地の文や主人公視点ばかりの話には今のところつけていません。
とりあえずこれでいくので、よろしくお願いします。
天華連邦はこの大陸において3本の指に入る巨大国家である。4つの強大な力をもつ最高位貴族である四霊大家をはじめとした数多くの門閥貴族たち、そして門閥貴族から土地を与えられた士族がその広大な国土を分割して統治している。
天華連邦には六つの行政機関である六府が存在するが、その中でも軍府はここ100年ほどで、士族の台頭と同時にその権力を拡大しており、いくつもの実質的な直轄地を持っていた。
その森は、そんな広大な天華連邦の中でも、軍府直轄の領土近くにあった。
すでにすっかり日は落ちきって、静まり返った夜の森にぼんやりとした人工的な光がポツポツと灯る。その光は青白く、見るものに不気味さを感じさせるものだった。
その光に照らされて体格のバラバラな人影が一つ、二つ、……数十ほど、夜の森に浮かび上がる。
それらは全員が灰色のフードを深く被っており顔ははっきりと見えない。
その中でも特に巨大な人影が口を開いた。
「それで、例の情報の裏はとれましたか?」
「ハイ。エ~ッ、すでに天華連邦出身の同胞によると、星遺物は件の学園に運び込まれた、と」
「では【覚醒者】候補に関しては?」
「エ~ッ、そちらに関しては、学園内への侵入リスクが高く判明はしておりませんが、妙に近寄りがたい雰囲気の平民がいるとの情報を得ましたところです、ハイ」
「可能性は十分にありそうですね……。やはり別の場所よりは優先順位を高めるべきでしょう」
巨大な影の存在感が増していき、少しずつ巨大になっているように見える。否、実際に二回りほど大きくなっているのだ。
巨大になった影は声を震わせ、周りの影たちに呼びかける。
「では行きましょうか。同胞を迎えに――」
「――我ら真なる星の子に、幸あらんことを」
「「「「幸あらんことを!!」」」」
巨大な影をはじめとして、影たちが消えていく。
翌朝にはその森に彼らがいた痕跡は何一つ残っていなかった。
~~~
「そんで、学科交流会でなにかすんの?リィンっち」
「なにって……。なに?」
現在俺は学園内部に存在するカフェで朝食をとっていた。
カップに入ったスープ、パンと肉と野菜のプレートを前にして、さきほど偶然会ったフェイと朝ご飯を食べながらたわいない雑談をしていたところ、よくわからないことを聞かれた。
「いや、学科交流会で催し物とかしないのか、ってコト。学科交流会って、〈交流会〉っていってるけどようはお祭りみたいなもんじゃん。例年、交流会期間中は部活動とかが、新入部員勧誘してたり、個人でお店とか出してたりするって聞いてるよ~」
ああ、たしかに昨年度の資料整理してたらそんな感じだったな。ええと、前世的には〈文化祭〉に近い催しなのかな?とか解釈してた。それに新入生が入学してすぐに行われるから、勧誘とかも兼ねてると。
あと、これはびっくりしたのだが、この学園は入学して〈学科交流会〉終わりくらいまでなら所属する学科を変えられるらしい。おそらく〈学科交流会〉で出し物や催しを経験して、他の学科に興味をもつ人が多いからだろう。ゆえに、各学科の代表者たちは自身の学科の魅力をアピールするため、学科単位の集団をつくって何かを企画していることが多いようだ。
「あ、でもそういえばリィンっちって〈普通科〉だよね。う~ん。普通科じゃ学科としての催しはあんまりないかも……。そうだ、部活とかは?」
「学監会がもう部活みたいなもんでしょ。そもそもワタシみたいな超絶怒涛、天地開闢の天才に見合う部活がなかっただけだしぃ」
「……。日に日に大げさになってね?天才さん。まぁなんかそれもリィンっちっぽいっちゃっぽいね。――で、さっきから一言もしゃべらないメガネくんはどうなのよ?」
ちなみにここは四人席である。俺と会計ギャルことフェイが対面で話している今、フェイの隣にはメガネくんことコウが、キラキラきらめく液体のロープに縛られて座っている。
無理やり連れてこられた彼は不機嫌そうにしている。そりゃそうだろなんで連れてきた?生徒会室にいたからなんとなく?ああそう。
「僕は〈技術開発科〉の技術展覧会に参加する、というか企画側だ。そもそも僕は技術開発科代表だぞ?……まだ入学一か月だからうまくできているか自信がないが、先輩方の力も借りながらなんとかやってる」
「なるほどねぇ、じゃあさっきからずっと浮いてるやつも展覧会関連のブツ?」
縛られてるコウの顔の横くらいに、腕のようなパーツが2本、移動した場所に光の軌跡を残しながら飛び回っている。
「まぁ、そうだな。個人的な制作でもあるが、展覧会でも紹介するつもりだ。これは魔術による身体拡張技術の一環で作成したもので、腕の機能を持たせたものだ。……なに?腕がなくても魔術でモノを移動させることはできる?ふん、素人が。腕の機能を複雑かつ高度に再現したい場合、腕らしい機構を事前に用意して、それを魔術で操作したほうが効率いいに決まってるだろう。ん?まだあるのか?その肩の先から出てる炎に意味はあるのかだって……??」
「…………。ロマンのわからんやつめ………」
あぁ黙っちゃった。
腕の機構、というよりも腕だけのロボットだな。このロボットは腕を肩くらいまで再現しているようで、肩の部分の断面から青白い炎が絶えず噴き出しながらコウの周りを旋回している。なんというか、青い炎はロボットモノのブースターみたいに見える。腕型のファンネルに近いかもしれない。
まぁ、正直。
「ちょっとかっこいい」
「!!!」
その瞬間、メガネの奥の瞳が、ブースターの炎に負けず劣らずの輝きを放ちはじめた。あっ、すでにフェイが「げっ」みたいな反応をしてる。
「そうだ!!よくわかってるじゃないか!!!」
「きれいな青い炎が出てたらかっこいい!それでいい!それこそロマンだ!!」
うわぁ、急に興奮するな!
コウはもはや椅子から身を乗り出してどや顔している。腕が縛られていて動かせないのに器用なことだ。うわ、機械の腕が、生身の腕の代わりに腕組みしている。ちゃんと腕として使えてるじゃん、すご。
フェイがロマンってなに?みたいな文句をつけているのを聞き流しながら、俺は交流会のことを考えていた。
もう交流会の本番は来週からか。交流会の期間は3日間あるんだよな……。実はこの3日間に書記の仕事はあまり忙しくないのだ。たぶん終わった後にはもろもろの書類整理とかで忙しくなるんだろうけど。
つまり、3日間暇である。講義もないし、いつも暇なときに通っている学内図書館もたぶん催しものをやってるから開放されてないし。しかたない、どこか適当なところをブラブラ回るか。とりあえず何をやってるか調べておこう。できるだけ騒がしくなさそうなところがいいな……。
ふとスープを飲もうとカップに左手を伸ばす。――考え事をしていたからか、『操作』をミスしてカップに手をぶつけてしまった。
あっぶな……!!
セーフ。
カップは空中で静止し、中のスープもこぼれていなかった。
ふう、よかった。スープ間違えてぶちまけるとか、なさけなくてメスガキっぽくないからな。
――違う。メスガキなんてくだらないこと、やめないといけないんだった。
――くだらない……?
――くだらなくなんかない。そうだ、これは俺にとって必要なんだ。そうでなくちゃいけないんだ。
うん、そうだ間違えてた。メスガキをやめたいのは年齢的にキツイからで、くだらないなんて理由じゃなかった。あ~よかった。じゃあ急いでやめる必要もないよな。ちょっとずつ脱却していこう、そうしよう。
「……リィン君、大丈夫か?」
「?どうしたの?ワタシの鮮やかなリカバリーに惚れ惚れしてる感じ?」
「いや、なんでもない」
ううむ、ちょっと考え込みすぎたかな?急に人が黙り込んだら怖いか。
「……大丈夫ならいいケド。リィンっち、一日目の午前中に、適当なところ回らない?そこの時間帯予定空いててさあ。よかったら、どう?」
えっ。いや、いいけど。うん。
「嫌?」
「いっ、いやじゃない!ちょっとびっくりしただけだから。わかった。午前中だけならワタシの時間を貸してあげる」
「おっ!了承いただき~!じゃあ今度何見るか一緒に決めよ?」
これ二人きりの流れか?や、やばい。俺はもともと陰キャなんだよ。特に二人きりだと会話がおぼつかなくなるタイプのほうの。メ、メガネ。助けてくれぇ。
「……何見てるんだ。僕はいかないぞ。学科の企画があるって言ってるだろう」
オワタ。
~~~
ちなみにだが、ミミック姉妹と恐怖症くんと俺は前回の実技講義を特例で後日受けなおし、見事にクリアした。結局それまでに何度か集まって魔術についての講義を続けていたのだが。
意外にも、活発そうな姉のほうが『論理派』で、おとなしそうな妹のほうが『直観派』だったことが判明したときには驚いたものだ。
ここでいう論理派・直観派とは、魔術を扱う上でどのような面を重視するのかという好みというか、スタイルのことで……。学術的なものというよりももっと俗な、いわゆる陽キャ・陰キャといった枠組みに近い扱いのアレだ。
魔術は個人のイメージをもとに現実を書き換える術だが、魔術の効力は主に『魔力』『魔術理論への理解』『イメージの強さ』に左右される。
この中で『魔力』は個人差が大きいので除外するとして……。魔術理論を学び、『魔術理論への理解』をより求めるか、自分の中の絶対的な価値観を固め、『イメージの強さ』を強化するか、それぞれどちらを重視するのかといったスタンスの違いから前述した派閥に分かれている。
ちなみにさっき陽キャ・陰キャと形容したのはべつにただの例えではなく、実際にそんな感じのイメージで浸透しているからだ。論理派は頭でっかちでお堅い、直感派は考えなしで奔放というステレオタイプが蔓延している……。
ぶっちゃけ両方鍛えれば一番強くね?と思うのだが、理論の学習と思い込みの強化の相性は思いのほか悪いらしく、どっちかに得意不得意が傾く人が多いみたいだ。
今なんでこんなことを考えているのかというと、学科交流会のパンフレットを見ていたときに〈魔術理論科〉の出し物が目に入ったからだ。
題目は〈火の元素魔術による風の発生について~火と風の元素の関連~〉〈構造強化魔術の持続時間と干渉力、現実子濃度の相関についての考察〉……etc。
いやいやいや、お堅いって!もう出し物じゃなくて学会だよこれじゃあ。学問嫌いな人とかタイトルだけで頭痛起こしそうだ。だから偏見が発生するんだぞ。
俺はちょっと気になってる。一人で見に行こうかな。
「なんかよさげなものあった?」
今は俺の寮の部屋で、フェイと学科交流会でのイベントを眺めていたところだ。
はい、我が家です。なんか今日の仕事が終わって帰ろうとしてたらゴリ押しで侵入されました。
ギャルの行動力怖いよう。脳の神経フルに使ってなんとか会話してるわ今。
「ううん。興味があるものはちらほらあるけど。絶対あなたの趣味じゃないと思うし」
「ふ~ん。一応言ってみてよ」
「〈文化研究科〉の歴史博物館……。最近貴重な原種魔族の遺骸が運ばれたって聞いたから……。」
「……なんというか、もうそろそろ慣れてきたケド。けっこうシブい趣味してるよね、リィンっち」
しょうがないじゃん!異世界ファンタジーはロマンなんだよ!興味あってもいいだろ!
「じゃあソコ行こっか」
「えっ?いいの?」
「まあね、友達の趣味くらい理解してみたいっしょ?それに、そこ見終わったら私と学園フリーマーケットでアクセサリー探してもらうかんね!」
「――。一応感謝しとく」
「いやいやいい~って。むしろフリマでいい?ほら、地味でわかりにくいけどリィンっちって、羽に飾りつけてるじゃん。だから一応そういうの興味あるのかと思ってさ」
いろいろ見てるし、考えてくれてるんだなぁ。さすがは真の陽キャ、陰キャにも優しい完璧な存在だ。陰キャをいじめる陽キャは陽キャだと思ってないから(辛辣)。
しかし考えてくれてるところ悪いんだけど。
「実はワタシ、あんまりアクセサリーとかよくわかってない」
「もう驚かないけどみんなのイメージからどんどん乖離していく気がするわ」
フェイは頭をひねっている。
う~ん、それはまずいか。メスガキロールプレイが崩れる。
――いや、ここまで親身になってくれる人なら、ちょっとくらいはいいか。こういう身近なところからゆっくり方向転換というのも悪くないのかもしれない。
「今つけてるものは手作りしてもらったものなの」
「……さっきは地味でわかりにくいとか言ってごめん」
「いやいや、いいから。ワタシも自分にふさわしくない地味でチャチな羽飾りだと思ってるしぃ?」
「じゃあ、どうして?」
――ずっとつけてるの?ってことだろうな。
そりゃあもちろん。
「将来もっっっと豪華なやつと交換してもらうためよ!」
うむ、我ながらなんとも傲慢でメスガキっぽくてよき。
あんまり書くタイミングないから主人公の見た目のイメージでも書いとこうかな。
自分の中のイメージを損ないたくない方は注意です。
・髪は桜色のミディアム。桃色の羽が頭の側面から前方にかけて生えてる。
・羽にはピン止めのような飾りをつけているが、地味で目立たない。
・桃色の瞳。瞳孔が縦長。
・首に黒い直方体をかけている。
・学園の制服の上から、腰が隠れるくらいの大き目の上着を着ている。
・下は短めのスカートをはいている。ふとももガン出し。
★魔術に関するステータス的なもの★
●フェイ・メイリェン・
魔力量 : B+
精密性 : A
干渉力 : B+
干渉容量 : C
身体強化 : B
特殊 = 障壁強化 : E
(魔力傾向 : 水)