We are…Lethal Protector !!   作:ヌルノルヌール

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簡単な依頼のはずだったんだ

カンバス通りの市民を適当な嘘で騙し、爆破エリアから出させない。ただそれだけ

俺たちは治安官の格好をして、指示通りに立っておくだけ。

あとはパールマン長官の指示があり次第、撤退。金払いもいいし、危険手当もつく…断る理由なんて、どこにもない。そうだろ?

「ぎゃああああ!!」

最初の悲鳴を聞いた時も、まだ俺たちは余裕ぶっこいてた

エーテリアスが出たんだろ、大したことない、人数で押せばいいって

けど、俺たちが待機してたのは…ホロウの外だったんだ。それに気がついて俺たちは悲鳴の聞こえた方へ恐る恐る近づいて行った…

「クソッ…ッ!おい!!は、早く撃…」

銃を構えてた仲間が俺たちに気が付き、大声を出した瞬間、その仲間が宙を舞っていた

「く、来るな!!やめてくれ!!」

音もなく、隣にいたヤツが暗闇へと引きずり込まれ、先にやられたであろう奴らの銃も一纏めにされて放り投げられてくる

息を呑む間もなく、俺は恐怖に襲われた

銃を捨て、暗闇から背を向け、走って逃げたよ

「どこにいる!?どこに……ぎぃやぁああ!!」

後ろから、仲間の声が聞こえる。でも俺は無視して走り続けた

「長官!長官!!増援を、増援を!!……た、助け……うわぁあああああ!!」

別場所で待機してる仲間へ通信してるやつがやられ、急に静かになった…

聞こえるのは…風の音、瓦礫のつぶてが転がる音…そして、俺の心臓の音……

今までどんな依頼だって、後悔したことはなかったさ

ディ二ーさえあればよかった。女と遊び、酒を煽り、欲しい物を好きなだけ手に入れて、無くなればまた働けばいい…そう思ってた

……でも、今回ばかりは違った

何が来たのか、わからない。姿すら見えない

ただ、“そこにいる”というだけで、全身が凍りつくような、あの…圧

俺は、俺はな……

神に祈ったことなんて、生まれてこのかた一度もなかったんだ

どれだけ血が流れようと、どれだけ命が奪われようと、他人事だった

でも…

「……あぁ、神様……」

この時ばかりは、口が勝手に祈りの言葉をつぶやいていた

心の奥底から震えていた

あの“怪物”を前にして……生まれて初めて、本気で“命乞い”ってやつをしたんだ

ー瓦礫の裏に隠れていた偽治安官の証言ー



#15 NO MERCY! BUTCHER DOWN!!

「ちょ、ちょっとちょっと……これ、どういうこと……?」

 

「……みんな、気絶してるわ」

 

邪兎屋の面々、そして猫又とパエトーンは、カンバス通り駅を封鎖していた偽の治安官たちが待機していた地点に到着していた

 

猫又たちは、先に列車内で多数の偽治安官を発見したこと、そして現在ヴェノムがそれらを相手にまだ戦っている可能性があることを共有

 

万が一の事態に備え、列車の進入が予想されるこの場所まで足を運んできたのだが、そこに広がっていたのは…苦悶に歪む偽治安官たちの姿だった

 

ある者は壁に叩きつけられ、そのまま突き刺さり、またある者は天井から黒い糸で吊るされ、そしてまた別の者は地面に張りつけられ動けなくなっていた

 

「あ、あんたたち……ほんとにヴェノムと一緒に行動してたのね……」

 

「この悪党に対しての容赦のなさ…やっぱりスターライトナイトファンなんじゃ…!!」

 

ニコが引きつった笑みを浮かべる中、ビリーは逆に興奮を隠しきれない様子で目を輝かせていた

 

「……あ、見てパエトーン!あの列車、あたしたちが乗ってたやつだぞ!」

 

『本当だ……こっちも全員拘束されてる……でも、肝心のヴェノムは……どこ?』

 

「はぁ、はぁ…」

 

どこからともなく聞こえてくる浅い呼吸音を猫又は聞き逃さなかった。猫又は瓦礫の裏に隠れた1人の治安官の格好をした男の肩を掴んで話かける

 

「ねぇ!ヴェノムはどこに行ったの!?」

 

猫又は語気を強め、肩を揺する。男はガタガタと震えながらもゆっくりと口を開き、答え始める

 

「わ、分からない!! 分からないんだ!! でも、さっきまで確かにここに……み、みんな……みんなあいつにやられて……ひぃいいい!!!」

 

『報告。マスター、対象“ヴェノム”を周囲の監視カメラをハッキングしたのち、捕捉。現在位置、特定完了。進路角度・周囲地形を照合した結果、進行方向上には“パールマンの監視拠点”があります。結論:対象ヴェノムは、パールマンへの強襲を意図している可能性が高いです』

 

「たった一人で……乗り込んで行ったってこと!?」

 

「でもよ……この数を一人で倒したってんなら、向こうの拠点もあっという間じゃねえか? 俺たち、出番ないんじゃ……?」

 

「……でも、ヴェノムは“カンバス通りに人が取り残されてる”って、知ってるの?」

 

「あー……知らないかもな。でも、それが何か問題……」

 

そう口にしかけたビリーの言葉を、遮るように話し始める

 

「もし、ここみたいにヴェノムが大暴れして、ここの線路や列車を壊したようにしてしまったら……カンバス通りのみんなを連れて脱出することが出来なくなるわ」

 

その一言で、空気が一変した

 

次の瞬間、アンビーを除く邪兎屋の面々、猫又、パエトーンは青ざめた顔を見合わせ、一斉に駆け出した

 

「いっそげ、早く!やべぇぞ!!」

 

「まずいわまずいわまずいわまずいわ…!!お願い、お願いします!!控えめに暴れてぇえ!!」

 

『報告、その可能性は0.000000…』

 

『Fairy!!そんな報告しなくていいの!!』

 

彼女らは自身の出せる最高速度でヴェノムの元へと走り出した

 

 

 

 

パールマンの監視拠点へと向かうヴェノムの足取りに、一切の迷いはなかった

 

「やっぱり中身はチンピラだ。銃の扱いになれてない、連携すらままならない。ただの数合わせのゴミクズどもばかりだった」

 

数分前、倒した偽治安官たちのことを思い出しながら触手を伸ばし、スイングしながら先へ進んでいく

 

『カンバス通りの住民を騙せておけばそれで良かったんだろうな。でも、パールマンの周りにいるのはちゃんとした兵士の可能性だってある。気は抜かずにな』

 

「兵士がなんだ、オレたちの敵じゃない!」

 

ヴェノムは勢いよく壁を蹴り、煙を巻き上げながらビルの上へと跳躍する。そして、見下ろした先に…この事件の張本人を見つけた

 

「…見えた。パールマンだ」

 

そこには、まるで“勝者”のごとくふんぞり返り、紅茶らしきものをすすりながら優雅に足を組んでいるパールマンの姿があった

 

その短い脚を無理やり組んでいる様子が妙に滑稽で、逆に腹立たしさが込み上げてくる

 

『…テレビ見てた時から思ってたが、無性に腹立つな、あのおっさん』

 

「それなら……やることは一つだ」

 

ヴェノムの足元に力が集まり、建物の屋上を砕くほどの衝撃と共に空を裂く跳躍を繰り出した

 

 

 

 

「パールマン長官、カンバス通り周辺にいる兄弟たちからの連絡が途絶えました」

 

「なんだとっ? まさか、あのスラムの連中が何か勘づいて暴動を起こしたのか……?」

 

「それはありえません! あそこにいた連中の大半は老人と子供、暴動を起こそうが何しようが、兄弟たちが負けるわけが…」

 

「その話を聞いて、心の底から落胆したよ。ということは、ここにいるのもただのチンピラという訳だ」

 

ドゴンッ!!とまるで隕石でも落ちたかのような爆音が、拠点の中心に響き渡った

 

突如現れたヴェノムの着地による衝撃で、辺りにいた偽治安官たちは吹き飛ばされ、パールマン本人も宙を舞い、床に何度も跳ね飛ばされた

 

「なっ、は、ひぃ!!! ヴェ、ヴェノム!!? なななな何故、新エリー都の怪物がここに!?」

 

鼻血と涙を垂らしながら半狂乱で問いかけてくるパールマンに、ヴェノムは目を鋭く光らせ、地を這うような低い声で語りかけた。

 

「人の命をなんとも思わないゴミを処理しに来た。安心しろ、処理するとは言ったが殺しはしない。ただ……しばらくはベッドの上で動けなくはなるだろうがな」

 

その言葉と同時に、ヴェノムの触手がまるで鋭い風を切るかのように一閃され、周囲の偽治安官たちが次々と壁や床へと叩きつけられていく

 

悲鳴が次々と上がり、ついにその場の敵は全て沈黙した

 

ヴェノムは動かぬ彼らを踏み越え、触手を伸ばしてパールマンの身体をわし掴みにすると、持ち上げて自身の顔の前へと引き寄せた。

 

「ぬぉわぁああ!は、はなせ!はなせぇ!!」

 

「おぉ、見ろ。片手で首をへし折れるなんて当たり前だったが、コイツならこのまま全身を握り潰せそうだ」

 

『なんならこのままバスケするか? おっ、あそこにあるゴミ箱に向かってポーンとなげてやろうぜ』

 

ヴェノムは鋭い牙をむき出しにして、パールマンを睨みつけた、その瞬間…

 

ピッと、どこかで小さなスイッチ音が鳴った

 

倒れていた偽治安官の一人が、最後の力を振り絞って何かの装置を起動していたのだ

 

「……!」

 

次の瞬間、周囲にあった箱が一斉に爆発し、炎と轟音が空間を包み込んだ

 

「『ぐぁあああああ!!!?』」

 

爆風と灼熱に包まれたヴェノムは呻き声を上げ、反射的にパールマンの身体を手放す。放られたパールマンは地面を転がり、部下の一人がすぐに駆け寄った

 

「長官、こちらへ!」

 

「お、遅いぞ、早く助けんか!!」

 

『この周りの…エーテル爆薬だったのかよ、クソッ!ヴェノム、大丈夫か!?』

 

「平気だエディ…!アイツら絶対……」

 

地面を這いながら立ち上がるヴェノムは、爪を地に突き刺し、逃げていったパールマンの姿を追おうとした…そのとき

 

「あー!!居たー!!!」

 

背後から猫又が飛びかかってきた

 

「猫又!無事だったか」

 

「列車、列車は!?傷つけたりしてないよな!?必要なんだ!!アレは」

 

「カンバス通りの連中を連れ出すために必要、か?」

 

焦っていた猫又はその言葉を聞いて少し驚いた顔をする

 

「えっ、知ってたの?」

 

「それより今はパールマンだ。この先のトンネルに逃げた! 着いてこい猫又!!」

 

「う、うん!!」

 

ヴェノムと猫又がトンネルへ駆け込み、それと同時に列車がゆっくりと動き出し始めていた。

 

「まずいぞ!逃げられる!!」

 

「逃がす?そんなこと……オレたちがさせると思うか?」

 

ヴェノムは地を蹴って列車に追いつくと、腕を重ね合わせて巨大な触手を生み出し、列車の後方をがっちりと掴んだ

 

さらに触手は分岐し、まるで樹木の枝のように壁や天井へと接着。列車全体を固定し、完全にその動きを止めてみせた

 

「猫又!ヴェノムは……何コレェエ!?」

 

『列車は無事なの!?』

 

「ニコ!パエトーン!!列車は大丈夫!!でもこの列車の中にパールマンが居るんだ!早く引きずり出そう!」

 

「え、えぇ!わかったわ!」

 

「…オマエがニコだったのか」

 

「ひっ…ど、どうも〜…!」

 

『2人も知り合いなの…?』

 

ニコは列車を押さえているヴェノムの横をすり抜けるように通り、ぺこりと頭を下げる。パエトーンはヴェノムに軽く手を振って列車の元へと駆け寄った

 

その後、パールマンとその部下たちは無理やり列車から引きずり出され、あっという間に拘束された

 

「ぐへッ!」

 

「ダルマのおっさん!この人の命をなんとも思わない大悪党め!大人しく降参しろ!!」

 

「猫又、パエトーン!このまま運転室に行くわよ!ビリーとアンビーももうすぐ来るはず…」

 

「お、お前たちまさか、あのスラムの連中を列車で連れ出すつもりか!?させん!させんぞ!そんなことをすれば私とヴィジョンは……おぉい!誰か!!誰でもいい!!どんな手を使ってでも阻止しろ!!」

 

その瞬間、パエトーンの動きがぴたりと止まる

 

『警告!予定ルート上線路の予期せぬ破断。小規模な爆発による線路の破壊を確認。計画は失敗です』

 

『そんなっ!?ニコ、まずいよ!線路が壊れちゃった!!』

 

「なっ……!?」

 

「嘘…!!」

 

パエトーンの報告に愕然とする一同。その足元で、ひときわ苦しげに笑う男がいた。彼の手には、ペン型のスイッチが握られていた

 

「へへ、パールマン長官!ご安心ください…新エリー都へ続く唯一の線路を破壊しました。これでもう脱出は…」

 

「バカタレ!!それだと我々まで閉じ込められてしまったではないか!!」

 

固定されていた列車の触手がゆっくりと引いていき、慎重に線路の上へと降ろされていく。すると、その奥からヴェノム、ビリー、アンビーの三人が現れた

 

「ニコの親分!流石だぜ、もうパールマンを捕まえ……」

 

「それどころじゃないのよ!線路が爆破されて…!」

 

ニコが状況を説明し終えると、ビリーが青ざめた顔で言葉を絞り出した。

 

「そ、それじゃあ列車があっても住民を助けれねぇじゃねぇか! これってまさか……絶体絶命のピンチってやつか!?」

 

「…へへ」

 

「おいおい、こんな時によく笑ってられるな!」

 

「違うんだ、さっき…見つけたの。あたしの形見」

 

猫又は手に握っていたペンダントを開き、そこにいた全員に見せる。その中に映っていたのは彼女と、シルバーヘッド・ミゲルだった

 

猫又は赤牙組に引き取られた孤児の一人

 

今がどれだけ酷くても、過去、理想を掲げ、故郷を守ろうとしていた赤牙組は彼女にとって“家”そのものだった。そして拾ってくれたミゲルは、恩人だった

 

そんなミゲルが邪兎屋によってホロウにおびき寄せられ、殺されたと聞いて彼女は復讐しようとするが…自分が子供を見つけたといえば迷わずその子を探しに駆け出し、ヴィジョンの陰謀を阻止することにも協力してくれた彼女たちは、自分の思っていた奴らとは違い、そしてつい先ほど彼が邪兎屋に殺されたのではなく、治安局のミサイルが原因でホロウに落ち、死んでしまったことを知ったのだ

 

「…あたしにはもう、あんたたちに復讐する理由ない。赤牙組は誓いを破って、守るべき人たちを見捨てちゃった。かつて一員だった者として、組が同じ過ちを繰り返すことを、黙って見てるわけにはいかない…」

 

猫又は一息ついて、パールマンの首根っこを掴むと、決意に満ちた瞳で5人を見渡した

 

「覚悟は出来てる。あたしがヴィジョンと交渉…にぎゃっ!?」

 

しかしその瞬間、ヴェノムの指が彼女の額をデコピンした。

 

「〜〜ッ! 何するん…ぎにゃー!?」

 

頬を触手で引っ張られ、たまらず叫ぶ猫又。それを見て必死に止めるパエトーン

 

『わー! 待って待ってやめてあげて〜!!』

 

「長ったらしい話を聞かせて、挙句に自分を犠牲にオレたちを助けるだ? もっとまともなジョークを言うんだな」

 

ひょ、ひょーくなんははないほ(ジョ、ジョークなんかじゃないぞ)!! はらひは(あたしは)…」

 

「『俺達は、全部助ける。カンバス通りにいる奴らも、ここにいる全員も、お前も…全部だ』」

 

その言葉と共に、ヴェノムは猫又の頬から触手を離し、そしてパエトーンを掴み上げた

 

『うわっ!』

 

「パエトーン、新エリー都とカンバス通りは直線距離ならそう遠くない位置にあるはずだ。そうだろう」

 

ヴェノムが静かに問いかけると、その声に反応するようにパエトーンが即座に答えた。先程とは違い、今低く落ち着いた、男性の声で

 

『あぁ、ヴェノム。君の言う通りだよ。ただデッドエンドホロウの拡張によってその道が阻まれていて、今は遠回りしてホロウの中を通過しなければならないんだ』

 

「なら、ホロウを縮小させればいい」

 

まるで当然のようにヴェノムが言い放ったその瞬間、その場にいた全員が唖然とした。ただ一人、アンビーだけが冷静に指摘する

 

「ちょっといい?わかってるとは思うけどホロウを効率的に縮小させたいならテイルウィングやアルペカ、ゴブリンみたいなエーテリアスを……3000体くらい倒さないといけないわ」

 

「ブッ!? 3000!?」

 

「そんな事してる時間はないぞ!?」

 

あまりに非現実的な数字に、ビリーと猫又が同時にツッコミを入れる。焦りと呆れが入り混じった声がその場に響いた

 

そんな中、唯一声を潜めていたのはパエトーンだった

 

『……ヴェノム、まさか君は』

 

「ああ、その"まさか"だ」

 

パエトーンの疑念を遮るように、ヴェノムは鋭く断言した。口元には不敵な笑みが浮かんでおり、それは今にも噛みつかんとする獣のようだった

 

デッドエンドブッチャー(ホロウの主)に、ご退場願おう」

 




今回も読んで下さりありがとうございました!

アンビー、ビリーよりニコと猫又が先に来たのは道中ヴェノムが倒し損ねた偽治安官たちと戦っていたからです

さ、ウィークリーミッションやりましょうね。皆さん
あ、今はミアズマの司祭周回ですかね

この小説のヴェノムの見た目はmarvel's spider-man 2 のヴェノムのコンセプトアートが僕自身が思ってるヴェノムにいちばん近いです
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