木の葉の里の化け狐とババァ   作:眠りたい時だけ手が進む人

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帰る場所

「今日は付き合ってもらって悪かったねぇ。おまけにあんなクソ客の相手させちまって……御礼はたんまりさせてもらうよ」

 

あれから、不運な事故ということで内内に処理を終えた西郷は

 

『また渡さなきゃならない賄賂が増えちまったよ。』

 

と気にしていない風に豪快に笑っていた。尚、男の方はオカマ従業員の一人に記憶操作を行える忍びが居るのか男はそれからこの店について言及することもなければこの店に立ち寄ることもなくなったらしい。

周りの客の方も日常茶飯事なのか閉店間際まで普通に呑んでいたし、中にはナルトにジュースを奢ってくれた客も居た。

 

そんなこんなで1日代行が終わったナルトだったが、どうしても疑問を呈さずには居られなかった。そして少なくとも西郷はこの質問をはぐらかすことはないだろう。

 

「……なぁ、西郷ってナニモンなんだ?」

 

「オカマだよ」

 

「そ~じゃなくって……めちゃくちゃつえぇし、周りの奴らもみんな慣れてる風だったし……」

 

ナルトの普段勤めていて、尚且つ我が家の真下にて営業しているスナックお登勢は平均戦闘力がかなり高い。

最近よく来るエロ仙人は修行中の中でその実力をよく知ったし、ゲジマユ先生と呼び人生の先輩と仰いでいる忍びも身のこなしが普通ではない。

 

だが、彼らはいずれも忍びだ。己の心に確かな忍道を持ち、日々を生きる忍びなのだ。

 

しかし西郷は違う。彼、或いは彼女はお登勢と同じオカマバーのママだ。だが先ほどの一瞬の行動、気迫、迫力、初めて会ったときから感じていた漂う品格……ナルトにとってこれらに該当する人間は西郷と、あのジジイ以外居ない。

 

「ジイちゃん……火影のジイちゃんと、なんとなく似てるし。」

 

オカマであることを除けば、ナルトの中での西郷は三代目火影"猿飛ヒルゼン"にも似たものを感じる。

ただの一介のオカマがそんなものを持っているはずがない。

 

「……しょうがないねェ。こっち来な、話してやるよ。」

 

 

 

──────────────────────────

 

「アンタ、授業は受けてんのかい?」

 

「おう。……それなりに。」

 

嘘である。イルカ先生から集中力が足りないと言われるほど授業中は居眠りをよくしている。

 

「ほう、じゃあ歴史については?」

 

「…………それなりに。」

 

嘘である。一週間の中で楽しいことしか記憶し辛い。

 

「……そうかい。ま、私はね…前の戦争でちと暴れ過ぎちまったのさ。」

 

「前の戦争……?」

 

この忍びの世において、平和なこの時期は非常に、非情なことに珍しい。

 

三代目火影が再びこの座に就任するまでは平和な時期などろくに無かった。直近ですら九尾による木ノ葉隠れの里襲撃事件が起きたが、あれですらまだ規模を考えれば平和な事件の部類に入る。入ってしまう。

失われた命が四代目火影夫妻を筆頭に複数の忍び、そして市民のみで済んだのだから。

 

 

里が一つ消える、国が一つ無くなる。それらのことが当たり前に起きていた時代に比べれば平和の括りに入ってしまうのだ。

もっとも、導火線は蜘蛛の巣のように至る所に、油まみれで散らばっているのだが。

 

「……忍界大戦。バカな奴らに従うしか無かった良い忍びが大勢戦って、死んじまった……嫌な戦さ。」

 

「…忍界、大戦。」

 

 

「そう。お登勢の旦那も……っと、これは言う必要は無かったね。」

 

「…………」

 

ふと、思い出したように告げようとした西郷はそれに関しては口を閉ざす。これに関してはこれ以上漏らすつもりはないらしい。

ふと、お登勢が定期的に墓参りに行っているのを思い出したナルトはその旦那について聞きたくなったが、西郷にそのつもりがない以上話してはくれないだろう

 

「私は戦場で死ぬ気で武器を掴んだテメェの腕を振るったよ。運良くどの戦場でも死ぬこたぁなかった。次第に、"白ふんの西郷"なんて大層な渾名付けられてねェ……んな名前があったところで、護れなかったモンなんざ星の数ほどあるってのに。」

 

「そんな…」

 

「いいかいナルト、平和ってのは何よりも尊くて大切なもんさ。それを忘れちゃいけないよ。」

 

酒のせいで口が緩んじまっていけない、頬を赤らめながら西郷は酒臭いため息をついた。辛気臭くもあった。

 

「やがて私の知らないところでぜーんぶにケリが付いて…私が……戦場から帰ったところで、戦いは終わらなかった。」

 

「…何かあったのか?」

 

「……今日は友達の家に泊まるっつうんで居ないが……てる彦ってぇ私の宝、いやさ国宝が居てね。アンタぐらいの年頃の、私の大事な息子、大切な家族さ。忍びの才にゃ恵まれなかったがね。」

 

「てる彦……あっ!そいつ知ってるってばよ!前にいじめられてたところをオレが──」

 

「なんだッテェ!?てる彦がイジメに!?おい教えろ小僧!!どこのドイツだいそんなクソ野郎は!!泣くことすら出来ねぇようにガタガタにしてやっからよぉ!!!」

 

「わー!!!落ち着けってばよ!!だいたいそいつらはオレがブッ飛ばしたし!!」

 

「…ホントかい?」

 

「ホントホント!なんだよ、西郷ってばてる彦のオヤジだったの──」

 

「お母さんだよ。」

 

「……お母さんだったのかってばよ。」

 

ヒートアップしかけた西郷が溜飲を下げたところで、話は続く。

 

「……イジめられてたのかい、やっぱり」

 

「イジめられてたっつうか……てる彦の方が喧嘩を売ってたみたいだってばよ。…その……ちちっ、あいや、母親がバケ……怖いって言われたのを、気に入らなかったみたいでよ。」

 

「……そうかい。アンタにもてる彦にも苦労を掛けさせたね。悪かったよ。」

 

子の心親知らず。特に肉の中に入り込んだ親知らずは外からでは分からないものだ。

 

「……そう、あの子の母親は物心つく前に……私が帰ってきた頃に、死んじまってね。以来、私は母親代わりにならなけりゃいけないって覚悟を決めた。」

 

「……その結果が幾らなんでも突っ走りすぎじゃねぇか?」

 

「バカ言うんじゃないよ、オカマってのは気高く強い魂の生き物なのさ。」

 

(化け物の間違いじゃ……)

 

「てる彦だけじゃない、生き残った私の部下、私の友人、私の後輩……みーんなまとめて私が養わなきゃいけないって思ったのさ。みんな飢えてた、戦場での苦しみ、痛みのせいでね。」

 

「……」

 

「必要だったのは愛さね。母親からの無償の愛。…あんたもよく知ってるんだろう?お登勢の息子なんだから。」

 

「………おう。」

 

その言葉に、ナルトは漠然と頷く。お登勢が許してくれなくてもナルトにとってお登勢は母だった。血が繋がっていなくても、唯一無二の母だった。

 

「だから私も母親になったのさ。それも単なる母親じゃない、父と母、2つの側面を持つ最強のオカマに。フュージョンしたのさ。」

 

(…フュージョンはフュージョンでもその結果がゴジータじゃなくてベクウだってばよ。)

 

 

────────────────────────

 

 

「さて、長々と付き合わせて悪かったね…そろそろ給料の支給といこうかい。」

 

「おう、頼むってばよ西郷のネェちゃん!」

 

「……と、言いたいところだが。アンタは今日一日ロクに働かなかっただろう?」

 

「………い、いや!それはだって……えっ!?」

 

その言葉にナルトは酷く驚愕する。確かに自分でも暇を持て余してはいたがそれでもやることはやったし、まさかこれだけ時間を使って修行を出来たわけでもなく無一文で帰れなどと言われて納得は出来ない。

 

「だから、金じゃなく代わりのモンをやろう。受け取んな。」

 

「うわっ、とと……なんだってばよ、これ。」

 

西郷が着物の裾からどうやって取り出したのか、現れたのは一つの巻物。

 

「ババァから聞いてるよ、分身の術が苦手なんだろう?」

 

「あぁ、まぁ……」

 

「それを使えばちと似たようなことが出来るよ。多少コツは必要だろうが、まぁ……アンタなら大丈夫だろう。」

 

「?…まぁとにかくセンキュー!!むしろこっちのほーが嬉しいってばよ!!」

 

ふと、その言葉を告げた時に西郷が自分を見ながら別の誰かを見ているような気がしたがナルトには見当が付かなかった。だがとにかく分身の術を使えるようになるのなら有り難かった。火影になるには先ずアカデミーを卒業しなければいけなかったのだから。

パン、と西郷が手を叩く。それで終いらしい。

 

「ほらほら、店仕舞いだよとっとと帰んなクソガキ!」

 

「えぇ、なんだよそれ!もうちょっと湿っぽくしろよなー!!」

 

ぶーぶーと言いながらも、ナルトの顔に寂しさはない。この里にいれば必ず会えるし、何より西郷もこの店のオカマ達も、もう友達のようなものだ。また会える、それだけでよかった。

 

「………ナルトォ゙!!」

 

「あー!?」

 

ふと、明日はこれで修行しようと考えていたナルトを夜の街に響いた西郷の声が呼び止める。

 

 

 

 

「火影になろうってんなら、アンタは"最強"の男になるんじゃなく!!"最高"の男になりな!!家族も友達も守り守られる、いい火影になるんだよ!!!」

 

 

 

「おう!!!」

 

 

「…………ってそれ別誌のやつだってばよ!!!!」

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