幻想の糸が運命を紡いだのは間違っていただろうか   作:Xの足跡

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リュールゥとの会話はカァット!


英雄開幕

「それでは、『英雄選定』の儀を始める!」

 

 城の分厚い門扉が音を立てて閉じられた。

 重厚な鎧に身を包んだ騎士長の男は、中庭に並ぶ戦士達の迫力に怯みもせず、始まりの金となる号令をかけた。

 

「もはや今、この『楽園』たる『王都』にも魔物や蛮族どもの魔の手が迫っている!我々が求めるのは勇士のみ!よって、今より力を示してもらう!」

 

 上等だ!

 やってやろうじゃねえか!

 そんな野次にも似た雄叫びが轟く中、騎士長の男は何も知らされてない『英雄候補』達に向けて次の言葉を投げかけた。

 

「己以外の者、全てを蹴散らせ!戦いの果てに、この中庭に立っていた十名を『英雄候補』と認める!」

 

 途端、『英雄候補』達が殺気を帯びる。一人だけは愉悦を帯びていた。

 隣に立つ者を、目の前で背の(さや)から剣を引き抜く者を()めつけ、自らも得物へと手にかけた。

 

「武器、魔法、戦術!手段は何も問わない!戦士ならば武をもって、賢人ならば智をもってくぐり抜けたし!」

「命を奪う攻撃は禁止、この中庭の外に出るのも禁止、また私の()()の合図よりも先に攻撃を行うこと、魔法の詠唱をする事も禁止とする!そして、これらを破った者は失格とし、『英雄候補』の資格を剥奪する!」

 

 こうしている間にも戦意は張り詰めていく。カフカは糸を張り巡らせている。

 嗚呼しかし、既に大半の『英雄候補』は蜘蛛の巣に囚われた哀れな虫だ。

 

 灰髪の誇り高き狼人(ウェアウルフ)は静かに鉤爪を身に着けた。が、嗅覚が嗅ぎ取った

悪い匂いを信じて場を離れた。

 髭を蓄えた土の民(ドワーフ)の戦士が丸太のごとく太い首に手を添え、音を鳴らした。そして、ウネウネと自分に近づき腕の剛毛に絡まっていた不審な糸を切り落とした。

 恐ろしいほど美しい女戦士(アマゾネス)は無言のまま、構えすら取らなかった。カフカの糸は彼女を避けた。

 最後に妖精(エルフ)の吟遊詩人は両目を閉じ、唇には笑みを添え、竪琴(リラ)に指を這わせた。

 ……糸が一本多かった。不自然な位置にあるその糸を取り払い、近くの只人(ヒューマン)に押し付けた。

 さて、既に蜘蛛の巣の罠が仕掛けられており、その罠の起動装置を手にしていると知らぬ騎士長は、大声とともにそれを起動させた。

 

「玉座より見守られている王に、相応しき勇姿を見せるのだ!それでは、始めええええェェェェェ‼︎」

 

 宣言がなされると同時、打ち上がるはずだった裂帛の咆哮の代わりに紫電が駆けた。

 哀れ、カフカの糸に気がつけなかった『英雄候補』は皆同時に揃えて得物を抜いた。アルゴノゥトが取り出したのはノートとペンだった。

 

「に、兄さーん⁉︎」

「……!!!」

 

 フィーナは叫んだ。だってアルゴノゥトが自分を無視して駆け出したのだから。

 女戦士達(アマゾネス)は逃げた。だって500を超える数の『英雄候補』達が、相打ち覚悟で女戦士にだけ狙いを定めて迫ってくるのだから。

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