レベル上がらないテイマーさん 作:匿名幼女
「ふぁぁ……あれ、珍しい。瑠璃がリビングで作業してるだなんて」
「おはようお姉ちゃん。ちょっとお兄ちゃんに用があるんだけどまだゲームしてるみたいだから」
「無理やり起こして来ようか?」
「ううん。急いでないし、ここでゲーム作ってるよ」
「あっそう」
瑠美お姉ちゃんが冷蔵庫から野菜と果物、そして牛乳を取り出して、私の隣で朝食として食べ始める。
「いつも思うけどモデルとして意識高いよね。ご飯だって糖質制限して、お菓子我慢してさぁ……それって楽しいの?」
「喧嘩売ってんの?」
「ううん。私なら欲望に忠実に動いて我慢せずゲーム作るしか出来ないから」
「別に趣味に没頭したいのは同じでしょ? 私はトワ様とお仕事したい夢を叶えるために頑張ってるだけ。瑠璃だって寝る間も惜しんでゲーム作ってるでしょ? それと同じよ」
「うん。変なこと言ってごめんね。ありがとう」
「はいはい。お礼は今度一緒にショッピングね。一度姉妹コーデしてみたかったんだぁ!」
「う、うん。機会があったらネ」
「約束よ! っと、そろそろバイトの時間だし、行ってくるね~」
「イッテラッシャイ」
ご機嫌で騒がしく出ていった我が姉。
姉妹コーデとかショッピングとか言ってるけど、私の経験上これは半日コース確定かな。
引きつった顔した私に気づいてない様子のお姉ちゃんのことだから、きっとたくさん着せ替え人形にされる。よし、お兄ちゃんも巻き込もうっと。
「エネルギー……ゴハン……」
「っ────お、おはようお兄ちゃん!」
「アー……ちょっと待て……」
「うん! 待ってるね!!」
訝しげな様子の兄がエネルギー補給のためいつものライオットブラッドを一気飲みしていく。
そんな様子を見ながらも、私はどうお兄ちゃんに説明しようか迷った。
────やぁやぁお兄ちゃん! 昨夜はごめんね! お兄ちゃんを襲った夜襲のリュカオーンは私で、ユニーク関連で時々私の身体がリュカオーンになっちゃうみたいなの!
こんなこと言ったらお兄ちゃんはどんな反応するのか。
「くぁぁー!! やっぱ徹夜明けはライオットブラッドに限るわ!! んで、瑠璃はゲーム作りか?」
「う、うん。そろそろ完成しそうなやつ。出来たらお兄ちゃんにバグ調査とかお願いします」
「おう」
「あーっ……あとさ、ええとね……」
よし……よし!
覚悟は出来た。PKさせそうになったら仕返しする気合いで行け!
レッツゴーリル!!
「昨日、夜襲のリュカオーンに襲われて呪われたでしょ? あのリュカオーンって私なの」
「タイム」
お兄ちゃんが真顔になって指し示す。
それに私は頷いて、ゲーム創作を中断した。
♢
リビングの隅にて、兄妹が2人、向かい合って正座している。
「被告人の言い分は大体理解した」
「はい裁判官。判決は?」
「有罪!」
「そんなぁ」
わざとらしく偉そうな顔をするお兄ちゃん。
私のせいもあるから、ものすごく煽ってくると思ったけど、なんか優しい。
……たぶんあれかな、思わぬ情報が出たせいでまだ動揺してて、茶化してるだけかな。
「お前がリュカオーンになれるってことは分かった」
「呪いというか、ユニークのせいでね」
「時限爆弾式かつ自爆特効のな」
「どうにかしてユニーク職業とスキルを破棄したいんだけど、お兄ちゃんなんとか出来ないかな?」
難しい顔をしたお兄ちゃんが、仕方がなさそうに立ち上がる。
「ひとまずシャンフロで会うぞ。こっちもいくつか問題抱えてるんでな」
「ありがとうお兄ちゃん! お礼はパンツゲームでお返しするね!」
「なんだそのクソゲー!?」
ゲームについて問い詰められそうになったけど、お兄ちゃん初見は何も知らない方が楽しめるはずだからと秘密にしといた。たぶんパンツ投げるゲームと勘違いしてるな?
まあともかくログインしよう。
ゲームの中に入って最初に見えたのはセカンディルの宿。その一室。
お金を払って外へ出て、お兄ちゃんと落ち合う予定の路地裏へ向かう。
しかし、宿から外へ出た瞬間、町を歩いていたプレイヤー達の目が一斉に私の方へ向く。
「リルだ!」
「おいいたぞ! リュカオーンになれるわんこ幼女だ!!」
「そのわんこを捕まえろ!!」
「ふぇぇ!?」
なにこれどうなってんの!!?