"アビス"に転生したと思ったらキャベツが飛んでいた。 作:琥珀色の大西洋サバ
……ま、結局"どちらも美味い"で片付けられますけどね。
朝起きました。
……これは分かる。
学校遅刻する訳にもいかないもんな。
周り見ました。
……これも分かる。
周り見ないと自分の部屋の出口わからんし、朝飯食うためにも部屋を出なきゃいけないからな。
地面が反転している森の中でした。
……はい、意味が分かりませんね畜生。
更に更に?
自分の体確認してみたらナキカバネでした。
……どうしてこうなった⭐︎
◆
ナキカバネ。
漫画「メイドインアビス」に登場する原生生物の一種。
物語本編の舞台となる"アビス"という大穴に生息しており、鳥の様な姿をしている。獲物の鳴き声を真似てその仲間をおびき寄せるという独特な習性を持っているのが特徴。
本編では主人公のリコとレグを罠に仕掛けて襲撃し、リコを上空に持ち上げ、その上昇負荷(後で説明する)で大怪我を負わせたぞ。
ま、レグの火葬砲(空気砲をすっごい強化したような物)によってこいつら巣ごと撃ち落とされたされたけどな。
何はともあれ、だ。
そんな獣に俺は転生を果たした。
……クソッタレがぁ!!
まぁ、百歩譲ったとしてナキカバネに転生したのはいい。
ナキカバネだってアビス生物の中では大当たりではなくとも当たりの方だ。ネリタンタンにでもなったらそれこそ絶望だろう。
ただ問題なのはここが"アビス"である可能性が非常に高い事だ!!
アビス。
簡単に説明するととてもデケェ大穴。*1
ただその環境がヤバい。
"原生生物"がイカれてんのばっかだ。
生息域は違うが、特にヤベェのだと未来予知しながら襲ってくるクソデカハリネズミや、攻撃種族値が某デオキシリボ核酸(アタックフォルム)と並ぶぐらいある一般クソ強タツノオトシゴドラゴンがいる。
正直それだけでも勘弁してほしいが、アビスはそこで終わるような所ではない。
“上昇負荷"の方も問題だ。
高山病*2みたいなもんだが規模が違う。
軽いもんだと吐き気ぐらいだが、だんだんとレベルが上がっていって最終的には全感覚が消失したり、人間性が消失して異形の体になったりする。
さっき言っていたように現在の俺の体のナキカバネはこれを利用して獲物を狩っていたんだとか。
ヒエッ!恐ろしい!!
……まぁ、体が利用する側になっちまったからそれあんま効かなそうだけど。
それはともかく、だ。
まず上昇負荷なくともアビスとかいう絶対行きたくない場所ガチャSSRみたいな所に所に転生してしまったのが終わってる。たとえどんなキャラに転生したとしてもアビスだけには絶対転生したくなかった。
……ゲス外道おるし。*3
ま、まぁ?
別にここがアビスって確定した訳じゃないしな?
もしかすると全く別の異世界だったりしてな!!
アハハハ!!
……見苦しいな。
恐らくここはアビスの二層"誘いの森"だろう。
簡単に説明すると天地がひっくり返っている森だ。
原作では確か木が上の方から下に向けて生えておりなかなか幻想的な光景だった。今立っている場所も木の上だし、多分ここがアビスの中だというのは確定だろうな……。
ふと顔を上げる。
そこには真っ白な霧が広がっていた。
……はぁ。
飛んで脱出を図るか……?
いやでも結構困難っぽさそうだし、出口付近はオースの街あるしなぁ……。最悪の場合撃ち落とされるかもしれん。
動いてみた感じ体の感覚は人間の時と同じだったから体の違和感は無いが、そもそも飛べるのかが分からんのも問題だ。
どうする?
もしナキカバネに転生したのに飛べなかった場合、非常にまずい事態になる。
例えるならネギではなくカリフラワーを振り回す初音ミクだろう。
それと同じように飛べないナキカバネはナキカバネとして致命的なのだ。
うーん……困ったぞ。
下を見る。
霧でよく見えないが、恐らくその先は奈落だろう。それに落ちるのは絶対にやめておきたい。
万が一生存したとしても第三層、第四層の原生生物の餌になるだけだ。
飛べる保証が無いなら出来るだけここから動きたくはないし、でもここから動かない限りはこの先生きる事はできないだろう。
どうしたものか……。
そう悩んでいたその瞬間の事だった。
……ん?
沢山の小さな影がこちら側に向かって飛んで来た。
……コレ……ヤバくね?
◆
見た感じ、複数体いる。
影の形としては球に近い何か。
球の周りに葉っぱ?の様な何かが回っているように見えた。
影の形は分かったがその正体は詳しくは分からない。
……原生生物の群れか?
にしてもこんな物今まで見た事ないぞ……?
原作に登場していないだけだろうか?
目を凝らしたがはたまた霧で視界が良くない為、結局正体は分からなかった。しかし、影がだんだんと大きくなってきたのが分かる。
けどこっち側に向かって来てるのは確定だな……。
やっぱり狙われているのか……?
とにかく警戒をしなければ……!!
影の方向から羽ばたく音が聞こえ始めた。
もう結構近いな……。
影の速度はそこまで速くはないが、遅くもない。
俺が走って逃げても追い付かれるスピードだろう。おそらく飛ばない限り逃げられないと思われる。
影の方向に顔を向ける。
ならあの影の正体に賭けるしか無い、か。
確認だけする。
大丈夫そうなら木の幹の側で待機する。
もしそれが危険そうな奴なら一か八かで飛ぶ。
……もう完全に運任せな作戦だがコレしか無い。
えぇい!!もうどうにでもなれ!!
クオンガタリでもベニクチナワでもなんでも来いやぁッ!!
羽ばたく音が大きくなり、大群の影が薄くなり始めた。
来るっ!!!
いざ、運命の時———
◆
拝啓 父さん、母さん、お元気ですか?
どうも息子です。
現在俺は、転生して新しい生を送っております。
なんと転生先はアニメの恐ろしい鳥のキャラクターでしたけどね。
あぁ、ご心配なく。
ちゃんと元気でやっていますよ。
なんやかんやですが新しい生を謳歌できるよう、努力しています。ほんの一瞬の時間でも異世界は様々な経験が重なるものです。
ただ———
「「キャベキャベキャベツー!」」
転生した世界にはまさかキャベツが物理的に飛んでいるのだとは思いませんでした。
……ハハハッ。
畜生め!!!!
ちなみに投稿主のアビスで一番好きな原生生物は普通にナキカバネです。
あれ幼少期から育てると普通に人間でも懐くらしいですよ。
……首から胸までの所をモフりたい。