メスガキやめれないんだが   作:かみゃきち

9 / 11
 
 GW最終日にギリ間に合いました。
 ちょっと短めです。

 視点がだいぶわかりにくいかもしれませんがいったんこれでいきますご容赦ください……。


メスガキと事変

 

 ここはどこ? 何をしてたんだっけ?

 

 

 

『リィンさん! なんでもかまいません! 意外な趣味でも』

 

 

 目の前のリリエから質問が飛んできた。

 

 あぁ、そうだ。今は4人で合流して、ええと、ワタシの秘密を言うんだっけ。

 

 ワタシの秘密、ワタシの秘密は……。

 

 

 

 

 

 ……ワタシの秘密って何だ?

 

 転生者だってこと?

 中身が男なこと?

 

 実はけっこう高貴な身分なこととか、戦略級魔術士であることか?

 

 

 それとも、生意気な態度はただのごっこ遊びだっていう馬鹿みたいなこと?

 

 

 

 

 

(お前)はいったいなんなんだ?』

 

 

 

 いつの間にか、周囲の景色は溶けて消え、白い壁とカーテンを蛍光灯が照らす病室に変わっていた。

 

 そしていつのまにか目の前の大きなベッドには、いくつもの管に繋がれ、呼吸器を着けた若い男がいた。男は痩せ細り、今にも命が尽きそうだ。その瞳は濁り、まだ生きているにも関わらず、すでに死人の色を見せている。

 

 

 

 男から声が聞こえる。男は話せる状態じゃないはずなのに。その発話能力はすでに奪われているというのに。

 

 

 

『生まれ変わったとき、何かを、なんでもいいから成し遂げたいと願った』

 

 

 

 ……まぁそうだな、結局こんな俺じゃ無理だったんだ

 

 

 

『そうだ。何もなせない、いや、俺のような人間が何かをなそうと思うこと自体がおこがましかった』

 

 

 

『俺の、本当に、一切の擁護ができない、くだらない目標が人を傷つけた』

 

『そして、それを、それを撤回することもできないんだろう!! お前には!!』

 

『当然だよなぁ、人を傷つけてまで進めた目標がくだらなくて、いつでも撤回できるようなものだなんて!』 

 

 

 

(お前)のような空虚な人間が、今更受け入れられるはずがない』

 

 

 

 男の語気が弱まった。代わりに、ピッピッピッと無機質な電子音が鳴る。うるさい、うるさい。

 

 

 同時に、病室の壁がボロボロと崩れ始める。

 

 

 

『その目標がどれだけくだらなくても、今更撤回する勇気なんて出ないよな』

 

 

 男の声はどんどん弱くなっていく。命が、消えていく。

 

 病室はすでに形を成していない。その崩れ落ちた壁の向こうには無数の死体が積み重なっていた。すでに男はおらず、壁の向こうの死体が一斉にこちらを見た。それでも、かすかな声だけがまだ響いている。

 

 

『だって、その目標のために、 (お前)は多くの人間を傷つけてきたんだから』

 

 

 

 

 

「うるさい」

 

 

 

 ブツリ。

 

 

 ………

 

 

 

 

 学科交流会、2日目。

 

 日はすでに高く上り、みんながお昼ご飯を食べ始めるころ――。

 

 

 いつもどおりの悪夢から目覚めた俺は、自室のベッドからもぞもぞと這い出していた。

 

 

 

 ……寝すぎたぁ。

 

 

 

 

 

 ………

 

 

 

 

 はい、布団から出てきたメスガキです。おはようではなくこんにちは。

 

 う~んちょっと疲れてたかもしれない。昨日はずっと動いてたしな。それに、今日特に予定があるわけでもないから油断していた。

 

 

 正直今日は引きこもっててもいいような気もするのだが、メスガキとしてそれどうなんだという話がある。

 

 

 ううむ。今日もリリアとリリエとユーにでも絡みに行くか。でもそれでほかに友達いないの? って言われたら嫌だなぁ。いや半分事実か。…………ふんだ、軍府に友達いるもん!! 自信もって友達って言えるの一人だけだけど!

 

 

 そうだ、会長に謝りに行くか。むこうがあのときのことをまだ覚えているかはわからないが、ストレスの要因になりかねないものは減らすべきだ。昨日のリリア&エの話を聞いていた限り、周りの人間の態度に辟易してそうだったし。

 

 

 

 そりゃそうだよな。四霊大家っていったら、他の国でいうところの王族に近い存在だ。位の低い門閥貴族や士族、平民は畏れ敬うし、位がある程度高い高位の門閥貴族は媚びへつらうだろう。

 

 

 議会で有する票数も、領地の広さも、その兵力も、財力も。他の家を圧倒しているからこそ別格で四霊大家などと言われるのだ。

 

 彼らはこの国に多大なる影響を及ぼすことのできる存在。逆にその血族である限り、嫌でも天華連邦という国家の視線から逃れることはできない。

 

 

 

 

 ……あ~っ、嫌なこと思い出しかけた。やめやめ、会長探しにいこ。ついでにロボットロマンメガネも交流会中話してないし、そっちも探そう。

 

 

 

 

 

 ………

 

 

 

 

 

 結局メガネこと、コウは見つからなかった。

 技術開発科の催しをやっているスペースに行って勇気を出して聞いてみたが、不在とのこと。

 

 

 なにやら元気そうな女の子に、今朝早くからどこかへ連れて行かれたそうだ。特徴を聞く限りフェイっぽい気がする。仲いいなあの2人、何してるんだろ?

 

 

 会長はわりとあっさり見つかった。

 学園中央の広場の噴水近くで、なにやら立場がありそうな人たちに囲まれてお話をしている。

 

 

 ここに突入するのはちょっと無理だな。そもそも、知り合いが別の人たちと仲良さそうに話しているところに話しかける度胸がないっていうのもあるけど、それ以前に貴族の会話に横入りしてもろくなことにならない。学監会の書記とはいえ、知らんやつが急にやってきたら、確実に機嫌を損ねるだろう。

 

 

 

 

 

 おとなしく会話がひと段落するのを待つが吉だ。

 

 

 

 と、思っていたのだが。会長がこちらを見つけたようで、こちらに手を振ろうかどうか逡巡して、一瞬手を持ち上げるような動作をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は、目を奪われていた。

 

 

 会長に、ではない。会長の背後の空に、煙のような一本線が高く高く上がっていくのが見えたからだ。

 

 いや、一本ではない。学園の各地からさまざまな色の煙の柱が勢いよく立ち上っている。

 学生たちも一瞬事態を呑み込めずにいたものの、勘のいいものたちは何かがおかしいと思い始めている様子だ。

 

 

――これは、原始的な信号魔術だ。昔から広く使用されてきた、位置とタイミングを味方に教えるためのシンプルかつ大した工夫もない、敵にもその視認が容易なために軍府では使われない古い様式の。

 

 

 

 いつのまにか、広場の中心には5人ほどの怪しいローブをまとった集団がいた。

 

 

 

 その中の一人の体が突如として異様に膨張していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………

 

 

 

 

 

「さて、はじめますか」

 

 

 

 その膨張した大きな人影は、近くの手ごろな学生に向かって巨大な腕を振りおろした。

 それが直撃すれば、学生は赤黒いミンチになることだろう。

 

 

 

「おや?」

 

 

 

 人影は、疑問を浮かべた。確実につぶしたと思ったのだが、その感触がない。腕は空を切ったようにからぶった。

 一瞬遅れた悲鳴が自分から遠ざかっていく。仕留め損ねた学生のものか。

 

 

 ――視点が、妙に高い。

 

 

 

「なにものですの? あなたがた」

 

 

 

 自分の下のほうから女の声が聞こえる。下、下。下? ――なるほど。

 きらめく黄色の髪をなびかせた女が、敵意をあらわにしてこちらをにらみつけている。

 

 

 自身の立つ地面に魔力を感じる。私が、地盤ごと上に上げられたのか。

 あの一瞬で。

 

 

 次の瞬間。思考を重ねていた巨大な人影の、頭部分がザクロのようにはじけ飛んだ。

 

 

 

 

 ……なるほど、もう一人厄介な術士がいる。

 あの少女か。

 

 

 いつの間にか広場の噴水を飾る装飾の上に立っていた桜色の髪の少女が、手に取った長い棒のような魔道具をこちらに向けている。

 

 

 つぶされた頭を再生させながら、どう戦うかを組み立てる。双方、近接術士には見えない。ここは速攻をかけるべきか。

 短期決戦用に身体を調節する。ゴリゴリと音を立てながら、膨張した身体はまたも自身の思い描く形にさらなる変形を始めていた。

 

 

 

 

 ………

 

 

 俺は、先ほど頭を吹き飛ばしてやった巨人が再生を始めたのを見て舌打ちをしていた。

 

 

「ちっ! きもっ! なんでまだ生きてるの!?」

 

 

「リィンさん! ここはわたくしに任せてください!」

 

 

「何を言って……」

 

 

 

 ドカン!! という大きな破裂音が、遠くのほうから聞こえた。

 学園のあちこちから、悲鳴らしき声が聞こえてくる。

 

 

 くそっ! ここだけじゃない。煙の信号が大量にあった時点でほぼ確定だったが、この騒動、いや、襲撃は学園中で起きているようだ。

 

 

 

 このままでは学生や交流会の一般参加者に大きな被害が出てしまう。

 この学園は軍府の直営とはいえ、ただの学園で軍事拠点でもなんでもない。そもそも大規模な攻撃を受ける想定がされていない以上、配備されている兵の数は大したことがない上、現在この学園の理事長は出張中だ。

 

 

 

「あなた! この学園、いや、軍府に対してなんらかの権限をもってますわよね!? それを使って、この学園全体をなんとかしてくださいまし!!」

 

 

「わたくしは、この明らかにやばそうな方々から片付けますわ!」

 

 

 大きな人影、いや、大男か。それが近くの屋台をつかんで、こちらに向かって投げた。

 

 それをフィーシャは、地面から生やした、土で作られた巨大な壁を使って防ぐ。

 

 

 

「わたくしを信じて! ここにいる方たちは傷つけさせません!」

 

 

「――――っ! わかった!!」

 

 

 

 飛んでいく直前、ふと、先日の発言を謝ろうとしていたことを思い出した。

 

『どんな間柄であっても、感謝や謝罪はできる間に伝えるべきだ。どんな要因であれ、終わってしまえばそれは叶わなくなる』

 

 一瞬の逡巡のあと、口を開こうとしたとき。

 

 

 

「そうだ――先日、失礼なことを言ってしまい申し訳ございませんでした。今度お詫びに、一緒にお茶でもいかがです?」

 

 

「…………っ! うんっ。ワタシこそごめん! こんな雑魚、さっさと蹴散らしてこっち手伝いに来てよね!」

 

 

 

 俺は、軍府の連絡網が設置された校舎に飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一生のお別れの言葉がアレでよろしいのですか?」

 

 

「………」

 

 

「まあいいでしょう。こちらとしても一人減って正直助かりました」

 

 

「何か勘違いしてますわねあなた」

 

 

「なんでしょう?」

 

 

「わたくしは、足止めのつもりなどありませんわよ」

 

 

 ズズズズ……。と、重々しい音を立てながら、地面が脈動する。その流れは徐々に大きくなり、大地の波が大男を襲った。その波はすでに一般的な家屋を超える大きさの男を飲み込むのに十分に巨大であり、瞬時に飛びのいた男の片足を巻き込んだ。

 

 

 素早い判断で足をちぎった男は距離をとり、欠損した足を再生させる。

 その間、部下4人は様々な角度からフィーシャにけん制の魔術を放っていたが、彼女はそちらを見ることもなく黒く輝く宝石を思わせる盾を周囲に展開し、すべての魔術をはじき落とした。

 

 

 地面はなおも流動しているが、その中心にいるはずの年若い麒麟(フィーシャ)はまっすぐに立ったまま、男を見つめている。

 

 

 

 

 

「全員、さっさと倒してお手伝いにいきますの」

 

 

 

 

 

 ~~~

 

 

 

 

 軍府管轄の校舎にたどり着いた俺を迎えたのは、いつも連絡を行っている女学生に扮した諜報員を含む軍府の残留勢力だった。こんな事態じゃなかったら、アイドル活動についてでも聞きたかったんだけどな。今はそれどころじゃない。

 

 

「こんにちは、リィン様」

 

「そんなあいさつはいいから! どうせ何か軍府から――」

 

「理事長と、通信がつながっております」

 

 

「………!!」

 

 

 

 俺は渡された魔道具の端末を起動させると、ノイズの混じった理事長の声が聞こえてきた。

 

 

 

『……すまない。まさか学園が直接狙われるとは』

 

「そんなことは今はどうでもいいの! とりあえず指示ちょうだい! それと臨時の指揮権か、大規模戦闘の許可!!」

 

 

 

『もちろんだとも。学園内の兵士、諜報員の指揮権限はすでに君に移っているよ。……実は昨日の晩にある筋から連絡があってね。すでに《白鍵》の小隊をそちらに送り出している』

 

 

「……到着はいつ?」

 

 

『おおよそ二時間後、といったところかな』

 

 

 

 ――――おそい。それでは被害が馬鹿にならない。

 

 しかし、おそらくそれが全力なのだろう。

 

 

「わかった。でも少し数が心もとない気がする」

 

『【聖火抱擁】の強化魔術を受けている』

 

「あのババアか……。じゃあまだなんとかなる、はず」

 

 

 

 

 

 少しの沈黙のあと、理事長は心底申し訳なさそうに口を開いた。

 

 

『すまない。苦労をかけるね』

 

『……それでは、正式な軍府からの命令を、《黒鍵》としての君に授ける』

 

『リィン・カーネシア。西方戦線にて【魔弾】と恐れられたその力を振るい、被害を抑えつつ学園の外敵を排除せよ』

 

『いかなる手段をもってしても』

 

 

 

 

「――――――わかった」

 

 

 

 

 ()()()は通信端末を返し、この場に集まった軍府の諜報員、兵士に告げる。命令だ。

 

 

「この数じゃ防衛できない。あなたたちには避難誘導、そして戦闘力をある程度喪失した敵の捕縛や無力化、後処理を行ってもらう」

 

 

「それでは、実際に敵にどう対処するので? まさか」

 

 

「……学生に自衛させるしかないでしょ。学園全体に、耐えれば増援が来ることをアナウンスしつつ、防御に専念させる」

 

 

「一部の優秀な学生は返り討ちにするかもしれませんが、全員がそうではありません。防御だけでは増援までもちませんよ」

 

 

 

 もっともな指摘だろう。しかし、問題ない。

 

 

 

「大丈夫、最後まで聞いて。学生に足止めさせている間に――」

 

 

 

 

 

 

 

「――ワタシが、全員、殺す」

 

 

 

 

 

 そうだ。なにも、問題はない。

 

 




※最終的にはハッピーエンドにします。嘘じゃないです。

●世界観的な説明
〇四霊大家
 麒麟、応龍、鳳凰、霊亀の四家。それぞれ土、風、火、水の魔術を得意とする。これら元素系の魔術が天華連邦で普及しているのはこの四家の影響も大きい。
 他の門閥貴族がだいたい一県くらいの領土を持っていると仮定すると、関東全体分の領土をもっているくらい規模が違う。各家当主がだいたい戦略級クラスのあつかい。

〇魔術通信端末
 記録されたコードどうしの端末をつなぐ魔道具。
 そこまで使用可能な距離が長くないため、中継器が複数必要である上、中継器を起動して情報を伝達する人員も必要である。地球の通信と比べると不便も不便。コストもかかるため、一般には普及していない。
 原理としては前話に登場した《甲高く泣く梟》という声を届ける魔道具とあまり変わらない。それの軍府製。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。