ユミアのアトリエ―導きの錬金術師と異界の狩人 作:サバ缶みそ味
タマミツネの本気モードが搭載されたことにビックリしたし、歴戦タマミツネが強すぎる……
夏アプデのラギア、どう化けるのだろうか
「ほほー…ここがアトリエという所……」
ユミアが見つけた嘗ての錬金術士が住んでいたであろう屋敷ことアトリエという場所に辿り着いたレクスはその佇まいに感嘆した。
屋根や壁には苔が生えていたりやツタが伸びていたりとかなり年季が入っており、中は広い空間や部屋が幾つかあったりと以外と広く大きい屋敷であった。
「なんかこう……思ってたよりも立派な屋敷だね」
「錬金術で栄えていましたからね。アイテムBOXと装備箱は中に置いて大丈夫ですよ」
入口の隅に装備箱とアイテムBOXを置き、ブランと一緒にアイテムBOXの中を確かめる。
「うーん中が少し濡れてる……それに落ちた衝撃かな、ダメになってるものが多々ある」
「お肉と魚はダメだね。鉱石と火薬は厳重に保管してるからよかった。虫やキノコ、種と木の実は免れたのがあるし増やせば大丈夫かも」
「畑がいるな……ヴィクトル、ユミア、この辺りで畑を耕したいのだけど大丈夫かな?もちろんここの環境や生態系に影響がでないようしっかり管理する」
「ふむ……団長に相談して許可をもらおう。このアトリエ近辺なら問題ないかもしれない」
「アトリエ周辺の開拓ができたら魔物もあまり寄り付かなくなるし私としては助かります」
ユミアの言う通りアトリエに着いても魔物に遭遇したらたまったものではない。レクスの希望する畑がどんなものかわからないが人の手が加えられた場所になれば道中やアトリエ周辺は安全なものになるかもしれない。
「というかそのBOXに食べ物と植物と火薬と虫が詰め込まれてるのはツッコミを入れていいのかな……」
アイラはどうやったら箱一つで大量の道具や食べ物が入れるのかツッコミを入れたくてたまらなかった。
「それにしても……ハチミツが全ロスしたのは痛いなぁ」
「そうだね、ハチミツが全部無くなったのはねぇ……」
ハチミツが全部ダメになっていたことにレクスとブランはしょんぼりする。そんな彼らに、ハチミツはそんなに重要な物なのだろうかとユミア達は首を傾げた。
「さて、レクスの相棒のブランを見つけた。次はユミア、君の錬金術を見せてくれ」
次は自分の番。物を見定めるヴィクトルの視線に緊張しつつもユミアは頷いてアトリエの奥にある祭壇のような場所へと向かう。
「ここで錬金術を行い、調合して道具を作ります」
ユミアはフラミィに合図を送るとフラミィが背中に背負っている壺の形をした鞄から緑色の瓶のような道具を取り出しユミアに投げ渡した。
「ユミア、これは何?」
「これは『伝想器』。調合に必要な道具で調合のレシピとか様々な情報『記憶』しているの」
「記憶?この瓶の中に?」
「レクスさんはこの世界の錬金術の仕組みはまだ知らないですよね。錬金術士はこの伝想器に記憶されてるレシピと素材を合わせ、そして『マナ』を操り素材同士を組み合わせて再構築したり道具を作り出したりします」
「ふむふむ、その『マナ』とは?」
「『マナ』とはあらゆる生物が大地に還るとその生物の魂に刻まれた想いや記憶が大地に蓄積さていく生命エネルギーのことです」
「なるほど、生物が大地に還ると自然を育み豊かにする、みたいなものか」
「私達の身の回りにもマナがありますけど錬金術士はそれを直接操ることができ、調合を行います」
ユミアが手をかざすと彼女の手の周りに光が漂う。青くきれいで不思議な光にレクスとブランは目を輝かす。
「わあー!これがマナなの?キレイな光だね!」
「自然の力に干渉できる……すごく不思議な力だ」
「れ、レクスさんほどじゃないけど……それじゃまずは簡単な道具、『ルフト』から始めます」
(素材もある、この大地にも『マナ』がある……あとは自分を信じること……)
ユミアは目を瞑り、深呼吸をし心を落ち着かせる。
(見ててね、お母さん……)
目を開けて、マナを操りながら伝想器をかざす。光となったマナは伝想器に集まり、伝想器が宙に浮き中から光る石のようなものが飛び出した。
「わっ、中から何か出た?」
「これは『アトラスコア』、このコアに素材を組み合わせることによってマナと共鳴し、品質や性能が向上します。今回は『風』のマナが秘められている花、『ウインドミューレ』を素材にして……」
ウインドミューレという花を幾つか取り出してかざす。素材となった花は光になってコアの中に吸い込まれる。
「こんな感じかな。それでは……始めます」
するとユミアは華麗に舞い始めた。彼女の舞いに呼応するかのように光となったマナとコアが踊るように漂い、彼女の両手に収束する。ユミアがくるりと回り片手をかざすと光が上へと昇り、幾つかの光となって回り再び彼女の両手へと戻る。
ユミアが光が収束した両手を合わせ緑色の光が強く光り、光が消えると彼女の手には緑色の十字手裏剣のような道具があった。
「……よし、成功した……!!」
完成した道具の出来栄えにユミアはホッとしてヴィクトル達に見せた。
「これは……」
素材を組み合わせて完成した道具と、それまでのユミアの動きにヴィクトルは驚く。
「「おぉ~……!!」」
レクスとブランはユミアの舞いとマナの光の美しさに感動し拍手を送る。
「キレイ……って、あ、いや……」
アイラも美しさに見惚れるが、自分は彼女の監視役であることを思い出し発言を控えた。
「見られながらは初めてだったんですけど……皆さんから見て、どうでした?」
ユミアは照れながらヴィクトル達に尋ねる。レクスとブランは目を輝かせて拍手をする。
「すっごくかっこよくてキレイだったよ!!ね、旦那さん!」
「ああ!こう光がフワーってして、ユミアの手でグルグルゥーってなって、そんでパァーってなってそんで……ユミアがめちゃんこキレイだった!!」
「それ結局私しか見てないですよね!?いやまあ嬉しいですけど……あ、あの、ヴィクトルさん達はどうでした?」
ヴィクトルとアイラは顔を合わせ、アイラが戸惑いながら口を開く。
「なんか想像よりも全然違った……このようなやり方で物を作り出すなんて」
「その動作……まるで手品が芸事のようだ。これが錬金術のやり方なのか?」
尋ねられたユミアは少し自慢気に頷く。
「身体を動かしているのは、これが私にとってマナを操りやすいからです」
「なるほどね……私にはぼんやりとしか感じられないけど、マナを直接操るなんて初めて見たかも!」
アイラはマナを操ることができるユミアの錬金術に興味を示した。
「これができるのも特殊な才能、なんだって。私も最近分かったことだけど……」
照れながら答えるユミアにヴィクトルは少し眉をひそめた。
「つまり君自身、この力がどれほどの潜在能力が秘めているか、分からないということか」
ヴィクトルの言葉にユミアは戸惑いながら頷いた。
「えっと……そうですね。これから学んでいけば、色んなことが……」
戸惑うユミアの答えにヴィクトルは更に眉をひそめる。
「あたり一帯に広がる自然に呑み込まれた廃墟。アラディス帝国が滅んだのは錬金術の力が暴走したからだと言われている……仮に君自身にその気がなくても、力を御しきれずに暴走する恐れがあるんじゃないか?」
ヴィクトルの問いにユミアは俯く。正論であるためそれ以上は述べることはできない。
「……すみません、可能性は否定できないです。私もまだまだ未熟ですから……でも」
ユミアは顔を上げ、真剣な眼差しでヴィクトルを見つめる。
「知らなきゃ何も始まらない……調査団の目的はあらゆる謎を解き明かすことです。私は錬金術士として、この地で錬金術によって何が行なわれたか知りたい。そのためにこの地に来ました」
錬金術は畏怖されている。だが何故禁忌とされたのか、本当に禁忌の存在なのか、このアラディスの地を突き進み真実を知りたい。ユミアは譲れない気持ちを語った。
彼女の真剣な気持ちにアイラは微笑んで頷き、ヴィクトルは考えながらも頷いた。
「……そうか」
「……確かに、知らなきゃ何も始まらないし進まないよな」
レクスが納得しながら何度も頷く。
「知らないままだとそれは怖い、恐ろしいものだと嫌厭したままだ。でも歩み寄って知ることをしなきゃその本質はわからない……これは生き物も錬金術も同じだ。知らないまま何もしないより、調べて触れてよく見て、真実を知った方がいいんじゃないかな?」
「レクス……」
「レクスさん……」
遠い眼差しで外を眺めるレクスにヴィクトルとユミアはきょとんとする。はっとしたレクスは慌てて訂正した。
「………あっ、す、すまん。言い過ぎたよな?あーと、あれだ。俺はユミアを信じる。ユミアならダイジョーブだ!」
レクスがあたふたする最中、アイラはユミアに歩み寄り彼女が持っている『ルフト』に触れる。
「ねえねえユミア、これ何に使うの?」
「これは魔物退治に使う道具。まだまだ改良の余地はあるけど……」
「へー!試しに使ってみてもいい?」
錬金術で作ったユミアの道具にアイラは興味を示す。興味津々な彼女にヴィクトルは止めようとしたがアイラはウィンクして返す。
「『知らなきゃなにも始まらないし、進まない』。それは本当のことでしょ?」
「うん、使ってみてほしい。前に何度か作ったことがある道具だから、失敗はしてないと思う」
「ね?ユミアを信じてみよ?」
にっこりするアイラにヴィクトルはやれやれとため息をつき、ユミアに視線を向ける。
「……僕達の目の届く範囲で頼むぞ」
一先ずヴィクトルも納得してくれた。2人が錬金術を見て、畏怖することなく知ろうとしてくれたことにユミアはホッと安心した。
「それじゃぁお次は……レクスさんの錬金術だね!」
「えっ!?」
「えっ?」
まさかの自分にキラーパスされたことにレクスはギクリとし、ブランはまさかとジト目でレクスを見つめる。
「……旦那さん、もしかしてレンキンスタイルのこと話したの?」
「いやだって……この世界にもレンキンがあるんだなぁって……」
「レクスさん、私も見てみたいです。レクスさんの錬金術がどんなものなのか、知りたいな」
「ユミアの言う通り!知らなきゃ何も始まらないもんねー?」
「……彼女の錬金術を見て、僕も少し興味を持った。どんなものか見せてくれ」
レクスのレンキン術に興味を示すユミア達の眼差し、ブランの呆れたようなジト目な視線、刺さり続ける視線にレクスは深呼吸をし、その場で土下座をした。
「す、すみませんでしたーっ!!」
「えぇっ!?な、なんで土下座するんですか!?」
「……も、もしや本当はできないのか?」
「わ、私達別に責めたりしないよ!?」
いきなり土下座をしたレクスにユミア達は慌てる。ため息をついたブランがフォローに入った。
「旦那さんの言うレンキンはユミアさんの錬金術とは仕組みとやり方が違うんだ」
「ユミアの錬金術はすごくキレイで神秘的でかっこよかった!それに比べて俺のレンキンスタイルなんかあれだぞ!?かくし芸みたいなもんだよ!」
「そ、そこまで畏まらなくても……」
「だ、大丈夫だ……ほら、僕はレクスを信じるぞ?」
「そうだよ、やってみたら私達がビックリするほどすごいものかも知れないし!」
「……旦那さん、皆信じてるからやってあげたら?」
「うん……頑張る。ちょっと待ってて……」
レクスはアイテムBOXを開けてガサゴソと何かを探す。しばらくすると両手で持てるほどの樽を取り出した。
「……樽だ」
「タル……ですね」
「これは『マカ錬金タル』。竜人族は壺や樽を使い、素材を調合すること不思議な力を持つ護石を作る。そこで狩人でも使えるように作られたのがこのタルだ。アイテムを入れて調合することで新しいアイテムを作り出して駆使する、それがレンキンスタイル」
「なるほど……素材を調合するのは私の世界の錬金術と同じですね」
「まあうん……ただやり方が、ね……見ればわかるよ。ブラン、アオキノコを」
「はい、これ」
ブランがアイテムBOXからカサもジクも真っ青なキノコをレクスに渡す。レクスはアオキノコをマカ錬金タルの中に入れ、一呼吸するといきなりタルを振りまくった。
「ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふん!!」
「「「」」」
力いっぱい振り続けるレクスにユミア達は目が点になる。しかもよく見ればタルからモクモクと煙が噴き出している。
「うおおおおおおっ!!そいやっ!!」
レクスは渾身の一振りをし、マカ錬金タルを高々と掲げる。するとタルのてっぺんからポフンと煙が一吹きしキラリと光った。
「完成!レンキンフード!!」
タルを開けて中からホカホカの白パンのような食べ物を取り出しドヤ顔をする。
「……と、まあこんな感じだ」
レクスのレンキンスタイルを見たユミア達は顔を見合わせ頷いた。
「「「いろいろとおかしい」」」
どうやら3人の見た感想は同じだったようだ。
「マナとか操らないでどうやって調合してるんですか!?というかなんでタルを振るんです!?」
「なんでタルから煙が出て最後キラリと光るの!?」
「それよりもどうやったらキノコがパンになるんだ」
レクスはタルを見てユミア達を見てから不思議そうに首を傾げる。
「………マカ不思議」
「自分でもよくわからないんですね!?」
「でも便利なんだよ?レンキンフードは腹持ちにいいし、食べ物がない時はこれで凌げる。パサパサしてるけど」
「わ…パサパサしてる。のどが渇くね……お、お兄ちゃん、レクスさんのレンキン術は団長にどう報告するの?」
この世界の錬金術は禁忌とされている、レクスのレンキン術も注意して見なければと最初は身構えていたが見ればツッコミを入れたくなるほどのよくわからないものだった……ヴィクトルは深く考え、自分を納得させるように頷いた。
「………見なかったことに、しておきたいな……」
「お兄ちゃんが匙を投げた!?」
ますますレクスという人間がよく分からなくなったような気がしたヴィクトルであった。
ユミアの錬金術……舞いが美しいだけじゃなくてかっこいい!
レンキンスタイル……ふれ!!タルを振りまくれ!!
もうちょっとレンキンバズーカの威力強くてもよかったんじゃ……