副題:笑って終われたのならばそれが一番いいこと。
「あれ? ここで何やってたんだっけ?」
僕は大きな絵の前に立っていた。『―――の出来事』その中には怖い雰囲気の絵がある。どこかで見たような雰囲気が………
「あ、ギャリーのところに戻らないと」
心配しているんだろうなぁ。そう思い返して僕は歩きだした。
ポケットを探ると何かが出てきた。絵に使うナイフだ。パレットナイフっていうんだっけ?
「おかしいなぁ。ギャリーいないし」
『吊るされた男』の絵が展示されているところに来たんだけどギャリーがいない。
「下かな?」
そのまま下の階を探すことにした。したのはいいんだけど、そこで悪夢のような光景に出くわした。
「アキ君、こんなところにいたんですね」
「ね、姉さん」
鬼のような形相の姉さんだ。その腕をかいくぐって全力で走る。姉さんも全力で追いかけてくる。途中で茶色の髪の女の子と金色の髪の女の子の横をすり抜け、お互いの顔を見てあの子たちも僕も驚いた。お互いの顔に見覚えがあったから、でもそこに留まるわけにはいかずそのまま通り過ぎる。いた! ギャリーだ!!
「ギャリーっ!!」
「明久、あんたどうし……」
姉さんの顔を見たギャリーが顔面蒼白になって僕を抱えた。
そのまま全力疾走で駆け抜けて、美術館の出入り口付近まで来た。
「あら、ギャリー、明久」
軽い感じで母さんが僕らのことを呼んだ。
「ちょっとあの子何よ。下手なゲルテナの作品より怖いじゃない!」
「悪いわね。とりあえずあの子はあたしが何とかするわよ。まだ見てない作品あるんでしょ。明久」
「あ、そうだった」
そこに足音がした。僕とギャリーがぎょっとして振り向くと姉さんだった。その姿を見た母さんが素早く姉さんを捕まえる。
「ここはあたしに任せなさい!」
「う、うん」
僕らはまた美術館に戻った。
そして、ギャリーが見ていた作品の目の前まで来ると茶髪の子と金髪の子が作品を見ていた。
「お嬢ちゃんたち、何を見ているのかしら」
「漢字が読めないの。読んでくれない? ギャリー…あれ?」
「いいわよ。イヴ……ってあら?」
「二人は知り合いなの?」
「何言ってるのよ。明久、あたしたち四人で美術館をさまよったじゃない」
「そういえばそうだったね。メアリー……ってあれ?」
おかしい、どこかがおかしい。お互いに覚えがないのにどこかで会った気がする。
ポケットに入っていたパレットナイフが床に落ちる。
「落としたよ。ってこれ」
茶髪の子がパレットナイフをじっと見つめた。そして何かを思い出したかのように僕に詰め寄った。
「明久、ずっと持ってたの? これ」
「うん……あ」
僕も思い出す。石でできた茨でメアリーとギャリーと離れ離れになったこと。茨削れないかなってパレットナイフを取ったこと。そしたら無個性が動いてて戻れなくなったこと。いろんなことが思い出された。
「ギャリー覚えてないの?! イヴとメアリーだよ。一緒に変な美術館の中動きまわった!」
「んー、そう言われてもねえ。あ、ポケットに何か」
ギャリーがポケットから取り出したのは青い変な人形だった。ギャリーが固まる。
「………あ」
そういえば、なんでギャリーはこれを頭に乗せていたんだろう?
「思い出した?」
「………ええ、トラウマと共にね」
「トラウマ?」
その後、ギャリーはなんでもないわって言って話を戻した。
そして、僕らはまた会おうと約束して別れることになった。ギャリーってうっかりだから連絡手段渡してなかったんだよね。僕がメアリーに電話番号渡したからよかったものの渡さなかったらどうするつもりだったんだろう。
こうして、僕のある日の美術館の一日は終わった。