俺が行こうと思っている志望校はこの地区で1番偏差値の高い高校だ。この高校に通いたいのかと言えばそうではない。月歌と離れる方法はもう学校を別々になって疎遠になるしかないだろう。今更ながら月歌は俺に依存しているように思える。……いや、逆に俺が月歌に依存している、共依存している状態だ。

 

 俺はこの世界には居ない人間なんだ、だから俺が居ると元々の茅森月歌が歩んでいく予定の人生と変わってしまう。そして未来での茅森月歌達31Aがない世界線になり世界はキャンサーに滅亡するかもしれない。

 だからこれは仕方がない事なんだ……俺がこれ以上茅森月歌の人生に俺は居ては行けないんだ。

 

「えぇー絶対に無理だよ、カイトが行こうとしている高校なんかあたしが逆立ちしながら歯ギターしても無理だ!!」

「絶対にやるなよ、フリじゃないからな危ないから」

「ねぇカイト、あたしの偏差値に合わせてよ。高校生になったらまたバンドを組んで演奏したりしたいのに!」

「別に俺じゃなくてもいいだろ。高校生になってその高校で音楽友達を作ってそいつ等とバンドを組んだらいいよ」

「嫌だ。あたしはカイトがいい」

 

 何故俺じゃないと行けないんだよ。お前の音楽は沢山の人に聴いて貰った方がいい……いや、聴かせなきゃ行けないんだよ。お前は伝説になるんだ、こんな俺なんかの為にその才能を腐らせては行けないんだ。

 

「俺よりもいいギターリストやメンバーは見つけられるよ」

「だからあたしはカイトじゃないとダメなんだよ!!……あたしは!!」

 

 月歌が真剣な表情で俺の方を見て大きな声を出して何かを言おうとした瞬間に俺達の背後から突風が吹いた。

 

「えっ!?」

「くっ!!」

 

 俺たちはその突然の突風に踏ん張る事は出来ずに岩から落ちそうになった。

 このままだと俺と月歌が海に落ちてしまう。月歌だけでも!!

 俺は月歌の左腕を掴んで思いっきり背後に引っ張った。月歌は勢いよく岩に転び月歌が助ける事は出来た。だが俺は月歌を助けた反動で岩から落ちて、背中から海に落ちた。

 

 

 背中から落ちれたけど流石にあの高さからだったからすごく痛いし空気がほとんど出てしまった。くそ、潮の流れが速いから陸地から離れて行く。服を着ているからまともに泳げないし、どれだけもがいても上に上がらない。……これはもう駄目だな。

 

 俺はもがくのをやめて力を抜いて諦めた。

 転生したけど前世よりも早くに死んでしまうなんて、しかもキャンサーに殺されるんじゃなくて溺死なんてな。

 

 ………もしかしたら俺がこの世界に居なかったら今こうやって海に落ちてたのは月歌だったのかも知れないな。そして月歌が溺死してしまってポムポムがヒトナービィに変化して月歌に変わって茅森家で生活して高校生になって、そして“She is Legend”が誕生して伝説が作られたのかもな。もしかしたら俺は余計な事をしたのかも知れない。俺はいつも余計な事をしてしまうな。

 

 それでも俺は……月歌には生きていて欲しい。“オマエ”じゃない、本物の茅森月歌に生きていて欲しい。本物の茅森月歌が“She is Legend”でプロデビューして茅森月歌の伝説を……歌を世界中に轟かせてほしい。これは俺のエゴだ。

 

 

『ゴボッゴボッ』

 

 俺の中にあった最後の空気が漏れた。

 その瞬間に俺はこれまでの走馬灯が見た……そして今日の出来事も。

 

 

 

 そうか、だからオマエはあの時に

 ハハッ、俺は月歌を助ける選択しか選ばなかったな

 どうせなら死ぬと分かっていたのならこの気持ちを

 いや、伝えなくていいこんな呪いの言葉

 俺はこの気持ちを分かっていて月歌にあんな酷い態度を取ってたんだ

 だからこれは俺の罰だ

 それに月歌にはもっと似合う人が居る

 良い人を見つけてキャンサーが来てからも必死に生きて幸せになれよ……

 

 

 

 佐久間海斗は目を閉じて意識を失って静かに海の底に落ちていった。

 

『月歌、好きだったよ』

 

 




次回、エピローグになります。
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