大学生探偵福来あざみ   作:あざジャス派の猫

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浪花の連続殺人事件2

 私が現場に出ても、絶対に途中でバテてダウンしてしまう。

 なのでジャスミンさんに大阪府警まで送ってもらい、捜査に協力したいと申し出て連続殺人事件の資料を閲覧させてもらった。

 

 普通は無理でも自分なら可能なので、あまり頼りたくはないが名探偵の肩書きはこういうときに役に立つ。

 

 取りあえず念視を使って流し読みし、重要なキーワードは丸で囲って補足説明を記入していく。

 

 するとすぐに、運転免許証から被害者全員が過去に免許合宿の同級生で、その中に今逃走中の強盗殺人犯が混じっていることを突き止める。

 

 しかも全員がちゃんと卒業しているはずなのに、その年のうちに免許を取ったのは一人だけだ。

 他にも不審な点が目立つが、二十年も前の事件で今いる教習所の職員ではわからないらしい。

 

「情報が足りてないので、これ以上は私にもわかりませんね」

「福来探偵でも無理なのか?」

 

 服部平蔵警視監が、現時点の調査資料に目を通し終わって一息ついた私に、缶コーヒーを奢ってくれた。

 

 そのついでに事件や背後関係について、あれこれ尋ねてくる。

 

 この場に居るのは、もちろん私だけではない。

 捜査本部が置かれている大部屋には、大勢の警察関係者が忙しく動き回っている。

 中には新たに指示を受けて、キーワードから資料を作成している人たちもいた。

 

「推理で補うにしても、情報が足りなければ間違う可能性があります。

 なので確実性を高めるためにも、次の調査資料が届くまで待ってください」

「つまり、新事実が明らかになると?」

「大阪府警の方々次第ですけどね」

 

 缶コーヒーのプルタブを開けて、口をつけながら返事をする。

 いくら念視能力を持っていても、キーワードが足りなければ真犯人には辿り着けない。

 

 なので今は、重要な単語を元に再捜査を行っている。

 それでも何も出てこなければ当然のように行き詰まってしまうが、そこは大阪府警の人たち次第だ。

 

「ふむ、不確実な推理なら可能なのだな?」

「先程も言いましたが、間違っているかも知れませんよ?」

「それでも構わん。福来探偵の考えを、教えてもらえないだろうか」

「……間違っていても良いのなら」

 

 正直、服部平蔵警視監は強面でちょっと怖い。

 缶コーヒーを奢ってくれたので、良い人だとはわかっている。

 でも、真剣な表情で目の前に座られるとちょっと腰が引けてしまう。

 

 だが現段階の推理を、不確定でも聞きたいらしい。

 周りの人たちも忙しそうに動いてはいるが、聞き耳を立てているのがわかる。

 

 これは私が口を開くまで、ずっとこのままかも知れないと諦めて、溜息を吐きながら口を開く。

 

「二十年前の新聞に目を通してわかったのですが、その時に教習所の教官が飲酒運転で亡くなっています」

「確かにその件が、今起きている連続殺人事件に関係しているのはわかるが──」

 

 間違いなく今回の事件に関係がある。

 だが手がかりが足りていないので、犯人や動機は無数に枝分かれしていた。

 どの枝が真実に繋がっているかは、現時点ではわからない。

 

「坂田祐介刑事。彼が私の推理では、今回の事件の第一容疑者です」

「なっ!? 坂田刑事が!?」

 

 まさか同じ警察関係者が、殺人事件の容疑者とは思っていなかったようだ。

 

「何かの間違いではないかね?」

「私もそう思いたいです。

 しかし何度推理をしても、今回の事件の犯人は坂田刑事の可能性が、とても高くなってしまうのです」

 

 私は手帳に人物関係や連続殺人事件について書き加えながら、もう一度推理を始める。

 

「まず今回の事件に巻き込まれたのは、お好み焼き店で食事を終えて、少し経った頃です」

 

 店内が騒がしくなり、少し早めに外に出る。

 ジャスミンさんと二人で、腹ごなしの散歩をしていた。

 

 コナン君たちがお会計を済ませて外に出たときに、私たちもタイミング良く戻ってきて合流したが、そのとき坂田刑事は何処かに電話をかけていた。

 

「さらに服部君たちが屋上に行っている間、私は残って調査をしていました。

 再び坂田刑事が、何処かに連絡していることに気づいたのです。

 てっきり警察だと思っていたのですが──」

 

 しかし残念ながら、連絡をしていたのは警察ではない。

 私の推理では、最初は屋上の死体を落下させるためにビルの住人を呼び出していた。

 そして二度目は、岡崎さんの留守電に脅迫のメッセージを入れていたのだ。

 

「互いの時刻を照合すると、二度とも一致しています。

 さらに公衆トイレで刺された事件では、途中で服部君たちと別れています」

 

 私はそこで喉が渇いたのでコーヒーを飲んで少しだけ息を吐き、続きを話していく。

 

 

「きっと脇道で停車して、急いで走ってマンションに向かったのでしょう。

 事前に岡崎さんを殺害するために、公衆トイレに呼び出しておいてです。

 そして同じ車種のレンタカーを二台借りれば、アリバイ作りも可能です」

 

 もちろん情報不足での推理なので間違っている可能性もあるが、この殺人事件は繋がりがある。

 なので彼が犯人だと考えたら、他の犯行も可能かどうかを検証していくのだ。

 

「確かに犯行は可能だな。しかし、一体何故、坂田刑事が連続殺人事件を?」

 

 犯人の可能性が高まったことで、服部平蔵警視監がただでさえ怖いのに難しい顔をして、私をじっと見つめてくる。

 子供だったらちびってもおかしくないし、私も内心ではガクブルしていた。

 

 それでも表面上は平静を装い、続きを説明していく。

 

「二十年前に教習所の教官が、飲酒運転で亡くなっています」

 

 先程話していたので記憶に新しく、彼はすぐに思い出して静かに頷く。

 

「名字は違いますが、写真を見ると坂田刑事と良く似ています。

 もちろん、これだけでは証拠になりませんが」

 

 私の推理は、明らかに情報が足りていない。

 殆ど推測で補っており、坂田刑事が犯人だという確証はなかった。

 

 だから再調査をさせて、決定的な証拠を探してもらっているのだ。

 

「そして恐らく彼は、郷司宗太郎(ごうしそうたろう)さんを殺すまで、止まらないでしょうし、他の容疑者に関しても考え直す必要がでてきます」

「……と、言うと?」

 

 ずいっと顔を近づけてくる服部平蔵警視監に、小声でヒエッと漏らして少しだけ身を引くが、慌てて表情を取り繕って推理の続きを説明する。

 

郷司宗太郎(ごうしそうたろう)さんも、二十年前の事件に関わっています。

 連続殺人事件の犯人でなくても、命を狙われてもおかしくはありません。

 さらに全ての罪を被らせて殺すのは、刑務所を脱獄した人が都合が良いでしょうね」

 

 あくまで私の推理が当たっていた場合だが、前科も動機もある人物は犯人に仕立て上げるのにはもってこいだ。

 もし本当に坂田刑事が真犯人だったら、これを利用しない手はない。

 

「わかった。すぐに坂田刑事を見張らせよう」

「ええ、貴方たちがそこまで信頼しているのです。

 きっと正義感が強くて、真面目で優しい人物なのでしょうね。

 でもだからこそ、もし犯行がバレたら、その場で命を断ってもおかしくない」

 

 私が真面目な顔で発言したところで、新しい資料が届いた。

 どうやら休憩時間は終わりのようで、再び眼鏡をかけて順番に目を通していく。

 

 そして服部平蔵警視監とのお話が終わり、彼はゆっくりと立ち上がる。

 自分よりも遥かに身長が高いうえにゴツくて、直接顔を見なくてもやっぱり内心でビビりまくりだ。

 

「貴女が大阪に居らんかったことを、今日ほど嘆いたことはないわ。

 何なら今からでも、こっちに引っ越さんか?」

「私は向こうの生活があるので、せっかくですが遠慮します」

 

 いくら治安が悪い米花町の近くに住んでいても、家族や友人は向こうにいるのだ。

 最低でも帝丹大学を卒業して社会人として独り立ちしてからでないと、引っ越そうとは思えない。

 

「それは残念だ。その気になったら、いつでも相談に乗るで。

 宿泊先や勤め先の手配は任せとき」

「はっはあ、一応、覚えておきます」

 

 めっちゃノリノリでスカウトしてくるじゃんねと思いつつ、引きつった愛想笑いで返事をする。

 とにかく、まだ事件は終わっていない。

 私は新しい調査資料に急ぎ目を通していくのだった。

 

 

 

 その後、坂田刑事が連続殺人事件の容疑者として逮捕される。

 全く嬉しくないが、予想通り拳銃で自殺しようとしたので、監視していた警察官が総出で取り押さえた。

 

 そして二十年前の飲酒運転が故意に仕組まれた事件だったことを語り出し、犯行の動機やトリックについても裏取りしていく。

 

 また強盗殺人犯を森の奥の小屋で匿っていたこともわかり、急ぎ逮捕に向かわせて屋根裏で手錠に繋がれていたところを、無事に確保する。

 

 郷司宗太郎(ごうしそうたろう)さんたちが仕組んだ二十年前の事件も明るみに出て、こうして大阪の連続殺人事件は幕を閉じたのだった。

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