ユミアのアトリエ―導きの錬金術師と異界の狩人 作:サバ缶みそ味
だけど青ぷにがかわいいので殴れない……
高々と打ち上げられたレクスはドサリと音を立てて地面へと落ちた。
「あたたた……」
「グルガォォッ!!」
追い打ちでドシャグマが唸り声を上げて前脚で叩きつけようとしたところ、ブーメランが飛んできて身体を掠めた。
「やーい!こっちだよー!」
ブランが挑発をしてドシャグマに向けて再びブーメランを投げた。身体にブーメランの一撃を掠めたドシャグマは唸り声を上げてブランに襲い掛かる。ブランは身軽にドシャグマの攻撃を避けてヘイトを稼いでいく。
「旦那さん!今のうちにっ!」
「ブラン、助かるっ!」
レクスは痛みを堪えてポーチから緑色の液体が入ったビンこと回復薬を取り出して一気に飲み干す。
「よし、回復!ここから反撃を―――」
態勢を立て直してドシャグマに抜刀斬りをしようとしたその時、頭痛が走り足元がふらついてしまう。
「……っ!高濃度マナの影響が強くなってきたのか……!?」
「旦那さんっ!」
ふらついているレクスにブランが気を取られてしまった。その隙を逃さないドシャグマは唸り声を上げながら頭突き突進をしてブランを吹っ飛ばす。
「うわああっ!?」
「ブランっ!!こんにゃろっ……こっちだ!」
頭痛に耐えながらもドシャグマに向けて抜刀斬りを放つ。バキッと砕ける音と同時にドシャグマは怯み、左前脚の爪を破壊した。
「よし……まだいける!」
体に高濃度マナの悪影響が及ぼされる前に狩猟できるかもしれない。レクスに心の余裕が少しだけできたかと思われた。
「ゴルグルァァァッ!!」
ドシャグマは唸り声を上げて立ち上がり、全体重を掛けた両前脚による叩きつけを放った。地面に振動が走り土煙が舞い上がるほどの広範囲の衝撃にレクスは巻き込れた。
「あだふっ!?」
ワンバウンドして吹っ飛ばさたレクスは起き上がるとドシャグマがこちらに向かって大口を開けて突進をして迫る。
「くっ……!!」
咄嗟に大剣でガードをし弾き返すがドシャグマの猛攻を止めさせることはできず再び大口を開けて噛みついてきた。
「っ!!」
大剣で防ぎ鍔迫り合いになるが、その間にも頭痛がますます激しくなる。頭痛に耐えながらも押し返そうと踏ん張るが足に力が入らない。
「グルガォッ!!」
「おわっ!?」
ドシャグマが力強く頭を振り上げ、力に押し負けられたレクスは弾き飛ばされてしまう。
「うっ……くっ…!」
受け身をとって立ち上がろうとした瞬間、目まいを起こし思わず膝をついてしまった。
(くっ……回復薬でもどうにかならないか……!)
受けた傷を治すことはできるが高濃度マナによる悪影響は治らない。
危なくなったら逃げろとユミアに警告されたが自分が逃げたらドシャグマの標的はユミア達に向けられるかもしれない、なんとしてでもここで足止めまたは討伐をせねば、レクスに焦りが募り始めた。
(それまで耐えなければ……!)
力を振り絞って立ち上がろうとするがそれよりも早くドシャグマが迫り大口を開けて噛みつこうとしていた。
判断が遅れた。迫りくるドシャグマの猛攻にレクスは頭痛と目まいで動けなかった。
(まずい……!)
レクスは片腕で防御態勢をとり衝撃と痛みに備えた。『ガッ!!』という鈍い音が響くが衝撃と痛みがこない。寧ろ重くのしかかっていた空気が軽くなっていた。
レクスは恐る恐る腕を下ろし状況を見ると、ヴィクトルが前に立ちドシャグマの噛みつきを盾で抑えていた。
「ぐっ……うおおおっ!!」
「ヴィクトル!?」
「レクスさんっ!!無事ですか!?」
「大丈夫!?ケガしてない!?」
レクスが驚くよりもはやくユミアとアイラが駆け寄る。
『高濃度マナ侵蝕率79%。普通の人ならすでに意識不明に陥っています』
「間に合ってよかった。レクスさん、じっとしててください」
ユミアは目を瞑りレクスに手をかざす。かざした手に蒼く淡い光が灯され、レクスの体から濃い青白い光が湯気のように浮かび上がり消えていった。
「おぉ?頭痛が治まった……」
先程まで起きていた激しい頭痛と目まいが無くなり身体が軽くなった感じがした。
「レクスさんの体内に溜まった高濃度マナを払いました。これで大丈夫です」
「それよりもなんで……ここは危険だぞ」
ドシャグマはユミア達にとってはかなり脅威な存在。凶暴で危険だから離れたほうがいい。だがユミアは首を横に振る。
「高濃度マナの中でレクスさんを置いていくのは間違ってました……母の言葉を思い出したんです。『困っている人がいたら手を差し伸べられる人になりなさい』、『友達を大切にしなさい』……それから『自分自身で何が正しいか、判断をしなさい』って」
ユミアは真剣な眼差しで手を差し伸べレクスを立ち上げさせる。
「私達にもできることがある、あなたの力になれることがある。だから、私も戦います…!」
「ユミアの言う通り、レクスさんに及ばないかもしれないけど……私だって戦えるよ!」
「ぐっ……僕も騎士団のひとり、戦っている仲間をみすみす放っておくわけにはいかない。共に戦わせてくれ…!」
「みんな……」
「グルガォッ!!」
ドシャグマが力強く押し込みヴィクトルに襲い掛かろうとしたところ、ブランが高く跳んでドシャグマの脳天にホープネコトンカチの一撃をお見舞いした。
「やああああっ!!」
「ゴグルッ!?」
ドシャグマは怯み、ヴィクトルの盾に噛み付いていた力が緩む。
「下顎を狙って!!」
「っ!わかった!!」
ブランの掛け声に頷いたヴィクトルは力強く盾を押して弾き返し、よろめくドシャグマの下顎を狙ってパイルバンカーの一撃を放つ。
「グギャンッ!?」
怯んだドシャグマは大きく仰け反り転がって距離をとった。その隙にブランはレクスに駆け寄る。
「旦那さん、今は力を合わせるのも大事だと思うよ!」
「ブラン……そうだな、すまない。君達を危険から遠ざけようと考えすぎていた。君達も戦いのいろはを心得ている……力を合わせるべきだな」
力が戻ったレクスは大剣を力強く握り構える。
「どういった攻撃がくるか、どう避けるか指示をだす。ドシャグマの猛攻に気をつけるんだ!」
「「はい!!」」
「ガルガゴォォッ!!」
ドシャグマが唸り声を上げながら身体を振るい力を込めた叩きつけをレクス達に向けて振り下ろしてきた。
「ユミア達が戦えるよう……突破口を開く!!」
ドシャグマの攻撃を待ち構えていたレクスは力を溜めて大剣を力強く斬り上げた。
「せいやっ!!」
ドシャグマの攻撃とぶつかり相殺され、『ガスンッ!!』と鈍い音が響くと力に押されたドシャグマが大きく仰け反り転がり、鼻息を荒くして怯んだ。
「今だっ!」
レクスはクラッチクローを展開させ、ドシャグマの身体に向けてクローを放ち接近する。
「今回は十字斬りは我慢して……ふんっ!」
大剣に力を溜めて突き立てると全体重をかけて斬り下ろす。するとドシャグマの身体に白い傷がついた。
「よし…今の状態ならこの部位に攻撃が通るはずだ!」
「わかった!みんな、行くぞ!」
ヴィクトル達は傷つけ部位を中心に攻めかかる。近づけさせまいとドシャグマは唸り声を上げて噛み付き突進をするがレクスが立ちはだかり大剣でタイミングよく防ぎ弾き返す。
「やらせはしないっ!」
「ここねっ!せいっ!」
アイラは槍の連撃を振るう。アケノシルムとの戦いの時と比べて確実に攻撃が通じている。
「ほんとだ……ダメージを与えれてる感じがする!」
「グルガァァァッ!!」
「身体を捻らせた。回転して薙ぎ払いがくるぞ!」
「はいっ!」
レクスの忠告通り、ドシャグマが回転して前脚で薙ぎ払う。ユミアは跳んで躱し、跳んでる最中で杖銃で銃弾を撃った。アケノシルムの戦いの時は弾かれていた銃弾は見事にドシャグマの身体に当たる。
「当たってる…!これならいけるかも…!」
「一定時間立つと傷つけの効果はきれるから気をつけてね!」
「どういった仕様なのか気になるが……今は置いておこう!」
ヴィクトルの放ったパイルバンカーの一撃にドシャグマは怯むが身体を震わせながら後ろへ下がると二足で立ち上がる。
「両前脚による渾身の叩きつけだ!衝撃もあって範囲も広い、距離を取るんだ!」
レクスの指示でユミア達は距離を取る。その直後にドシャグマによる渾身の叩きつけが振り下ろされた。叩きつけられた地面は衝撃が走り土煙が勢いよく舞う。広範囲の一撃だったがユミア達は防御をしていたため被害は無くて済んだ。
「っ!距離を取っていたが強い衝撃だな…!」
「レクスさんは!?」
「なんか……納刀した瞬間、体が光って攻撃をいなしてた……あれって普通に当たってるよね……?」
明らかに当たっていたであろうドシャグマの攻撃をレクスはかすり傷程度でいなし、ブランは衝撃を防ぎレクスと共に前進して戦っていた。
「グガォォッ!!」
ドシャグマは大口を開けて地面を抉りながら突進をしレクスに迫る。
「ブランっ!」
「うんっ!」
ブランは勢いよく駆けてレクスの肩を土台に高く跳び、宙返りをしてドシャグマの頭にトンカチを一撃を振り下ろす。
鈍い音が響きドシャグマの迫るスピードが緩む。レクスは力を溜めながらタイミングに合わせてドシャグマの頭にタックルを放った。
「ギャンッ!?」
強い衝撃を受けたドシャグマは怯み、涎を垂らしながら大きく後退する。
「そいっ!!」
その隙にレクスが強溜め斬りの一撃を放ちダメージを与え、更にレクスは力を溜める。
「グルガガァァァッ!!」
やられてたまるかとドシャグマは咆哮して二足で立ち上がり、渾身の叩きつけを放とうとした。
「あ、やば……」
少し勇み過ぎた。レクスは一瞬ヒヤリとする。
「レクスさんっ!」
ユミアは急ぎ駆ける。今この場で使う時が来た、錬金術で新しく作った魔物退治の道具を展開させる。
「錬金術の力、みせてあげる!!」
青く冷気を纏った斧の形をした道具、『レヘルン』。ユミアは力いっぱいにレヘルンを横に薙いだ。冷気を帯びた一閃、氷の一撃がドシャグマの身体に炸裂する。
「グガオッ!?」
力いっぱいの一撃と突然発生した氷の一撃にドシャグマは怯んだ。
「助かった!このままぶちかますっ!!」
レクスは最大に力を溜めた真・溜め斬りを放つ。
「うおらぁぁっ!!」
全力渾身の一撃と同時に大きな爆発がドシャグマに炸裂した。
「グガッ……ゴグオォォォ……」
ドシャグマはよろめき、力弱い唸り声をあげると大きな音を立てて倒れ動かなくった。一瞬の静寂、レクスが動かないドシャグマを見つめ武器を納めたことにより討伐が完了した。
「た、倒せたぁ…!」
「気迫迫るものだった……」
討伐完了でアイラ達はほっと安心する。自分達でも力になれた、少しではあるが前進できた。
「な、なんとかなったな」
緊張が解け、レクスはへなへなと腰を下ろした。ブランが駆け寄りハイタッチをする。
「やったね旦那さん!」
「ほんとどうなるかと思ったけど……ユミア、ありがとう。助かった」
「えへへ……力になれてなによりです」
「それにしてもさっきの氷の斧みたいの、すごくかっこよかったな!」
「うんうん!レクスさんの言う通り、キレイでカッコイイ!私も使ってみたいなぁー」
「ボクもオトモ武器用に欲しいなぁ」
「あ、あはは……そ、そうかな?ちょ、ちょっと照れちゃうかも……」
目を輝かすレクス達にユミアは少々照れながら笑った。
「レクス、このボス個体のドシャグマを討伐できたということは……」
「あぁ、これで群れは解消され今回のような被害はなくなる。これで調査拠点も大丈夫だろう」
これでドシャグマの群れはなくなり、群れの猛攻から逃れていたグリムビーバーや他の魔物の群れも拠点付近に彷徨くことはなくなるであろう。
「レクス、ありがとう。感謝する。」
「いやいや、こちらこそ。ヴィクトル達の助けがなかったらやられてたよ。ありがとう」
レクスとヴィクトルは握手を交わした。
「ヴィクトルさん、レクスさん、今後はマナ領域内でのモンスターとの戦闘は力を合わせて戦った方がいいですね」
「確かに……エナジーコアが無ければレクスに悪影響が及び、レクスがいなければドシャグマのようなモンスターとの戦いになれば僕らが危うい」
「これからのマナ領域内での戦闘については考えないといけないな」
ひとつ今後の課題ができてしまったが、ヴィクトルは一先ず置いといてやらねばならない事に専念した。
「これで一つ問題は片付いた。残すは高濃度マナだな」
「そうだユミア、エナジーコアの残量とか大丈夫なのか?」
残量が少なければ一度戻って再び態勢を整えた方がいいのではないか、そう考えていたがユミアは微笑んで首を横に振る。
「それなら大丈夫です。エナジーコアの残量なら……」
ユミアは辺りを見回し、大灯台の道ある幾つも咲いている白い花を見つけると屈んで手をかざす。すると白い花からマナの光が現れ、エナジーコアの中へと入っていく。
『マナエナジー補充完了。領域内での活動は十分にできます』
「アルスタリアの花は大量のマナを蓄えています。この花があればマナを使ってエナジーの補充ができるんです」
「へー…意外と便利なんだ」
「よし、このまま再開といこう。レクス、もうひと頑張りだ」
「なんのこれしき。まだまだ大丈夫!……あでもこんがり肉が食べたいな。エナジーコアもまだあることだし今から焼いてもいい?」
「もう!エナジーの残量は有限なんですから、急ぎますよ!」
「のんびりしてる暇はないんだから!急いだ急いだ!」
「あ、ちょ、まっ、いだだだだ!?や、優しく引っ張ってぇ!?」
ユミアとアイラに引っ張られたレクスはこんがり肉は食べることはできなかった。
「……君の主人はこう、戦闘との落差が激しいんだな……」
「ほんとにそう。旦那さん、ぬけてるところが多いんだよねぇ」
やれやれと遠い眼差しで語るブランにヴィクトルはやや同情した。
ちゃっかりブレイブいなしがあったりで狩技、スタイル、入れ替え技も混ざったトンデモスタイルになった……
モンスター戦にどうユミア達と絡めるか、今後マナ領域内での戦闘だったり悩みました
ユミア達を強化せねば……