メスガキやめれないんだが   作:かみゃきち

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 リィンとリリエの2人の視点です。
 時系列が前後しますがご容赦ください。


メスガキと魔術 / 擬魔と撒き餌

 

 

『学生のみなさん! 耐えれば軍府の応援が来ます! なんとか防御に専念し、お客さんやご自身の安全を確保してください!』

 

 

 アナウンスを聞き届けたあと軍府の建物から出たワタシは、校舎と校舎の間を飛び周りながら、状況の観察を行っていた。

 侵入者たちはみな怪しげな灰色のフードを被っており、見た目の怪しげなイメージがカルトを思い起こさせたので、便宜上教徒と呼ぶことにする。

 

 

 実際に学園を見てみて、2つほど発見があった。良い発見と悪い発見だ。

 

 

 

 悪い発見は、想像以上に敵の数が多いことだ。

 見て回った範囲だけでも20人は超えてた。この調子だと学園全体では100人以上侵入されていても不思議ではない。セキュリティの強化が急がれる。

 

 

 良い発見もある。それは、学生が想像以上に善戦していることだ。この学園はエリート学園といっても差し支えないから、優秀な学生が集まっているというのはわかっていたけど。それでも一般客を守りながら、ある程度戦いになっている。

 

 

 

 もちろん勝利できるかというのはまた別の話だが……。

 

 

 

 校舎の上から交戦している学生たちを見る。複数の学生が協力して、光る半透明の魔術障壁を展開し、教徒たちを押し留めていた。

 下級生たちが障壁を大雑把に作り、上級生たちが間を埋めながら、牽制の魔術を使っているようだ。

 

 

 しかし、対峙している教徒2人もかなりの手練れのようで、こちらも魔術障壁で牽制の魔術を防ぎながら魔術による遠距離攻撃を続けている。

 

 

 まだ保つだろうが、ジワジワと学生たちが後退している。

 

 

 ワタシは魔力を抑え、姿を隠したまま、すぐさま魔術の構築を始める。

 

 

 ワタシの魔術が最もポテンシャルを発揮できるのは、巻き込む味方がおらず、ある程度のスペースが確保されているような、2年前の西方戦線のような状況だ。つまり、学生を巻き込みかねない今の状況は、かなり不味いと言わざるを得ない。それでも、いくらでもやりようはある。

 

 

 

 細長い杖のような棒にスコープのようなレンズがついた、遠近関係なく対象を正確に視認できる一等魔道具である《鷹の目》を構え、敵を捉える。

 

 

 

《砲身……、いや、銃身を形成。弾頭、多段階燃焼室を形成。装薬充填。照準よし——点火》

 

 

《【穿て(ディア)魔弾の射手(フライシュッツ)】》

 

 

 

 放たれた四発の不可視の凶弾が、展開された魔術障壁の隙間を縫って教徒2人の両足を貫いた。

 

 

「ぐっ!?」「ぎっ!」

 

 

 

 教徒2人の展開していた魔術障壁が解除された。意識外からの突然の痛みにより魔術の術式(思考)を乱されたのだ。

 

 

 

「? 何かわからんが倒れたぞ! 気絶させろ!」

 

 

 

 その隙を逃す学生たちではない。倒れた2人を攻撃し、最終的に学生たちに渡されていた軍府の特殊機具で拘束した。これで魔術は使用できないし、そもそも身動きがとれないだろう。

 

 

 魔術士は極論、両手足がもがれても頭さえ無事なら戦闘が可能だ。ゆえに、戦闘能力を奪うには特殊な拘束を行うか、頭を使えなくする——気絶させるか、殺すかだ。

 

 事実、ワタシは障壁が解除された瞬間に頭を潰して殺すかどうかを考えた。しかし、彼らはまだ学生だ。殺すよりも穏当な方法を選んだようだ。

 

 

 

 

 ……、まだ敵はたくさんいるんだ。早く別のところに行かないと。

 

 

 

 

 ………

 

 

 

 他の場所にたどり着くと、今度の学生たちは先ほどの集団よりも苦戦していた。見れば、何人か負傷している学生がおり、その学生たちを他の学生が守っているようだ。

 

 

 それに対して教徒が巨大なエネルギー集積体を生成して、そこにぶつけようとしているようだ。いわゆる『タメ技』って感じだな。時間をかけて魔力を集中させて、高威力の魔術でまとめて薙ぎ払うつもりだ。

 

 天華連邦の元素魔術とも少し形態が違う。ヒエロポリスかティレイア辺りの、純粋エネルギー系の魔術かな。

 

 

 

 だめだ。ああいう魔術は下手にあいつを殺せば暴発する。校舎や学生たちが巻き込まれかねない! それなら——

 

 

 

「そこの古くっさいフード被ってるジジイ? ババア? どっちでもいいや! こっち見たら!?」

 

 

 

 潜伏を解除して地面にフワリと降り立つ。突然現れたワタシに困惑しつつも、『タメ技』を維持しているもの以外の教徒たちが、炎や剣を飛ばす魔術で攻撃してくる。

 

 

 やはり反応が早く躊躇いがない。ある程度場馴れしている術士たちだ。でも——

 

 

 

 すべての魔術はワタシの眼前で、何か目に見えない壁のようなものにぶつかって止まる。

 

 

 

 ——その程度でワタシに通用するわけがない。

 

 

 

「え〜?? なにそのヨワヨワな魔術? もしかしてぇ、手加減してくれてるのぉ?」

 

 

 

 ついにエネルギー集積体を維持している術士がこちらに狙いを変えた。

 

 

「や〜ん。こわ〜い。 負けちゃ〜う」

 

 

 こちらにエネルギーの塊が迫ってくる。生半可な術士の障壁を貫くのに十分な威力を伴ったそれは、無防備に見えるワタシに真正面から直撃した。

 

 

「な〜〜んてね」

 

 

《防護膜を自動(オート)から手動(マニュアル)に。魔術の拡散による二次被害防止のため、着弾とともに包み込むような形状に変化》

 

 

 

 魔術が炸裂し、爆炎による眩い光が辺りに広がる。

 

 

 

 その爆炎によって生じた煙の裏から放たれた魔弾が、またも正確に教徒たちの足を撃ち抜き、支えを失った彼らの身体は崩れ落ちた。

 

 

 

「あっれぇ? なんで地面に頭擦り付けてんの? ワタシにビビって、ゆるしてぇ〜って無様な懇願ですかぁ?」

 

 

 

「こ、こいつらだけでも……」

 

 

 お? 一人だけ足がぐちゃぐちゃになる傷でも魔術を編めているやつがいる。狙いは学生たちか。学生の避難は間に合いそうにないし、他になんとかできそうな人員もいない。

 

 

 

 

 

 

 

 ……じゃあ、仕方ないか、仕方ないよな。

 

 

 

 バヂュッ。と、魔術の発動をしようとした教徒の頭部に大きな風穴が空いた。

 

 

 なんのために足狙ってると思ってるんだ。学生が()()に入るのを防ぐためだぞ。地面に倒れているお前らの頭だったら狙い放題だ。

 

 

 

 ……他のやつらも両手足くらい撃っておくか。

 

 

 

 

 

 

 それぞれの教徒に弾を撃ち込み、次に向かおうとしていると、怪我をしている学生が目に入った。この子はとてもリリアに似ており一瞬動揺してしまったが、別人だと気づいて安堵した。彼女に息があることを確認すると、近くの隠れられそうな場所にさっと彼女を運んでおいた。

 

 

 

 

 みんなは無事だろうか。友達を探したいが、ここで優先順位をつけるわけにはいけない。いけないんだ。これは仕事だし、友達を優先して他の人を助けないなんて、そんなやつだめだろ。

 

 

 

 ……くそが。

 

 

 

 ワタシは、一刻も早く事態に収拾をつけるために飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜(※リリエ)

 

 

 

 

 学科交流会2日目。私とお姉ちゃんは、2人で色んな場所、特に部活の出し物を巡っていました。

 

 

 昨日2人で話し合ってたら、これから普通に暮らすんだったら、思い切って部活動なんか入ってみるのもどうかって話になって。

 

 

 それで、お姉ちゃんがトイレに行っている間に、変な男の人に声をかけられたんです。

 

 

 

「ハイ。エ〜ッ、お嬢サン。(ワレ)は知っていますよ。貴方が擬魔(ミミック)の先祖返りですね?」

 

 

 

 ゾワリとしました。そもそも変な人だったというのもありますが……。背丈が私たちより低いというのに、対峙していると独特の威圧感を覚えます。

 それに、フィーシャさんのように、経験から私たちが先祖返りだと感じたとしても、擬魔の先祖返りだなんて特定の種族がわかる人がいるとは思えなかったからです。

 

 

 つまり、異常です。《會》と関わりがあるかとしか思えませんでした。

 

 

「さて、こちらについてきてください」

 

 

 私は、それに従う他ありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 人通りが少ないところまで移動させられました。つくづく私たちはこのような場所に縁があるようです。結局のところ日陰者ってことなんでしょうか。

 

 

 

「それで、あ、あなたは誰なんですかぁ?」

 

 

「吾はヒマリア。コロボックルの先祖返りです」

 

 

 先祖返り。()()()()()()()をはじめて見ました。それにしてはそこまでの威圧感を覚えません。これは私がそれに近い状態だからでしょうか。

 

 

「吾は貴方を吾の所属する組織、《星の子ら》に勧誘するために来ました、ハイ」

 

 

 困惑。《會》では、ない? 聞いたこともない組織です。

 

 

「エ〜ッ。《星の子ら》をご存じないのですね? 《星の子ら》は簡単に言うと、先祖返りによる、先祖返りのための組織です。ハイ。吾々先祖返りは生まれながらに縛られているのです。血筋を重んじる家系に生まれた先祖返りは担ぎ上げられて自由を奪われ、雑多な有象無象から生まれた先祖返りは畏れられ、疎まれる」

 

 

「そんな吾々が、劣等な薄血人どもに見切りをつけて、星の子、つまり原種魔族——この言い方はあまり好きではありませんが——の先祖返り同士助け合って生きていこう、という組織であります」

 

 

 聞いている限り、とてもまっとうな組織には思えません。それに私たちは……。

 

 

「では、ではではでは。さっそく先祖返りとしてどれほどの純度なのか、見させていただきますとも。ハイ」

 

 

 男はいつのまにか私の腕をつかんでいました。力が強い。逃げられない。早く逃げないと——。

 

 

 

 なにやら男がぶつぶつと唱えている。しばらくすると男の額に冷や汗が浮かび始め、どんどんと険しい顔に変わっていきます。

 

 

 ダメだ。誤魔化せてない。

 

 

 

 

「ば……、馬鹿な……。なんだこれは。こんなことが許されるものか」

 

()()()()()!!」

 

 

「がっ、うぐ」

 

 

 つかまれた腕を強引に引っ張られ、近くの壁に叩きつけられます。……一瞬肺の中の空気が押し出されて、息ができなくなりました。

 

 

 

 

「貴方……!! いや、貴様!! なんだ、なんだそれは!? 偉大なる星の子が、貴様の身体に混ざっている!!」

 

 

 

 正解です。私たちは、【人工先祖返り】。原種魔族の一部を強制的に取り込んで適合した、彼らに言わせてみれば下等なものたちと星の子の混ぜものなんでしょう。

 正当な、自然に祖先の力が発現した先祖返りとは似て非なるものです。

 

 ……《會》の、実験成果の一つです。

 

 

 

「あ、あのクソども……。吾々にガセ掴ませやがったなァァ!」

 

 

 

 もう、なんとなくわかってきました。《會》は、私たちをこいつらの餌にしたのでしょう。

 なぜそんなことをしなければならないのか、矮小な私には全くわかりませんが。

 

 あぁ、だから會員証を回収したんでしょうか。あははは……。

 どうせここで私たちは殺されるから、自分たちにつながる証拠を残したくなかったと。

 

 

 ……私ってけっこう頭いいんじゃないでしょうか? お姉ちゃんに、褒めてもらえるかな。

 

 

 

 

 

「くそっ! もういい……!! もう一つの目標は……。——あぁ、そちらは順調のようですね、ハイ」

 

 

 

 どこからか赤い煙が立ち上っていくのが見えました。それに対して、目の前の男もなにやら筒のようなものを発火させて、同じような、色の違う青い煙を空に上らせていきます。

 

 

「エ〜ッ。あちらが順調なら良いでしょう。吾も聞きたいことはありますが、もう貴方に構っている時間も理由もありません。ハイ。汚らわしいのでさっさと死になさい」

 

 

 男がこちらに指を向けます。指の先には黒いモヤのようなものが集まっており、嫌な気配をゾクゾクと感じさせます。あれはダメだ。人に向けていいようなモノじゃない。

 

 

 

 死ぬ。シぬ。しぬ。

 

 

 

 

 たすけて、お姉ちゃん……。

 

 

 

 

 

 

 

 いつもみたいにたすけにきてよぉ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつもみたいに?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……なんだそれは。

 

 

 ——思い出すのは昨日の夜の記憶。リィンさんたちと、これからどう生きていくのか相談したときのこと。2人で助け合って生きていくと、そんなありきたりなことをはじめに、改めて決めたんだっけ——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「———げほっ。う、あぁあぁぁぁ!!」

 

 

 

《【再現(リエネクト)】=【導火閃】》

 

 

 

 

 炎の線が浮かび、男に向かって空を走った。

 

 男、ヒマリアは当然のようにそれをかわしたが、相手の指のモヤと嫌な感じは消えていた。

 

 

 

「エ〜ッ。おや、抵抗するのですか? 意外です。そんな気概があるとは思いませんでしたよ。ハイ」

 

 

「汚らわしい貴方でも、大人しくしていれば安らかに送ってあげたものを。それは擬魔の力ですか? ……。本当に使えるとはね。ますます汚らわしいです」

 

 

 

 すっ、とリリエは手を前に掲げる。

 ユーに教えてもらったのだ。直感派のリリエなら、魔術を放つときのイメージを固め、感覚で照準を定めるために、決まった動作をとるのも有効だ、と。

 

 

「【再現(リエネクト)】!!=【導火閃】——」

 

 

 声を出すのも同じように有効だ。魔術の効力を高めるためにも。

 

 

「——三連!!」

 

 

 

 先ほどよりも太い3本の閃光が、それぞれの角度で空を走る。ヒマリアは先ほどと同じように、飛び跳ね、駆け回り、それぞれを回避している。

 

 

「馬鹿の一つ覚えですか。それ以外にモノマネできないのです——」

 

 

 

 突然、死角から現れたこぶし大の石が、頭めがけてヒマリアに飛ぶ。

 それを無理に回避したことで、体勢が崩れた彼に、急に曲がった閃光が直撃した。

 

 

「——クソガキィ……」

 

 

 ヒマリアは閃光を、地面から奇怪な植物のようなものを生やして防御していた。

 

 

 

 ——リリエは【再現】に合わせて、同時に【礫弾】を使用していた。

 【再現】にはあまり集中力を要しないため、通常の魔術を併用することが思いのほか簡単であると、友達2人との魔術講義で気づいたのだ。

 

 もちろん、リリエはまだ未熟なため、せいぜい【礫弾】程度の難易度の魔術が限界だが。

 

 

 

 

 

 

「さ、さっきまでの気持ちが悪い口調が崩れてますよぉ……。あ、焦ってるんです?」

 

 

「えぇと、こ、こういうときなんて言うんだっけ。……『ざぁこ、ざぁこ♡見下してるやつ相手に余裕なくなっちゃっててダサ〜い♡』 って感じですかね、リィンさん?」

 

 

 

 いらんことを吹き込んだ、ここにいない友達に勇気を貰って、眼前の敵に声を震わせながら悪態をつく。自らを奮い立たせるために。

 

 

 リリエはいつの日かの不格好なファイティングポーズをとっていた。

 

 

 姉がいなくても、自分は戦えるの(大丈夫)だと。いつも守ってくれる姉と同じように。

 

 





プロフィール

●リリエ・モンファン
年齢 : 15
身長 : 146 cm
好きなもの : お姉ちゃん、ユー、リィンさん、声真似、飴、フィーシャさん
嫌いなもの : 研究所、《會》、苦いもの

★魔術に関するステータス的なもの★
●リリエ・モンファン
魔力量 : C
精密性 : C
干渉力 : C
干渉容量 : C
身体強化 : D
特殊 = 擬魔(再現): A

(現時点でのもの)
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