木の葉の里の化け狐とババァ   作:眠りたい時だけ手が進む人

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でべそと言われる分には許すのが男、オマエのかーちゃんでべそと言われて許さないのが漢

「うーん、あと1時間かぁ~……暇だってばよ……」

 

 

かまっ娘倶楽部に来て既に半日が経とうとしていた。

ボランティアではなくあくまで従業員として扱うということで時給は発生するし、あくまでベンチのピンチヒッターであるからベンチから出る必要はないということで端っこの方でジュースを飲んでいるだけではあるから普段のスナックでのアルバイトよりはよっぽど楽な仕事だったが、それでも退屈ゆえの辛さというものはあった。

 

なにせ、かまっ娘倶楽部はむさ苦しいが雰囲気はスナックお登勢に似通うものがある。

働く者も来客もみんな一癖も二癖もあり、騒がしくて酒臭い。だが、ここには涙はなかった。笑いだけがあった。

 

ナルトは活発な子供でもあるが、何より寂しさを嫌う。

お登勢に出会い、その客に出会い、エロ仙人に出会い……クソババアを通じて色々な人間と交流を持ったナルトは"独り"を以前よりも強く厭うようになっていた。恐れている、と言い換えてもいい。

 

もう、あんな気分になるのはイヤだとナルトは喧騒の中に居て何度も思ったものだ。

 

自分は今形だけでもこの店の仲間に居るのだが、それでもこう一人喧騒の外に居ては寂しさも増すというもの。

 

今ぐらいならば少し席を外して術の練習をするぐらいはいいだろう、そうして席を立とうとしたナルトだったが………

 

 

「悪いわねぇお客サン、今日は生憎と常連で埋まっちまったモンだから今日はこの端っこの方で失礼させてもらうよ。…おやなる子、どうしたんだい?」

 

ちょうどそのタイミングで、見知らぬ男を連れた西郷がやってきた。どうにも席がわざと空けていたここだけしか無かったらしく、仕方なく連れてきたらしい。

 

「あ、いや!なんでもないってば……なんでもないわよ!」

 

それを見たナルトは喜色を露わにする。漸くこの店の役に立てる、この店の輪に入れる。この店がオカマバーであったことを思い出し女っぽく話せばなんだかその気持ちもより一層強くなる。

 

「へぇ~、ずいぶんちっちゃい子だねぇ。未成年?」

 

「やだわシャチョサン、未成年どころか子供が働くわけないじゃない!ウチはR18指定の健全なお店なんだから…ねぇなる子?ちょーっと背が小さいだけよ、ネェ?」

 

(…どっちかって言うとR18-Gだし健全でもねぇってばよ……)

「え、えぇそうよシャチョサン!これでもぴっちぴちの35歳なんだから!」

 

「えぇ!?同い年!?」

 

「…なる子。ボロが出るから盛るのは止めときな。弁当の底上げをしていいのは上にもちゃんと出るもんが出てるときだけだよ。」

 

「……うす。」

 

 

 

そんなこんなでナルト自身も始めて接客に当たったわけだが……此処で、ナルトの想定外の事態が出てくる。

 

まず、スナックお登勢について。

ナルトはスナックお登勢という魔境で働いていたからこそこの手の商売に免疫があるわけだが、あの店ではあの店の内輪ノリがつよかっただけであって、オカマバーであるかまっ娘倶楽部は客層が全く違う。どちらかと言うと何故かこっちのほうが一般向けなのだ。

ある程度戦闘能力と寛容さを持っていないとスナックお登勢では呑めない。

 

 

次に、相手をした客。

この客、実は今回初来店。シャチョサンというよりシンニュウシャインサンなのだ。故にルールに疎く、人から又聞きしたものしか把握していない。

 

そしてこの客、たまたまそういう性癖を持っていた。

ショタコンだったのだ。

そんな中で、自由にお触りしていい状況下で合法に触れる見た目だけショタっ子(実際は本物)が現れたらどうなるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ひっ!?」

 

「ん?どうかしたかい、なる子。」

 

「い、いや、今……」

 

「なんでもないよね!ねっ、なる子ちゃん♡」

 

「ぇっ……」

 

「ほら、ドンドン持ってきて!今日はしこたま飲むぞー!!」

 

 

お持ち帰りを決め込んだその客は、次から次に酒を頼んだ。勿論西郷がそれとなくお茶と入れ替えてはいるがそれだけ金を注ぎ込まれては従業員としては下手に出ざるを得ない。

それはナルトも同じこと。

………隣に座る客が、やたらと此方に触ってくるのはきっと酔ってバランスを崩しかけたから触ってしまっただけだろう、そう信じて隣で愛想を振り撒いた。

 

しかし。

 

 

 

 

 

「っ、ちょっ、やめてってばよ!!!」

 

「…てばよ?」

 

つい、お尻を悪意ある触られ方をしたことで席を立ち怒鳴ってしまったナルト。その際に自分の口癖、素まで出てしまう。

不幸なことに、客である男は一般的な里の民だった。即ち、ナルトを、九尾を嫌い石を投げ込んでくるタイプの。

 

「すみませんねぇお客様、うちのお店はお触り厳禁で……」

 

「あぁ!?知ったことかふざけやがって!!」

 

すかさず西郷が止めに入るものの、一度騙されたと正義の心に火のついた男はもう止まらなかった。我こそが正義であると心に決めた人は何よりも恐ろしい。

自分こそ、同じく罪を犯していようとも。

 

「くそっ、人殺しの尻なんか触っちまった…化けぎつねなんかと一緒の席に……!!」

 

「あの、お客さん。ですから──」

 

「うるせぇ!!だまってろクソジジイ!!」

 

客がヒートアップしていくも、西郷の顔色に変化はない。ただ笑顔で注意喚起をするのみ。ナルトは客が恐ろしい以上に、この空間の雰囲気を台無しにしてしまったことへの罪悪感で喋ることが出来なかった。

 

「だいたいオカマバーってなんだ気持ワリィ!!こんな店──」

 

「──オイ。」

 

客の悪態がいよいよ店にまで及んできた頃に、その場の空気を更に凍らせるような、暗く冷たい、よく通る重たい声が響いた。

 

西郷の笑顔は変わらない。

 

 

 

「んだよオカマ野郎!?」

 

「今、何とおっしゃいましたか?」

 

 

 

西郷の笑顔は変わらない。

 

 

 

「だから!!こんな店潰れちまえって」

 

 

「うだらァ──────ッ!!!!」

 

突然の大声に、ナルトは思わず瞳を閉じた。

僅かな間を置いてナルトが瞳を開くと客の姿と西郷の笑顔が消え、そこには怒りの表情の西郷のみが残った。

 

 

 

手に握られたのは何処からか取り出した木製の巨大な槌。西郷の目の前に穴が空いており、そこに客の姿が見えた。頭だけだが。

しかしよく見ると気絶しているだけで生きてはいるようだった。致命傷どころか傷跡すらない。忍具の効果なのか西郷の術なのか、ナルトには判別が付けられない。だが、少なくとも。

西郷は、途轍もなく怒っていた。

 

「テメェの悪口なら幾らでも耐え忍んでやらぁ!!だがな、私の、私の家族を愚弄するような言葉は2度までしか許してやらねぇ!!それと!!!」

 

片腕一本で男の頭を掴み引っ張り出すと、店中に響く声で西郷が告げる。

 

「──お触りは厳禁よ、シャチョサン。」

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