レベル上がらないテイマーさん 作:匿名幼女
後々に身体の奥底から理解させられてしまったことだが、シャンフロ内においてユニーク関連は数多あるクランを集める財宝に匹敵するらしい。
お兄ちゃんはまだマシだった。
エムルちゃんを連れた夜襲のリュカオーンの呪い持ちということで一部の人間が興味を抱いて行動力のある人が向かっただけ。
私という存在は、その数倍貴重なプレイヤーとして扱われてしまった。
町でのエムルちゃんの発言含め、夜襲のリュカオーンに関わる人物として扱われたのだ。
そのせいで集まったのは数知れず。
ユニーク関連ともあってマナーのなってない奴らからスレで名前や姿と共に拡散。
セカンディルから逃げたならサードレマへ向かうはずだという理由で、私達が想像するより多くのプレイヤーが集まってしまったのだ。
黒狼は夜襲のリュカオーンに関する情報を会得するため。
ライブラリは、あわよくば解き明かされてない真実を見つける協力をしてもらうために。
阿修羅会はリスキル前提で全てを吐かせるため。
ティーアスちゃんを着せ替え隊とSF-Zooに関しては割愛。
────それ以外にも、個人的に動く者が何人かいたのだ。
そりゃあサードレマがクラン総出でぶつかり合い、喧嘩祭りになるのは避けられない運命。
NPCの語り部により、サードレマの歴史に残る大事件となった。
♢
オブジェかと思えたものが、実はプレイヤーで、殺気めいたオーラを漂わせながら傍に来た。
エムルちゃんがその威圧感に震え、お兄ちゃんが冷や汗かきながら警戒している。
お兄ちゃんほどのプレイスキルがあればどうにかなるかもしれないがレベル的に────確実に私達が敵う相手ではないプレイヤー、サイガ-0。
お兄ちゃんの傍にきた鎧の武者が、小さく頭を下げたのだ。
「フレンド、だと……!?」
「んぇ」
まさか、お兄ちゃんにフレンド申請したってこと?
私達のユニーク情報吐かせるために襲撃しに来たとかではなくて?
お兄ちゃんも私と同じことを考えてるのか、なんともいえない雰囲気を漂わせていた。
チラリと私を見たので頷いておく。どうせ「フレンド交換するべきか否か!? もし罠だったらどうする……いやだが、ここで断ると襲いかかってくる可能性も否定できん……!」とかなんとか考えてるに違いない。
アイコンタクトをした私達兄妹にサイガ-0は何故か威圧感を強くする。
(こわい……)
そんな怖い目でこっち見ても私何もできないよ。リルはただの幼女でレベル1だよ。
そう伝えられたらいいけれど、何かを喋るにしても兄からでないといけない雰囲気が漂っていて無理。私もお兄ちゃんもコミュ力そんなに無いし。
もはや自棄になったのか、賭けに出た兄が────おそらくフレンド申請許可を押そうとして。
「っ────」
その不意打ちの剣に気付いた。
「避けんじゃねえよ雑魚が!!」
レッドネーム輝く悪党。オルスロットと書かれたプレイヤーの背後からぞろぞろ出てくるプレイヤーキラー達。
サイガ-0も警戒しているようなので罠ではないことが分かったが、お兄ちゃんの方を見ていて動かず。
「リスキルされたくなかったらそこのウサギ含めてユニーク全部吐いてもらおうか。野郎共、周り囲め!!」
「「「へい!!」」」
「……えらく台本通りの悪党してるじゃねえか」
「気合い入れてヒャッハーしてきたんじゃない?」
「ひゃっはーって何ですわ?」
「人を襲おうとして逆に襲われるギャグ系悪党のことだよエムルくん」
「つまり雑魚ということですわ」
「雑魚じゃねえよ!!!」
「ぴゃわ!?」
エムルちゃんがお兄ちゃんの頭からずり落ちる。
それを慌てて私がキャッチしたら隙が出来たと思ったのか、オルスロットがニヤリと笑った。
「野郎共やっちまえ!」
「「「うぉぉぉ!!!」」」
「────いいえ、させません。……させるものか」
数多もの攻撃を一手に受けてなお余裕綽々とした様子で立つその姿はまさしく武人。
サイガ-0の敵意は全て、奴らに向けられた。
「道を作ります。どうか逃げてください……そしてどうかおともだちに……ゴホッ……い、いえ。とにかく逃げて」
威圧感に見合わず、サイガ-0の声は少し低めの声を意識している女の子そのもの。
ロールプレイしているのが明らかなのに気付いたお兄ちゃんが、警戒から一転。
「俺らが無事に逃げたらフレンド交換しようぜ、サイガ-0さん」
「っ!」
「行くぞリル、エムル! 強行突破だ!!」
「結局こうなるんですわぁ!!」
「待てやてめえら────」
「駄目です。行かせませ……行かせない。私より一歩前へ出たら全員殺す。命が惜しいなら去れ!」
「ぐっ……クソがぁ!!!」
オルスロット達がどうなったのかは見えず、お兄ちゃんに抱っこされたままの私はサードレマへ向けて前を警戒し続ける。
「お兄ちゃんこれどうするの! サードレマの途中から待ち伏せされてたんじゃ、たぶん他も────」
「いや、行ける!」
「いいや、行かせないよ。革命騎士サンラクくん?」
「っ!」
町の門までもうすぐだったというのに、その勢いは止まる。
「出たな鉛筆戦士」
「こらこら、その言い方はいただけないなぁ。そこにいる小さな子が私のことをモンスターだって勘違いしちゃうでしょう?」
え、あれお姉ちゃんが人生を狂わせるぐらい熱狂して止まないトワ様じゃん。
思わず彼女を見つめるけど、女神かと思えるような美人の微笑み攻撃をされてしまった。
「お兄ちゃんトワ様と知り合いなの?」
「止めろ。奴の前でお兄ちゃんと呼ぶな」
小声で話し合う私達に気付いてるのかいないのか。
「ここでは鉛筆戦士じゃなくて、アーサー・ペンシルゴンって呼んでもらえるかな」
武器を手にしたペンシルゴンが殺意を向けてきた。