レベル上がらないテイマーさん   作:匿名幼女

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ゲーム作りのために

 

 

 

 

 

「シャングリラ・フロンティアかぁ……」

 

 

 

 クソゲー求める我が兄がよく通っているゲーム屋さんにて買った大作。

 このゲームはきっと、私に新しい世界を開いてくれることだろう。ゲーム作りのいい刺激になるかな。

 

 

「そういえばお兄ちゃん私のゲーム遊んでくれたかなぁ。後で聞かないと」

 

 

 夢はシャングリラ・フロンティア並みのゲームを作り上げること。

 ────というよりは、前世で遊んだゲームをもう一度やりたいがために作ること。

 

 そう、私には前世の記憶がある。

 といっても、大学生まで過ごした記憶しかなく、分かっているのは事故で死んだということぐらいだ。

 

 この世界については、前世の私が死んだ世界とは全く異なるということだけ分かる。

 現代社会の在り方、ルールなどいくつか違うだけの並行世界かな。

 

 前世の記憶があって、私の知らない世界ということで何かあるのではと疑ったことはあったけど、そんなの杞憂だった。

 ゲームが異様に発達しているけど、それ以外は特に事件など起きてもいない。私のよく知る俺強なろう系世界でもない。

 

 だからまあ、適当に生きて暮らせばいいかなぁと思った。

 私の今の家族────陽務(ひづとめ)家は趣味に没頭する人しかいなかったから、私も何かしようと思っただけ。

 

 そうして分かった。

 趣味にしていたゲームが────前世で遊んだゲームがこの世界には無いことだ。

 

 前世のゲームをより鮮明に、現実味溢れるVRにて遊んでみたい。そのためにゲームを作ると決めたんだ。

 技術は全く無いけれど、イラストや音楽の無料配布やらVRゲーム制作方法やら、ネットゲームのように素人でも作れるプログラムはたくさん。

 私の貯めたお小遣いを使って立体的なキャラクター制作を依頼し、それなりのゲームを作ることも出来た。

 

 そうして初めて作ったゲームは私の前世のゲーム基盤たるゾンビゲームに類似されたもの。町を舞台に脱出を目指すやつだ。

 ゲーム名は『ガンズハザードZ』────ネーミングセンスに関してお兄ちゃんに言及されたけど、幕末よりマシだと思うの。

 

 このゲームは自らの足で町中を自由に歩く機能は勉強不足で無理だったので、強制移動かつ拳銃でゾンビをぶっ飛ばしつつ限られたアイテムを使いながら罠をくぐり抜け脱出を目指すガンアクションゲームにした。

 といっても一般家庭の小学生女子のお小遣いをはたいて出来るものなので、私の想像する良質なホラゲーにはならなかった。

 

 それでも処女作。

 ネットに放流する前にクソゲー愛する我が兄に評価を頂く。

 

 兄は私のゲームを見て変な顔してたけど、やり終えた後は「並み以下だな。クソゲー作るならもっと理不尽にやってみろ」とまあまあな評価をしてくれた。

 並み以下って言ってるけど、ゲームに関しては辛辣なお兄ちゃんが私のゲームを最後までやり遂げてる時点でネットに放流する価値はあると思いそのまま無料配布にした。

 

 お兄ちゃん、ゲームのご利用ありがとうございます。またゲームを制作した際はよろしくお願いします。

 そんな感謝はすれども、私はクソゲーを作ってるわけじゃないのでクソゲー評価を頂いた時はお兄ちゃんを膝蹴りしといたけど。

 

 そんでもう一つ、まだ兄の感想の聞いてないゲームだが、幕末をプレイした時のあの殺伐さから発想させた簡単なギャルゲーたる『ブキブキラブポーション』通称『武器ラブ』がどうなったのか聞かないとね。

 

 

 そんなことよりシャンフロだ。

 私の将来の夢のために、どうか楽しませてくれ。

 

 

「……まあ、あともうちょっとで夏休みだからね。人が増える前にやるのも手かな」

 

 

 ゲーム開始して最初に見たのはキャラクター制作画面。

 

 

「傭兵、騎士……踊り子? なんかいっぱいあるなぁ……」

 

 

 防具売れるってどういうこと?

 全裸スタートなんて変態プレイする人いるの?

 まあ、序盤にお金あった方がやりやすいのは分かるけど……ううーん……。

 

 

 どうせなら猛獣使い(テイマー)になりたいかな。

 私が一番作りたいのはポケットなモンスターのあれだからね。その前に作るとしたらロボかなぁ。

 

 序盤で詰まないようにもっとちゃんと調べなきゃ……ええと、猛獣使い(テイマー)ならキャラクター性能は全体的に下か。なら辞めようかなぁ。

 ……あっ、でも職業(ジョブ)が変えられるとかいろいろ自由が効くなら、お試しでやるのもありかな?

 

 

「猛獣使いで最初に使い魔を決めるなら犬猫などの動物……いや、でも冒険者なら使い魔は決めなくていいのか。その方がキャラクター性能も防御力以外は劣ってないし」

 

 

 よし、使い魔は無しの方向で。

 

 キャラクターはやりやすいよう私と……つまり小学生低学年ぐらいの背丈で、スピード重視。

 幸運は────ゲームやる前に調べたら幸運値上げた方が特みたいなの書いてたし、多めに。

 

 見た目は私の推しのプロゲーマーたるシルヴィアみたいな、金髪碧眼にしよう。

 名前は陽務瑠璃(ひづとめ るり)の本名を逆さに……『リル』にしようかな。ゲーム作者の名前としても使ってるし。

 

 

 

————————————

 

PN:リル

 

LV:1

 

JOB(職業):猛獣使い(冒険者)

使い魔:無し

 

3,000マーニ

 

HP(体力):30

MP(魔力):10

STM (スタミナ):20

STR(筋力):10

DEX(器用):10

AGI(敏捷):20

TEC(技量):10

VIT(耐久力):10

LUC(幸運):20

 

スキル

・ストレートスラッシュ

・ナックルラッシュ

 

装備

左:無し

右:新品の短剣

頭:無し

胴:皮の防具

腰:皮のズボン

足:皮の靴

アクセサリー:無し

————————————

 

 

 よし、出来た。

 あとは楽しむだけかな!

 

 

 

 

 

 オープニングの説明文を流し読みしつつ、シャンフロの世界観を把握しとく。

 視界が真っ暗になったかと思ったら、小鳥の鳴き声とともに一気に明るくなった。

 

 商店街から裏路地へ続くような細道、といったところかな。

 真っ直ぐ前を見れば、明るくここより広い街路をNPCやプレイヤーが歩いている。

 

 

 そこから離れた私のいる場所は人気もなく、まるで空気が切り離されたかのように静けさに包まれていた。

 

 最近はお兄ちゃんのやってるゲームばっかり借りてたから、クソゲーよりどれだけ動けるかの把握からしよう。

 

 ひとまず視界の移動────うん、自由に動ける。

 両手をぐっぱっと握って、足を軽く振り上げてみたけど違和感無し。

 

 変な動きしたらバグるか見るために思いっきり壁ジャンプして見たけど問題なし。

 

 

「うん、なんとか動くかな……」

 

 

 調べてみればここは『ファステイア』という最初の町らしい。

 まずはここを拠点に周りの冒険。そして私の理想の使い魔を見つけてみよう。

 

 

 

 

「ちょいとそこ行くお嬢ちゃん、見てってやー」

 

「誘拐でしたら私より別の子にお願いします」

 

「んなことするわけないやんかぁ! わい、ちょっとした商いやっとるんや。買わへんか?」

 

「はぁ」

 

 

 裏路地をズンズン進んでみたら変な関西弁の怪しいNPCが露店してた。というか変なこと言ったのに対応してるし、AIすごい。軍用の使ってるっていってたからそのせいかな。うぐぅ……私も機械さえ充実していれば……!!

 

 ……っと、今は目の前のイベントに集中しなきゃ。

 怪しさ満点だけど、面白そうだから買ってみるか。

 

 風呂敷を地面に敷き、いくつかの商品が並べられたそれを眺める。

 

 その中の一つだけ、異様に目が奪われた。

 

 

「これは?」

 

「ええ目ぇしとるねお嬢ちゃん。これは百年に一度の夜にしか手に入ることの出来ない闇の石や」

 

「やみのいし」

 

 

 進化の石かなと思うそれを手に取り、説明文を見た。

 

 

・闇より秘めし忘却の石

これを入手した日の夜。その夜明けまでに石の封印を解かなければ永遠の眠りにつくだろう。

忘却された意志を取り戻せ。お前のいる世界は闇にある。

 

 

 なんだろうこれ、ギャグかな?

 何か重要なアイテムっぽいけど、石と意志を掛け合わせてる感じだし、こんな露店にあるアイテムだからね。

 

 きっと他の人も入手して封印を解いてるはずだ。

 でもこれ『やみのいし』なんだよね……。何かのモンスターを進化させられるかもという期待ががが……。

 

 

 

「買いまーす。いくらですか?」

 

「1000マーニやで。まいどー!」

 

「回復アイテムあったら買うんで安くしてください」

 

「図々しいお嬢ちゃんやな!? ……じゃあコレとコレ合わせて1500マーニで売ったる!」

 

「はいそれで」

 

「まいど!」

 

 

 ほどほどに高い買い物だけど後悔はない。

 

 闇の石の解放条件については後で調べるとして……。

 まずはレベリングも兼ねてお金稼がなきゃね。

 

 

 

 

 

「迷った……」

 

 

 いやまあ、お兄ちゃんから「瑠璃、お前はゲームでも現実でもバグってる程度の方向音痴だからな。勘を信じるな。地図を信じろ!」って匙投げた絶望顔で言われたし、ヤバイかなって思って宿借りてリスポーン地点決めたし大丈夫とは思うけどさぁ!

 

 森から出られないし、茂みからモンスター出まくるし、そろそろレベル20になっちゃうのに使い魔もテイム出来てないし!!

 というか、モンスター沢山狩りまくってたら称号『モンスターズハント』手に入れたけどこれ何?

 

 

「あとキミしつこいよ! 片腕だけになっちゃったんだから諦めなってば! 命大事に! 戦線離脱コマンド! 私はもう戦う気は無いんだってば!!」

 

 

 後ろから追ってくるのは一体のヴォーパルバニー。

 回復アイテムが尽きたけどリスポーンする気になれず、ひとまず町へ戻るために四苦八苦してた際に出てきたレアモンスター。

 首を狙ってきたから反射的に腕斬ったら最後の武器が破損したため、私は負傷した兎から逃げたのだ。

 倒せばいいのは分かってるけど素手で応戦するしか無いし、反撃されたら確実にダメージが入る。

 回復もないなかでそんなことしたくはない。

 

 ここまできたらリスポーンせずにいたいからね。町までの距離が分からない今、ヴォーパルバニーに反撃するのは避けた方がいい。

 逃げる方が容易いし。

 

 そう思っているうちに、時間は夜になり、暗闇の中必死に真っ直ぐ走っていくと、開けた場所にきた。

 

 

 

「町だ────っ」

 

 

 

 それは、不意に訪れた。

 

 闇夜にて広がる景色には、人間の姿など一つもない。

 

 ただ、モンスター達が影に集っている。

 どうやら縄張りに侵入してきた敵を倒そうとしているらしい。

 

 しかし影は────真っ黒の狼とも言うべき敵は、モンスター達を嘲笑い、吹き飛ばし、殺してみせた。

 

 

 そうして奴は、こちらを見た。

 

 

 

『ユニークモンスター「夜襲のリュカオーン」に遭遇しました』

 

 

 回復無し、武器無しでボロボロの私。

 背後には片腕で出血ダメージでそろそろ死にそうなヴォーパルバニー。

 

 

 目の前に広がるは、今にも噛みつきそうな狼。

 

 

「死っ────」

 

 

 

 リュカオーン相手に、片腕のヴォーパルバニーが鋭い突きを繰り出した。

 それを軽々と避けたのを見て我に変える。

 

 諦めかけたけど、ヴォーパルバニーが私ではなくリュカオーンを狙っているならば────!

 

 

「よしヴォーパルバニーくん! キミ一旦休戦ね! そいつ倒したら殴り合いしようぜ武器放り投げてね!」

 

 

 なんか嫌な顔されたけど無視。

 テイマーだからこそ出来るサポートスキルたるバフをヴォーパルバニーにありったけぶちまける。

 

 そうして私も殴りにいく。

 せっかくのユニークモンスター。死ぬかもしれないなら一回ぐらいはぶっ飛ばしてみないと!

 

 

「回復は出来ないから避けないと駄目だよ!」

 

 

 舌打ちしてきた兎に少しだけ傷つきつつも、リュカオーンの噛みつき攻撃を見て反射的に身体を動かした。

 

 

「こっちは伊達にお兄ちゃんのクソゲーやり尽くしてないんだよね! 推しから学んだミーティアス式空中ジャンプを今こそ見せる時!!」

 

 

 きつい、ギリギリでしか避けられない。

 攻撃するにしても、リュカオーンがすぐさま対応してくるし、避けたあとカウンター攻撃が飛んでくる。

 ヘイトは今のところヴォーパルバニーに向かってるなら死んでないだけであって、均衡が崩れたら終わるのは確実。

 

 余裕そうに見せているけど内心は冷や汗だらけだった。

 

 

「あっ!?」

 

 

 片腕のダメージが今になってきたのか、ヴォーパルバニーが膝をつく。それにリュカオーンが踏みつけようと動く。

 

 

「待て待て待てぇぇぇ!!!」

 

 

 確かにヴォーパルバニーにダメージ与えたの私だけど。片腕にしたの私だけど!!

 今は巨大な敵を倒すためのいわばバディというか親友みたいな絆が生まれてるというか!

 

 

「っ────!!」

 

 

 

 とにかく私は馬鹿だったのだ。

 お兄ちゃんならきっと見捨てるはずの一体のヴォーパルバニーを助けようとして動き────半身を噛まれた。

 即死してないのはきっと、レベル19により強くなった幸運が働いて食いしばりが発生したから。

 

 横たわるヴォーパルバニーと私を見下ろすリュカオーン。

 その半月に歪む目を見て気づいてしまった。

 

 きっと、きっと。弄ばれていた。

 玩具のように遊んでいた。

 本気で戦っていたのは私たちだけだった。

 

 

 ユニークモンスターに相応しい強さを持つそいつは、私たちを見ている。

 私は死んでも生き返るけど、親友たるヴォーパルバニーは違う。そのまま死んで終わるだけ。

 

 ああ、復讐しないと。

 幕末心が沸き上がるまま、私はリュカオーン相手に睨み付けた。

 

 

「今に見てなさい。私達を殺したことを絶対に後悔させてやる」

 

 

「グルゥ」

 

 

 

 一鳴きした狼によって、食い殺され視界が真っ暗に終わる。

 

 

『「リュカオーンの呪い(マーキング)」が付与されました』

『闇より秘めたる石が呪いにより壊される──!』

 

『闇の石の効力により、「リュカオーンの呪い(マーキング)」が変異しました』

『「リュカオーンの呪い(マーキング)」から「リュカオーンの(ぶんしん)」が付与されました』

『「リュカオーンの(ぶんしん)」効果により、レベルダウンされます……』

 

『レベル1となりました』

 

『「職業:影法師(シャドウサーヴァント)」に変更されました』

『「片腕のヴォーパルバニー」が使い魔となりました』

 

 

 

 ……どゆこと?

 

 

 

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