機動戦士ガンダムSEED~金色の残光~   作:マルク

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黄金の巨人

 

 

「っ!? まずい、バッテリーがもう!!」

 

中立国という肩書を利用して、地球連合軍が秘密裡に開発した新型MSの一つ『ストライク』のコクピット内で少年『キラ・ヤマト』は焦っていた。

ついさっきまで何気ない日常を過ごしていたというのに、暴風の様に変化する状況にキラの脳内処理は限界だ。

突然始まった銃撃戦、生き別れた親友との再会、そして無我夢中で乗り込んだMSで戦争に参加してしまった自分。

 

夢なら覚めてくれ。

 

そう願わずにはいられなかった。

ザフトのMS『ジン』を運良く撃退に成功して安堵したのも束の間、すぐさま新手のジンが復讐に来た。先の戦闘で対装甲コンバットナイフ(アーマーシュナイダー)消失(ロスト)、機体を動かすバッテリー残量も僅か。キラは唯一残された武装の75mm頭部バルカン(イーゲルシュテルン)で迎撃しようとする。

 

「当たれぇええ!!」

 

必死に狙いをつけるものの敵はプロの軍人。素人の銃撃など当たる筈がない。打開策を見つけられないまま時が過ぎ、とうとう弾も尽きてしまう。そしてそれを確認したジンが腰の重斬刀を抜き放つ。

 

やられる。

 

そう覚悟したキラだが、戦場にけたたましく鳴り響く警告音に意識を逸らす。物資搬入用の昇降エレベーターが稼働して地下から何かがせり上がろうとしていた。

 

「…金色の…MS?」

 

ストライクとジンの間に割って入った黄金色に輝く謎のMS。その自己主張の強い機体色にはジン側のパイロットも戸惑っているようで硬直していた。敵か味方か判別できない両者に応えるかのように金色のMSは動き出す。

 

一歩一歩足を進めていくが、その緩慢な挙動はジン以下――つまりあれは連合製のMSでパイロットはナチュラルだという事が分かる。

 

「危ない! 逃げて!!」

 

標的を金色のMSに変えたジンが76mm重突撃機銃を斉射する。しかし金色のMSは背部にある翼状のスラスターを吹かして軽やかに回避した。どうやら機動力はかなり高いらしい。弾の無駄と考えたのか、ジンは近接戦に切り替えて飛び掛かる。

 

「凄い…」

 

貧弱なOSではまともに動けない筈なのに金色のMSは持ち前の機動力を駆使し、紙一重で重斬刀を躱していく。超スピードで振り切るのではない。〝見切り″と言えば良いのか、敵の動きを予測して動いているようだ。必要最小限の動きで躱す姿はパイロットの戦闘技術の高さを如実に現わしていた。

 

そして何度目になるか分からない一撃を前に、今度は金色のMSが攻撃に移る。迫りくるジンに自分から距離を詰め、剣を持つ腕を内側に弾く。態勢を崩されてフラついたジンの頭部を掴み大地に叩きつけた。

 

その動きにキラは空いた口が塞がらない。全長20m近い巨人が格闘技――恐らく柔術(・・)の動きを披露したのだ。確かに人の姿を模しているとはいえ、操縦桿とフットペダルでそれを実現できる者が世界に何人いるだろうか。

 

呆然とするキラには脇目も振らず、金色のMSはジンの腹部――コクピットに筒のようなものを向ける。そして数秒の時間を置いてハッチが開き、ジンのパイロットが両手を挙げて出てきた。二十歳前後のまだ若い男性である。

 

「投降? そうか、接触回線で呼びかけたのか!? ハァ、良かった…」

 

さっきまで殺し合っていた相手とはいえ、やはり人が死ぬのは嫌だ。改めてキラは戦争に忌避感を、軍人(ザフト)となった親友に寂寥感を募らせるのだった。

 

 

 

「フィ〜、なんとかなった」

 

近隣に敵がいない事を確認し、百式のシート上でミラベルは力を抜く。OSを高速で書き換えるというトンデモ技術がないので已む無く貧弱OSのまま戦闘したのだが、かなりの戦果に安堵する。

 

「MSの性能の差が戦力の決定的差ではないって言うけどさ。実践した身としちゃ、やっぱり性能って大事だわ」

 

機体の軽さ、翼状スラスター(フレシキルバインダー)の機動力、地上戦という様々な点が幸いした。いずれかが欠けていたら結果は逆だっただろう。

 

「それにジンが殆ど無傷で手に入ったのは有り難い。百式の修理用(ジャンク)パーツとして活用させてもらおう。規格が合うかは知らんがな…」

 

これからの戦いを考えてミラベルは撃墜ではなく鹵獲を選択した。ビームサーベルの使用を控えたのもバッテリー節約の為だ。今は(・・)ただの少年でしかないキラの眼前でミンチより酷い死体を作りたくなかったというのもある。

 

「さて、そろそろ表のザフトを安心させてやろうかね」

 

女、しかも子どもに負けたなんてどんな顔するか楽しみで仕方ない。ミラベルはニヤニヤしながらハッチを開き、自身の正体を知らしめる。

 

「よう、勇敢なるザフトの軍人さん。気分はどうだい? もっと優しく押し倒してやれば良かったか?」

 

「…見て分かれよ。最悪だ。こんな性悪なクソガキに負けるなんてな」

 

予想通りの反応にミラベルは満足し、笑みを深める。

 

「これからはたかが(・・・)と他人を見下さないよう気をつけるこった。いざ負けた時が辛いぞ。評価が裏返って自分に向かうからな」

 

「チッ! ご高説どーも。だがな、こうやって見下されながら言われても説得力ねーんだよ! 他人に説教したいなら鏡見て出直して来い!!」

 

自分の立場を弁えず吠える男の姿に、ミラベルはますます口角を上げる。ミラベルの気分次第で命運が決まるというのに、媚びを売らないどころか反撃するという愚者。その在り方は歴代主人公達を彷彿とさせたからだ。自身の痛いところを突かれもしたが、男への敬意がそれを上回る。

 

「ああ、一応名乗っとくか。私はミラベル。ミラベル・クローバー。軍人さんは何て呼べばいいんだ?」

 

「…ミゲル。ミゲル・アイマンだ」

 

射殺さんという意志が込められた強い瞳。それに喜びの感情が湧き上がるのを隠しながら、ミラベルは彼の四肢を拘束していった。

 

 

 

 

 

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