『本美術館鑑賞時の注意事項。
・端折った場面展開。
・ついにゲームの法則を無視しだした。
・前回からそうか
・理解するんじゃない感じるんだ……ゴメンナサイ。
・火気厳禁
以上』
ドアの文字を読み終わったギャリーが言う。
「おもちゃ箱ね。何か手掛かりみたいだから探してみましょう」
「そうだね。でも、どこに行けばいいのかな?」
「とりあえず、左行かない?」
案内キャラの本領発揮……してたなぁ。
「行きましょうか」
「うん、明久が言ったのって絶対あってるから」
信用してくれてありがとうね。
そんなこんなで左側にあった家からバケツを手に入れた。
「バケツなんてどうすればいいのよ」
「バケツだし水を汲んだらいいと思うよ?」
「それ以上に考えられないものね」
そんなわけで池に直行、本気で淡々とした作業だから話すのが嫌になるよ。
☆
「この間マカロンのおいしい店を発見してね。でさー、今度ここから出たら食べに行きましょう。四人で」
「うん、そうだね」
「………」
それから約二十分、パンドラの箱を開けた後。いきなり出来た陽だまりに僕らは居た。暖かいし眠くなるんだけど。それから、イヴとギャリーが喋っている。
「あら、明久。あんた眠そうだけど、どうしたのよ」
「ここ暖かいから」
「そう、じゃあちょっとくらい寝てていいわよ」
「そうさせてももらうよ」
その後はよく覚えていない。気が付いたらおなかに鋭い痛みを感じて起きたら別のところで寝っ転がっていて。起きあがったら皆にボロ泣きされた。
★
Noside
「う、嘘でしょ?」
「明久?!」
「う、う……どこだろう………イヴ! あれ、ギャリー 明久は?」
ギャリーの指が一点を差す。それはメアリーのすぐそばに落ちている白い薔薇だった。
「え、このバラって………」
「それがさっきまで明久……だとアタシたちが思っていたものよ」
「う、嘘だよね? 何で?」
パニックになるメアリーをギャリーが抱きしめた。
「落ち着きなさい。メアリー、明久が居ないって決まったわけじゃないわ」
「で、でも。でも。でも。でもっ」
「先へ行きましょう。絶対に大丈夫よ」
泣き出しそうなメアリーを抱え、イヴの手を引き、青い人形に白い薔薇を預けて、ギャリーはまた動き出した。
★
「で、おもちゃ箱に来たわけだけど。これ、入り口とかないの?」
「このまま飛び込めば大丈夫じゃないの?」
ちょっとは落ち着いたメアリーが鼻をすすりながらも答えた。
「はぁー、二人抱えて飛び込めるかしらね」
いや、ギャリーの今までの体力とか考えたら出来るのではないだろうか。
「でも、やるしかないわね」
ギャリーはメアリーとイヴを抱え直すと一気に飛び込んだ。
★
「っと、ここがおもちゃ箱ね」
「大丈夫? ギャリー」
「大丈夫よ。あんたたちくらい軽いわ」
おもちゃ箱の底へと着いた。ギャリーが周りを見渡す。
「暗いわねー。あ、階段」
見るとまるで門のように並んだ二体の青い人形の先に階段があるのを見つけた。
「明久の薔薇、大丈夫かしら?」
ギャリーが呟けば、ぱしゃんと音がして文字が書かれる。
『だいじょうぶ』
「ギャリー、もう歩けるよ」
「とりあえず階段上がってから聞くわ」
二人を抱えたままギャリーは階段を登って行った。
階段を上がり切った先で二人を下す。そこには階段が二つあった。
「どっちに行けばいいのかな?」
「二つともまわりましょう。探し物があるし」
「「………」」
その言葉に二人は黙った。
「先に上の方に行き、あたっ」
上への階段を上りいち早く部屋に着いたギャリーは何かにつんのめった。そのまま派手に倒れる。
「「ギャリー?!」」
「いたたた、誰よここににんぎょ……」
そこに倒れていたのは明久だった。
☆
「いたたたた……おなか痛い」
「あんたねっ」
「明久ぁ」
「よかったよ。無事だったんだね」
いや、何で。正直これが第一印象だった。寝て起きたらおなか痛いし、みんな泣いているし。
「酷いよギャリー、おなか蹴るなんて。姉さんでもそんなこ……あ」
「……お姉さん? 何があったのかなんて聞かないけど、どうしてこんなところで倒れていたの?」
「え? 何で、一緒に居たよね?」
「明久、バラに変わっちゃったんだよ。これ」
メアリーが僕に見せてきたのは白い薔薇だった。そういえば白薔薇の花ことばって『無邪気』とか色々あるんだけど僕には似合わないなぁって思うんだけど。どうだろ。
「このバラ……僕の?」
「そうよ」
薔薇に触れた途端に色々な画像が現れては消えた。最後に見たのは黄色い薔薇の中微笑む女の子の絵に泣きながら謝る老人の姿、それを見て僕はやるべきことに気が付いた。
「明久、あんたの薔薇……」
「え?」
花びらがほとんど落ちてしまっていた。花びらの枚数は六枚、でも二枚しか残っていない。
「これでいいんだよ。元からこんな体だし」
落ちた四枚を掬い上げる。薔薇は体に直結している。つまり、姉さんの暴力で元から体がボロボロだった僕はこうなって当然だったんだ。今ならわかる、だからこそ体を置いて精神だけが動き回ったんだ。
「元からってどういうこと?」
「メアリー、バラ出して」
「ちょっと、明久?!」
「いいから」
しぶしぶって感じでメアリーは薔薇を出してくれた。あの時はわけわかんなかったんだろうなぁ。
「明久、あんた何やって」
「メアリー、外に出たい?」
「うん、当然じゃない」
「そっか、ならよかったよ」
差し出された薔薇に僕は自分の花びらをかけた。すぐに吸い込まれるように花びらが消える。
「明久の薔薇が吸い込まれた?」
「じゃあ、行こう。出口はもうすぐそこだから」
軋む体で無理に立ち上がって僕は外に出た。あわてた皆が僕についてくる。
「明久、あんた薔薇」
「あれ? 明久のバラ、元に戻ってるよ」
「え?」
イヴに言われて見てみれば、白薔薇は普通に六枚ついていた。あれー? 理由は未だに不明
階段を上って。おもちゃ箱を出て、ピンクの家へと入って。長い階段を下る。
「『絵空事の出来事』ね。これ、元の美術館の風景じゃない」
「ここが出口だよ」
メアリーが言った。イヴが驚いた顔をして、ギャリーは頷いた。僕はただメアリーを見ていた。
「何でメアリーが知ってるの?」
「あたしね……絵なんだ」
イヴの表情がさらに驚きへと変わった。
「気が付いたらずっとここに居たんだ。だからね、外に出てみたかったんだよ」
「メアリー……」
「ごめんね。ギャリー、あたしね、ギャリーのこと身代わりにしようとしていたんだ」
「そう。でも身代わりにはもうできなさそうだけど?」
「あたしね。ここに残る。もう、みんなに迷惑かけたくない」
「メアリー、さっきさ。外に出たいって言ったよね? あれはウソ?」
「ウソじゃないよ。本当は出たいよ。でも出れないんのはあたしがよく知っているから」
「一緒に出ようよ。あきらめたらそこで終わりだってよく言うよ」
「でも……」
「あああああ、もうじれったいわね!」
ギャリーがメアリーを抱えて額縁の消えた絵の中に飛び込んだ。そしてこちら側へ手を出した。
「行けたじゃない。イヴ、今度はあんたの番よ」
「う、うん」
イヴがギャリーの手を取って向こう側へと消えた。
「明久、あんたが最後よ」
「うん!」
ギャリーの手を取る直前、ありがとうと頭を下げる老人の姿を見た気がした。