We are…Lethal Protector !! 作:ヌルノルヌール
見てくれている皆様、本当にありがとうございます!
かつては都市の交通網を支えていた地下鉄路線
だが今、その一角は“デッドエンドホロウ”と呼ばれる死地へと姿を変えていた
厚いコンクリートの天井はところどころで崩れ落ち、壁面には侵食したエーテル結晶が不規則に浮かび上がっている
静寂であるはずの地下空間に、不気味な“ざわめき”が、まるで呻くようにどこからともなく響いてくる
風など吹くはずもないのに、どこかで金属片が転がる音、そして、微かに続く地鳴り。まるで、巨大な獣の呼吸のようだった
察している通り、このホロウはただの“共生ホロウ”ではない。これまで幾度となく調査隊やホロウレイダーが踏み入っては、そして命を落としていった
理由はただ一つ、この区域の奥深くに潜む“処刑者”……要警戒エーテリアス『デッドエンドブッチャー』の存在である
何も語らず、警告もなく、ただそこに現れ、“死”だけをもたらす。道を塞ぐものはすべて、叩き潰し、ねじ切り、引き裂く
それが人であろうと、建物であろうと関係はない
この地下鉄エリア一帯は、奴にとっての縄張りだ。不用意に入り込み、運悪く見つかれば命はないだろう
『まさかまたここに来る羽目になるなんてなぁ、デッドエンドホロウ』
「ふん、相変わらず薄暗くてめちゃくちゃな場所だ」
ヴェノムは薄暗いホロウの通路を、跳躍と走行を織り交ぜながら素早く進んでいく
『しかし、市政選挙も近い中で、しかもよりによって、こんな危険な場所に入るとはなぁ。根性があるというか、命知らずというか…』
「ただのバカなだけだろう。……ん?」
言い終えると同時に、歪んだ形で地面に突き刺さった電車の上に飛び乗り、足を止める
ヴェノムの視線の先にいたのは、メイド服を着た緑髪のツインテール。どこからどう見ても普通の少女だった
ただし、手にしているのは巨大な丸ノコチェンソー。その一点において、彼女の存在は完全に異質だった
『な、なんだあの子……』
「……アレが“ニコ”かもしれん。なんにせよ話を聞きに行くか」
ヴェノムは電車の屋根から音もなく跳躍し、少女の背後に降り立った
気配に気づかれないよう意識的に動きを殺しつつ、柔らかい口調で声をかける
「こんにちは、お嬢さん。こんな所で散歩中かい?」
「ひぃっ!ごごごごめんなさい!!」
少女はパニック気味に丸ノコを起動し、そのまま反射的に振り下ろしてくるが、ヴェノムはそれを軽々と回避して刃を壁に固定させてから再び口を開いた
「落ち着け。襲いに来たわけでも、殺しに来たわけでもない」
「ふぇ、そ、そうだったんですね…申し訳ありません!!」
少女は深々と頭を下げ、慌てて謝った
「気にするな。それより……お前の名は“ニコ”か?」
「え?えっと、わ、私の名前はカリンです」
『……人違いか。じゃあなんでこの子はここにいるんだ?』
「それもそうだ。おい、オマエはなぜここにいる?」
「え、えっと、私…家事代行会社の従業員で、ご主人様…あっ、い、依頼主様からのご指示で…その、ここに来たんです。でも危険なエーテリアスを避けようとしたら、同行していた皆さんとはぐれてしまって……。あの、貴方は……?」
『ホロウで道に迷った一般人…かな?』
「だろうな…カリン、オレたちはヴェノムだ。ニコという奴を探しにここへ来た」
「ヴェノム様…はっ!も、もしかして……“黒衣の怪物”と呼ばれてる……あの?」
「そうだが、何か問題があるか? ……それより、オマエ。キャロットは?」
「えっ、しょ、所持しておりません…申し訳ありません!」
「いちいち謝るな、シャンとしろ」
「は、はい!申し訳ありま……んむっ!」
あわてて口を塞ぐカリンに、ヴェノムは目を細めながら少し呆れた表情をした
『んー、キャロットが無いんならこの子を置いてく訳には行かないな。少し離れた場所に外へ繋がる裂け目があったはずだ。そこまで連れて行ってやろう』
「どうせ通り道だ。おいカリン」
「は、はいっ!あっ…ありがとうございます」
ヴェノムは壁に固定されていたチェンソーを軽く引き抜いて彼女に手渡す
「この先に外へ通じる裂け目がある。そこまでオレたちがオマエを連れて行ってやる」
「えっ、よ、よろしいのですか……?」
「オレたちは悪党には容赦ないが、か弱き市民には手を差し伸べるんだ」
ヴェノムはその大きな手をカリンへと差し出す。カリンは少し戸惑いながらも、そっとその手のひらに自身の小さな手を重ねた。
「はいっ、よろしくお願いします…!!」
そうして、ヴェノムはカリンを軽く背中に担ぎ上げる。驚いたようにカリンが小さく声を上げる
「ひゃあ!」
「ずっと一人で歩いてたんだろう? さっさとここから……」
言いかけたその時、目の前に倒れた電車の向こう側から、話し声が聞こえてきた
「なんか、声が聞こえるぞ? しかも可愛い女の子の声と……なんか、聞いたことあるような、ないような……?」
「えぇ?」
可愛い女の子の声と言われて声を漏らして顔を赤くするカリン
そしてその声を聞いた車両の向こう側にいる人物はからかうような声で再びこちらに語り掛けてきた
「ねぇ、電車さん? あたしたち急いでるの。ちょっとだけでいいから、そこをどいてくれない?」
『電車さん、お願い!!』
『……何言ってんだあいつらは。はぁ……ヴェノム、からかい返してやろう』
エドワードが小さく笑うと、ヴェノムも口角を上げ、少し芝居がかった声で返す。
「そうか、急いでいるのか。それは申し訳ないことをしたな……すぐにここから動くから、少し待っててくれ」
「『えっ?』」
そのままヴェノムはカリンを背から下ろし、背中から無数の触手を伸ばして周囲の廃棄された車両を一気に持ち上げ、向こう側へ放り投げる。
「『ひゃぁああああああああ!?』」
突如として視界を開かれた1人と1匹は、あまりの衝撃に涙目で抱き合っていた。
「お、お見事です…!ヴェノム様…!」
「いい気分だ。もっと褒めてくれたっていいぞ」
ヴェノムはカリンの頭を軽く撫でながら、目の前の2人に歩み寄る。
「久しぶりだな、猫宮又奈。それに……ボンプ?」
「ヴヴヴヴヴェノム!? なんでこんな所に!?」
『え、2人共知り合いなの!?』
「少し前にちょーっと…ね。それより脅かすなんて酷いぞ!」
「ハッ、こんな所でふざけてた方が悪い。で、オマエはなんでこんな所にいる?カンバス通りから出たんじゃなかったか?」
「そ、それには色々あって……あ、その子は?」
話題を逸らすように猫又が慌てて指を差す。その意図はあからさまだったが、ヴェノムはあえて乗ってやることにした
「コイツはカリン。家事代行会社の従業員らしいんだが……ホロウで仲間とはぐれたところをオレたちが見つけたんだ。今からその出口に向かうところって時に…ホロウでふざけるバカがいたもんでな」
「か、カリンです!その、よろしくお願いします!」
『家事代行会社がなんでホロウに……?』
猫又の隣にいたボンプが思わず疑問を漏らし、そんな2人をヴェノムの後ろから不安そうにカリンは見つめていた
「あの、お二人は……?」
おずおずと問いかけるカリンに、猫又が慌てた様子で割って入る
「あ、えっと……あたしたちはホロウ調査員で!このホロウを調査しに来たんだぞ!!」
やけに強調する猫又の後ろで、彼女はヴェノムに向かってこっそり何度もウインクを飛ばす。どうやら“話を合わせろ”という意味らしい。
「……やれやれ」
ヴェノムはため息を一つついてから、仕方なく調子を合わせる
「カリン、信用してもいいぞ。コイツらは“悪い奴”じゃないからな」
「調査員様だったのですね…!よろしくお願いします!」
カリンは素直にペコリと頭を下げる。その健気な様子に、猫又も思わず心を痛めたが…すぐにヴェノムの足元までよってきて話しかけてくる
「…ねぇ、ヴェノム。お願いがあるんだけど」
猫又が何気なく切り出す。だがその目は少しだけ期待に満ちていた
「大方、道を塞ぐ電車や障害物を壊すのを手伝え、と言ったところか?」
「さっすがー!物分りが良くて助かるぞ!」
ヴェノムは肩をすくめたあと、グッと猫又に顔を近づける。
「だが……タダで請け負うつもりは無い」
その声には鋭い圧がこもっていた。猫又だけでなく、隣のボンプも思わず背筋を伸ばす
「報酬は、しっかりと払ってもらわなきゃな……オマエにも言ってるぞ、ボンプ」
『えっ!?私も!? ……道案内するからじゃダメ?』
焦るように返すボンプに、ヴェノムは肩を揺らして笑いながら言った。
「デッドエンドホロウのルートなら、オレたちも知ってるからな」
『それよりもっと速く出口に行けるルートを知ってるって言ったら?』
ボンプが少し得意げにそう言うと、ヴェノムは一瞬だけ考えるそぶりを見せたのち、ニヤリと笑った。
「……ほう、それは魅力的だ。いいだろう、同行してやる」
こうして、カリン、猫又、そして案内役を買って出た一匹のボンプと共に、ヴェノムは再びホロウの奥深くへと歩みを進めるのだった
はい、パエトーンとの初遭遇ですね!これを機にガンガン絡ませていくぞーってかんじでやってきます
この小説書くためにストーリー見直してるんですけどやっぱり面白いなぁ…ゼンゼロー…