"アビス"に転生したと思ったらキャベツが飛んでいた。   作:琥珀色の大西洋サバ

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最近頭が悪くなっていると感じる今日この頃。
己のやるべき事はなにも成せていない。(提出物)


ミツルギ騒動。

「怪鳥め!!今日こそ仕留めてやる!!」

 

朝起きたらなんか勇者っぽい奴が安楽少女に吊るされていた。

 

「お前を狙っていた侵入者だ。珍しいな、ここまでくる奴は」

 

安楽少女が耳を塞いでそう言う。元気が有り余っている奴は苦手だそうだ。お前も大概うるさいけどな?

ただ、その装備や威勢を見るに上等な冒険者だろう。俺も危なかったかもしれん。安楽少女には一応感謝しておこう。

 

……でもなんか見覚えあんだよな、コイツ。

 

『なんだっけ?ミッちゃん?』

「は?何言ってんだお前」

『いや一度会った事あるような……』

 

「君!早く拘束を解かないか!!僕はあの鳥に用があるんだ!!それに僕はミツルギだ!!!」

 

……あー!そうだったそうだった!!

思い出した!!ミツルギ!!

逆転裁判の検事と同じ名前な奴!!

一年ぐらい前、俺が一人でブロリーごっこしてる時に斬りかかってきて返り討ちにあった奴だ!!あー、懐かしっ!!

 

◆◆◆

『カカロット、まずお前から血祭りにあげてやる……』

「ッ!?!?」

◆◆◆

 

「おい!!聞いているのか!!?」

 

騒ぐミツルギ。そーいやこんな奴だったな……。正義感の強い青年だこと。

 

「お前一回黙れ。これ以上騒ぐとテメェ、養分に変わっちまうぞ?」

 

ミツルギを吊るしている安楽少女の根の力が強まる。

おー、見事にキレているな。花は歌を聴くと成長するとは言うもののこっちの世界はそうでもないみたいだ。

 

「なんだクソ鳥ィ?」

 

……なんでもございません。

 

「……んで?コイツ、どうすんだ?」

 

突然の質問に戸惑う俺。

 

「処す?処す?」

 

そしてウキウキで語りかける安楽少女。

 

……うん、やっぱ怖いわこの女。

 

 

酷い、なんて残酷な……。

 

 

『よし、裸吊り*1にしておこう』

「お前マジか」

 

 

はいどうも。

安楽少女にドン引かれているナキカバネです。

 

俺が何したって言うんだ……。

 

「無自覚かよ」

 

……うんこ。

 

「死ね」

 

……まぁ、それはさておいて。

 

「よかねぇよ」

 

洞窟、静かになったな。

 

「……そうだな」

 

「「………。」」

 

 

……うんk「死ね」

 

 

森の中、裸で吊るされている男が1人。

そう、モツルギである。

 

「クソッ、どうしてこんな目に……」

 

彼は嘆く。裸で。

自らの失敗はなんだったのかと。

悔しみに満ちた表情でそう呟いた。

 

そしてそこに舞い降りる影が一つ。

 

そう、俺である☆

 

『やぁ、こんにちは』

 

「……僕を笑いにきたつもりか?」

 

『……半分。』

「死ね!!」

 

さて俺は今日、何回死ねと言われればいいんでしょうかね?

それはさておいて。

 

 

『聞きたい事がいくつかある』

 

 

洗いざらい話してもらおうか。

 

 

『はえ〜なるほどね。完全に理解した』

 

「……何がしたいんだ、お前は」

 

ギロッと睨みつけてくるモツルベ。

俺が聞いていたのは他でもない、この世界の仕組みについての事だった。エリス様は多忙な為教えてもらう事はできなかったが、今日になってようやく知った。

 

どうやらこの世界、"レベル"の概念があるらしい。

 

元よりここが剣と魔法のファンタジーな世界だとは知っていたが俺がナキカバネな都合上、人間についての事はよく分かっていなかった。知っていたのは冒険者がいるって事ぐらいだ。

なのでその概念の登場は驚きだ。もう殆どゲームじゃねぇかよと、そんな思いがよぎる。俺は声を挙げた。

 

『おいモツナベ』

 

「……どう間違えたらもつ鍋になるんだ」

 

 

『パンツは返してやろう』

「全部返してくれ」

 

 

 

「……ふぅ、一時はどうなる事かと」

 

装備品を固定していくミツルギ。

それを見ていた安楽少女が目を細めながら俺に問いかける。

 

「いいのか?解放して。お前を狙ってた奴だぞ?」

 

『……まぁ、色々知れたし』

 

レベルやら、冒険者カードやら、転生についての事にもな。

まさかコイツが転生者とは思わなんだ。

 

◆◆◆

『……そういや、この剣はなんだ?剣なのに何故か石鹸の匂いがするぞ?』

「あぁ、それは女神から頂いた"魔剣グラム"さ」

『女神……?魔剣……?』

『要するに、転生特典って事……まぁ、どうせ言ったって分からないだろうけどね』

◆◆◆

 

「ふーん、お前がそう思うならいいが。死んでも知らんぞ」

 

まぁこちらも転生者である事は開示したし、こちら側から人間に手を出さない限り大丈夫だろ。

 

「じゃあ僕はこれで。今後は不干渉でいこう」

 

装備品を着け終わり、俺たちに背中を向けるミツルギ。その表情は何処か切なく感じた。

 

「……そーいやさ、なんでアイツはお前を狙ってたんだ?」

 

安楽少女は去っていくミツルギを眺めながら俺にそう尋ねる。

だから……俺はこう返した。

 

『知らない』

 

聞くの忘れちゃったぜ。てへぺろ。

 

*1
探窟組合の伝統的な仕置き風習。意味はそのまんま。




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