木の葉の里の化け狐とババァ   作:眠りたい時だけ手が進む人

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親と子

「というわけで明日のナルトはアカデミーにゃ来れないよ。」

 

イルカの胃は限界を超えていた。

ナルトに対しては、教師として、一人の男として、同じく本当の親を亡くした者として。アレほどの悪戯好きな子供であっても処罰をすることなく説教の後に後始末で留めるなど、若干贔屓している自覚のあるイルカであったため、彼が休むということ自体には言うことはない。寧ろ普段の彼は下手な大人の男性以上に働き、努力している。

それでこれまで身体を壊さずにアカデミーに通い続けてきたのだから、寧ろ賞賛されるべきだろう。

 

…そんなナルトが、まだ育ち盛りの子供が、所謂夜のお店で、偶にとは言え働いている事実というのを、本当は快く思っていなかった。

 

お登勢がよく公言しているが、あくまでもナルトを養っているだけ。親"代わり"でしかないため、授業参観などには参列しつつも決して家族の繋がりを感じさせるような呼び方を許していない。

 

そしてそれを示すかのように、お登勢はナルトに家賃を請求している。二階建ての建物の中で、その上の一室を丸々貸し出しているのだから正当ではあるが。

その金を返すために、ナルトは働く必要がある。しかし、アカデミーに通うほどの年齢の子供であり、何より…木ノ葉隠れの里の中では嫌わない方が珍しい九尾の人柱力。働かせるどころか話すことすら厭われ、下手をすれば石を投げてくる輩ばかり。

 

故に結局、お登勢の店で働くしかナルトには選択肢が無い。だからこそ、それはあくまで教師という部外者の自分に口を出す権利がない。それを選んだのは何よりも、ナルト自身の意思だったのだから。

 

しかし、今回ばかりは話が違う。

 

「……よりにもよってあの西郷先生のお店はないでしょう……」

 

「プッ、そういやアンタあいつらに下着までひん剥かれたんだって?」

 

「な、なんで知ってるんですか!?っていうか言わないでくださいよ恥ずかしい!!!」

 

…"かまっ娘倶楽部"。中忍以上ならば噂に聞く、かつての英雄の一人【西郷特盛】の取り仕切るお店。

 

初めてあの店に、上忍の付き添いで立ち寄ることになったイルカは……地獄を見た。

 

顔がタイプだ、声が鬼みたいでカッコいい、呑め呑め呑め呑めダディダディダディダディ……流されるままに遊ばれて、目が覚めた時には真っ裸で自宅の前に倒れていた。

 

その日の枕はびしょびしょで、洗濯物として干していた。

 

あれ以来、少し本当の女性を見る目がイルカというよりサメになったと言われるようになったのは、あえて語る必要はない。

 

……話が逸れたが、ともかく。

 

「あのお店は社会科見学というにはあまりにも……その、あんまり過ぎますよお登勢さん。」

 

「いいじゃないか、経験ってのは積んどくべきだよ。ゴルゴ13だって最初のうちは仕留めたと思ったら偽物だったとか罠だったとかでヘマやらかしてばっかりだったんだから。」

 

「何の話ですか……それに、あのお店は……」 

 

 

かまっ娘倶楽部。それは、単にオカマだらけなのが問題ではない。

 

 

西郷特盛、かつての戦争の英雄を含めても

 

 

 

「……あの場所には、ナルトを憎む方も多いはずです。」

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

「…っていうかなんなんだってばよこのお店。オレってばよく里を歩き回ってっけど、こんだけ筋肉モリモリのやつらが居ること初めて知ったってばよ。」

 

「そりゃそうさね、アンタはまだ忍者の卵だろう?私の店にゃあアンタなんかじゃ足元にも及ばない実力のやつらしか居ないんだよ。」

 

「えぇ~!?こんなふざけ……」

 

「あぁ!?」

 

「………お、おうつくしい格好のお嬢様ばかりなのに?」

 

「…みんな、忍者の卵から還った鳥だったのさ。但し……ワケアリのね。」

 

 

───────────────────────

 

 

「かまっ娘倶楽部……忍者を諦めざるを得なかった方々、忍者に戻れなくなった方々……しかし、引退することが出来ない、帰るべき場所のない人々。そんな方々の最後の拠り所。かつて私の上忍だった方も以前お見掛けしましたよ、姿は…その、大分変わられていましたが。」

 

 

怪我の後遺症、消えない痛み、死にゆく味方の顔、敵の顔、忘れられない血の匂い。様々な理由により、忍者としても根としても、一般人としても生きられない、何処にもいけない人々の駆け込み寺。

男と女の狭間、オカマ。

闇にも光にもなれない者たちが集まる煉獄こそが、かまっ娘倶楽部。そして、当然ながら

 

「あそこには、九尾による被害に遭い……そうならざるを得なかった方が、数年前に何人も加入されたという話を耳にしました。そんな方々が、九尾の人柱力なんて相手を恨んでないはずがない。」  

 

「それで?」

 

「…ナルトは、まだ子供です。アイツは何もしていない……ただ日々を一生懸命生きて、走る子供なんです。恨みを背負うには…いや、背負う義務すら本当はない奴だ。そんなアイツに、もし何かあったとしたら……」

 

「……アンタはバカだねぇ、ホント。バカマジメだ。」

 

「誂わないでくださいお登勢さん!!アナタだってご存知のはずでしょう!なのになぜっ……」

 

「あそこにいんのが誰か、忘れちまったのかい。」

 

「…それは…」

 

「そりゃ私も心配さね、あのバカなんでもすぐ壊しやがるから修理代でも請求されやしないかってね。……でも、何かあるとは思っちゃいない。」

 

──────────────────────────

 

「ワケアリ…?」

 

「そうさ、みんなちょっと疲れちまってね。……だから此処は、そういう奴らの止まり木なのさ。飛べねぇやつらだって、木陰に身を寄せたいもんなんだよ。」

 

「………なぁ、それって……」

 

「言いたいことは分かるよ、なる子。でも安心しな。」

 

 

 

 

「みーんな何も憎んじゃいない。恨んでもない。」

「今を生きて、今を歩いて、酒飲んでバカみたいに笑う。」

「みーんないい子さ……私の、大事な家族さ。」

「家族ってのは、仲良くするもんだ。そうだろう、"なる子"?」

 

「…おう!」

 

──────────────────────

 

「あのジジイはね、家族を泣かせるようなマネはしないよ。よーく知ってんだ。腐っても同じ親だからね。」

 

「……そう、ですか。」

 

「まぁ、アンタは泣かされたが。」

 

「黙ってくださいお願いします。」

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