ユミアのアトリエ―導きの錬金術師と異界の狩人   作:サバ缶みそ味

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 拠点で家づくりにハマってますが……材料が足りない、視点が難しい、屋根の設置がヘンテコなキメラハウスになってたりしてますが拠点作りが楽しいのでオッケーです。

 尚魔物に作業台破壊されると発狂する……


8話 荒ぶる野獣【闢獣】ドシャグマ

 早朝、ヴィクトルはドゥクス大灯台へ向かいマナ領域の高濃度マナの対処及びドシャグマの討伐という任務の準備をしているユミア達の最終確認としてアトリエへ向かう。

 アトリエの前でユミアとアイラが既に待っており、荷物や道具など準備は万全であるようだ。

 

「おはようアイラ、ユミア。2人共準備はできてるな?」

 

「はい、魔物退治の道具も新たに新調して準備は万全です」

『エナジーコアの容量も満タンなので領域内の行動に問題はありません。残量に注意して行きましょう』

 

「包帯もバッチリ!領域内で魔物との戦闘があっても大丈夫だよ」

 

「よし……あとはレクス達だな。彼らはどうだ?」

 

「レクスさんとブランちゃんならアトリエの外で……あ、準備できたみたい」

 

 丁度いいところでレクスとブランがセクレトのセセリを連れてやってきた。レクスの背中には昨日まで使っていた太刀はなく、代わりに太刀よりも更に一回り大きな剣を背負っていた。その大剣は先端が二つに分かれた輝く黄土色の刃に刀身に鮮やかな蒼い炎の模様が描かれている。

 

「かなり大きな大剣だな……」

「重くないんですか?」

 

 太刀と同様に己の丈ほどの長さと大きく厚い刃と重量感のあるレクスの大剣を見てヴィクトルとユミアは目を丸くする。

 

「これは狩猟武器のひとつである大剣、『鎧怨鬼大剣ムダンオウ』。太刀と違って重いがモンスターに強力な斬撃と一撃を与える優れモノさ」

 

「旦那さん、カッコイイ基準で選んでるからたまにクセの強い武器もあるんだよねぇ…」

 

「いやちょっと待って。そのでかい大剣、どうやって装備箱に入ってたの………」

 

 明らかに装備箱に収納できる代物ではないのにどうやって入れていたのか、アイラは気にするべきかどうか悩んだ。

 

「さて、皆準備はできたな。これより僕達はドゥクス大灯台へ向かい高濃度マナの対処にあたる」

 

「はい……!」

 

 ユミアはヴィクトル達の安全を確保かつ、自分にしかできない大事な役目を必ず全うする覚悟を持った。

 

「いつでもいけるよ!」

 

 アイラも自分ができることを全力でやると決め、続けて頷く。

 

「ドシャグマの討伐は任せてくれ」

 

 レクスは大剣を担ぎ、腰に大タルのパーツを提げ、セクレトに装備箱とテントの部品を乗せ、ガッツポーズで返した。

 

 

「…………レクス、ちょっと待ってくれ」

 

 ヴィクトルは頭を抱えてレクスを止める。

 

「ん?どした?」

「いやその……なんで装備箱とテントがいるんだ?」

 

「あーこれ?灯台に向かう途中でテントを建てて、仮の拠点にして装備を整えて……」

 

「うん、そんなに道具を持っていく必要はないと思うが……」

「すぐ行ける距離だし、セセリちゃんに荷物乗せすぎだよ?」

 

 レクスの多すぎる荷物にヴィクトルとアイラはツッコミを入れる。ユミアはレクスの腰に提げているタルのパーツが気になっていた。

 

「あ、あのー……そのタルのパーツはなんですか?」

 

「あ、これ?大タル爆弾」

 

「「「ば、爆弾!?」」」

 

 レクスはドヤ顔で答えたがまさかの爆弾に3人はぎょっとする。

 

「ここのワイヤーを引っ張ればタルのパーツが一瞬でくっついて爆薬が入った袋の封が破れタル型の爆弾ができあがる」

 

「ば、爆弾って……いるのそれ!?」

「こ、こう引火して爆発しないのか!?」

 

「モンスターの討伐に役に立つし、耐火性のある袋だから引火しない……あ、できた時は少しの衝撃でも爆発するけどね!」

 

 アハハーと笑うレクスにユミア達は顔を見合わせて頷く。答えは同じようだ。

 

「「「それは没収!!」」」

 

「そ、そんなぁ……」

 

 結局、今回の任務では装備箱とテントはアトリエに置いて大タル爆弾の使用はダメになった。

 

______

 

 

 アトリエを後にし、グリムビーバーの生息地を抜けてドゥクス大灯台へと続く山道の前に差し掛かる。

 

「なんだろう……この先から熱気でも冷気でもない、なんだか妙な圧を感じる」

 

 標高の高い山にいるような冷たく空気が薄いような息苦しさと火山にいるような熱さと息が詰まるような空気が混ざった感覚にアイラは不安を感じた。

 

「これが高濃度マナか……瘴気の谷よりも空気が淀んでるな。ブラン、大丈夫か?」

「少し息苦しい感じ。でも問題なく動けるから大丈夫だよ」

 

 

「皆気を引き締めて進もう。ユミア、頼んだ」

 

 

「はい、これからエナジーコアの膜が張られます。離れないよう気をつけて」

 

 高濃度マナ領域に足を踏み入れた瞬間、空気が重く息苦しさを感じた。だがユミアの持っているエナジーコアが光ると息苦しさが無くなり身体が軽くなったような気がした。

 

『高濃度マナ領域への侵入を確認。エナジーの無駄遣いをしないようにしてください』

「これで大丈夫です。さ、行きましょう」

 

 高濃度のマナが溜まっている中にいるが人体に悪影響が出ていないことにヴィクトルとアイラは驚く。

 

「すごい……バリアが張られてる感じ」

「これも錬金術というのだから奥が深いな……」

 

「やっぱり飲んだほうが……」

「旦那さん、クーラードリンクじゃないんだから……」

 

 各々ユミアの技術に驚きながらも灯台への山道を進んでいく。レクスは導蟲が灯す光を頼りにドシャグマがないか注意深く辺りを見回す。

 

「レクスさん、ドシャグマの反応はありますか?」

 

「追跡を再開させているがまだ反応はないな」

 

 導蟲による追跡の光は山道の先へと続いていおり、未だに姿は見えていない。導蟲を辿ればドシャグマがいる、ヴィクトル達は周囲を警戒しながら慎重に進む。

 

「あっ!旦那さん、あれっ!」

 

 その時、ブランが何かを見つけたようでユミア達に緊張が走る。レクスが前に出てブランが指差す方へと目を凝らした。

 

「あれは……!」

 

 驚きの声をあげたレクスはブランと共に駆け足で向かう。まさかドシャグマを見つけたのか、ユミア達は武器を構えてレクス達に続く。

 

 しかし駆けつけた先には魔物はおろかドシャグマの姿は無く、あるのは木の枝に形成されている丸型の蜂の巣のみ。

 

「「ハチミツだーっ!!」」

 

 そんな蜂の巣を発見したことにレクスとブランは狂喜乱舞していた。

 

「やっぱりこの世界にもハチミツはあるんだな!ありがたい!」

 

「旦那さん、採取採取!」

 

「ああ!採取した後は養蜂用に捕まるぞ!」

 

「あのー、もしもーし?なんでハチミツ?」

 

 ハチミツに執着している2人にアイラが2人を呼び戻す。

 

「レクスさーん、ハチミツより大事な事があると思いますよー?」

 

「アイラ、ハチミツはすごいんだぞ?狩人にとって必要不可欠。栄誉満点だし、調合に欠かせない代物だ」

 

「いやドヤ顔で言われても……」

「ほら!ハチミツは逃げないから、やる事やって済んでから幾らでも採取してください!」

 

「あっ、ちょユミア、アイラ!?ひ、引っ張らないで!?あーっ!は、ハチミツゥゥゥっ!!」

 

 レクスはユミアとアイラに引っ張られ強制連行され、ハチミツを採取することができず離れていった。

 

「……ブラン、さっき養蜂といっていたが君達狩人はそんなことができるのか?」

 

「もちろん!畑仕事の他に漁業もしたり炭鉱夫になったり、色々できるよ!」

 

 自信満々に語るブランに、狩人とはいったい何なのか分からなくなってきたが余計に考えるのは止めておこうと決めた。

 

 

 進むにつれ大灯台が見えてきた。もう少しすればたどり着く、そんな中アイラはふと違和感を感じた。

 

「大灯台の道を進んでいるけど魔物にも出くわしてないね……」

「確かに、どうしてだろう……」

 

 突き進む最中にも魔物が潜んでいるような気配すら感じられない。

 

「魔物が危険を察知して身を潜めている……或いは何かから逃げているのかもしれない」

「お、お兄ちゃん!怖いこと言わないでよ!」

 

 ヴィクトルの嫌な予感が的中してしまったのか、突然導蟲が赤く光りランタンの中へと戻っていく。

 

「導蟲が危険を察知した……!みんな、気をつけて!」

 

 レクスが呼びかけたと同時に岩場から地鳴りのような騒がしい音が響いた。

 

キュルルアァァァッ!!」

 

 岩場の上から白みのかかった黄色い羽毛、硬そうな脚のある鳥の魔物が翼をバタつかせながら飛び降りてきた。

 

「あれはスプリントバード…!」

「あまり凶暴じゃない魔物なんだけどかなり気が立ってるみたい!」

 

 何故あのように慌ただしくしかも気が立っているのか疑問に思ったその直後、再び地鳴りのような音が響く。

 

ガルグルァァッ!!」

 

グルガガァァァッ!!」

 

 スプリントバードが降り立った岩場の上から獅子のような薄茶色の鬣と長い体毛に強靭な爪と牙を持ち、弛んだ皮膚と黒い二つのコブがついた顔が特徴的な熊型の大きなモンスターが2頭押し合いながら駆け下りてきた。

 

「何あれ!?でっかっ!?」

「レクスさん、あれがまさか…!」

 

「ああ、あれが『闢獣』ドシャグマだ」

 

「想像以上の大きさじゃないか……!」

 

 想像していた以上の大きさにユミア達は驚愕する。その間にも2頭のドシャグマはスプリントバードに襲いかかり、スプリントバードも捕まるわけにはいかないと必死に逃げていた。

 

 

グルガォォォッ!!」

 

 そこへ赤茶色の鬣のある更に一回り大きなドシャグマが駆け下り、2頭のドシャグマを押しのけるように突進しながらスプリントバードに襲いかかった。

 

 

「さ、さらにでかい奴が来たよ!?」

 

「あの赤い鬣のした奴が群れのボス個体だ。全部で3頭程の群れか……」

 

 

 一撃でも食らったら餌にされる。スプリントバードは必死にドシャグマの猛攻を避けながら逃げ回った。しかし、ゴツゴツした岩壁が行き止まりとなり絶体絶命に陥る。

 

 低い唸り声を上げながらゆっくりと追い詰めるドシャグマの群れ。先頭に立っているボス個体のドシャグマは大口を開けてスプリントバードの喉へと噛みつこうとした。

 

グルガァァッ!!」

 

 

 すると飛びかかろうとしたボス個体のドシャグマの右から群れの一頭が割り込んだ。

 

 「ガルッ!?グルガガァッ

 

ガルガガガッ!!」

 

 

 割り込まれたボス個体のドシャグマは襲うことができず、右にいたドシャグマを吠えて止めさせた。しかしその間に左にいた取巻きがボス個体を押しのけてスプリントバードに襲い掛かる。ボス個体のドシャグマが邪魔をするなと噛み付いて制する。

 ようやく獲物を追い詰めたというところで自分が獲物を仕留めて喰らおうと互いが邪魔をしあい獲物を仕留めれずにいた。

 

 

「わぁ…群れ同士で邪魔しあってる」

「群れとしての連携がなってないな……」

 

「我が強い性格だからああやって互いの足を引っ張りあいをするんだ」

 

 

 群れ同士で喧嘩をしている間にスプリントバードは翼をバタつかせて岩壁を駆け登り窮地を脱する。獲物が逃げられたことに気付いたドシャグマの群れはただ逃げていくスプリントバードを見送ることしかできなかった。

 

「あんな感じで狩りが失敗に終わることが多い」

 

 そんな中、ボス個体のドシャグマがレクス達の存在に気付いた。鬣を逆立て低く唸りながらゆっくりと接近する。

 

グルルル…!!」

 

ガルルル…!!」

 

ゴグルルル…!!」

 

 ボス個体に続いて取り巻き達も低く唸りながらゆっくりとレクス達に迫っていく。レクスが前に立ってユミア達に後ろに下がるよう手で合図をする。

 

「ね、ねえレクスさん……も、もしかしてこれって3頭全部を倒さなきゃいけない?」

「群れを相手するわけだが、この大きさのモンスターとなるとかなり苦戦すると思うぞ…?」

「そうなるとエナジーコアの残量にかなり影響しそう……」

 

 ユミア達も武器を構えて戦闘準備はしているがドシャグマの予想外の大きさに圧倒されていた。

 

「それなら大丈夫。ボス個体を倒せば群れは散り散りになり単独で行動するようになる。群れさえ作らなければ今回のような大きな被害はなくなるはずだ」

 

 レクスはアイテムポーチから茶色い玉を取り出してスリンガーに装填する。

 

「そのためにもまずは取り巻き達を追い払わないとな」

「みんな、ちょっと鼻をつまんだほうがいいよ!」

 

 ブランが呼びかける前にレクスが1頭のドシャグマに向けてスリンガーに装填された茶色い玉を撃った。ドシャグマの顔に当たると茶色の煙が巻き上がる。

 

ガルガグッ!?」

 

 異様な臭いにドシャグマが怯みだした。むろん、この臭いにユミア達も思わず鼻をつまむ。

 

「ちょ、何これ!?くさっ!?」

 

「あれはスリンガーこやし弾だよ」

 

「こ、こやし!?と、ということは……!?」

「魔物のフンか何かか!?」

 

 

「モンスターのフンと素材玉で調合した弾なんだが、モンスターを追い払うのに便利なんだ」

 

 レクスは説明しながらもう1頭の取巻きのドシャグマに向けてスリンガーこやし弾を撃った。異臭激臭にやられた取巻きのドシャグマ達は一目散にその場を離れていく。

 

ガルグルァァッ!!」

 

 ボス個体のドシャグマが吠えるが取巻き達は聞く耳を持たず我先にと山奥へと去っていった。

 

「よし、これで邪魔されずボス個体を討伐できる」

 

 レクスは大剣を構えてボス個体のドシャグマの動きを見ながらゆっくりと迫る。

 

「1頭になったとはいえ……」

「ボス個体もでかすぎるよ……」

 

 ボス個体だけとはいえ、凶暴な風貌にヴィクトルとアイラは不安を拭えないでいた。同じようにユミアにもエナジーコアの残量、自分達で戦えるか、この両方のプレッシャーに押され不安な表情が見えた。

 ヴィクトル達の様子を見たレクスはしばらく考え、ちらりとブランに目を向ける。

 

 

「ブラン、すまん。無茶をすることになる……」

 

「……大丈夫。ボクがサポートするよ」

 

 

グルルアァァッ!!」

 

 ドシャグマが大きく吠えて右前脚の強靭な爪を振り下ろしてきた。

 

「ふんぬっ!!」

 

 レクスがタイミングよく大剣で防いで力強く押し返した。弾き返されたドシャグマは後退りするも反撃で大口を開いて噛み付いてきた。レクスは大剣で防ぎ、ドシャグマの猛攻を押さえる。

 

 

「ふぬぬっ……ユミア!!ここは俺とブランに任せてヴィクトル達と先に行ってくれ!!」

 

「っ!?そんな、レクスさん!それは危険です!」

 

 エナジーコアを持っているのはユミアだけ。ユミア達が先に行ってしまうとレクスは高濃度マナの影響を受けてしまう。

 

 ドシャグマの剛力に耐えながらレクスは大剣で押し続ける。

 

「なんのこれしきっ!!高濃度マナを払えるのはユミアの力がいるんだろう?ドシャグマなら俺とブランが押さえておく。その間に行くんだ!」

 

「でも……!」

 

「心配ない!後で追いつく!!ふんぬおおおっ!」

 

 レクスが力強く押してドシャグマの猛攻を抑える。ユミアは迷いながらも首を縦に振った。

 

「……アイラ、ヴィクトルさん、レクスさんが押さえているうちに行きましょう……!」

 

「レクス……すまない……」

「レクスさん、ごめん…!」

 

「レクスさん!高濃度マナの中に長時間いるのは思ってる以上に危険です。危険だと感じたら逃げてください……!!」

 

 

 ユミア達が離れていったその直後、まわりの空気が重く苦しく感じた。それでも尚、ドシャグマの標的がユミア達に向かなくなったことが分かったレクスは力を溜めて大剣を振るう。

 

 

「おりゃあっ!!」

 

 鍔迫り合いに押し負けたドシャグマが仰け反り怯んだ。その隙にレクスは流し斬りでドシャグマに一撃を与えた。

 

「この息苦しさ……瘴気の谷にいる気分だな。ブラン、いけるか!!」

「もちろん!旦那さんもドシャグマの一撃に気をつけて!」

 

グルゴァァッ!!」

 

 ドシャグマが唸り声を上げながら右前脚でお手をするようにレクスを狙って叩きつける。レクスは大剣に力を溜めながらタイミングよくタックルをして衝撃を和らげ、隙を狙って強溜め斬りを放つ。

 

ゴルグルァァッ!!」

 

 ドシャグマは怯むことなく唸り声を上げながら左前脚で叩きつける。レクスは転がってドシャグマの猛攻を躱し再び大剣に力を溜める。

 

「ボクのブーメランをくらえぇっ!!」

 

 ドシャグマが大口を開けてレクスに噛みつこうとする直前、ブランがブーメランを投げた。回転しながら飛ぶブーメランはドシャグマの顔を掠め、ドシャグマの視線がブランに向かい隙ができた。

 

「よいしょっ!!」

 

 レクスの溜め斬りがドシャグマの前脚に当たると大きな爆発が起き、爆発をくらったドシャグマは怯む。

 

グルルァァッ!!」

 

 苛立ったドシャグマはレクスとブランを払おうと回転しながら前脚の爪で薙ぎ払う。ブランはヒョイっと回避し、レクスはタイミングよく大剣でガードをして防ぐ。防いだ直後、レクスに頭痛が走る。

 

「っ!?」

 

 ドシャグマの攻撃による衝撃ではない、高濃度マナによる影響か。影響が出る早さにレクスは内心驚いた。

 

「影響がもうきたか……いや、まだ大丈夫だ。俺が抑えておかないと」

 

 その間にもドシャグマの猛攻は止まない。唸り声を上げながら大口を開けて突進。レクスは回避したが、ドシャグマは振り返り再び噛みつき突進をしてきた。

 

「っと!!」

 

 レクスはタイミングに合わせて大剣でガード。鼻息を荒くし隙を晒すドシャグマに降流斬りを放つ。

 

「もういっちょ!!」

 

 続けて身体を捻って回して斬る過流斬りを放ち、再び力強く過流斬りで一撃を与える。

 

「やあああっ!!」

 

 ドシャグマがレクスに集中している隙にブランがホープネコトンカチでドシャグマの頭に一撃を与える。ブランの攻撃に苛立ったドシャグマが唸り声を上げながら下がるとブランに向けて頭突き突進をした。ブランは防ぐも軽い体故に吹っ飛ばされる。

 

「わあっ!?だ、旦那さん、今だよ!!」

 

 狙いがブランに向けられている隙にレクスは力を大剣に込めていた。

 

「くらいやがれっ!!」

 

 ドシャグマの体に向けて真・溜め斬りによる強烈な一撃をお見舞いした。

 

グギャンッ!?」

 

 一撃をくらったドシャグマが大きく怯んだ。この調子ならいける。高濃度マナの影響をあまり受けずに済むはずとレクスは考えた。

 

ゴルグルァァァッ!!」

 

 突然ドシャグマが立ち上がり大きな咆哮をあげた。怒りを越えてブチギレたのだ。

 

「まずいな……まだまだかかるか」

 

 するとドシャグマは大口を開けて地面を抉りながら突然をしてきた。土が隆起し岩のトゲがレクスに迫る。

 

「はあっ!?あんな動きあったか!?」

 

 かち上げるように頭を振るい、岩が飛んできた。驚くレクスは大剣で防ぐがタイミングが合わなかったため反動でよろめく。

 

「くっ……まさかマナの環境に合わせてより攻撃的になったのか……!?」

 

 考える隙を与えないのか、ドシャグマが首を振りながら唸り声を上げて回転するとその勢いで前脚で地面を抉る程のアッパーを放った。範囲が広く、避ける隙がなかったレクスは高々と打ち上げられた。

 

「おわぁぁぁっ!?」

 

「だ、旦那さぁぁんっ!?」

 

 

_________

 

 

 

 大灯台に近づいてきたユミアはふと後ろを振り返る。同じようにヴィクトルも振り返るが後ろには何もいない。

 

「………」

 

 まだレクスとブランの姿が見えていない。2人は今も高濃度マナの中でドシャグマと戦っている。

 

「ユミア、大丈夫?」

 

「う、うん私は大丈夫。でも……」

 

 自分達が先に行って本当によかったのだろうか、自分達が急ぎ先に行き高濃度マナを払えば問題は解決する。だがその間にレクスは高濃度マナの影響を受けている。

 

(私は……どうしたらいい……?)

 

 ユミアは悩み、フラミィをちらりと見る。飛んでいるフラミィは何も言わないが、ふと母親の言葉を思い出した。

 

「……フラミィ、エナジーコアの残量は?」

 

『エナジーコアの残量80%。このまま行けば問題ありません』

 

「わかった……あの、アイラ、ヴィクトルさん、ごめんなさい。私、どうしても……」

 

 ユミアが申し訳なく話そうとすると、ヴィクトルは頷いた。

 

「ああ、言わなくても大丈夫だ。僕もユミアと同じ考えをしていたところだ……アイラ、迷惑をかける」

 

「ううん、謝らないでいいよ。私もこのままは良くないって感じてた……」

 

 考えは同じ。ユミア達は頷いて駆けて道を下りていった。

 

 




 ドシャグマ戦、ユミア達と協力するかユミア達を先に行かせて戦うか、またはスリンガー大こやし弾で追い払ってマナ領域外で戦うか、悩みました……

 今作の大剣、ジャスガもついて、相殺しやすくて楽しい。
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