ユミアのアトリエ―導きの錬金術師と異界の狩人 作:サバ缶みそ味
うおおおお
スランプになってる場合じゃねええ
データ容量でアズレンができなくなって落ち込んでる場合じゃねえええ
うおおおおお
「おーし、取り壊した建材は向こうへ運べ!」
リオレウスの襲撃から一夜明け、エアハルトの指示のもと団員達は焼け焦げた家屋を取り壊したり、壊された施設の修理をしたり拠点の修復に励んでいた。
レクスの提案でモンスターの襲撃に備えた拠点の防衛を強化し、団員達に防衛訓練を行った成果か家屋の損壊は少なく、遺物や調査資料の焼失を防ぐことができ被害は最小限に抑えることができた。
しかしながら襲撃してきたリオレウスは自分達が遭遇してきた魔物達とは桁違いに強く、幾人か団員達が負傷し手に負えない危機にまで陥っていた。
狩人でありモンスターとの戦いに慣れているレクスや彼と共にモンスターとの戦闘を経験したユミア達、ぷに達の習性を活かし消火に助力してくれたブランがいなかったらアラディス調査隊は拠点と共に焼き尽くされていたかもしれない。エアハルトはため息をついて頭をかく。
「ちいとばかし俺達も鍛え直す必要があるかもな……」
今後の課題ができた。だが今は拠点の修復を最優先に取り組むことにした。
「団長ーっ!」
気を引き締めて再び団員達に指示を出すところへユミア達がやってきた。身体を休め、ナルガクルガ、リオレウスとの戦いで負った怪我は癒えたようだ。
「団長、私達も手伝いますよ」
「ジジイのとこも大変だろ?手を貸すぜ?」
「おお、そいつはありがたいが……お前達には調査を続けてもらいたい」
団長の返答にユミアはキョトンとするがヴィクトルは納得して頷く。
「確かにまだアルバー達の問題を解決しきっていないし、その先の高濃度マナ領域の解消に取り掛からなくてはならないな」
アルバーの集落を襲撃したナルガクルガを撃退できたが集落の修復やアルバー達の食糧問題を解決できていない。更にリグナス地方の全域を調査するために解消しなければならないマナ領域もまだ残っている。
「連中も腕のある冒険者達だ。これぐらい直ぐに立て直せる。だからこっちは俺達に任せてお前達は気にすることなく突き進んでくれ」
「ジジイがそう言うなら遠慮なくそうするか。おい錬金術士」
「錬金術士じゃないですユミアですー」
ぶっきらぼうに名前を呼ばないルトガーにユミアはしかめっ面で返す。
「俺の武器を修理してくれねぇか?モンスターとの戦いで刃が立たなかった上にぶっ壊されてな。錬金術ならいいもん作れるんだろう?」
「まあできなくもないけど……」
ユミアはふてくされ顔でそっぽを向く。ルトガーのぶっきらぼうな態度にムッとくるが今後のことを考えると仕方ない気がするのでやらざるを得ない。
「ルトガーの言う通り、今後もナルガクルガやリオレウスのような手強いモンスターとの戦いもある。僕達の武器の強化も考えた方がいいな」
「そうだね、でも武器だけじゃなくて装備も強くしたいなー!ルトガーなんか服がボロボロになってたし」
ヴィクトルとアイラも今後に備えて装備の強化をしたいようで、ユミアもブーツのカスタマイズをしたかったためしぶしぶルトガーの要望に応えることにした。
「仕方ない。腕によりをかけてやっちゃいます」
「そうこなくっちゃな。すんげぇかっこいい武器を作ってくれよな!」
「装備の素材はー……そうだ!いいものがあるの。先にアトリエに行ってて!」
何か閃いたようで、アイラはルンルン気分で拠点の倉庫へと走っていった。そんなアイラの後ろ姿を見つめてヴィクトルは苦笑いをする。
「あの様子だと装備にあれこれアレンジされるかもな……」
「間違いないですね……そういえばレクスさん達は?」
ふと思えば今日は朝からレクスとブランの姿を見かけていない。あの2人は夜明けと共に起床し、ユミアは朝寝坊するので見ていないのであった。
「ああ、あいつらならアルバー達の食糧確保のために野菜や果実を採取しに出かけたぜ?たぶん今なら川で釣りをして魚を獲ってるはずだ」
「えっなんでルトガーが知ってんの!?」
「お前が朝寝坊するからだろうが。起こしてもぐっすりおねんねしてるから言伝を頼まれたんだよ」
「ちょ、なんでルトガーなんかに言伝を頼んだんですかレクスさんは……!」
『ユミア、レクスは30回ほどユミアを起こそうとしてくれてましたが起きず、最終的にユミアが寝ながらレクスを蹴飛ばしたので諦めたようです』
「ふ、フラミィ!?そんなこと記録してないでちゃんと起こしてよね!?」
「ははっ!お前すんげぇ寝相が悪いんだな!」
「うー……後で覚えてろー……」
ゲラゲラと笑うルトガーにユミアはムスッとして睨み返す。後でルトガーの武器を修理する際はヘンテコな形にして返そうと決めた。
「2人共、喧嘩してないでレクス達を呼びに行くぞ」
「へいへい、貴族のお坊ちゃんは真面目だな」
「ルトガーが悪いのに……」
『ユミア、頑張って起きる努力をしましょう』
ユミア達は拠点の近くあるへと向かった。川岸に沿ってくだり、海と繋がる汽水域へたどり着くと海側に向けて釣りをしているレクスと釣り上げた魚を大きめの魚籠に移しているブランを見つけた。彼らの側には果実や野菜がいっぱい詰まっている籠もあった。
「レクスさん、ブランちゃん!」
「お?ユミア達か!アルバー達の食糧をたんまり採取できたぞ!」
「大漁だよ!すっごく頑張ったんだ!」
えへんと胸を張る2人にユミアはクスッと笑う。さっきまでのムカムカが一気に吹き飛んだ。
「ずいぶんと釣れたな。釣りの腕も確かなものだ」
「ん?どうして魚籠が2つあんだ?」
ブランが魚を入れた魚籠の他にもう一つ大きめの魚籠があった。覗いてみると緑色の分厚い鱗をした大きな魚と紫色の分厚い鱗をした大きな魚が入っていた。
「すんげぇでけえ魚だな!アラディスに棲む魚か?」
「いや、こいつらは俺達の世界に生息する生物だ。いやはや、環境生物も『龍隠し』にあっていたとはね」
この生物達もレクスのいた世界に生息する生物だとは、ユミアも興味が湧き魚籠の中を覗く。
「綺麗な魚ですね……なんて言う生物なんです?」
「『ハレツアロワナ』と『バクレツアロワナ』。絶命したら破裂したり爆裂したりするから気をつけてね」
それを聞いたユミアとルトガーは直ぐ様後ろへ下がった。
「それを先言えよバカ野郎!?」
「破裂や爆裂するって……どういう生態系をしてるんですか!?」
まさかこの生物までもがとんでもない生態系をしているとは思いもよらず、やはりレクスのいた世界が色々とおかしいとルトガーは思えてきた。引き気味な2人に対してヴィクトルは興味津々に魚籠を覗く。
「扱いに慣れているということは上手く処理をすれば大丈夫なんだな?」
「そうそう、活け〆して爆発成分のある内臓や爆発を誘発する血を抜いたりすれば大丈夫」
「でもたまに活け〆の最中に破裂したりするもんねー。でも焼き魚にしたらとっても美味しいんだ」
「よし、今日の晩ご飯は焼き魚だな!」
にこやかに語る3人に本当に大丈夫なのだろうかと少し不安は過ぎるが、今はこの先のことを話しておかなければ。
「レクスさん、これからアトリエに戻ってルトガーの武器の修理とみんなの武器や装備の強化をします。何か素材があればより強化が可能なんですが…素材を少しいただいてもいいですか?」
「もちろんだとも!みんなの力になれるのなら出し惜しみはしないよ。遠慮なく使ってくれ」
「本当ですか!レクスさん、ありがとうございます!」
潔く承諾してくれたレクスにユミアは嬉しそうに笑む。えへんと胸を張るレクスにブランはやれやれと肩をすくめた。
「旦那さん、鎧玉とか勿体ないからとか今後の為にとかで沢山溜め込ん出るから使い時が中々無かったよねー……ようやく使い時が見つかったね」
「ぶ、ブラン!十分装備は強化してるから仕方ないだろ…!」
「レクスさん、道具はちゃんと使ってあげないと勿体ないですよー」
いたずらっぽく笑いながら茶化し、レクス達と共にアトリエに向かうユミアを見てルトガーはニッと笑う。
「錬金術士と聞いて暗い奴かと思ったがずいぶんと賑やかな奴だな」
「あれが本来の彼女なんだろう……」
「ふーん……てかあいつら食糧担ぐの忘れてんぞ?」
「力仕事は僕らの役目だ。ほら、頑張るぞ」
当たり前のように籠を担ぐヴィクトルにルトガーはポカンとしたが恨めし気にユミア達を睨んだ。
「あんにゃろう…覚えてろよ……」
___
アトリエに着くと既にアイラが待っていた。
「もー皆遅いよ!待ちくたびれたんだから!」
「ほんの数分しか経ってねえだろ。つかこちとら重いもん背負ってんだぞ」
「あ、いっけね!すまんルトガー!ハレツアロワナの魚籠は持ってたがそっちの方を忘れてた!」
「ふふーん、ルトガーお疲れ様」
いたずらっぽく笑うユミアにルトガーはぐぬぬと睨み返す。そんなことを気にしてないヴィクトルはアイラの側に置いてある木箱が気になった。
「アイラ、その木箱は?」
アイラは待ってましたと言わんばかりにドヤ顔をして木箱を開ける。中には真っ赤な紡がれた糸が大量に入っていた。
「これはラバラ・バリナを討伐した後、残ってあった巣の糸を何か利用できないか調査団で回収して紡いだの。団員や団長に許可をもらって持ってきたんだよ」
「ラバラ・バリナの糸か。大型の鋏角種の糸は紡いで加工すれば丈夫な防具の素材になるんだ」
「これを使って布ができればいい装備ができると思うの。レクスさん!レクスさんのいた防具を参考にしたいんだけど、女性はどんな防具をしてたの?」
「…………えっ?」
アイラの質問にレクスはビシッと固まる。フンスと張り切るアイラは興味津々な眼差しで見つめるがレクスはそそくさと視線を逸らす。
「あー………うん……そのー……」
「または女性の狩人の格好の装備を作ろっかなー!レクスさん、教えて!」
「えっとー……」
レクスは気まずそうに俯く。察したのかユミアとヴィクトルはアイラを止めた。
「あ、アイラ、装備の件は今度にしよっか。錬金術なら同じ見た目の装備とかできるしさ」
「えー!?せっかくの素材なんだからそれっぽくしようよー!」
「ユミアの錬金術で同じ見た目で性能が良くなるなら問題ない。だから今回は我慢しよう、な?」
「むー……しょうがないなぁ。我慢するよ」
アイラは少々ふてくされながら木箱を持ってアトリエの中に入った。難を逃れたレクスはほっと胸をなで下ろすがルトガーがニヤニヤしながらレクスを小突く。
「で、実際のところどうなんだよ?」
「あー…うん、防具の性能はいいものだし甲冑みたいにしっかりしてるものもあるよ?でもね……肌の露出が激しいものもあるんだ……」
「水着みたいな格好してる人もいるからね……寒くないのかなぁって」
「レクスさんの世界の女性の狩人って逞しかったりするんですかね……」
「所謂、アマゾネスみてぇな連中かもしれねぇな」
やや遠い眼差しで眺めるレクスとブランにこれ以上は問うのは控えておき、気を取り直してアトリエに入った。
「まずはルトガーの武器の修理だね。ルトガー、壊れた武器をちょうだい」
「ほらよ、前のよりもかっこいい感じで作り直してくれよ?」
壊れたガンサイズを受け取り、伝想器に移すレシピの構成に取り掛かる。
「あちゃー、刃の部分がボロボロ。銃形態は……撃てる弾は榴弾かな?強度のある素材がいるかも……」
すっかり仕事モードに切り替えたユミアはガンサイズを見たり触れたりし、着々と設計図を書き上げていく。
「頑丈な刃と反動に耐える強度……レクスさん、何かいい素材があります?」
「刃ならナルガクルガの素材がある。切れ味はかなりのものだぞ」
レクスはボックスから先のナルガクルガとの戦いで部位破壊をし手に入れた刃翼の一部を取り出した。欠けても尚鋭い切れ味があり、迂闊に触れればスッパリと切れそうだ。
「他にも柔軟かつ強靭な強度をもつナルガクルガの尻尾、他にもエルトライト鉱石とか鉱石もあるよ」
「フラミィ、どうかな?」
フラミィがレクスが取り出した素材をスキャンしこれらで出来上がる武器の精度を確かめた。
『切れ味、銃形態による射撃の精度と耐久度、どれも問題ありません。以前のものより性能のあるものが出来上がります』
「うん、これならいいのができそう!」
パァっと笑顔を見せたユミアはあっという間に設計図を書き上げ、無色の伝想器を取り出してフラミィにレシピを送信させた。無色の伝想器が緑色の伝想器に変わり、手に取ったユミアは直ぐ様錬成台へと向かう。
「よし!さっそく生成しちゃおう!」
マナを込めて緑色に光る伝想器を掲げ、伝想器からアトラスコアが光りながら飛び出す。ユミアは宙に浮く3つのアトラスコアにナルガクルガの刃翼、尻尾、エルトライト鉱石を素材として入れる。するとコアから強い光が眩しく光りだした。
突然の強い光にルトガーは驚き、アイラは尻もちをつく。
「うおっ!?なんだ!?」
「び、びっくりした!?な、何が起きたの!?」
「コアが素材に秘めたマナの大きさに強く共鳴してるの。レクスさんの世界のモンスターの力強さがすごくわかる……」
素材のマナとコアのバランスが保たれなければ生成に失敗する。ユミアは他の素材のマナを組み入れることでマナとコアの共鳴の均衡を保たせていく。
「よし…!いきます!」
均衡を保たせたユミアは舞い踊りながらマナを操作し生成に取り掛かった。きめ細かくマナの流れを操り光の強さを抑えながら錬成していく。
少しでも気を緩めてしまえばコアとの共鳴のバランスが崩れ強い光を発して伝想器内のレシピが消えてしまう。
ユミアはマナの流れに集中して真剣に舞い踊り続ける。やがてマナと共に流れるコアの光は一つになり、光が次第に消えていくと黒い刃に黒い銃身のガンサイズが姿を現しユミアの手元に下りていった。
「うん…うまく出来た!どうよ?」
「おおーっ!!なかなかかっけぇのが出来たじゃねぇか!!デザインも俺っぽくて―――って、重たっ!?」
見た目の割に意外と重みがあり、ルトガーは落としそうになった。なんで重いのか問い詰めようとしたがヴィクトルとアイラはさも当たり前かのような顔をしていた。
「レクスのいた世界のモンスターの素材を使っているんだ。前の武器より重いのは当然だ」
「そうじゃないとモンスターにダメージを与えることができないでしょ?」
「それに慣れてるお前らもおかしいだろ……だがまぁいいもん作ってくれたんだ、ありがたく使わせてもらうぜ」
ルトガーはニッと笑ってガンサイズを納める。素直なところはあるじゃん、と憎めない一面を見たユミアは更に張り切って次の武器強化に取り掛かった。
「よし、この調子でどんどん強化しましょう!レクスさん次の素材をください!」
「よーし任せとけ!」
勢いに乗ったユミアはレクスからリオレウスの鱗やらラバラ・バリナの爪やらエルトライト鉱石やら素材を出し惜しみなくもらいヴィクトルの盾とアイラの槍の強化を行った。
「わーお、なんか槍の刀身が赤くなった……でもかっこいいよ!」
「うん、赤い竜鱗のようなデザインか。重みは増したがより頑丈そうになったな」
「えへへ、デザインはレクスさんの武器をちょーっと参考したんですよ」
2人に褒められ少し照れながら笑うユミアにルトガーはジト目で見つめた。
「お前、錬金術士じゃなくて武器屋になった方がよくねぇか?」
「むっ、私は錬金術士ですー!武器屋になるつもりはありません!」
聞き捨てならないとプンスカ起こるユミアをほっといてルトガーはヴィクトルの方へ視線を向ける。
「武器も直ったことだし、次はどうすんだ?」
「アルバーの集落の修復作業と食糧問題を解決する。その後はアルボール植物園の北へ向かおう」
その話を聞いたユミアとアイラは賑やかな雰囲気が一変し真剣な表情になった。奴ことアルボール植物園付近で見つけたかつてユミアやアイラ達の故郷を襲った魔物、その奴もこれから向かう方角へと行方をくらましていた。
「マナの通り道の向かう先……それに奴が消えていった方向……」
「奴ってのは?」
「調査報告書ちゃんと読んどいて」
ユミアの反応が気になったルトガーが尋ねるがアイラがぶっきらぼうに返す。ルトガーは少しむっとしたが何か訳ありなようだと察し詳しく聞くことはしなかった。
「アルボール植物園から北ということは……ふむ、あの大樹のあたりだな?」
レクスは地図を確かめながらアトリエの入り口から見える鬱蒼とした樹海の中で目立つ巨大な大樹を指さした。
「そうですね。マナの通り道はあの大樹のあたりを通っているようですし……」
「その道を辿っていけばきっと何かあるよね!」
「あの大樹のあたりか……そいつは無理だ。岸壁や樹の根っこやらで通り抜けねぇぞ?だが集落にいるアルバーなら抜け道を知っているかもな」
いつの間にその周辺まで調査していたのか、アイラ達はルトガーの行動力に感心した。
「んだよ……なに呆然と見てやがる」
「ルトガーって意外と真面目なんだね」
「見直したような……いや見直す必要はないような……」
「やることはやるつってんだろ?準備が整ったらさっさと行くぞ」
「よーし!その間に修復に使う素材を集めなくてはね!石と木材なら任せとけ!行くぞルトガー!」
フンスと張り切ったレクスが素材集めに早速とアトリエを出た。
「いや早すぎだろうが!?つかなんで俺が運ばなきゃいけねぇんだよ!?」
面倒くさそうしつつも張り切りすぎるレクスを止めようと追いかけていった。根は素直なんだなとユミア達はややにこやかに見つめていた。
______
マルゴー樹海を経てアルバーの集落へやってきたユミア達。ユミア達の姿を見たアルバー達は大喜びでぴょこぴょこと駆けつけてきた。
「ノッポさん達だー!」
「ガシャガシャのノッポさんもいるー!」
「みんな、住まいの修理と……食糧も持ってきたよ」
ユミアはにっこりと笑って食糧と建材を担いでいるレクス達の方へ指をさす。
「わーい!ありがとー!」
「おいしいものもいっぱいだー!」
「わあぁ…!やっぱりかわいいー!」
ぴょこぴょこと跳びながら喜びの声を上げるアルバー達にアイラはうっとりするが重い荷物を担がされているルトガーは終始ムスッとしていた。
「ったく、なんで俺が重てえもん持たなきゃならねぇんだよ…」
「まあいいじゃないか。これも助け合いだ」
けっと悪態をつくルトガーではあったが喜んでわらわらするアルバーにはまんざらでもないようであった。レクスは積み荷を降ろすと屈んでアルバー達に尋ねる。
「これから君たちの食糧問題を解決する。すまないが『アワアワのバシャバシャ』がいる場所に案内してくれないか?」
レクスの質問にアルバー達は顔を見合わせると嬉しそうにぴょこぴょこと跳ぶ。
「いいよー!」
「ガシャガシャのノッポさんありがとー!」
「ガシャガシャのノッポさん!『真っ黒のギラギラ』を追い払ってくれたもんね!」
「俺達もそいつと戦ったんだがな…」
「もう、悪態つかないの」
「近くまで案内するよー!ついてきてねー!」
白帽子のアルバーが先導し彼らが『アワアワのバシャバシャ』と呼んでいるモンスターの居場所へ樹海の奥地へと進む。
途中大樹の根の坂を下り浅い川へ辿り着き、上流へと更に進んでいくと、次第に川幅が広くなっていき大きな滝が流れ落ちている場所へと行き着いた。
「ここがボク達がお魚とるところにいるよ!ノッポさん達、気をつけね!」
「ありがとう。ここからは任せてくれ」
案内してくれたアルバーを見送り、レクス達は辺りを見回しながら慎重に進む。
「ここに例のモンスターがいるんですね…」
「待って、向こうに何かいるよ…!」
ユミア達は物陰に隠れて様子を探った。図体が大きく背中には苔と水草が付いているワニ型の魔物が水辺をのそのそと歩いている。
「あれはクロコデイロスだな…」
「人を丸のみにしちゃう危険な魔物だけど、アルバー達が言ってたモンスターじゃない……」
クロコデイロスもアルバー達にとっても危険な魔物だ。ひとまず討伐すべきか考えていたその時、クロコデイロスのまわりにシャボン玉のようなものが漂い始めた。
「なんだ?シャボン玉か?」
「あのシャボン玉…!旦那さん…!」
「間違いない。あいつか…!」
突然現れたシャボン玉にルトガー達は不思議がっていたがレクスとブランは確信した。
無数のシャボン玉にやっと気付いたクロコデイロスは鼻息を荒くしながら周りを見回す。すると樹海の茂みから、白桃色の鱗に胴と尻尾に濃紫色の体毛、頭から背中にかけて鮮やかな花弁のような鰭がついた狐のような顔立ちのモンスターが現れた。
「クルルルルッ…!」
そのモンスターはクロコデイロスに対して唸り声をあげて威嚇をしている。ユミア達は鮮やか姿のモンスターに思わず目を丸くした。
「すごく綺麗なモンスター…」
「レクスさん、あれが『アワアワのバシャバシャ』なんですね?」
「ああ、あれは【泡狐竜】タマミツネ。名前の通り、体から分泌する『滑液』を体毛と擦り合わせて大量の泡を発生させて相手を翻弄させるんだ」
レクスが説明している間にクロコデイロスが鼻息を荒くさせて大口を開けてタマミツネに突進をした。しかし泡を纏ったタマミツネがひらりと躱し、クロコデイロスはタマミツネが残した泡の山に突っ込んでしまった。
クロコデイロスが向きを変えようとするが泡のせいで足をすくわれ滑ってしまい身動きがままならない。
「クォオオッ!!」
その隙を狙ったタマミツネがカーブを描くように滑り込み、長い尻尾で薙ぎ払った。一撃をくらったクロコデイロスは滑りながら滝壺へ落とされ、水辺から這い上がるとあたふたと逃げ出していった。魔物を追い払ったタマミツネは大量のシャボン玉を漂わせながら水辺へと近づいて魚を捕食し始めた。
「綺麗な見た目でも凶暴そうですね…」
「タマミツネは比較的温厚だが縄張りを荒らす輩には容赦無い。アルバーにも襲ってくるだろう」
「ならば早急に対処しなければいけないな」
「そうだね!アルバー達のためにもなんとかしなきゃ!」
レクス達はタマミツネに気づかれないよう慎重に近づいていく。
「ふん、見たところ泡さえ気をつけりゃ楽勝だろ?こんなシャボン玉も厄介とは思えねぇが?」
「あ!待ってルトガー!シャボン玉を割ったらダメ…!」
ブランが止めようとしたが時すでに遅し。ルトガーが指でシャボン玉を割ったその直後、タマミツネがユミア達の方へ振り向いた。
「タマミツネはシャボン玉を割った振動で縄張りに入った侵入者を察知するんだ…」
「おぉい!?それを早く言えよ!?」
「クォオオオオッ!!」
タマミツネはギロリと睨むと甲高い咆哮をあげた。レクスは背負っていた大剣『鎧怨鬼大剣ムダンオウ』を抜刀し構える。
「兎に角タマミツネの泡に注意するんだ!泡まみれになるぞ!」
ラオシャンロンの復活は嬉しかったけど、クシャルダオラの再登場はちょっと…って思ってしまった。
設置竜巻、よく飛ぶ、寝床竜巻のワールド仕様なら嫌すぎる