我は魔王。受付嬢である   作:丸焼きどらごん

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21話 「我は魔王。初心者案内をするなどする」

 ……その後。

 ユアンは我の言いつけを守って、ギルドの営業が始まってから一番に我の受付を訪れた。

 身だしなみは整っているが、どうも猫背でもじもじしている様子が頂けない。

 

「……あの、クエストを紹介、してください……」

「すぐに来たことは褒めますが、覇気がないですね。昨日の元気はどうしたのですか?」

「え、エリーデルがあんなことするからだろー!?」

「あんなこと……ですか。ふぅん。……わかりました。不評のようなので、今後は控えます」

「控えなくてもいいけどね!?」

「お、さっそく痴話喧嘩かぁ~? お熱いねー!」

 

 ユアンがキャンキャンと噛みついてくるものだから、さっそく周りから冷やかしが飛んでくる。

 それを受けて余計に顔を赤くさせているものだから、小僧も忙しない事だ。

 

 ちなみに我に毎日求愛してくるような輩からは、ユアンに向けて突き刺さる様な視線と「なんであんなガキが……!」などといった恨み節が聞こえてくる。

 その中に我が腹心の部下の姿が混じっているように見えたのは、きっと気のせいであろう。

 

「さて、それではクエストの紹介ですね?」

「さて、で流さないで!?」

「話しが進まないでしょう。……それで、クエストの紹介なのですが。君はまずパーティーを組みなさい」

 

 言いながら、ユアンの腕をとり服の袖をまくった。

 そこには植物と種を模した紋様が腕を這うように刻まれている。

 

 

 これこそ、冒険者の証たる冒険者証である。

 正確にはこの紋様に"収納"されているのだがな。

 

 

 我がそれを人差し指と中指で二回叩くと、紋様が光りその輝きは手のひらサイズの長方形となっていく。

 完全に実体が成ってから手に取ったのは、薄い金属の板。そこには昨日登録したユアンの冒険者情報が記載されていた。

 

 

 

────────────

 

▶名前:ユアン

▶レベル:十一

▶職業:剣士(ビギナー)

階級(クラス)(シード)

等級(ランク):C

▶パーティー:無所属

 

────────────

 

 

 

 これが現在のユアンの冒険者情報……ステータスである。

 

 これからユアンは冒険者証に搭載された機能、経験値蓄積機構(レベルアップシステム)を使用し、これまで以上に成長することが出来るだろう。

 魔物を倒したりなどすれば経験値というものが入り、普通に鍛えるより遥かに早く、強くなれるのだ。

 

 だがレベル十一という数値は、機能を使用しない状態で鍛えたことを考慮すればなかなかのものだ。

 十歳という年齢を考慮すればなおさらである。

 

 冒険者でない者がレベル十を超えているなら、それは最低限魔物などと戦う力を有しているという証左に他ならない。

 戦いとは無縁の生活をしている一般市民の平均が女子供で三~八。大人の男性で十前後なので、少なくともユアンは成人男性と同等の力を有している事になる。

 まだまだ我を倒すには至らぬが、初期値としてはギリギリ合格だろう。

 

 贅沢を言えば、物足りなさはもちろんある。

 が、この一見勇者になどなれなさそうな子供を勇者に育てるのが、我の受付嬢としての腕の見せ所でもあるのでな。

 遊戯(ゲーム)は難易度が高ければ高いほど面白いのだ。

 もしユアンが勇者になれなかったとしても、この勇者育成ゲームは我の暇つぶしを大いに彩ってくれることだろう。

 

 

 

 

 ……では。

 ゲームのためにも、さっそく受付嬢としての仕事をしていくとするか。

 

 

 

「昨日は詳しい説明まで出来ませんでしたから、冒険者証についてざっくり説明しますね」

「ざっくりなんだ……」

「だって、君にはあらかじめ教えてあるでしょう。一応初心者冒険者くんに、形式として教えるのですよ。わたし達アルニラム冒険者ギルドの受付嬢は親切なので」

 

 こほんっと咳払いをする。

 冒険者登録をしたばかりの初心者に、各種説明をするのも受付嬢としての仕事なのだ。

 

 

「この冒険者証ですが、御覧の通り冒険者登録と同時に体へ刻まれる紋様を起点に収納されます。収納といっても体内ではなく、冒険者ギルドが管理する異空間に納められる形ですね」

 

 説明しつつ、ユアンの腕に刻まれた紋様の端を示す。

 

「……もし腕が千切れたりなどして、紋様が刻まれた体の部位を消失しても、ギルド側から取り出すことが可能です。これは紛失防止の意味合いとは別に、ギルドの規定を違反した方から冒険者証を没収するためのものでもあるので、くれぐれも違反にはご注意を」

 

 そう。この冒険者証なるもの、ギルドはいつでも冒険者から取り上げることが出来るのだ。

 冒険者証の更新日までにまったく仕事をしなかったり、冒険者として魔族や魔物と戦うための力を一般の人間に向けて過度に使用した場合などが違反に当たる。

 そのため盗賊などに堕ちた冒険者崩れが、継続して冒険者証を持つのは不可能だ。

 

 ちなみにこの異空間を利用した収納方法、ものすごく便利であるなぁと感心したので、魔族迷宮を作る際の術式の参考にさせてもらった。

 

 

 

「続いて階級と等級についての説明となります。ギルドでの冒険者区分は全部で十六。四つの階級(クラス)と、その中でA、B、C、Dの四つの等級(ランク)で分けられており、上位階級はハイクラスとも呼ばれますね」

 

 ぱっと見でそれらが分かり易く示されたボードを取り出す。

 

 (シード)

 花片(ペタル)

 結晶(ルミナ)

 (ステラ)

 

 この四つが三角形の中に、種を一番下として順番に記されていた。

 ハイクラスと呼ばれるのは結晶(ルミナ)(ステラ)のふたつである。

 

「君は登録したばかりなので、最下位階級のクラス(シード)からとなります。大抵最初は一番下のDからなのですが、実力が考慮されてC判定となりました。これからたくさんレベルアップとクエストの実績を重ねて、ハイクラスを目指してくださいね」

 

 ちなみに魔族単独撃退という実績をつみ、実力も申し分ないフォルティマは最初からハイクラスだ。

 この辺はギルドマスターが特例措置として登録したので、滅多にない事だが。

 

 

 これらの説明は一通り事前にしてあるが、ユアンは律儀に頷きながら聞いているようだ。 

 特に質問も無いようなので、さくさくと続けるとしよう。

 

 

 

「最後に職業と所属パーティーについての説明となります」

 

 こちらを見るギャラリーを一瞥してから、説明に入る。

 

「職業は得意とする武器や技能によって、最も適性があるものに割り振られます。こちらは積んだ実績やギルド内で受けられる試験に合格すれば変更可能ですので、ご希望の場合はお申し出ください」

 

 ちなみに職業にも階級はある。

 ビギナー、セミプロ、プロ、エキスパート、ロードの五段階だ。

 

 レベル、職業階級、冒険者階級に等級。実績。

 ……これらを考慮した上で、集まったパーティーメンバーの総合力がパーティーランクとされ、受けられるクエスト内容も変わってくる。

 

「……そしてギルドは、複数の職業による最低三人のパーティーを推奨しております。はっきりと決められてはいませんが、低ランクのうちはほぼ義務ですね。ソロ活動も出来なくはありませんが、死亡率が跳ねあがるので」

 

 ここまで説明してから、改めてこの冒険者ギルドという組織は年齢制限といい「出来るだけ冒険者のなり手の死亡率を下げた上で鍛える」「冒険者として鍛えた力が同じ人間に向かない」ための決め事が多い。

 人間とは数こそ多いが、成長が遅い上にすぐ死ぬからな。

 魔王()に届きうる人材を育てたいのであれば、最低でもこれくらいの決め事は必要なのであろう。

 

「…………さて。そういうわけですので、先ほど言ったようにユアンにはまずパーティーを組んでほしいわけですね。ここまでにご質問は?」

「えっと、大丈夫」

「ユアーン! 初めての仲間探しってんなら、俺らが冒険に連れてってやろうか~?」

「お兄さん達にまかせろ! まあ報酬から初心者介護料は貰うけどな? ひゃはは!」

「いい。自分で探す」

 

 いつものごとく古参中堅冒険者共が茶々を入れるが、酒場で飲んだくれている姿しか見たことが無いユアンはきっぱり断った。

 まあ命を預ける相手なわけだからな。知り合いである、というだけで信用は出来ぬだろう。

 

 この仲間探しだが、人脈の無い状態であればなかなかに難航する。

 その点昔からギルドで働き、知り合いの多い小僧はアドバンテージを有していると言えるが……。

 

 

 

 

 だが、悪いな。小僧、お前に選ぶ権利は無い。

 初回の冒険でユアンのパーティーとなる者は、すでに我が決めておるのだ。

 

 

 

 

「ああ、大丈夫ですよ。あなたの師匠であるフォルシスさんに組んでくださるよう、ちゃんとお願いしてあるので」

 

 

 それを聞いたユアンの酢を飲んだような顔は、非常に見ものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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