我は魔王。受付嬢である   作:丸焼きどらごん

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おまけ、その1。
流れが途切れてしまうなぁと、ボツにしていた魔王とラルギーニのやりとりの一部分です。


おまけ 魔族ラルギーニは胃が痛い

 自分が襲っていたはずの港町から命からがら逃れ、どこかの草むらで気を失っていた魔族ラルギーニ。

 全身から痛みが抜け、目覚めたら夢のように美しい少女が見下ろしていたわけだが……。

 そこに突きつけられた現実は、非常に非情であった。

 

 

「我らが王の御前である」

 

 

 ラルギーニは戦慄した。

 

 見た目は幼く、美しい人間の少女だ。

 しかしそれが"魔王"であると告げられた瞬間、全身の熱が奪われ水分が枯渇したような感覚に襲われる。

 

 我らが王。そう述べたのは、魔王の側近であるフォルティマだ。

 誰よりも魔王を敬い、狂愛する彼が……戯言で口にするはずもない内容。

 

 ……つまり、それは真実である。

 

 

 

 

 

 

 

 その魔王の膝に、自分は今……頭を乗せている……?

 

 …………。

 

 

 

 

 

「ぎひぇァッ!! ああああああああああああ申し訳ございません申し訳ございません申し訳ございませんんんんんんんッ!!」

 

 

 跳ねるように起き上がり、地面に頭を擦りつけて謝罪する。

 だが、こんな事をしても腕の一本や二本は失うだろうと覚悟した。

 それほどに遥か高みに座する、魔族にとって始祖にして至高たる、崇めるべき魔の神なのだ。

 

 目通りが叶うのは層魔十五傑(そうまじゅうごけつ)と呼ばれる魔王軍の上層幹部のみ。

 側近のフォルティマさえ通常ならば魔王軍に属していない自分などが……否、たとえ属していたとしても、会うことは難しい。何しろ、魔王を除けば魔族の頂点に位置する二大巨頭の一角なのだ。

 

 

 

 

 ……だというのに、なぜ魔族と人間の戦いの最前線から遠く離れたこんな田舎で、自分は最上位の魔族二名と相対しているのだろうか……?

 

 

 

 恐ろしさで吐きそうだ。

 だが尊き御方の前でこれ以上の失態は確実な死を招く。どんなに苦しかろうが耐えねばならぬ。

 

「ま、魔王様!! ご無礼、どうか、どうかお許しを……!」

「ははっ。よい、よい。それより体は痛まぬか?」

 

 地面に頭をめり込ませる勢いで擦り付けるも、鈴の転がるような声は上機嫌である。

 さらにはこちらを気遣うような言葉までかけてくれた。

 

「は、はい! お陰様で……! この身を癒していただき、ありがとうございました。身に余る光栄でございます」

「気にするでない。それより、フォルティマがすまぬな。我の指示であったが、強者ゆえに加減が出来なかったようだ。これは我の見極めが甘かった」

「!!!! 魔王様が謝罪する必要などございません! 魔王様のご意思をくめなかったのは我が身の未熟さによるもの。このフォルティマ、いかような罰でも……」

「そのような事は望んでおらぬ。控えよ。我は今、ラルギーニと話しておる」

「~~~~! はっ。かしこまりました」

 

────魔王様が、ボクの名前を?

 

 吐きそうだった気分から一転。

 ラルギーニは脳みそが甘い蜜にどっぷり浸されたような、痺れるほどの快楽を覚えた。

 魔王様が自分ごときの名を呼び、あのフォルティマよりも優先して話をしようとしてくれている。一介の魔族の魔生において、二度とあるかないかの至福に他ならない。

 

 

 あまりの幸福に一瞬、気が緩みそうになった。

 しかし。

 

 

「ああ、そうそう。……フォルティマよ、結界は張ってあるか?」

「はい。もちろんにございます」

「そうか。ならば多少魔力を解放しても構わぬか。……前はうっかり零れて野良竜を呼び寄せてしまったからな」

「魔王様の偉大にして甘露な魔力に、魔物どもは身の程知らずにも惹かれますからね」

 

 ……ん? と、ラルギーニは本能により嫌な予感を察知する。

 

 そんなラルギーニをよそに魔王である少女はどこか気だるい仕草で「フォルティマ、椅子」と述べる。

 そしてごく自然に四つん這いとなり、その背を椅子とする二大巨頭の一角。少しの間押し黙るも、当然のように腰かける少女。

 

「ラルギーニよ。この姿の我が魔王などと、にわかには信じられまい?」

「そんなことはございませんよ!?」

 

 どこの世界に最上位魔族の背中を椅子に出来る、ただの人間の小娘が居ようか。

 ラルギーニとしてはフォルティマの言動だけで、目の前の少女が魔王であると信ずるに足る証拠である。。

 

 だが。

 

「どれ、これで証明になるか?」

「!!!!!!!!!!」

 

 瞬間、ラルギーニは自身の体がすさまじい重さで押しつぶされ、圧殺されたように感じた。息も出来ない。

 体が形を保っていることすら不思議だ。……それほどの、魔王気(プレッシャー)

 

「ぬ。やりすぎたか?」

 

 呆然自失となってしまったラルギーニの頭をぺちぺちと小さくたおやかな手が叩くが、ラルギーニが意識を取り戻したのはその数十分後であった。

 

 

 

 

 この後ラルギーニは「神々の遺産である迷宮を乗っ取り迷宮主となれ」などという難問を課され魔王直々の命令に胃を痛めながらも、魔族の歴史において一つの大きな成果をあげる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

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