大学生探偵福来あざみ 作:あざジャス派の猫
大学時代の友人から、怪盗1412号を捕まえて欲しいと依頼された。
他いつ終わるかもわからない仕事の山から離れて、たまには外出して気分転換したかったのも理由の一つで、他には日本では怪盗キッドと呼ばれている人物が、少し気になったのもある。
前世では同じ作者だったはずだ。
もし彼が本物なら、主人公キャラがまた増えたことになる。
まさかヤイバまで混じってることはないだろうけど、自分はキッドに関しては名前しか聞いたことがない。
正直、インドア派の自分では怪盗とのバトルは無理だ。
綾子先輩の力になれるかは怪しいが、それでも猫の手ぐらいにはなれたら良いなと思っている。
ルパン一味の逮捕協力を求められたときも、離れた場所から助言や指示を出しているだけだったし、最終的には捕まえても刑務所から脱獄してしまった。
むしろ彼らを利用したり、されたりするのも多々ある。
一先ず暗号文のコピーを送ってもらい、家族には泊まりになりそうなのでしばらく留守にすることを伝えて外出の準備をする。
やがて3月31日になったので、ジャスミンさんに車を出してもらう。
その足で米花博物館に向かったのだった。
博物館に到着すると、既に大勢の警察官や車両が周囲を固めて厳重に警備していた。
窓を開けてジャスミンさんが手帳を見せると、ビシッと敬礼してすんなり通してくれる。
そのまま建物の近くに車を止め、扉を開けて外に出た。
警備員の視線が一斉にこちらに向けられ、否応なしに緊張してしまう。
私は表面上は平静を装いつつ、警備ご苦労さまですと微笑みながら軽く頭を下げて、眠そうに欠伸をしているジャスミンさんと一緒に博物館に入っていく。
「あれ? コナン君?」
「あざみお姉さん?」
それに毛利さんと蘭さんも居たので、私は軽く挨拶をする。
「私は綾子先輩に依頼されたの」
「ボクたちは園子お姉さんだよ!」
両者とも鈴木財閥のご令嬢なので、依頼がかぶることもあるだろう。
探偵が一人ではなく二人居ても、打ち合わせさえしっかりすれば別に困りはしない。
「毛利探偵、福来探偵、ようこそおいでくださりました。
このたびは娘たちのワガママを聞いていただき、ありがとうございます」
そう言って手を差し伸べてきたので、毛利さんと私は握手をする。
「名探偵の貴方たちに来ていただければ、百人力。期待していますよ」
「なあに、たかがこそ泥一匹! この私が簡単にお縄にしてみせましょう!」
「少しでもご助力できるように、頑張ります」
綾子先輩は忙しいのでこの場には居ないが、携帯電話で少し話したので問題はない。
そして毛利さんと違ってあまり自信がない私は、やるだけやってみるという控えめな態度なのだった。
私たちは、怪盗キッドが狙っているらしいブラックスターを見せてもらった。
見た目は、大きな黒真珠がついたネックレスだ。
宝石の良し悪しはわからないけど、高価そうとは思う。
それ以外に気になったのは、やけに厳重な警備なことだ。
理由を尋ねると予告状から読み取れたのは日付のみで、いつ何処から怪盗が来るかわからないので、今晩から24時間体制で警備を行うらしい。
そして
私が窓の外の景色を眺めながら、警察も大変だと呑気に思っていると、コナン君がスカートの端をちょいちょいと引っ張る。
「ねえねえ、あざみお姉さん」
「何? コナン君?」
「あざみお姉さんは、暗号は解けたの?」
「暗号? うん、解けたよ?」
念視を使えば重要な文字は浮き出て見えるので、さらに詳しく調べればやがて答えを導き出せる。
そのために必要な時間は、長かったりと短かったりと安定はしない。
中身が一般人の私でも根気強く考えれば真実に辿り着けるのは、本当にありがたかった。
「ええっ!? とっ、解けたの!?」
「うん、車で移動中に暗号のコピーを見せてもらってね。解けたのは、たった今だけど」
「そっ、そんな短い時間で!? こっこれが名探偵の実力か!」
「おっおい、今、暗号を解読したと聞こえたが!」
私とコナン君の会話は、
怖い顔をして詰め寄ってくるので、ヒエッと声を漏らして後ずさってしまう。
だが別に隠すことはないし、丁寧に説明していく。
人工衛星が月に遮られてBS放送が途切れる時間に、位置は博物館南西に位置するハイドシティホテルの屋上から、彼がやって来ることをだ。
「確かに、そう言われれば辻褄が合う!」
「これは福来探偵に一本取られましたな!」
「いえ、まだ暗号を解読しただけで、怪盗キッドを捕まえたわけではないので」
本当の勝負はこれからで、まだお互いがスタートラインに立っただけだ。
「でもあまり警備を固めると、怪盗キッドが盗むのを諦めちゃうんじゃない?」
そこでコナン君がハッと気づき、当たり前のことを口にする。
「むうっ、確かに、ブラックスターの周囲だけではなく、侵入ルートも固められては、いくら怪盗キッドでも諦めて逃げ出すのが道理か」
警備体制の調整は私の仕事ではないので、その辺りは警察機関に任せる。
自分は取りあえず綾子先輩の依頼の一つ、暗号文の解読を終えた。
あとは怪盗キッドが現れるまで、のんびり待たせてもらうことにしたのだった。
怪盗キッドがハイドシティホテルに現れるか否かはともかく、警官は客や従業員に変装して四六時中見張っていた。
だが時間になっても、特に怪しい動きはないようだ。
ちなみに私は、体力に自信がないので現地には行かない。
米花博物館のスタッフルームで、紅茶を飲んで一服していた。
コナン君は噂の怪盗に興味が湧いたのか、こっそり見に行ったようだ。
私も興味がないと言えば嘘になるけど、ブラックスターはここにあるし放っておいても対面することになる。
ほんの一瞬でも、姿を見られればそれで良しとする。
ちなみに結論から言うと、博物館には怪盗キッドは現れなかった。
次の4月19日に横浜港から出港するクイーンエリザベス号から、本物の漆黒の星を盗み出すと予告状を残して、ビルの屋上から忽然と消えてしまったらしい。
人間がそんな簡単に消えるわけがないので、きっと逮捕しようとした警察官に紛れて逃げたのだろう。
何にせよあとは警察の仕事で、探偵はお呼びではない。
エイプリルフールとはいえ、3月31日にブラックスターを盗むのを防いだのだ。
綾子先輩の依頼は捕まえることだが、現場に現れなかったので仕方ない。
それに夜中、ずっと起きていたので凄く眠かった。
取りあえず日が出たら何処かでモーニングセットでも食べ、あとは車内でぐーすか眠りながら、ジャスミンさんに運転してもらって自宅に帰るのだった。