ユミアのアトリエ―導きの錬金術師と異界の狩人   作:サバ缶みそ味

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 イソネミクニの原種と亜種の攻撃行動がめっちゃ変わるのが嫌……

 亜種の武器はお世話になりました…だけど狩るのが大変でした。


14話 地底湖のローレライ 【人魚竜】イソネミクニ

 イソネミクニの甲高い咆哮にヴィクトル達は耳を塞ぐ。

 

「うわっ!?う、うるさっ!?」

「っ!かなり耳に響く咆哮だな!」

「う、うるさすぎて耳が痛い……」

 

 ユミア達は咆哮の威力が想像以上に耳に響いたため動けずにいたが、その間にレクスが先陣を切って轟盾斧【大騎虎】の剣を抜刀してイソネミクニに切りかかっていた。

 

「みんな大丈夫!?」

 

 レクスがヘイトを稼いでいるうちにブランがユミア達に駆け寄る。

 

「な、なんとか大丈夫……レクスさん、モンスターの咆哮に慣れてるんだね」

 

「イソネミクニの咆哮は耳に響くほどうるさいけど、それよりもっとうるさい奴もいたり咆哮で衝撃波を出す奴もいるからね」

 

「衝撃波…!?で、出くわしたくないなぁ…」

 

 どういう仕組みで衝撃波を出すのか、アイラ達はすごく気になったが今はそれどころではない。すぐさま武器を構えて戦闘態勢に移った。

 

「今後地底湖にも調査が入る。被害が出る前に対処せねば」

「はい、私達もレクスさんに続きましょう!」

 

 ユミア達は先陣を切っているレクスの下へ駆ける。

 

キュロッ!

 

 イソネミクニが前脚の鋭い爪でレクスに襲い掛かる。レクスはタイミングよく盾で防ぎ、弾き返す。

 

「せいやっ!」

 

 盾についている刃でイソネミクニの躯を突き、力を溜めて厚い刃の剣で十字に斬る。

 

キュロロロッ!

 

 するとイソネミクニが滑るように移動しレクスの背後へと廻り込む。

 

「なっ!?亜種と同じ動きを……!?」

 

 不意を突かれたレクスは反応が遅れた。イソネミクニが身体をくねらせその勢いで尾鰭で薙ぎ払う。

 

「ふっ!」

 

 当たる寸前のところをヴィクトルが盾で防ぎ、カウンターでパイルバンカーの一撃を放ちイソネミクニを退けた。

 

「レクス、遅くなってすまない!」

「いや、助かった!」

 

キュキュロッ!

 

 一度下がったイソネミクニが尾鰭をバネにして飛びかかりボディプレスをしてきたがレクスとヴィクトルはすぐさま回避する。

 

 イソネミクニはレクスを狙って前脚の鋭い爪で引っ掻こうとするところをユミアがイソネミクニの頭部に狙いを定め杖銃を撃った。

 

「させないっ!」

 

 銃弾は弾かれてはいないが手応えは薄い。イソネミクニはユミアに標的を変えて襲い掛かろうとしたがアイラの槍の連撃に阻まれる。

 

 

「はあああっ!」

 

 

キュロロッ!

 

 苛立ったイソネミクニが尾鰭で薙ぎ払おうとしたがアイラはタイミングよく回避をし当たらずに済んだ。

 

「いいぞアイラ、その調子!」

 

 レクスが滑り込んで回転斬りをし、イソネミクニを怯ませる。

 

「えへん、どんなもん……って、レクスさん!?剣から煙が出てるよ!?」

 

 レクスが持っている剣の刃が熱を帯びたように真っ赤になり、柄から煙が上がっていることにアイラはぎょっとするがレクスは焦ることなく平然としていた。

 

「おっと、そろそろチャージしないと」

 

 レクスは剣を盾に連結させると盾からガチャンと音が鳴り、再び剣を抜くと刃は元の状態になっていた。

 

「チャージアックスは剣モードは衝撃を吸収し『剣撃エネルギー』を溜めて盾にあるビンにチャージする。斧モードでそのチャージしたエネルギーを使って攻めるのが特徴なんだ」

 

「か、変わったギミックをしてるんだ……」

「浪漫があってカッコイイな……!」

「かなり作り込まれた武器なんですね!」

 

 アイラはちんぷんかんぷんだったがヴィクトルとユミアは目を輝かせていた。

 すると怯んでいたイソネミクニは滑り込んでレクス達の背後をとり、尾鰭の力で立ち上がると大きく息を吸い込み、喉元が青白く発光した。

 

「みんな避けて!ブレスがくるよ!」

 

キュゴォォォッ!!

 

 ブランが注意したその直後、イソネミクニが青白いガスのようなブレスを薙ぎ払うように吐いてきた。

 レクスとユミア、ヴィクトルは接近してブレスが当たらない範囲へと避けたが広いゆっくりとしたブレスにアイラは避け遅れた。

 

 ガスのようなブレスに当たったアイラは突然身体をふらつかせてへたり込んでしまう。

 

「アイラっ!?」

 

 ユミアが慌ててアイラの下へ駆け寄りユミアを様子を伺う。アイラの目は閉じかけ、うつらうつらとしていた。

 

ゆみあー……あたしーなんだかー……ねむたく……なって……

 

「ちょ、アイラ!?しっかりして!」

 

 ユミアは何度もアイラの体を揺らして起こそうとするがだんだんとアイラの瞼が重くなって眠りかけそうになっていた。

 

キュロロロッ!

 

 イソネミクニは眠たそうにして動けないでいるアイラに狙いを定めた。

 

「大変だ!ブラン、ヴィクトル、足止めを頼む!」

 

「ああ!アイラを頼む!」

「任せて!こっちだよー!」

 

 イソネミクニが動く前にヴィクトルは盾でイソネミクニの頭部を打撃し、ブランはブーメランを投げて足止めをした。レクスは急ぎアイラの下へ駆け寄る。

 

「レクスさん!アイラが寝ちゃう!」

 

「イソネミクニは咽頭部で『眠り粉』という強力な催眠性の粉を生成し、それを使ってガスを吐いたり粉塵を撒き相手を眠らせて襲うんだ」

 

 レクスはアイテムポーチから黄色い液体の入った瓶をユミアに渡す。

 

「これは『元気ドリンコ』。眠る前に飲めば眠気が吹き飛ぶ」

 

 

「ありがとうございます!アイラ、これを飲んで!」

 

 ユミアはゆっくりとアイラに元気ドリンコを飲ませる。するとうつらうつらとしていたアイラの目はみるみるとしっかりし始め、目がぱっちりと開いて眠気がスッキリと吹き飛んだ。

 

「め、めちゃくちゃキーンってきた!?しかもちょっと元気が出た気がする……」

 

「アイラ、危うく寝ちゃうところだったよ」

 

 眠る寸前に覚めてよかったとホッとするのも束の間、イソネミクニが喉元を青白く光らせながら滑るようにレクス達の後ろに廻り込み眠り粉のブレスを吐いた。

 

「むんっ!」

 

 レクスは盾で防ぎ、ユミアとアイラは眠り粉のブレスに当たらないよう回避をした。

 

「うわっと!隙あらば眠らせようとしてくる!」

 

「もうっ!同じ手にはやられないっての!」

 

 2人は眠り粉のブレスに注意しつつ杖銃を振るい、槍の連撃で反撃をする。

 

キュロロロッ!

 

 イソネミクニは頭を薙ぐように勢いよくふって鬣のような頭のヒレで薙ぎ払う。薙ぎ払うと同時に鬣のヒレから鋭い刺がユミアとアイラめがけて飛ばされる。

 2人の前にレクスとヴィクトルが立ち、盾で鋭い刺を防いだ。レクスはタイミングよく盾で弾き返すが、ヴィクトルの盾は衝撃を抑えることはできたが刺が突き刺さった。

 

「なっ!?」

「お兄ちゃん、大丈夫!?」

「僕は大丈夫だ。流石に連戦はきつかったか……」

 

 ヴィクトルが長らく使っていたパイルバンカーの盾はアケノシルムの頭突き、ドシャグマの強烈な一撃、イャンクックの猛襲、違う世界のモンスターの攻撃を受け止め続けたため耐久に限界が近づいてきていた。

 

「だが、パイルバンカーは打てなくてもこれで殴ることはできる」

 

「お兄ちゃん無理はしないでね!」

 

 

 

 そこへイソネミクニがとぐろを巻く様に立ち上がり、尾鰭をバネにして勢いよく滑るように突進をしてた。

 

「やらせるかっ!」

 

 レクスが盾で弾き返すとイソネミクニは仰け反るが倒れまいと持ちこたえ、両前脚の鋭い爪で襲い掛かり鍔迫り合いになった。

 

「ふぬぬぬぬっ…!!」

 

 

 グイグイとイソネミクニが押し、喉元を青白く光らせレクスに迫る。レクスは負けじと眠り粉に当たりまいと盾で応戦した。

 

「眠り粉を間近で放たれたらレクスが眠ってしまう…レクスを援護するぞ!」

 

「はい!」

「了解だよ、お兄ちゃん!」

 

 盾で押し返そうとするレクスにイソネミクニの左前脚の鋭い爪が振り下ろされるが、そこへヴィクトルが盾で受け止め更に押し込んでいく。

 

「ふんぬぬっ…!いいぞヴィクトル!もっと押し込むんだ!」

「くっ…!細長い体とは思えない力だな…!」

 

 ユミアとアイラはイソネミクニの両サイドへと回り込む。

 

 

「狙い撃つっ!」

「ここだねっ!」

 

ユミアは杖銃でイソネミクニの頭部を狙い撃ち、アイラは槍の連撃を刻む。

 

「ブラン!」

「うん!任せて!」

 

 ブランが駆けてレクスの背中を踏み台にして跳び、宙返りの勢いでネコトンカチの一撃をイソネミクニの頭にお見舞いする。

 

キュロッ!?

 

 ユミア達の援護とブランの一撃が効いたようでイソネミクニが怯み押し込む力が弱まった。

 

「よし今だ!押し返すぞ!」

「おうっ!」

 

 レクスとヴィクトルは力いっぱいに押し返して盾による一撃を放った。イソネミクニが怯んで大きく仰け反り隙を晒す。

 

「こいつもくらえっ!」

 

 レクスが剣を盾に差し込み力を込めるとガシャンと音を鳴らしながら柄の長い大きな斧へと変形し、斧の部分がフル回転しながらイソネミクニの身体に斬撃を刻む。

 

「斧に変形した!?どういう仕組みなの!?」

 

「……かっこいいな」

 

 アイラはぎょっとするがヴィクトルは目を輝かしていた。

 

「もういっちょ!」

 

 火花を散らせながら盾斧を横に薙いで追撃を与える。イソネミクニの頭部に当たると小さな爆発が炸裂し、衝撃で頭の大きな鰭の膜がバキリと破れた。

 

キュロッキュロッ!

 

 イソネミクニが反撃で前脚の鋭い爪を連続で引っ掻き回す。レクスは前転して躱すが、更にイソネミクニが滑るように回り込み尾鰭で薙ぎ払った。

 

「あだふっ!?」

 

 避け遅れたレクスはユミア達の方へと転がされ、イソネミクニは歌声のような甲高い鳴き声を上げながらユミア達の回りをぐるぐると動き回る。

 

キュオォォォ……

 

 その際に鳴きながら咽頭部に生成される眠り粉の粉塵をユミア達の回りにばら撒き、眠り粉の粉塵で取り囲んでいく。

 

「取り囲まれた!?」

「少しでも当たったり吸ったりしたら眠っちゃうんだよね!?」

「身動きさせないようにするつもりか…!」

 

キュコオォォォォォォッ

 

 更にイソネミクニは歌声のような甲高い鳴き声を大きく上げ喉元を青白く光らせる。イソネミクニの足元のまわりには青白い眠り粉が漂い出した。

 

「まずい。眠り粉の粉塵を大放出する気だ」

 

「旦那さん、元気ドリンコはまだあるの?」

 

「しまったな……調合してないからさっきのでもう無い」

 

 レクスは盾で防いで凌げるが、このまま眠り粉を大放出されたらユミア達が眠ってしまう。なんとか打開する方法はないか考えているとユミアが閃いた。

 

「レクスさん、ここは私が…!」

 

 ユミアは魔物退治の道具の一つ『ルフト』を展開させ前へ構えた。

 

キュロロロロロッ!!

 

 展開させたと同時に喉元から眠り粉を放出し大量の眠り粉の粉塵がレクス達に迫る。

 

「これで吹き飛ばすっ!!」

 

 ユミアはルフトを風車のようにフル回転させると緑色の風が勢いよく放たれ、迫る眠り粉の粉塵を一気に吹き飛ばした。ルフトの風の勢いは止まず、眠り粉を吹き飛ばすのみならずイソネミクニの身体に風の斬撃を刻んでいった。

 

キュロッ!?

 

 

「相手は怯んだ!でかしたぞユミア!」

 

「いいよユミア!どんどん眠り粉が吹き飛んでいくよ!」

 

「レクスさん!今のうちに!」

 

 

「ユミア、ナイスだ!任せろ!」

 

 レクスは勢いよくかけて力一杯盾を振り下ろす。重い一撃が直撃しイソネミクニは怯んだ。

 

「旦那さん!チャンスだよ!」

 

「おっしゃあああっ!!」

 

 

 レクスは力を込めると盾斧が一瞬大きく光らせ、高出力属性解放斬りを放った。イソネミクニの頭部に刻まれ爆発が起きる。

 

キュロッ!?

 

 イソネミクニは大きく怯み、ダウンをする。

 

「もういっちょぉっ!」

 

 レクスの一撃は止まらない。力強くフル回転する盾斧で薙ぎ払い、追撃高出力属性解放斬りをお見舞いした。更なる斬撃が刻まれ、その直後に爆発が炸裂する。

 

キュオッ!?キュロルィィィィ……!

 

 イソネミクニはよろめき、弱々しい最期の咆哮を上げて倒れ動かなくなり喉元の青白い光は消えていった。

 

 レクスは辺りを見回し、安全が確認されると武器を納めて一息つく。

 

「うん……討伐完了だ」

 

 戦闘終了しユミア達もホッと安心の一息をついた。

 

「よ、よかったぁ。なんとかなりましたね」

 

「『海竜種』か…レクスの世界には様々な場所に適応した竜種が存在しているのか」

 

「というか見た目が怖かったぁ……怪談みたいなのはもう勘弁」

 

 顔のないモンスターとか、もっと怖いのがいるよとブランとレクスは言おうとしたがそっとしてあげた。

 

「結局精霊に関するものはありませんでしたね……」

 

「それでも地底湖にはイソネミクニのような恐ろしいモンスターもいる、という情報が得られたんだ。いい収穫だと思うぞ」

 

 ヴィクトルの言う通り、調査団が安全に探索できるよう情報を得ることはできた。

 

「そうですね、一度拠点に戻って団長に報告しましょう」

 

 ユミア達は地底湖から離れ、拠点へと向かった。地底湖から出る際に、アイラは不安そうに何度も振り返っていた。

 

 また再びイソネミクニのような怖い声が聞こえるのではとびくびくしていたが、レクスがニヤニヤしながら茶化すとプンスカと怒ったアイラが槍を振り回してレクスを追いかけ回していった。

 

_______

 

「ふむ……地底湖についての不可思議な噂、そして『イソネミクニ』の討伐、ご苦労だった」

 

 拠点に戻ったユミア達は団長に精霊に関連する可能性のある地底湖の噂と地底湖に潜んでいたモンスターについての報告をした。

 

「村の所在どころか怪談話めいたものと怪談に出てきそうなモンスターの情報だけでしたけど……」

 

「ははは、本当にご苦労だったな」

 

 すっかり疲れ気味なアイラにエアハルトは苦笑いをする。よっぽど大変な目に遭ったようだとアイラを労う。

 

「『人魚』みたいな竜……綺麗な歌声で惑わし、眠り粉で眠らせて襲う……ユーステラにも人魚にまつわる伝承があるんですよ!レクスさん、もう少し詳しく教えてくれませんか!?」

 

「あ、あのウィルマさん?ち、近いですよ!?」

 

 イソネミクニについての話を聞いたウィルマは目を輝かせレクスに迫る。

 

 

「なるほど……地底湖か」

 

 その一方、エアハルトの隣でユミア達の情報を聞いていた銀髪の爽やかな顔立ちの男性は納得しながら頷いていた。

 

「あの、そちらの方は…?」

 

 ユミアはずっと気になっていたのでエアハルトに尋ねる。

 

「ああ、ちょうどよかった。お前らに紹介しようと思ってたんだ。こいつはリヒト。情報収集を得意としている」

 

「今回は私達の調査に協力してくれるそうです」

 

「リヒトだ。力になれるよう最善を尽くす。よろしくな」

 

 軽装備の成りをしているリヒトは頷いてレクスをじっと見つめる。

 

「えっと……な、なんでしょうか?」

 

「ふむふむふむ……なるほど……団長、レクスさんはユーステラに伝わるおとぎ話の騎士達に似てますね……たしか『星を降らす蛇』の……」

 

 リヒトはつぶやきながらずいずいとレクスに迫っていく。

 

「え、ちょ、リヒトさーん!?近い!近いですよ!?」

 

「リヒトさん。レクスさんに質問するのは私が先ですからね?」

 

「ウィルマさん!?」

 

 リヒトに対抗してレクスに迫るウィルマにレクスは成す術が無くお手上げ状態に。収集がつかないのでエアハルトが咳払いして夢中になる2人を止めた。

 

「あ、し、失礼……こほん、先生からも『精霊とともに暮らす村』の話は聞いているが、地底湖の情報は興味深いな」

 

「……ほんとーに興味深いですか?」

 

 先程までレクスに夢中だった2人なのでユミアはジト目で見ながらツッコミをいれた。

 

「だ、大丈夫だ。話を聞く限り、やはり村は地底湖の近くにあると考えてよさそうだな」

 

「随分と確信を持って話すんだな。地底湖にはモンスター以外何もなかったんだが」

 

 疑問に思ったヴィクトルが尋ねるがリヒトはにっこりして返す。

 

「しかし地底湖の奥から人の話し声が聞こえたという情報は事実だ」

 

「確かに、いずれにせよ何らかの追加調査が求められると思います」

 

 イソネミクニの討伐も済み、完全に安全とまではいかないがモンスターに襲われることなく調査は進むことはできるであろう。

 

「でも、村の存在と人の声とをすぐに結びつけるのは難しいのではないかと……」

 

 ユミアの質問にリヒトは満足気に頷いた。

 

「うん、いいじゃないか。そういう慎重な姿勢こそ、調査団に求められるものだ」

 

「そ、そういうものなんですね……」

 

「皆の知っての通り、ここアラディス大陸内は未だに未知の領域が多い。このリグナス地方も全容が解明されているわけじゃない。つまり……わかるな?」

 

 エアハルトの問いにユミアは納得して頷く。

 

「地底湖で成果は上げられなくても可能性自体は否定できない

、ということですね?」

 

「うむ、近くに村があったとして地底湖以外の方面からの経路があるかもしれない」

 

「つまりはリグナス地方全体を調査すれば手がかりが得られ、全容が明らかになるかもしれない、ということかな」

 

「レクスの言う通り、調査団の調査の基盤作りは完了した。更に調査の範囲を拡大して開拓をしつつ平行して様々な調査をせねばならない」

 

 エアハルトは貼られてある地図の方へと視線を向ける。

 

「これまでユミアがしていたようにマナ領域を順次晴らして進む必要がある」

 

「母が遺していったフラミィによれば……大きなマナの通り道の上には大灯台のような循環器が設置されていたようです」

 

『アラディスでは、これを使ってマナの巡りを管理していた記録が残っています』

 

「つまり裏を返せば、あの『台座』はマナの通り道上にあるということだな」

「そういうことです。私の見た限り、大灯台を巡る通り道は北と東に向かって伸びているみたいです」

 

 ユミアは地図にマナの巡る通り道を北と東へと示した。

 

「なるほど、じゃあこの道を辿って端から順々にマナ領域を解消していって……」

「最終的に大陸の最奥までマナ領域を解消して進めていく、という計画ですね」

 

 ヴィクトルはエアハルトに尋ねるとその通りだと頷いた。

 

「北と東……団長、進む先には何があるんです?」

 

「北部の『マルゴー樹海』の覆う領域はリグナス地方でもひときわ大きい。東には大きな研究施設の跡地がある。効率を求めるなら北、くまなく調査するなら東から、ということだな。細かい調査方針に関しては任せる。それじゃお前達、引き続き頼むぞ」

 

 こうして調査の報告とこれからの本格的な調査任務についての会議は終わった。

 

 この後もレクスはウィルマとリヒトにずいずいと迫られ、ユミアとアイラに助けられた。

 

_____

 

 日が暮れて調査が一段落つき、ユミア達はレクスとブランが作る『ハンター飯』とやらの料理をいただいていた。

 

「お肉や野菜にチーズをのせて焼くのは美味しいと思う。でもなんでその後ハチミツをかけるの!?」

 

「いやぁ、これがかなり美味いんだぞ?とくにこのイーストハニーが」

「旦那さん、アイテムBOXの端にイーストハニーが残ってて良かったね」

 

「アイラ、レクスの言う通りかなり美味いぞ」

「いやお兄ちゃんはお肉ばっかり食べてないで野菜もちゃんと食べてって」

「ヴィクトルさん、野菜が苦手なんですね……」

 

 

 ヴィクトルの意外な一面にユミアは苦笑いをした。

 

「それで、ユミア。どっちから調査する?」

 

 明日からマナ領域を晴らし開拓しつつ様々な調査をする任務を担う。手をつけるとすれば北と東、どこから先に進めるか。

 

 

「効率よく調査を進めるなら北からがいいとのことだ。僕は樹海の調査を推すが」

「でもでもやるなら隅々まで調べた方がよくない?私は東からいいと思うけど」

 

「じゃあ俺は「旦那さん、間を取って北東は無しだからね」……すみません、何でもないです」

 

 

 レクスとブランのやりとりにユミア達は笑い合う。

 

「ユミア、北に向かうか東に向かうか、判断はマナ領域を晴らす力を持つ君に任せよう」

 

「え…?」

 

 ヴィクトルの言葉にユミアはきょとんとするがヴィクトルは笑って頷く。

 

「どちらが正解ということもない。君がそうすべきと思った道を選んでくれ。僕達は全力で力を貸す」

 

 ユミアは一瞬驚くがすぐに笑って頷いた。ユミアの笑顔にレクスは満足気に頷く。

 

「おーし!今度はこんがり肉も焼いちゃおうか!」

「レクスさん、また焦げ肉にしたらダメですからね」

「こんがり肉か、これは美味しそうだな……いやちょっと待て、どこから曲が流れているんだ」

 

 

 楽しそうに笑い合うユミア達を見てアイラはくすっと笑う。

 

「たまにはこうして焚き火を囲んで、意見を交わしたり笑い合うのも悪くないね……」

 

 

 

________

 

 

 そして夜が明け、次なるマナ領域への探索に向かうのであったが……

 

 

「あ、アイラ……すごく眠たそうだけど大丈夫?」

 

 ユミアはうつらうつらしているアイラを心配そうに伺う。当の本人は欠伸をし、今にも眠ってしまいそうになっていた。

 

 

「ごめん……昨夜は何故か目が冴えて眠れなくて……」

 

 

「アイラ、また夜更かしをしたのか?」

 

「うー……ん……わかんない……」

 

 

 

「………すまん、元気ドリンコの効果が強すぎたんだな」

「ニトロダケとハチミツだもんね。アイラ達に合うよう調整しないといけないね」

 

 アイラをハンモックで寝かせて出発は一時中止となってしまった。

 

 

 




 無理やり押し込んだ感が……シカタナイネ

 ウィルマさんは癒し
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