ブイブイイーブイ(仮)   作:れっつらごーブイブイ

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プロローグ

 

 

 

 

 

 

 

 気が付けば転生していた。

 前世の記憶らしきものは一部を除いて曖昧なので、もしかしたら全て僕の妄想という可能性もあるけれど。

 まあ、実態はどうだか知らないが、少なくとも僕の認識としてはポケモンの世界に転生したというのが事実である。

 

 当初は現実感がなかった。

 どこかゲームでもしているような感覚があり、自意識がはっきりしていなかったと思う。

 僕を変えたのは、やはりというかポケモンだった。

 初めて現実に生き物として存在するポケモンを見て、触って、嗅いで……急速に世界が広がっていった。

 突然活動的になった僕に両親は驚いていたけれど、内向的だった息子が元気になったのだと好意的に解釈してくれた。

 それが、僕が三歳の頃の話だ。

 

 少し話は戻って、前世の記憶らしき物について。

 一部を除いて曖昧といった通り、前世の僕と思われる人物の名前や顔、家族や友人などはぼんやりとしか憶えていなかった。

 だとすれば何を憶えていたのかと言うと、ポケモンに関する記憶だ。

 俗に言う、転生チートというやつだろうか。

 ポケモンのゲーム、アニメ、漫画の内容や知識に限っては、転生してから十年以上が経つ現在でも全く色褪せることはない。

 

 そんな僕がポケモントレーナーになったのは必然と言えるだろう。

 この世界はゲームほど正確ではないというか大雑把だけれど、当然タイプ相性は網羅しているし、三値の概念や多様な特性に技の数々まで寸分狂わず記憶している。

 現実には僕の相棒であるイーブイのような例外、常識はずれなポケモンも居るから全てを鵜呑みにすると酷いことになるが、ポケモントレーナーの基軸としては極めて大きなアドバンテージになる。

 

 実際に憚らず言わせてもらえば、僕はポケモントレーナーとして強い部類に入ると思う。

 元リーグチャンピオンの師匠からもチャンピオン級の実力者だとお墨付きをもらっているため、僕の勘違いではないはずだ。

 生憎とジムやリーグには興味がなかったので挑戦していないが、流石に弱いってことはないだろう。

 

 僕のポケモントレーナーとしての強さの根幹にあるのは前世の知識だが、勿論それだけでチャンピオン級のトレーナーにはなれない。

 両親も同じくジムなどに興味のない人だけれど、ポケモンバトルは驚くほどに強い。

 師匠と出会えたのも両親の伝手があったからこそだ。

 優れた才能と優れた師匠に恵まれて、真面目に努力さえすれば強くなれる環境だったのだから強くなれたのは当然と言う人もいるかもしれない。

 

 僕の自己紹介はこのくらいでいいだろう。

 七歳から道場を営む師匠の元で四年間修行していた僕は、幼馴染を驚かせようと故郷のガラル地方を離れてパルデア地方のアカデミーに転入した頃から新たな出会いと共に再び変わり始めた。

 一つ下の学年のポケモンバトル大好きお嬢様に毎日のようにバトルを迫られたり、料理好きな同級生とひょんなことから仲良くなったり、二年目二度目の宝探しのタイミングでやってきた双子の後輩兄妹と遊んだり、入れ違いで退学していた幼馴染と一年半振りに再会したり…………。

 故郷を離れた地で、僕の物語はようやく動き出す。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 

 

 故郷ガラル地方を離れてパルデア地方の歴史あるオレンジアカデミーに転入を決めたのは、僕よりも一足先に入学した幼馴染がいるからだった。

 兄妹のように育った仲の良い幼馴染が居なくなって張り合いがなかったこともあるけれど、最大の理由は彼女の父親に平身低頭で頼みこまれたのが最も大きな要因である。

 幼馴染の僕とはいえ、普段なら自ら飛んで行きそうな人が悲壮感に塗れた顔で土下座してくるものだから、流石に断れなかった。

 

 そんな僕だったが、折角ならサプライズにしようと思ったのが間違いだった。

 いざオレンジアカデミーに到着してスマホロトムで連絡をしてみれば、幼馴染は留学という名目で停学して故郷ガラル地方に帰っている最中らしい。

 

 

「えっと、冗談だよね?」

 

『や、マジだから』

 

 

 つまり、完全に無駄足だったと。

 ウソ〜!?と思わずウソッキーの声真似をしてしまうくらいの衝撃を受けた。

 幼馴染が居ないなら来た意味ないじゃないか。

 

 

『サプライズなんて考えるからでしょ』

 

「ご尤もです、はい……」

 

 

 それを言われたら何も言えなくなる。

 ちゃんと連絡取ってればこんなすれ違いにはならなかったのに……。

 

 

「もう入学金も払ってもらっちゃってるから今更転入やめますとは言えないし、そっかマジかぁ……」

 

『…………まあ、ジンなら大丈夫か』

 

「なにが?」

 

『………………あのさ、実は……やっぱなんでもない』

 

「えっ、なにそれ。めっちゃ気になるやつなんだけど。そこまで言いかけてやめるのはズルくない?」

 

 

 そんな言い方されて先が気にならないやついるんか?

 少し真面目な雰囲気というか、深刻さを感じさせる声だったから普通に心配なんですけど。

 

 

『……なんでもないって』

 

「あのボタンさん?僕にそんな嘘が通じると思ってらっしゃるんですか?」

 

『そういうのいいから察してくれん?話したくないんよ』

 

「嘘でしょ……ボタちゃんが反抗期……!」

 

『うっざ!変な呼び方すんな!もう知らん!』

 

 

 ぶつりと通信が切られてしまった。

 ロトムは困った顔をしているが、幼馴染も最後は少し元気が出たようで安心した。

 その方法が怒らせるってやり方なのは良くないかもしれないけれど。

 

 

「さぁて、まずは校長先生に挨拶しないとね」

 

 

 巨大なモンスターボールを模ったオレンジアカデミーのシンボルを眺めながら僕は一人呟いた。

 

 

 

 

 

 

 




次回更新は未定です。
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