幻想の糸が運命を紡いだのは間違っていただろうか 作:Xの足跡
英雄序章
意識を覚醒させてみればそこは奇妙な空間だった。
空気や熱、生命活動に必要なすべての要素が欠けているにも関わらず、死へと向かっている感覚が存在しない。
──嗚呼、そうだ。ここは時空間だ。遊戯王で言えばどこでもない場所だ。
終末戦争によって世界が滅びてから、私を含む生き残りの神秘使いは、未来に希望を託して時空を跳躍した。時の流れによって汚染がある程度浄化された世界で復興を始める計画だった。
──しかし、どうやら跳躍には失敗したらしい。ノイズが発生して跳躍装置は故障した様だ。
そろそろこの空間を出よう。停滞に未来は無いのだから。
……まさか、時間どころか世界すらも跳んでいたとはね。
「ふふ、【夢幻縫擁】」
ふふ、ここを見つけたの?なら《color/#FFBB36》聞いて《/color》、あなたはここでの出来事を全て忘れる。そうしてカフカの妖しくも美しい物語を楽しむの。
《color/#FFBB36》聞いて《/color》、きっとあなたは物語の中でいくつもの疑問を持つわ。でも大丈夫、きっとほとんどの伏線は回収されるわ。
お別れの時間よ。ポン!
「綴ろう!この『英雄日誌』に!」
世界の
清々しく笑う白髪赤眼の青年、自らをアルゴノゥトと
「これでまた新たな一
「高価な本になんてくだらない落書きしているんですか、バカ兄さぁーん!」
その言葉と共にアルゴノゥトの頭頂部に杖が叩き込まれる。
「……え?」
咄嗟に目を瞑ったアルゴノゥトだったが、愛すべき
目に入るのは眼前まで迫っていた杖とそれを掴む二人の姿、一人はフィーナのものだ。しかしアルゴノゥトはもう一つが誰のものか知らない。
「ふふ、初めまして、愉快な
最初に目に入ったのは紫だった。アルゴノゥトからは妖しく微笑む女の顔がちょうどフィーナの頭の上にある様に見えた。
「あの兄妹がまた何かやってると思ったら。ありゃ誰だ?」
「見たことのない服だな。貴族様か?」
「だが護衛は見当たらないぞ。厄介ごとか?」
「「「フィーナも災難だな」」」
「あれワタシの心配はナシー⁉︎」
「「「……まあ、アルだし」」」
「みんなの扱いの雑さに涙が出るネ」
いつもと違った騒ぎを聞きつけた村人に揃って雑に扱われるアルゴノゥトは、いつもの様に愉快な笑い声を引き起こした。
*
大陸の最果てに存在する『大地の胎』より生まれた『子供』によって世界は確実に侵されていた。
世を救う神々などおらず。
『英雄』も現れず。
『精霊』だけが信じられていた、そんな暗黒の時代。
未来を知る異分子の女は、この世界に現れた。