幻想の糸が運命を紡いだのは間違っていただろうか   作:Xの足跡

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英雄閑話

 人類最後の楽園『王都ラクリオス』、その城壁のもとで女は赤い糸を片手に門衛達と()()していた。

 

「入都料にこれを使いたいのだけれど、これがどういうものか聞いてくれるかしら。きっと欲しくなると思うわ」

「これは私の魔法で作った糸で人と人を結びつける力があるの」

「使い方は簡単よ。結びつけたい人のそれぞれの小指を糸で繋ぐだけ。そうすれば運命に導かれるように繋がれた人同士は惹かれ合うわ」

()()()()()()()()()()()()()()一つしか作ってないの。それで、私は誰にこの糸を渡せばいいのかしら?」

 

 この世界、この時代において国家間の貿易は絶え絶えとなり、貨幣経済はほぼ機能していない。

 逆に言えば僅かに機能している部分は存在する。その最たる例が『王都ラクリオス』のように城壁などで囲まれた空間、一つの共同体(コミュニティ)内であれば確実に機能する。

 故に、彼女は魔法で作った『運命の赤い糸(仮)』をほぼ言い値で()()()()

 大量の金貨を手に、彼女は街の散策を始めたのだった。

 

 

 

「兄さん、あの噴水の前で演奏している人、カフカさんじゃないですか?」

 

『英雄』となるべく『王都』を訪れたアルゴノゥトとフィーナは()()にもバイオリンを演奏している女と遭遇した。

(不思議な人)と、フィーナは思った。彼女と関わったのはあの日、アルゴノゥトが風車をズタボロにした日のたった一回の会話のみ、だと言うのに、魔法でもかけられたかの様にその時の印象が頭から離れない。

 

「………………」

「……兄さん?どうしたんですか?またですか?またクズなことを考えているんですか?」

 

 アルゴノゥトは口を開かず静かに演奏を聴いていた。

 やがて演奏が終わるとアルゴノゥトは女の元へと走り寄りようやく口を開いた。

 

「カフカ!カフカじゃないか!こんな所で出会うとは、これは()()か、はたまた何かの()()か!」

 

「あら、また会ったわね。アルゴノゥト、そしてフィーナ、私に何か用かしら?」

 

──ほぼ無限の時間、ほぼ無限の空間の中で、私たちは同時に同じ場所にいる。『運命』とはこういうことよ。奇跡を想像しながらも、きみにそれが偶然だと思わせるの。

 

 かつてカフカ(オリジナル)が口にした言葉が脳裏をよぎったカフカ()は、いつもの様に妖しい笑みを浮かべながら応えた。

 

「先ほどは実に素晴らしい演奏だった──」

 

 アルゴノゥトは真面目にカフカの演奏を褒めた。しかしカフカもフィーナも知っている。このアルゴノゥト(道化)の真面目な雰囲気は長続きしないことを。

 

「──それはそうとしてレディ、こうしてここで出会えたのも何かの縁!いや運命!どうでしょう、一緒に昼食でも──」

 

「ええ、いいわよ」

 

「……に、兄さんのナンパが成功するなんて!」

 

 フィーナが驚愕と共にそう叫んだ。

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