僕と絵画と美術館。   作:亜莉守

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タイムパラドックスは常識だよね!」

若干馬鹿なタイトル申し訳ありません。
つまりは

??「まあ、ありといえばありかな?」
??「そうかしら? 正直ありえないと思うわ」
??「……そこが問題」
                   新設定追加。あとフラグも立ててみた。


―――過去編 第四問
   時系列:前回と同じく中学一年生、初期頃



「マルチエンディングにおける

「ん? あれ?」

「え、嘘でしょ?」

「……え?」

 

とりあえず、説明を要求します。ここどこ? あんたら誰? そんな疑問が頭をよぎる。

絵に吸い込まれたと思ったら明るい庭でお茶会をしている人たちに出くわしたよ?!

向かって右から黒い髪に緑色の目をした僕より三つか四つくらい年上の女の人。アリスっぽい服装に日本人離れした肌が特徴的だ。真ん中の人は淡い茶色の髪を右分けにしている前髪が長くてちょっと目が隠れそうなくらい、あれで見えてるのかな? ギャリーっぽいところが気になるけど。目の色は綺麗な白、吸い込まれそうなくらいの白。服装はいたって普通の服。年は横の人と変わらないくらいだと思う、それからやわらかい印象にごまかされそうになるけど男の人だ。左に座っているのは茶色の髪をお下げにした年上の女の人、かわらず年上。服装はピンクのセーターに赤いスカート、胸元には何故か白黒のモノクロ模様が付いている。おしゃれなのかな?

 

「えっと、ここは何処でしょうか」

「絵の中だよ。君、名前は?」

「吉井明久、ですけど?」

「……そうなんだ。私は窓付き」

「え、名前がそれ?」

 

そんな名前があるの?

 

「あだ名みたいなものよ。あたしは…そうね、リデルよ」

「じゃあ、僕は……キャロルってところかな」

 

確か『不思議の国のアリス』のモデルとなった人物がアリス・リデルだったはず。キャロルは多分ルイス・キャロルからかな?

 

「で、明久は何でこの絵に来たのかしら」

「えっと、ここが絵の中? 絵って、もっと殺風景なのだとばかり」

 

少なくとも僕の行ったことのある絵の中はそうだった。

 

「あー、ゲルテナのとこに行ったんだね。絵はね、描いた人間の精神が反映されるんだ」

「そうよ。幸せな思いで描けば幸せな世界になるんだから」

「……でもなんでここに来たの? 普通の人間は入れないはず」

「絵に触れたら飲み込まれて」

「あー、あのさ。目見せて」

「はい?」

 

キャロルさんは僕の目をじぃぃぃぃっと覗き込んだ。えっと、どうすればいいのかな。

 

「なるほどね。ちなみにだけどさ、ゲルテナの作品から逃げ出すときに作品一緒に連れだした?」

「え? メアリーのこと知っているんですか?」

「まあ、一応ね」

 

ふと、メアリーの絵が飾ってあった部屋での出来事を思い出した。

 

「……そうだ。バラの花弁を半分あげました」

「! そういうやり方もありだったんだ」(ぼそっ

「? 何か言いました?」

「何でもないよ。何で絵の中に入れたのかわかったよ。君さ、半分絵になってるよ」

「はい?」

 

いやいやいや、この人今なんて言った?! 半分絵?! うそでしょ?

ありえない事実に呆然としていると、キャロルさんが苦笑いして僕を見た。

 

「信じられないだろうけど本当だよ。その目が何よりの証拠だからね」

「目?」

「あら、気が付いてなかったの?」

 

リデルさんが手鏡を貸してくれた。そこには右目がキャロルさんと同じ白、そして左目がメアリーと同じような蒼色をした僕の顔が写ってた。

 

「目の色が……」

「……この空間は、個人の魂が色濃く反映される場所」

「だから、目の色が魂と同じ色になってしまうことがあるの。あなたは特にその傾向が強いみたいね」

「僕と同じ色なんて奇遇だね。そしてもう片方の目は君が魂をあげた作品と同じ色じゃないかな」

「! 何で……」

 

魂をあげたってどういうこと? それよりも、絵に入れるってことはまた……。

がたがたと震えだした僕をキャロルさんは優しく抱きしめた。

 

「混乱することもあるよ。その気持ち、よくわかる。でもね、向き合わなくっちゃいけないことだってあるんだ。その絵としての力を他人を守ることに使えばいいよ」

「守る?」

 

そんなことできるのだろうか、あの場所は僕らを傷つける以上のことはあまりなかった。

 

「うん、やり方教えるよ」

「………ありがとう」

「いーって、いーって。別に僕が僕に教えるのは構わないってやつさ」

「?」

「何でもないよ。それじゃあ、五分だけ付き合ってよ」

 

そう笑った彼の顔は見れば見るほど母さんにそっくりだと感じた。

 

                  ★

 

「それじゃあ」

「気を付けなよ。それから、他のことは忘れてもやり方と事実は忘れないで」

「ありがとうございました。それじゃあ」

 

明久は額の消えた絵を潜り抜けた。

 

「行ったわね。吉井」

 

リデルがキャロルに向かってそう言った。

 

「あはは、そうだねぇ。北川さん」

「……最後のあれは危なかった」

「ごめん、窓付き」

 

窓付きにキャロル否、吉井明久がわらった。そう、彼は美術館で別の終わりを迎えた明久なのだ。こちらの明久は最終的にメアリーを燃やすことで無事に三人で出ることができた。その後もメアリーへの罪悪感からか悪夢に悩まされるようになる。そして、同じように悪夢に悩まされていた窓付きと出会ったのだ。彼女の悪夢を一緒に旅した二人は現実でもかかわりあうようになっていった。

それからしばらくして、窓付きの夢ではなく新たな夢へと足を踏み入れた二人が見たのは荒廃したおとぎの国だった。その夢の主こそ北川有栖、リデルを名乗っていた少女だった。三人で夢を潜り抜け、現実の事件も解決した三人は美術館からメアリーを連れ出し、生活を送っていた。ここは明久の絵の才能とメアリーの絵としての能力を使った明久の描いた絵の世界なのだ。

 

「それにしても、異界の僕が来るなんてね。話から知ってたけど目の前にすると不思議なものだね」

「そうね。あなたより何歳か年下でしょ?」

「……うん、不思議だった。でも、彼が明久なのはすぐにわかるね」

「全然変わってないものね」

「アリスー、明久ー、窓付きー」

「あ、メアリーが来た」

「じゃ、お茶会を始めましょう」

 

                    ☆

 

気が付けば何をしていたのかは思い出せなくなっていた。とりあえず、衝撃的な事実。僕が半分絵であるということと絵としての力の使い方だけは覚えていた。

 

「えっと………あ、メアリー」

 

そうだ、メアリーを助けに行こうとしていたんだ。後ろを見ればそれはそれは美しい庭で四人の人物がお茶会を開いている絵があった。思わず心を奪われる。自分もこれくらい描けたのなら、その思いだけが心を支配しかけたその時、

 

「うわぁぁぁぁぁ」

 

! 悲鳴?! 知っている誰かのってわけじゃないみたいだけど。

前へと向き直れば茨の石像を見て腰を抜かしている数人の男がいた。

坂本君や須川君もびっくりしている。

 

「あの茨……メアリーだ」

 

美術館で見覚えのある茨の石像だ。

 

「くそっ、こっちには人質が―――」

 

そいつの腕の中には空色の髪の女の子がいた。なんか見覚えがあるような気がするけど。とりあえず、二人は彼女がいるせいで攻めあぐねんでいるようだ。汚い手を使うなぁ……そうだ。

 

「人質傷つける前に自分の首が飛ぶんじゃない?」

「! 誰だよ」

「名乗るほどのものではないよ。自分の首にあるこれ、見えてないの? その子を離せ」

 

パレットナイフに「上書き」したナイフを相手に突きつける。見た目は出刃包丁みたいな感じ、重さは変わらずパレットナイフ、そのくせ切れ味は包丁っておかしいよね。

 

「なっ」

「あのさ、なに人をはめるために人を誘拐しているのかな? 犯罪だよ? 大体さー、君が人質に取っている女の子がさ、本気を出せば君たち全員離島に島流しくらい簡単だよ」

「いやだなー、アッキー。流石のボクでもそこまでしないよ?」

「くなちゃん、久しぶり。とりあえずさ、この件のもみ消しよろしく」

「おっけー、派手にやっちゃっていいよ」

「うに」

 

やっぱり、くなちゃんかくなちゃんこと紅凪蒼は僕の小学校時代からの旧友だ。周囲から奇人変人と称されていた彼女だけど物事に対する聡明さは小学生とは思えないほどだった。すでに大学の卒業資格も持っているらしい。何でここに居るのかは不明だけど。

くなちゃんの言葉を合図に僕は背後を取っていた男を蹴り飛ばした。当然くなちゃんも一緒に吹き飛ぶがそこは慣れているだけあって普通に受け身を取った。

 

「蒼っ!」

「ゆーじ、ボクはだいじょーぶ。それよりぼこぼこにしちゃって!」

「当然だ!」

 

残った男たちを二人が殲滅している間に茨の方に向かう。石の茨が襲ってくるけどこちらが何もしないなら大丈夫だろう。

 

「メアリー、無事?」

「明久?!」

 

するすると茨が地面へと戻った。そこにはメアリーがどうにか体を起こしていた。

 

「大丈夫? なんかひどいことされてない?」

「大丈夫よ。一発殴ったら殴り返されただけ」

「よかった。ごめんね、すぐに助けに来なくて」

「大丈夫よ。なんだかんだで来てくれたじゃない」

「うん、当然だよ」

「なにラブコメってんじゃぼけぇぇぇぇぇっ!!」

「!」

 

殴りかかってきた相手を紙一重でかわして、ナイフに「上書き」をかける。するとナイフはハンマーに様変わりした。

 

「人を誘拐しておいてその言いぐさはなんだ!!!」

 

思いっきり振りかぶって男を吹っ飛ばした。おお、壁に人型が出来ている。

 

「おい! らちが明かないぞ!!」

「誰だよ。坂本は人質さえあれば簡単に倒せるとかいった奴」

「……それは聞き捨てならねぇな」

「だねー。ボクだってそこそこ武術経験あるのに」

 

坂本君はメリケンサックを突けなおし、くなちゃんは特殊警棒を取り出す。あー、そういえばあいつ元気でやってるかな。

 

「メアリー、危ないから下がってね?」

「嫌よ。一緒に戦うわ。これがあれば大丈夫」

 

パレットナイフ、何処に持ってたの?

 

「心強いじゃないか。こいつらを全滅させよう」

 

須川君は竹刀を再度振った。何だろ、血糊を払うようにしか見えない。

 

「はぁ、やるか」

 

僕は再度ハンマーを「ナイフ」に上書きして構えた。刃は切れないようにしてあるけど。

その晩、町はずれの廃屋からこの世のものとは到底思えないような悲鳴が聞こえたそうな。近隣住人の皆様、ごめんなさい。

 





「Ib」はエンディングがいくつかあるんですよね。
明久を入れてもそこは変わらない気がしていました。「僕と絵画と美術館」におけるエンディングは多分一番グッドなエンドで、今回現れた三人のエンドはトゥルーエンド、この先にも何個か考え付いているのはあるのですが重すぎて嫌になりました。そんなたくさんの「IF」の中からこの作品は生まれたのです。

トゥルーエンドのトリオは個人的に「悪夢ブレイカー」と呼んでいます。「ゆめにっき」の窓付き、「アリスインナイトメア」および「アリスマッドネスリターンズ」をモチーフにした北川有栖、そして「悪夢を克服した」吉井明久、三人とも何故だか包丁のようなナイフを所持しています。物騒志向が目立つトリオです。この三人で何か書きたいなぁ。

明久が追いつきたいと言っている絵はトゥルーエンドの方の明久が描いた絵です。
バットエンドにしろ何にしろ明久が絵を描くことだけは変わらなさそう。
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