機動戦士ガンダムSEED~金色の残光~   作:マルク

1 / 7
勢いで書いてしまった。でも後悔はしていない。


紛い物

『機動戦士ガンダム』という作品はご存じだろうか。

 

昭和より始まった日本アニメ界を支えているロボットアニメの金字塔の一柱である。作中で語られる人間ドラマ、政治、社会問題、ロボデザ等々、人気の理由を挙げればキリがない。昭和を飛び越えて平成、令和にまで幅広いファン層を獲得している。

 

ただし歴史が長いという事はそれだけ色んな人間が集うというのと同義。

『ガンダム』を愛するあまり、様々な派閥が形成されていった。

 

中でも問題とされるのは『宇宙世紀』推しと『アナザー』推しの二大派閥。

 

『宇宙世紀』――初代(ファースト)から世界観が繋がっている正に元祖というべき作品だ。ファン層も子どもの頃から視聴していた高齢者や練り込まれた世界を考察する玄人が多い。

 

『アナザー』――『宇宙世紀』に固執するあまり人気が低迷下していた『ガンダム』。それを別時空の物語として作り直す事で不死鳥の如く復活させたもう一つのガンダムだ。長編物は新規層を獲得しづらい。最初から観るには時間がかかるし、子どもは大人の様に金を自由に使えない。そんな彼らが観やすいようにと改めて作られたものだ。それ故にファン層は若者が多い。

 

この二大派閥はとにかく仲が悪い。

 

宇宙世紀推しはアナザー推しをにわか好きと罵り、アナザー推しは宇宙世紀推しを老害と罵る。両者には決して超えられない深い溝ができていた。

 

 

 

 

「クソッ! これだから老害は嫌なんだよ!!」

 

暗い夜道を1人の男が歩いている。

ガンダム好きのネトゲ仲間とのオフ会帰りだった。普通なら隠れオタクの解放空間として至高のひと時を過ごせる筈だったのだが、参加者の1人のせいで全て台無しにされてしまった。

 

『やっぱ至高は宇宙世紀だよな。アナザーなんてガンダムの看板外せばただの凡作。他人の褌で相撲を取るなんて、恥ずかしくないのかねぇ。やってることは泥棒じゃん』

 

酒が回っているとはいえ、言ってはならない発言に場が凍り付く。その後も延々とアナザー叩きが続くのを黙ってられず、男も反論した。

 

『はっ、公式や御大がアナザーを容認してんだから文句言ってんじゃねーよ。そもそもアナザーのおかげで延命できてる身でよくそんな台詞吐けるな。流石はご老体、若者の功績が自分に献上されるのは当然ってわけ? まるで乞食じゃねーか』

 

そこからは修羅場だ。

日頃の鬱憤もあったのだろう。同朋は宇宙世紀推しとアナザー推しに真っ二つに分かれ、大乱闘が始まった。最後は店側に修繕費を渡し更に出禁をくらい、一部始終を撮られていた外野に拡散されてガンダム好き(ガノタ)の社会的地位を大きく損ねる事となった。

 

「イテテッ、現実世界(リアル)ですらこれだもんなぁ。向こうの世界が延々と戦争続けるのも分かる気がするよ」

 

男はどちらかと言うと中立、悪く言えば雑食だ。ガンダム作品ならほぼ全て好きと言いきれる自分こそがにわか(・・・)だろう。それでも今回アナザーに肩入れしたのは、片方が一方的に貶すのが気に入らないからだ。見苦しい事この上ない。

どんな物事にも長所と短所があるのは当然。欠点を直せと言うべきだろうが、すぐにできる訳が無い。短所を理解して周りが互いにフォローし合えば良いのに、何故か人間はそれをしない。

 

「はぁ、せっかく楽しかったのに台無しにしやがって…」

 

20年ぶりに復活したという事で話題になった映画『ガンダムSEEDFREEDAM』。

これを口実に開かれたオフ会なのに中々映画の様に大団円にはならないものだ。

 

痛む体を引き摺りながら帰宅し床につく。明日の仕事に備えようと男は深い眠りについたのだった。

 

 

『臨時ニュースです。本日深夜●時に隕石が一軒家に墜落しました。被害者は●●●●さん●●歳。病院に運ばれましたが、即死とのことです。繰り返します——』

 

 

 

 

C.E.(コズミック・イラ)71年、資源衛星『ヘリオポリス』内部は混乱の渦に陥っていた。中立国オーブのコロニーだから戦争に巻き込まれるわけがない。大半の住人はそう信じて疑わなかった。戦争なんて何処か遠くの国で見知らぬ誰かが戦って、いつの間にか終わってしまう。そんな一生縁のないものだと思っていた。しかし現実は違った。今も爆音と悲鳴が飛び交う光景が彼らの甘い考えを文字通り吹き飛ばす。

 

「ああもう、何処にあるんだよ! 早く見つけないと!!」

 

戦火の中を金色の三つ編みを上下に揺らしながら少女が駆け抜ける。手元の端末と周囲の建物を見比べて進んでいく。瓦礫の山と化した中では端末の地図が役に立たない。少女は殆ど勘を頼りに目的の物を探していた。

 

(姫はシェルター、主人公はガンダム――ストライクに乗った。ここまでは原作通りだけど。クソッ! あんな任務受けなきゃ良かった!)

 

ある日、少女はやんごとなき方から呼び出しを受け、秘密任務を言い渡された。立場上断る事も出来ず、任務内容からしても確かに自身が最適と判断したので引き受けたのだが、絶賛後悔中である。

 

「そこっ!」

 

拾った銃で殺気がある方へ撃ち込む。それと同時に襲撃者の敵兵(ザフト)が倒れ伏す。もう何度目か分からない。このまま任務失敗かと思いきや、戦闘による振動で建物が崩れ、壁に隠された秘密通路が現れた。制限時間的にこれがラストチャンスだろう。

 

少女はこの世界『ガンダムSEED』に送り込んだであろう転生神に祈りながら全力疾走する。そして開けた空間に出て、遂に目当ての物を発見した。

 

リフトトレーラーに安置された機動兵器『MS』(モビルスーツ)である。

この機体のデータを抽出し、破壊すれば後は逃げるだけだが――

 

「っ!? また揺れた。苦戦してるのか?」

 

自分という異物が混入してしまって、原作通りにいくかは予測できない。今から空きのあるシェルターを探すのも現実的ではない。

 

目の前の機体を見つめ、一瞬逡巡した後に少女は覚悟を決める。機体のコクピットを開き、勢いよく乗り込んだ。

 

「マニュアルが確かこの辺りに…あった!」

 

シートの後部から紙製のマニュアルを引っ張り出して膝上で開く。

 

「頼む、動いてくれよ」

 

マニュアルに従って機体の主電源を入れると、願いが通じたようでモニターが発光してOSが立ち上がる。

 

「…良い子だ。さぁて、私もお前も〝紛い物″。だからと言ってムザムザやられたくはないだろう。紛い物にも意地があると世界に見せてやろう! ミラベル・クローバー、プロトアカツキ改め『百式』出るぞ!!」

 

宇宙世紀においてガンダムはただの兵器名ではない。ある者が言うにはそれは反骨精神の塊だ。

誰よりも力を与えられたからこそ、誰よりも茨の道を突き進む。そして主人公が乗り込む事で数多の伝説を生み出していった。

 

その二つ名を継ぐ事が叶わなかった黄金のMSがアナザーの世界で産声を上げる。

 

 




SEEDを観てたらアカツキの原型機っていなかったのかなとか考えたので書いてみました。百式を選んだのはアカツキの下位互換だったからです。
動力源はC.E.製としてバッテリー式としてます。

一応作者としては宇宙世紀もアナザーも大好きです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。