ユミアのアトリエ―導きの錬金術師と異界の狩人   作:サバ缶みそ味

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とある歴戦王の超電磁砲

 レールガンやっぱりカッコイイ
 


 


12話 開拓任務を進めよう 後編

 

――開拓任務③【怪鳥】イャンクックの撃退

 

 

「いた……あれがイャンクックだ」

 

 大灯台へ向かう道中、レクスは岩場の陰から様子を覗く。グリムビーバーの生息地とされている川沿いに対象のモンスターがいた。

 

クルルル……クルルル

 

 鳥のような体型をしているが羽毛はなく、桃色の外殻に特徴的なしゃくれた大きな嘴、頭部にエリマキのような膜のある耳をしたモンスターこと、イャンクックが闊歩している。

 

「なんだか見た目は大人しそう……」

 

 アケノシルムやドシャグマと異なり一回り小さい為かユミア達は驚きや恐れの様子は一切なかった。

 

「イャンクックは臆病な性格であまり戦闘は好まないから他の大型モンスターに出くわすとすぐに逃げ出すんだ。だが縄張り意識は強く、自分より小さい相手には追い払おうと襲い掛かってくるんだ」

 

「あっ、イャンクックがグリムビーバーに襲い掛かってる!」

 

 突如イャンクックがグリムビーバーの巣に近づき、巣を守ろうとして威嚇しているグリムビーバーに口から火の玉を吐いて追い払う。そして嘴で巣を壊し、茶色く丸みを帯びた木の実を咥えて丸呑みした。

 

「あれは…パルマの実。グリムビーバーの大好物で群れで集めているのを知って横取りしたみたい」

 

「そうなるとまたグリムビーバーの群れが追われて調査拠点付近に縄張りを作りかねないな……」

 

 ドシャグマを討伐しグリムビーバーの生息地が戻ったかと思ったら再びグリムビーバーが追い出され拠点付近に縄張りを作られては振り出しに戻ってしまう。そうなる前に手を打たねばならない。

 

「イャンクックの攻撃は突進、ブレス、尻尾、初動が分かりやすい。やつと戦うことで大型モンスターの攻撃の基本を学ぶことができるため新米の狩人にとって最初の関門となっているんだ」

 

「動きをよく見て対処をする、ということか」

「レクスさん、戦闘準備はできています。いつでもいけますよ」

 

 

 ユミア達はいつでも戦えるようスタンバイをしている。レクスは頷いてセセリに乗る。

 

「イャンクックを撃退するには自分達は強いことを見せつける必要がある。そうすればこの周辺や大灯台には近づかない。まずは……」

 

 手綱を引くとセセリはイャンクックに向かって一気に駆けていく。イャンクックが接近するレクスに気づくよりも前にレクスは高く跳んだ。

 

「奇襲をかける!」

 

 空中で背負っている太刀『破邪之太刀イチモンジ』を抜刀し、イャンクックの背中に一撃を与えるとそのまま背中に乗った。

 

キュエエッ!?

 

 背中に乗られたイャンクックはレクスを振り落とそうとジタバタと跳ねながら暴れ回る。だがレクスは太刀を納めてしっかり掴んで振り落とされまいと踏ん張っていた。

 

「旦那さんが乗り攻撃している間にいくよ!」

 

 ブランがユミア達に続くように手を振ってイャンクックに迫っていく。今がそのタイミングなのかとユミア達は慌てて続いていく。

 

「こ、こう暴れられたら近づけないんじゃ……?」

 

「大丈夫、旦那さんならすぐにダウンをとるよ」

 

 イャンクックが暴れ回りすぎて疲れている間にレクスは剥ぎ取りナイフでザクザクとイャンクックの最中に刺しながら傷をつけていく。イャンクックが怯み、隙ができると再び太刀を抜刀した。

 

「そいっ!そいやっ!」

 

 気刃斬りによる連続の袈裟斬りを放ち、渾身の居合斬りを振るい着地をし鞘に納めたと同時にイャンクックの背中に剣閃が刻まれた。

 

ギュグルルッ!?

 

 強烈な一撃かイャンクックがふらつきバランスを崩してダウンする。

 

「よし、今がチャンス!攻めかかるよ!」

 

 さらに斬りかかっているレクスに続きブランもホープネコトンカチで攻め立てる。こうダウンしている相手をタコ殴りするような形でいいのだろうかとユミア達は戸惑いながらも続いていく。

 

「盾や杖の打撃系は頭部、槍の斬撃系は最初は脚を狙うといい。イャンクックの動きには気をつけて!」

 

 レクスのアドバイス通りにヴィクトルとユミアはイャンクックの頭部を、アイラはレクス達と脚を狙って攻める。

 

「堅い……だが一撃は通っている」

「弾かれてない…!攻撃が効いてるかも!」

 

 相手の頭部や甲殻は普段戦う魔物と異なり手応えは浅いがアケノシルムの戦いの時よりも攻撃は通っている感じがした。

 

ギュオォォオッ!

 

 起き上がったイャンクックは執拗に近接で攻めるレクス達を払おうと回転しながら尻尾を振り回した。レクスは前転して回避し、ユミア達は距離をとって攻撃を躱す。

 

「当たると痛いが動きは分かりやすい。間合いをとったり避けるタイミングをよく見て反撃するんだ」

 

「レクスさんの前転回避って、あれ普通に当たってるんじゃ……?」

 

「あれはフレーム回避。アタリハンテイ力学に基づいた……うん、まだアイラ達には難しいかも」

 

 アイラはブランが話しかけた『アタリハンテイ力学』がすごく気になるが今は戦うことに集中することにした。

 

「インレンジとアウトレンジを切り替えて戦う……これなら!」

 

 ユミアは杖銃を持ち替えて斧の形をした魔物退治の道具『レヘルン』を取り出して振るう。するとレヘルンから冷気が放たれイャンクックの真上に氷の塊が現れて頭上に落とされた。

 

ギュキュウゥッ!?

 

 突然現れた氷の塊が頭に直撃しイャンクックは不意を突かれて怯む。

 

 

「効いている…!いいぞユミア!」

「すごい!ユミアの錬金術で作った道具が効いてるよ!」

 

「やった…!」

 

 自分の作った魔物退治の道具が通用している。ユミアの自信がさらに強くなった。

 

「お兄ちゃん!私達も頑張らないとね!」

「そうだな、後れを取るわけにはいかないな」

 

 ユミアに続いてアイラとヴィクトルも攻めていく。ヴィクトルは盾でイャンクックの攻撃を防ぎつつ頭部に打撃を与え、アイラはうまく躱して槍の連撃を脚に刻んでいく。

 ヴィクトルがイャンクックの攻撃を防ぐ間にアイラが攻め、アイラが標的にされている間はアイラは回避しその間にヴィクトルが足止めをし、うまく連携をとっていた。

 

「息ぴったりの連携だな。さすが兄妹」

 

キュオオオッ!!

 

 レクスが感心している最中、イャンクックが大きく吠えると翼を大きく広げてその場でバタバタと跳ねた。

 

「怒り状態だ。攻撃が強く激しくなるから気をつけるんだ!」

 

 レクスが忠告したその直後にイャンクックは大きく後ろに跳んで下がると嘴で地面を抉りながら突進してきた。

 

「うおぉっ!あぶねぇっ!」

 

 レクスは太刀を納めて緊急回避で攻撃を躱した。

 

「ちょっと待って!?いまダイブしただけで避けたのあれ!?」

 

 

「あれは緊急回避と言って、あれもアタリハンテイ力学を使った……」

 

「アイラ、レクスさんとブランちゃんの世界と私達の常識はかけ離れてるかもしれないから気にしない方が……」

 

「僕達も学ぶことがあるようなないような……いや、兎に角戦いに集中だ」

 

 

 そんなことをしている間にイャンクックが鎌首をもたげると嘴から炎が溢れ、口から火の玉を吐いた。

 

「あぶなっ!?あんな大きな火を吐くの!?」

「あちちち!当たらないよう気をつけないと…!」

 

 イャンクックは一度火の玉を吐くと首を大きく振りながら何度も火の玉を吐き続けた。弧を描いて飛んでいく火の玉はユミア達に降りかかる。

 

グロロロッ!グロロロッ!

 

 

「わっ!距離を取るだけじゃなくて間合いを詰めなきゃいけないんだね!」

「火の玉の軌道をよく見て攻めるのか…!」

「レクスさんとブランちゃん…軽々と避けてる……」

 

 レクスは降りかかる火の玉の軌道を見ながら縫うように避けてイャンクックに踏み込み斬りを放ち、ブランはブーメランを投げて援護をする。ユミア達も続けてイャンクックの吐く火の玉を躱していく。

 

キュエエエッ!!

 

 迫るユミア達に気付いたイャンクックが翼をバタつかせながら跳んで嘴で啄もうとしてきたがヴィクトルが前に出て盾でイャンクックの攻撃を防いだ。

 

「ふっ!」

 

 ゴッと鈍い音が連続して響くが衝撃に耐えたヴィクトルは力を込めて盾で弾き返した。

 

「これもくらえっ!」

 

 イャンクックの下顎めがけてパイルバンカーの一撃を放つ。重く鈍く弾ける音が響く。

 

キュウウゥッ!?

 

 鈍い一撃をくらったイャンクックが仰け反り後退りして怯んだ。

 

「ナイスカウンター!このまま攻めていこう!」

 

 怯んで隙ができたイャンクックに気刃斬りを連続して放っていく。

 

キュオオオッ!!

 

 

 苛立ったイャンクックが火の玉を吐きながら突進をする。レクスは見切って回避し、アイラは当たる寸前のところを避けた。

 

「あぶっ……あれ?かすり傷がない……?」

 

「うまくフレーム回避ができたんだ。アイラ、極めていくとジャスト回避を習得できるかも」

 

「よ、喜んでいいのかなこれ……」

 

 突進が空振りでこけていたイャンクックが起き上がると再び連続した火の玉を吐いていく。

 

(錬金術で作った魔物退治の道具が効くなら、もしかしてこれも……)

 

 ユミアは自分のブーツを見て閃く。もしかしたらこのモンスターにも効くかもしれないと考えた。

 

「レクスさん、試したいことが!」

 

「わかった、隙をつくろう!」

 

 

 レクスは降りかかる火の玉を避けてイャンクックに迫ると、突きの構えで狙いを定めてイャンクックの背中の傷を狙って突きを放つ。

 

「よし…ここだ!」

 

 真上に掲げる構えをした後に二連斬りを放つ。その直後、イャンクックの背中に剣閃が刻まれた。

 

キュウゥウッ!?

 

 傷口破壊をくらったイャンクックが怯んで隙ができた。今がチャンスだとユミアはイャンクックに向かって駆ける。ユミアのブーツが赤く光るとユミアは力いっぱい踏み込んで高くジャンプをした。

 

 

「はああああっ!!」

 

 

 ブーツを赤く光らせたままユミアは宙返りをし、その勢いでイャンクックの頭に踵落としをぶつけた。

 

キュオオオッ!?

 

 

 大きな鈍い音が響き、ユミアがとんぼ返りをして着地をしたと同時にイャンクックが悲鳴をあげてダウンをした。

 

「…………いたたたた!?や、やっぱり堅かったかぁ…!」

 

 ユミアは涙を浮かべながら足をさする。一方でレクスは目が点になっていた。

 

 

「……イャンクック相手に踵落としでスタンとる人、初めて見た……」

 

 狩人は普段なら武器でスタンをとるが、まさか踵落としでスタンをとるとは思いもしなかった。

 

「旦那さん、今が攻め時だよ!」

 

「そうだった。よしっ!」

 

 起き上がるイャンクックに突きを放って甲殻を踏み台にし高く跳び、気刃兜割りをお見舞いした。赤い一閃が振り下ろされ、イャンクックの身体に連続した剣撃が刻まれた。

 

キュウウッ!?

 

 イャンクックが怯むとバキッと乾いた音が響き、イャンクックの耳の膜に傷ができて破壊された。

 自慢の耳が破壊され、まだ戦えるというレクス達の闘志にイャンクックは完全に戦意を失った。

 

 イャンクックは翼をバタバタさせながら明後日の方向に走り出し、強く羽ばたかせて飛ぶとこの場から離れて遠くへと飛んでいった。安全を確認したレクスはほっと一息いれて武器を納めた。

 

「よし、うまく撃退できたな。これで大丈夫だ」

 

 戦闘が終えてユミア達もほっとして武器を納める。

 

「大型モンスターとの戦闘と基本的な立ち回り…かなり勉強になったな」

「うまくできてよかったぁ…ユミア、足大丈夫?」

 

「な、なんとか……今後の戦闘の事を考えたら改良しないと」

 

 今回は基礎を学ぶことができたがこれからどんなレクスのいた世界のモンスターに遭遇するか、備えるために更に強くならなくては。

 

「イャンクックの撃退もできた。拠点に戻って団長に報告しよう」

 

_______

 

 

「よくやったお前達。これで団員も安全に向かうことができる」

 

 

 イャンクックを撃退し大灯台の拠点への道の安全が確保されエアハルトは満足し頷いた。

 

「今後は他にどんなモンスターが潜んでいるか拠点周辺を定期的に探索する必要があるかもしれないですね」

 

「確かに……アラディスは広大で、この出だしであるリグナス地方だけでもかなり広い。アケノシルムやドシャグマ、イャンクックの他にも生息しているはずだ」

「他にも団員が目撃していたり、文献や遺構で手がかりもあるやもしれん。レクス、情報収集や探索をヴィクトル達と協力してやってくれ」

 

 

「任せてください。資料作成は得意です」

「でも旦那さん、モンスターのスケッチとかはすごく下手だよね」

「しーっ!ブラン、言わなくていいのっ!」

 

 慌ててブランを止めようとするレクスにユミア達はくすくすと笑う。そんな中、女性の団員が困り顔をしてエアハルトの下へやってきた。

 

「団長、イャンクックに襲われ怪我を負った団員達の手当てなんですが……」

 

「どうした?なにかあったのか?」

 

「手当てに使う傷薬をきらしてしまって……」

 

「傷薬がないか……ユーステラから食糧や薬等の支給品を積んだ船が来るのは来週あたりになる」

 

 手当てをするのにそれまで待たせるわけにはいかない。どうしたものかと考えているとユミアが手を挙げる。

 

「傷薬でしたら……作れますけど、私やりましょうか…?」

 

「ユミア、傷薬作れるの?」

 

「うん、簡単なものならすぐに作れるよ」

 

「旦那さん、回復薬の在庫はあるよね?」

「おう、問題ない。なんならいくつか調合しようか」

 

 

「そいつは助かる。ユミア、レクス、頼んでもいいか?」

「はい、任せてください!」

 

「助かるわ。できたら救護テントに持ってきてちょうだい」

 

 

―――開拓任務④傷薬を作ろう

 

 

 ユミアはアトリエに戻りると錬金術を使って傷薬をいくつか作り、救護テントへと向かった。ユミアが抱えている蝶の装飾が施された緑色の瓶を見てアイラは目を輝かす。

 

「すごいねユミア!こんなにたくさん作っちゃうなんて!」

 

「ま、まぁね。よく作ってた道具だから」

 

「レクス、えらい量の治療薬だな………」

 

「薬草とアオキノコがあれば直ぐに出来ちゃうからね!」

「これにハチミツを混ぜたら効果もアップするよ!」

 

 同じくしてレクスもたくさんの回復薬を持ってユミア達と合流する。2人の持っているたくさんの治療薬に女性の団員は安心して頷いた。

 

「ありがとう、これだけあれば次の支給品までもつわ。みんな、傷薬持ってきてくれたわ!」

 

 

 怪我を負っていた団員達は治療薬が手に入ったことに安堵の顔を浮かべたが、治療薬を持っているユミアの姿を見て一瞬にして不安な表情に切り替わった。

 

「も、もしかして……錬金術士が作った薬か!?」

「そ、そんなもの飲んで大丈夫なのかよ……!!」

「錬金術で作った薬とか……俺達を呪う気か!?」

「それなら痛いのを我慢したほうがましだ……」

 

 

 団員達は物凄く嫌そうな顔をしてユミアの作った治療薬を拒む。

 

「………」

 

 ユミアはアホ毛がしょんぼりと垂れて無言で俯く。そこまで言わなくてもとアイラが割って入ろうとしたが先にレクスが動いた。

 

「ちょっと待ってて……」

 

 ブランに回復薬を渡したレクスは救護テントから少し離れた場所へと移動した。一体何をするのか、ユミア達がきょとんとしているとレクスはポーチから小さなタルを取り出し足元に置いた。

 

 何故ポーチに小さなタルが入っているのかとツッコミを入れたかったがよく見ると小さなタルから火花が出ていた。

 

「ブランちゃん……あれって何?」

 

「あれは……小タル爆弾だよ」

 

 えっとユミア達が一斉にブランに視線を向けた直後、小タル爆弾が爆発しレクスは小さな爆発に巻き込まれる。

 

「ひでぶっ!?」

 

 レクスは吹っ飛ばされるが直ぐに起き上がりユミアの下にすぐさま駆け寄る。

 

「ユミア、その治療薬をちょうだい」

「え、あ、はいどうぞっ」

 

 ユミアがあたふたしながら渡すとレクスは一気に治療薬を飲み干した。

 

「うーん、苦いっ……回復薬と同じ苦さだ。回復薬は治癒効果のある薬草と薬理効果を高めるアオキノコを調合して作るんだ。お互いの効果を高めたり組み合わせたりして作り上げる……ユミアの作った治療薬も同じなのかな?」

 

「えっ…は、はい。薬効のある『セイタカトーン』と効果を高めたり調整したりする素材を組み合わせて作っています。へ、変な効果とかは出ないよう十分に注意して調合してます!」

 

「それなら大丈夫じゃないかな?ユミアも同じ調査団なんだし、仲間の為に作ったものだから変なことはしないと思うな」

 

 

「……」

 

 団員達は顔を見合わせしばらく考え、止むを得ないと頷いた。

 

「……次の支給品が来るまではこれで我慢をする」

「の、飲んでも大丈夫なら……仕方ないか」

 

 やや渋々しながらではあるが効果があるのならばと団員達はユミアの作った治療薬を受け取った。これにはアイラ達もほっとした。

 

「うんうん、痛みを我慢するよりかは薬を飲んで治した方がいいぞ?」

 

 レクスは安心して頷いたが、ユミアは申し訳なさそうな顔をしてレクスを見つめる。

 

「あ、あのレクスさん、今回作ったのは飲み薬じゃなくて、塗り薬なんですけど……」

 

「………うそん」

 

 

 一瞬、変な空気が漂った。

 

 

_______

 

 

 あっという間に日が暮れ、開拓任務を終えたレクスはアトリエの庭で女性の団員から薬のお礼でもらった生肉を肉焼きセットでリズム良く焼いていた。肉の焼き具合をよく見てタイミングよく火から離して高々と掲げる。

 

「上手に焼けましたー!」

 

「お見事ー!」

「「「「ぷにー!」」」」

 

 見事なこんがり肉が出来上がり、ブランは拍手をお送り青ぷに達はぴょんぴょんと跳ねる。

 

「おーし、これから切り分けるぞー」

 

 レクスはハンターナイフを取り出し鼻歌を歌いながらリズミカルに切り分け、ブラン達に渡していく。

 美味しそうに食べるブラン達に満足気に頷き自分の分を食べようとしたところ、アトリエからひょっこりとユミアが顔を覗かせた。

 

「美味しそうな匂い……レクスさんの料理ですか?」

「お、ユミアも食べてみる?」

「えっ、いいんですか?ありがとうございます!」

 

 ユミアはレクスの隣に座り、渡されたこんがり肉を食べるとアホ毛がピンと張って目を輝かす。

 

「美味しい…!丁度いい焼き加減でカリッとしててフワフワですね!」

「喜んでくれてなにより」

 

 まだおかわりもあるよとレクスは鼻歌を歌いながら肉焼きセットで肉を焼いていく。

 

「………レクスさん、今日はありがとうございました。レクスさんがみんなを説得してくれなかったら使われないどころか忌避されてました……」

 

 肉焼きセットの焚き火を見ながらユミアは静かに俯く。

 

「いいのいいの、仲間なんだから助け合わないとね」

 

 ルンルンと鼻歌を歌いながらレクスは肉を焼き続ける。明るく接するレクスにユミアは顔を上げて真剣な眼差しで見つめた。

 

「……レクスさん、どうして錬金術を忌み嫌わないんですか?レクスさんは錬金術が怖くないんですか?」

 

 アラディス帝国の滅亡のきっかけであり『禁忌』とされて恐れ、忌み嫌われている錬金術をレクスは避けるどころか受け止めて接している。違う世界の住人であるレクスが何故錬金術を恐れていないのか、ユミアはずっと気になっていた。レクスは鼻歌を止め、ユミアの方へ顔を向けた。

 

「……俺のいた世界には『黒き死の風』と呼ばれたモンスターがいるんだ。そいつは生物に神経や身体能力の異常、抵抗力を低下させ生命力のリミッターを外し凶暴化させ死ぬまで暴れさせる症状を引き起こす力を持っているんだ」

 

「生物を死ぬまで暴れさせる……」

 

「それは一種の病とされ、生物のみならず人や獣人族達にも悪影響を及ぼす。その病はかつて生物の生態系をめちゃくちゃにし、壊滅寸前までの被害を出した記録があり……俺の故郷も住んでいた人達も被害にあった」

 

 レクスのいた世界にはそんな恐ろしい力を持つモンスターがいるのかとユミアは絶句する。

 

「そのモンスターは……根絶させたんですか?」

 

「俺も新人ハンターだった頃はそいつを絶滅すべき駆逐すべきだと考えていた……でも書士隊の『団長』と呼ばれた人が止めた、『俺達はあいつのことを何も知らない。よく調べて知るべきだ』と。調べ、戦い、見届け、そいつの最期までありとあらゆることを知り……駆逐するのをやめた」 

 

「……どうしてですか?」

 

「そいつには悪意なんてなかった。ただひとり孤独の世界で必死に生きていた。ただ生き残るためにその力を、他者を仲間を己自身をも蝕む力を手に入れてしまったんだと……」

 

 レクスは少し悲しそうに一瞬だけ俯くが直ぐに顔を上げた。

 

「それに、俺達よりも先に自然は受け入れていた。年々そいつの病に蝕まれて暴れ回るモンスターが少なくなり、出没はするが生態系に大きな被害が及ぼすことも少なくなった……今でも議論はされているが、俺はそいつを拒むことを止めて受け入れた。分野は違うけど俺は錬金術も受け入れてるよ」

 

「……え?」

 

「錬金術でおそろしいことがあったかもしれない、悲しいことが起きていたかもしれない……でも、ユミアのように誰かの為に、誰かを助ける力もあるってことが知れたんだ。俺はユミアの、誰かの力になる優しい錬金術があるって信じてるよ」

 

「レクスさん……」

 

 レクスの優しい眼差しにユミアは目が潤む。狩人は、彼は自由で率直で優しいのか……

 

「旦那さん、なんか焦げ臭くない?」

 

「え……あっ、やべっ!めっちゃ焦げてる!!」

 

 

 真っ黒に焦げた肉にレクスはあたふたする。

 

 

「こ、こんがり肉になる錬金術って……あったりする?」

 

「………ありません」

 

 そしてなんでこんなにおっちょこちょいなのか、ユミアはジト目でレクスを見つめた。

 

 

 





 歴戦王レダウは歴戦王チャレンジを初めてやる人にはいい難易度では、と思う。異論は認める。尚地形はヒドイけど

 残りの四天王の歴戦王の難易度がどうなるか気になります……
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