茅森月歌の幼馴染になったけど、未来が絶望すぎる   作:トロカツオ

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15日目(日) 15:00

 

 〈佐久間海斗が死んでから数十年の時が流れた〉

 

 

 

 あたしはめぐみんのサイキックの力で精神世界にダイブして最後に母さんにお別れを言った。そしてあたしは精神世界から現実に帰ってきた。

 

「おっ、帰ってきたか。お帰り月歌、どうやった?」

 

 目を覚ますと満点の青空が広がっていて、横からめぐみんの声が聞こえてきた。ちゃんと現実世界に帰ってきたみたいだ。

 あたしは起き上がってベンチに座ってめぐみんの方を向いた。

 

「ありがとうめぐみん、ちゃんと母さんに全部話してお別れを言えた」

「それなら良かった。ならこの力はもう必要ないみたいやな」

「えっ、どういうこと?」

 

 そう言ってめぐみんは手を差し出すとまた手をバチバチと光らせた。

 あれ、その力って!?

 

「めぐみん、その力ってさっきので最後じゃなかったの!?」

「そのつもりやったんだけど、何故か月歌を送った後に何故かサイキックの力が流れ込んできたんや。この場所はパワースポットでもないやろうし。それにこれはもう使えなくなる力なのに」

「そうなんだ。でもまた精神世界にダイブ出来るって事だよね?」

「そうやな。っと言っても月歌がナービィやった時の遥か前までの過去には送れそうにはない。よくて本物の月歌が生きていた時くらいギリギリくらいやな」

「随分と細かいね。そんなのよく分かるね」

「何度も送っといたら分かるようになったんや。でももう使う事はないな……」

「待ってめぐみん、もう一度だけ過去に送ってくれない?」

「別いいけど、母親とはちゃんとお別れを言えたんじゃないんか?」

「母さんとはちゃんとお別れを言えたよ。でも、もう一度会いたい……いや、会わないといけない人が居るんだ」

 

 あたしがキャンサーに食べられている時にあたしがまだナービィだった時に茅森家に居た時の事を思い出した。その時に本物の茅森月歌とその幼馴染の佐久間海斗との会話で、いくつか彼が話していた時に気になる事を言っていた。……それもあるが、もう一度彼に会いたいとあたしが思っている。

 

「そうか。詳しい事はまた帰ってきてから聞くことにする。今はこの力が消える前にまた精神世界にダイブする事やな」

「うん、本当の最後……お願いめぐみん」

「あぁ。ほな手を握って……黙って目ぇ潰れ」

 

 そう言ってめぐみんは手を差し出してきた。その手はめぐみんのサイキックの力でバチバチしている。あたしは目を瞑ってその手を握った。

 

「ほな、いってらっしゃい!!」

 

 

****

 

 目を開けるとまたあの世界。そしていつもの場所。

 この晴れ渡った空とこの暑さはまだ夏だな。

 という事はまだ彼が生きている時の夏なのだろうか?

 取り敢えず彼の家に行ってみよう。本物の茅森月歌に何度も連れて行って貰った事があるからなんとなく場所は覚えているから行けるだろう。また本物の茅森月歌は生きているんだ、見つからないようにしないと。

 

 あたしは森の方へ向けて走り出した。

 森の中を抜けて商店街の方へ行き、商店街の手前に住宅が一軒だけある。そこが彼の佐久間海斗の家だ。

 

「ついた」

 

 本物の茅森月歌に見つかる前に佐久間海斗の家に着いた。

 彼は家にいるのだろうか?もしかして本物の茅森月歌と一緒に居るのかもしれない。取り敢えずインターフォンを鳴らしてみよう。

 

 ピンポーンっとインターフォンが鳴った。少ししてから家の中から足音が聞こえてきて誰かがこちらに来ていた。そして扉が開かれて佐久間海斗が現れた。あたしが本物の茅森月歌じゃない事を説明……

 

「よぉ、初めましてでいいんだよな月歌?」

「えっどういう事!?」

「こう言った方がいいか。セラフ部隊31Aの茅森月歌」

 

 えっ、何故分かったの!?まだ茅森月歌は生きている、それにまだこの時代の世界にはセラフ部隊どころかキャンサーも存在しない。なのに何故彼は、佐久間海斗はその事を知ってるんだよ。もしかしてカイトは。

 

「カイトの言うとおり、あたしはセラフ部隊31Aの茅森月歌。どうしてカイトはその事を知ってるの、カイトは何者なの……答えて!!」

 

 あたしの感情はぐちゃぐちゃになっていた。もしかしたら信じていた人が裏切り者なのかも知れないから。

 

 

「落ち着け月歌。ここでこんな話していると誰かに見られるし、本物の月歌はたぶんもう少ししたら遊びに来るだろう」

「っ」

「少し場所を変えよう」

「わかった」

 

 そう言われてあたしはカイトについて行った。

 そして森の中にある公園についた。

 

「それでカイト、知ってる事全部話して」

「全部か。信じれないかも知れないけどそれでも聞くか?」

「わかった。話して」

 

 そしてカイトとあたしはベンチに座った。カイトはため息を一つ吐いてから話しはじめた。

 

「俺は未来を知っている……いや、知っていたの方が正しいのかもな」

 

 カイトは曖昧な言い回しで答えた。

 どう言う事だ?なんで過去形で言い直したんだ。

 

「月歌。俺は月歌達31Aがキャンサー達と戦ってきた出来事を物語として知っている」

 

 えっ、物語。どう言う事!?

 あたし達が戦ってきた事は物語じゃなくて本当に起きたこと。

 カイトは何者なんだ。カイトは本当に人間なのか?……もしかして人型のキャンサーなんじゃないのか?

 

 頭の中でぐるぐると思考を巡らさせているとあたしの顔を見てカイトはニヤリと笑った。

 

「珍しく頭で色々と考えてるみたいだな……俺は人間だよ。さっきも話したように俺はこの世界の未来を知っている……と言っても少しだけだけどな」

「未来を知ってるのなら教えて、カイトは何処まで知ってるの!?」

 

 もしかするとこれからあたし達が戦うキャンサーとの情報とか手に入るかも知れない!

 

「新宿ドームで初めて大型キャンサーを討伐したデスフラッグ。次は蒼井えりかの全ての力を使って討伐したレッドクリムゾン。イージスタワーで月城最中が無我夢中状態になり討伐したフラットハンド。逢川めぐみが31Aに復帰して討伐したスカルフェザー……俺が知っている範囲はここまでだ」

「そこまでしか知らないのか」

 

 そんな上手い話あるわけないよな。

 それよりも、どうして……

 

「悪いな。その表情からしてオマエはそれよりも先の未来から来たんだな」

「うん。なぁカイト……どうしてもっと詳しくあたしに伝えてくれなかったの?詳しく分かっていたら蒼井やくらっちを助けられたかも知れないじゃん」

「伝えていたら助けられたか。でも月歌、オマエがヒトナービィと分かったのはいつだ?オマエが俺と本物の月歌との会話を思い出したのはいつだ?」

「それは…」

 

 そうだ、あたし達がナービィだと分かったのはくらっちが死んだ後だ。それにカイトの会話を思い出したのはキャンサーに食べられた時だ。

 全部終わった後だ。神様は本当に酷いな……

 

「月歌、俺に聞きたい事は全部聞けたか?」

「あと一つだけ」

 

 これだけは本物の茅森月歌の代わりに聞いておかないとならない。じゃないと、あたしの中にあるモヤモヤが消えない。

 

「カイトはどうしてあたしを……本物の茅森月歌を庇って死んだの!?」

 

 あたしがそう言うとカイトは驚いた顔をした。

 カイトが本物のあたしを庇って死んだ。だから本物の茅森月歌はあんな風になってそして……

 

「……そうか。俺はやっぱり月歌を庇って死んだんだな」

「やっぱりってどういう事。もしかして自分が死ぬ事も知ってたの!?」

「いや、知らなかったよ。でもキャンサーが来たら死ぬんだろうなとは思ってたよ」

「ならどうして!?」

「未来の俺も未来を知っている。ヒトナービィ……オマエが居るって事は月歌が死んでしまうって事も。そしてオマエが居ないと31Aが出来ない事も知ってたんだ」

「えっ!?」

「たぶん未来の俺は月歌に死んでほしくなかったんだろうな。俺も月歌がやばかったら庇うだろうしな」

「どうしてそこまでしてカイトは本物のあたしに生きてほしかったの?」

「………はぁ〜、色々と言い訳を言いたいけどそんな場面じゃないよな。でも、月歌本人の前で言うみたいで嫌だな」

 

 カイトは頭をガシガシと掻きながら大きなため息を吐いた。

 珍しくカイトの顔を赤くしている。何を言おうとしてるのカイト!?

 

「……好きだから。月歌の事が好きだからだよ、未来が変わってしまっても俺は月歌には生きて欲しい。それくらい好きなんだよ……重いな俺」

 

 カイトは真剣な表情をして嘘を言っているようにはみえなかった。

 あたしの中の心臓がギュッと閉められるような感じがして苦しい。涙が自然と流れてきてた。

 

 カイトの言葉にあたしの胸の中にあったモヤモヤが消えた。

 本物のあたしは……茅森月歌はカイトの事が好きだった、大好きだった。それもカイトに負けないくらい好きで好きで、カイトが想っている以上に重いくらいに。

 

 だからこの言葉をもっと早く聞きたかった。生きていた時の本物のあたしがこの言葉を聞いていたらもしかしたら変わっていたかも知れない……いや、聞いていても本物のあたしはたぶん同じ未来を歩んでいたと思う。その未来にカイトは居ないんだから。

 

『ずるいよ、カイト』

 

「これでいいか……て大丈夫か月歌!?」

「あっ、大丈夫大丈夫。ありがとうカイト、すごく嬉しい」

「すごく嬉しいって、俺はオマエじゃなくて本物の茅森月歌に言ったんだ。それにオマエには和泉ユキが居るだろ」

「そうだね。でもあたしとユッキーはもうブッチューした仲だからな」

「いつの間にそんな仲に……もうオマエ等結婚しろ」

「めぐみんにもそんな事言われたよ」

 

 あたしの体から力が抜ける感じがした。体を確認すると、あたしの体が少し透けてきていた。

 これまでダイブしてきたより長く過ごしてきていたのと、めぐみんの力が無くなって来ているのもあるのから精神世界から強制的に退場されるだろうな。

 

「そろそろお別れみたいだな」

「そうみたいだね。最初はカイトの事を一発だけ殴ってやろうと思ってた」

「マジかよ。俺なにかしたかよ」

「これからするんだよ。でも聞きたい事を聞けたからもういいよ」

「そうかよ。俺からも一言だけ言っとくよ……未来を守ってくれとか任せるとか言うつもりは無い。月歌、仲間を大切に生きつづけろ」

「カイトらしいな。わかった、みんなと未来で生きつづけるよ」

 

 そう言ってからあたしは歩いて公園の出口に向かって歩いた。

 たぶんこの公園を出たら現実世界に戻るだろう。

 最後にカイトに会えて良かったよ。

 

 

 

「さよならカイト」

「さよなら月歌」

 

 あたしは未来に向けて一歩ずつ歩んで行った。




次回はおまけのあとがきでーす。
読んでも読まなくても大丈夫ですよ………チラ
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