大学生探偵福来あざみ   作:あざジャス派の猫

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幽霊船殺人事件5

 推理を説明して、毛利さんの無罪が証明されて拘束が解かれた。

 だが、まだ事件が解決したわけではない。

 

 上原さんを新たな容疑者として、島民たちで彼が宿泊している旅館を取り囲む。

 けれど駐在さんが及び腰になってしまい、なかなか説得や突入ができないでいた。

 

 そこで山下さんが名乗りを上げて、旅館の中に入っていく。

 少ししたら銃声が聞こえて、おまけに上原さんが逃げ出してしまう。

 

 もう踏んだり蹴ったりだが、何も得るものがなかったわけではない。

 

 私たちが慌てて中に入ると、木下さんが腕を押さえて倒れていたのだ。

 銃弾が掠めたのか痕跡が残っていたのだが、同時に服も焦げて怪我をしていた。

 

(至近距離で発砲しないと、こんな痕は残らないはずなのに)

 

 これではまるで、木下さんが自分で自分を撃ったようだ。

 腕に銃を押しつけて引き金を引かないとこうはならないし、可能性が一番高いのがそれだった。

 

 しかし推理はできても、まだ情報が足りずに確証には至らない。

 だからといって無視はできないので、相棒に声をかける。

 

「ジャスミンさん。ちょっと」

「あざみー、どしたん?」

 

 彼女は注意深く周囲に目を光らせていたが、私に手招きで呼ばれて近づいてくる。

 

 そして何気に付き合いが長いので、全てを話さなくても言いたいことは大体わかるようだ。

 内密な話があると思ったのか、自然な動きで耳を近づける。

 

「ここに来て上原さんだけでなく、木下さんも容疑者になりました。

 さらに拳銃を所持している可能性がありますので、注意してください」

「あちゃー、それは穏やかじゃないなー。

 あざみーの推理って、良く当たるんだよなあ」

 

 ジャスミンさんは心底困った顔をして冷や汗をかいているが、一応は承諾してくれた。

 

 彼女だけでなく私も困っている。

 どうしたものやらとコナン君に顔を向けると、こっそり聞いていたのか彼は静かに頷く。

 

(コナン君は何が言いたいの? ボクに任せて?

 それとも、あざみお姉さんなら大丈夫?)

 

 何となくこの二択じゃないかと思った。

 なおコナン君から見た私の評価は、異常に高い、

 

 多分、私ならスムーズに解決できると考えているのだろう。

 心の中でいやいや無理無理と半泣きになるが、ジタバタしても事態は好転しない。

 

 それに私は成り行きで探偵をしているだけの女子大生で、ジャスミンさんも表向きは警察ではなく助手である。

 

 事情聴取や逮捕の権限はあっても、行使すると後々面倒な手続きをしないといけない。

 隠蔽工作も大変だし、超法規的措置は気軽にできるものではないのだ。

 

 なので島の外から警察の増援が到着するまで、注意しつつも一旦保留することにした。

 

 

 

 その後、上原さんの捜索が行われることになる。

 私は彼が行きそうな場所に心当たりがあるし、鈴ちゃんの約束も果たさなければいけない。

 

 なので毛利さんや駐在さんに、少し出かけることを告げる。

 他にも陸が怖いなら海から水軍の洞窟を調べてくださいと、さり気なく指示を出しておいた。

 

 その後、ジャスミンさんと一緒に山の奥に入っていくのだった。

 

 

 

 バレると十中八九止められるので、島民を避けて移動する。

 しかし目的地までのルートはあっちもこっちも封鎖されていて、なかなか辿り着けない。

 

 一度山の入口に戻って別ルートを探すことになるが、そのとき茂みから二人の子供がひょっこり姿を見せる。

 

 言うまでもなくコナン君と鈴ちゃんだ。

 

「あざみお姉さん、水軍の洞窟に行きたいんでしょう?

 抜け道、知ってんだけどなー」

「お願い! ボクたちも連れてってよ!」

 

 本来なら断るところだが、そうしたら私たちのことを島民に話しそうだ。

 これ以上、事態をややこしくされたくない。

 

 どうしたものかとジャスミンさんに視線を向けた。

 彼女は何も答えないが、私に任せると言いたげな顔をしている。

 

 まあこういう場合の行動方針は、基本的に自分が決めているので今さらでもあった。

 

「わかったよ。じゃあ、水軍の洞窟に案内して。

 でも、危険なことはしちゃ駄目だし、ちゃんと指示には従うこと」

「うん! 任せて!」

「やったー! ありがとう!」

 

 二人に約束してもらったが、何処まで有効かは知らない。

 でも、報連相をきっちりしない理由にはならない。

 

 とにかく鈴ちゃんが知っている抜け道を通って、無事に水軍の洞窟に辿り着くのだった。

 

 

 

 祟りを恐れてか洞窟の入口には小さな祠があり、立入禁止のしめ縄が引かれている。

 私たちはそれを両手で持ち上げ、下を潜り抜けて洞窟内に入っていく。

 

 洞窟の壁の穴にはロウソクが立てられていて明るいので、歩くのには不自由はしない。

 さらに奥にも水軍様の祠があり、殺された浜田さんがここの世話をしていたのだと、鈴ちゃんが教えてくれた。

 

 だがその時、強い風が吹き抜けて不気味な音が響き渡る。

 

「きゃあっ! 水軍様が怒ってる!」

「これは水軍の怒りの声じゃなくて、隙間風が洞窟で共鳴しているだけですね。

 そして行き止まりのはずなのに、風が吹き抜けているのは不自然ですし──」

 

 ジャスミンさんに目配せすると、ここまで言えば彼女もわかったようだ。

 

 水軍様の祠に近づいて横に押すと、ズズズという音が聞こえてズレていく。

 奥に隠されていた階段が現れた。

 

「下に続いてますね。上原さんはこの先かも」

 

 ここからはジャスミンさんが先頭、二番目に私で、最後がコナン君と鈴さんという並び順だ。

 いくら体力に自信がなくても、一応は女子大生である。

 子供よりも前に出るのが普通だ。

 

「あっ!?」

「嘘だろ!?」

 

 しかし残念ながら階段が途中で崩れてしまい、そのまま下まで転がっていく。

 咄嗟に頭を押さえて身を守るが、体中が凄く痛い。

 

 それでも、どうやら全員無事なようだ。

 痛みに耐えながら身を起こすと、目の前には驚愕の表情で私たちを見ている上原さんがいた。

 

 やっぱり水軍の洞窟に逃げ込んでいたかと、自分の推理が当たっていたことにホッとする。

 

 けれど自分の考えが合っていたということは、もしかしたらもう一人の容疑者も当たっているかも知れない。

 

「ふふふ、ここを知られた以上、今さら隠しておく必要もないか」

 

 そんなことを考えていると、後ろから木下さんの声が聞こえてきた。

 私たちが振り返ると、彼は拳銃を持ってこちらに狙いを定めていた。

 

「やはり貴方の仕業だったんですね。木下さん」

「おや? 驚かないのですね」

「ええ、貴方のことは疑っていたので」

 

 とにかく隙を作るために、時間を稼がないといけない。

 私は山下さんを疑うキッカケや、自分の推理を順番に話していく。

 

 上原さんのことは居ないものとして扱っているが、この危機的状況を彼に何とかできるとは思えない。

 悲しいけれど、残当である。

 

 私が一通り話し終えると、木下さんが冥土の土産とばかりに自白を始めた。

 さらには鈴さんが、彼が役場のお金を使い込んだことを暴露する。

 七年前の行方不明事件や龍神丸の隠し場所など、今までの答え合わせを行う。

 

「そしてこの洞窟に隠れた上原さんと、たまたま迷い込んだ私たちを、口封じに殺そうというわけですね?」

「そう言うことだ! さあ、お喋りは終わりだ!

 お前たちがここに転がっていても、誰も見つけられやしない! 永遠にね!」

 

 木下さんは拳銃を構えたまま、少しずつ後ろに下がっていく。

 万が一にも私たちから反撃されるのを恐れて、安全な距離から一方的に撃ち殺す気なのだ。

 

「ところで、金塊は見つかりましたか?」

「どうせここの何処かに埋まっている! 騒ぎが収まってから、ゆっくりと探すよ!」

 

 彼の答えを聞いた私は、肩を竦めてやれやれと大きく息を吐く。

 

「その程度の頭では、百年かかっても見つかりそうにありませんね」

「何だと!」

「まだわかりませんか?」

「わかったのか!? お前に!」

「ええ! 貴方の足元ですよ!」

 

 木下さんは慌てて足元に顔を向けて、私たちから視線が外れる。

 その瞬間を見逃さず、ジャスミンさんが隠し持っていた拳銃を取り出して構えた。

 続いて、正確に彼が持つ武器を撃ち落とす。

 

 次にコナン君が足元の金塊を勢いよく蹴って、木下さんの腹部にクリーンヒットさせた。

 

 別に示し合わせたわけではないが、見事な連携攻撃だ。

 当然、直撃を受けた彼は吹き飛ばされて、地面を転がり完全に伸びてしまう。

 

「あー怖かったー。寿命が縮んだよ」

「何はともあれ、これにて一件落着だな。

 まっ、そこの上原さんにも、色々聞きたいことはあるが」

 

 今まで蚊帳の外だった上原さんが青い顔をして身を震わせる。

 何にせよ、あとは警察の仕事で私たちはお役御免だ。

 

 だが、そう上手くはいかないようで、そのあとに大きな地震が起きて洞窟が崩れてきた。

 

 名残惜しいが金塊は捨て置くしかない。

 命あっての物種で、浮きや木の板を使い、さらに気絶した山下さんを担いで海に飛び込み、全員で急いで脱出した。

 

 

 

 なお海から洞窟を探索するための漁船がちょうど通りかかって、私たちは全員救助されたので、真犯人以外は大きな怪我もなく無事である。

 

 十億円の金塊を掘り出すのに十億以上の大金が必要になるので、ずっと埋まったままだろうが、それはそれだ。

 

 色々あったが幽霊船殺人事件は解決したから、私とジャスミンさんは休暇を終えて本土に帰るのだった。

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